『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
両膝が折れる。
鋭い痛みが、
左脇腹を引き裂いた。
その痛みが、
一瞬で脳まで突き抜ける。
視界が、
一瞬ぼやける。
そして――
聞こえた。
肉の奥。
肋骨が、
乾いた音を立ててひび割れる音。
肺が、
握り潰されたように苦しい。
胸の中の空気が、
一気に押し出される。
まともに息を吸うことさえできない。
喉の奥に、
血の味が込み上げる。
鉄のような、
しょっぱく、
苦い味。
「……ゴホッ!!」
一口の熱い血が、
口から漏れる。
顎の端まで赤く染めた。
ヴァン・ティエンは、
震える手を上げる。
唇の血を拭う。
そして――
血走った目で、
前方を見る。
だが――
敵は、
息を整える時間すら与えない。
濃い煙と埃。
赤い警告灯が、
絶え間なく点滅する。
その中から――
鉄鎖が風を切る音が、
再び響いた。
ヒュオオオオ!!
今度は、
分裂しない。
一本へと集まる。
巨大な大蛇のように。
そして――
ヴァン・ティエンの頭上へ、
真正面から叩き落とされる。
「ドォン!!!」
大爆発。
赤眼黒龍は、
上空からその光景を見下ろしていた。
その顔には、
明らかな満足が浮かんでいる。
口元が、
ゆっくりと吊り上がる。
だが――
煙が少しずつ晴れていく。
その瞬間。
赤眼黒龍の目が変わった。
ヴァン・ティエンは――
まだそこに座っていた。
両手で、
頭上の巨大な鎖を掴んでいる。
腕には、
青い血管が浮き上がる。
顔は苦痛に歪んでいる。
口から流れた血が、
戦艦の床を赤く染めている。
それでも――
彼の手は、
巨大な鎖を離さない。
頭を下げたまま。
彼は、
小さく呟いた。
「まだ……足りない。」
ヴァン・ティエンは、
ゆっくりと息を吐く。
吐息は重い。
それでも、
彼は静かに呼吸を続ける。
身体の力を抜く。
そして――
首に掛かったペンダントが、
かすかに震え始めた。
ブルッ……
そして――
「8%。」
その言葉が終わった瞬間。
ヴァン・ティエンの身体が、
青い光に包まれた。
ペンダントもまた――
眩い青い光を放つ。
ペンダントの内部から流れ出したエネルギーが、
ゆっくりと下へ移動する。
身体へ。
腕へ。
手首へ。
そして――
その青い光の中に、
濃い桃色の光が混ざっていく。
ヴァン・ティエンの瞳孔が、
徐々に色を変える。
翡翠のような青。
そこへ、
十時方向のような濃い桃色が混ざる。
ヴァン・ティエンの目が、
赤眼黒龍を完全に捉えた。
拳が強くなる。
そして――
手に掴んだ巨大な鎖を、
少しずつ持ち上げ始める。
鎖が――
動く。
赤眼黒龍はそれを見て、
すぐに腕を上げた。
自らの力を込める。
鎖を上から押し下げる。
鎖が、
再びゆっくりと下がっていく。
ヴァン・ティエンは歯を食いしばる。
足元の地面が、
徐々にひび割れていく。
巨大な鎖から掛かる圧力。
それでも――
腕にさらに力を込める。
光が、
さらに激しくなる。
掴んだ腕を、
少しずつ上へ。
さらに上へ。
そして――
片足を横へずらす。
踏み込むための支点を作る。
全身の力を、
足から腕へ。
身体全体の力を、
一本の鎖へ叩き込む。
そして――
持ち上げる。
赤眼黒龍の目が、
驚愕に見開かれた。
「そんな……馬鹿な。」
だが――
まだ驚きから抜け出せていない。
ヴァン・ティエンは腕を引く。
そして――
全身の力を込めて、
巨大な鎖を上空へ投げ飛ばした。
ヒュオオッ!!
止まらない。
拳を強く握る。
硬く。
強く。
光が集まる。
青い光。
そして――
濃い桃色の光。
二つの光が、
ヴァン・ティエンの掌へ集約される。
巨大な鎖が、
再び彼のいる場所へ落ちてくる。
ヴァン・ティエンは、
視界を狭める。
あと少し。
髪に触れる、その直前。
彼は――
全力を腕へ込めた。
そして――
拳を真上へ突き上げる。
ズドォォォン!!!!!!!!!
拳が鎖へ触れた瞬間――
周囲の気が、
突然爆発した。
ドォォン!!!!
風が一気に吹き荒れる。
地面の石や瓦礫が、
気流に巻き上げられる。
白藤江の水面までもが、
激しく揺れ動く。
そして――
しばらくして。
すべてが止まった。
静寂。
何も起こらない。
赤眼黒龍は、
その光景を見る。
そして――
目を細めて笑った。
「ハハ。」
「お前の8%の力ってのは、
どんなものかと思ったが……」
「結局、その程度か。」
だが――
その時。
「……バキッ。」
乾いた音が、
静かな空間に響いた。
赤眼黒龍の表情が止まる。
「……何の音だ?」
バキッ。
バキッ。
その音が、
もう一度響く。
今度は、
はっきり聞こえた。
赤眼黒龍の目が、
音のした場所へ向く。
そして――
その瞳に、
信じられないほどの動揺が浮かんだ。
彼の巨大な鎖が――
ひび割れている。
バキ……。
バキ……。
バキ……。
一つ。
また一つ。
亀裂が現れる。
巨大な鎖の周囲へ、
次々と広がっていく。
そして――
ガシャァン!!
金槌が鉄床を叩きつけたような、
鋭い音が響き渡る。
巨大な鎖が、
粉々に砕け散った。
一片。
また一片。
無数の破片が、
白い雪のように降り落ちていく。
赤眼黒龍は、
自分の目を疑った。
「ありえない……」
「ありえない……!!」
だが――
その言葉が終わるより早く。
青い光の一閃が、
赤眼黒龍の目の前へ飛び込んだ。
ヴァン・ティエンだった。
彼は足を振り上げる。
そして――
赤眼黒龍の腹へ、
斧のような強烈な蹴りを叩き込んだ。
「グアッ!!」
凄まじい威力。
赤眼黒龍の身体が、
遥か後方へ吹き飛ばされる。
砂の上を長く滑る。
そして――
動かなくなった。
ヴァン・ティエンは、
ゆっくりと足を下ろす。
だが――
その目は、
一瞬たりとも赤眼黒龍から離れなかった。