『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

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第59話 最後の決着技 (上)

「ティエンさん……」

 

赤眼黒龍の方では――

 

奴の口元に、勝ち誇った笑みが浮かんでいた。

 

ついに――

 

ヴァン・ティエンを殺した。

 

そう確信した笑みだった。

 

「アハハハハ!!」

 

「ついに……」

 

「俺も、お前を殺したぞ」

 

しかし――

 

その表情が、すぐに変わった。

 

煙の向こう。

 

奴の拳を――

 

ヴァン・ティエンの手が、しっかりと受け止めていた。

 

「あり得ない……!?」

 

赤眼黒龍の目が、大きく見開かれる。

 

ヴァン・ティエンは――

 

頭から大量の血を流していた。

 

それでも――

 

腕には全力を込めている。

 

相手の強烈な一撃を、真正面から止めていた。

 

その目は――

 

今も赤眼黒龍を射抜いている。

 

「これくらいじゃ……」

 

「俺は倒せない」

 

その瞬間。

 

ヴァン・ティエンは、両腕へ全ての力を込めた。

 

筋肉が強く締まる。

 

両腕を走る筋が、幾重にも浮き上がる。

 

全身を地面へ押しつけるように踏ん張る。

 

足元の大地が、圧力によってひび割れていく。

 

そして――

 

ヴァン・ティエンの両目。

 

その瞳の中から――

 

青と桃色の、鋭く眩い二本の光が閃いた。

 

同時に――

 

肩から手の甲へ。

 

光の紋様が走っていく。

 

ジジジジッ……!!

 

電気が弾けるような音を立てながら、光が身体を駆け巡る。

 

ヴァン・ティエンは、静かに呟いた。

 

「8%……」

 

次の瞬間――

 

ヴァン・ティエンの身体全体が、青と桃色の光に包まれた。

 

周囲の空気が、徐々に圧縮されていく。

 

風も――

 

少しずつ強くなっていく。

 

首にかかったペンダントが、風に煽られて大きく揺れる。

 

その光景に――

 

赤眼黒龍さえも驚きを隠せなかった。

 

ヴァン・ティエンの手が――

 

徐々に、赤眼黒龍の腕を押し返していく。

 

それを見て、奴も驚く。

 

「まさか……」

 

「まだそんな力が残っていたとはな……」

 

しかし――

 

奴が最後まで言い終えるよりも早く。

 

ヴァン・ティエンは身体を低く潜り込ませ――

 

奴の腕の下をすり抜けた。

 

そして――

 

赤眼黒龍の胸元へ、ぴたりと密着する。

 

両腕が、赤眼黒龍の腰を――

 

まるで巨大な万力のように、強く締めつけた。

 

ヴァン・ティエンは足を低く落とす。

 

踵を支点にする。

 

そして――

 

胸の軸を強く回転させた。

 

半月を描くような動き。

 

一切の無駄がない。

 

遠心力のすべてを利用し――

 

巨大な身体を、地面から軽々と持ち上げる。

 

そして――

 

相手を強く抱えたまま身体を回転させ――

 

赤眼黒龍の背中を、地面へ一直線に叩きつけた。

 

ドォン!!!!

 

耳をつんざくような轟音が響く。

 

「グッ……!!」

 

赤眼黒龍が体勢を立て直すより早く――

 

ヴァン・ティエンは立ち上がった。

 

拳を強く握る。

 

そして――

 

赤眼黒龍の顔面へ、一直線に拳を叩き込む。

 

ドゴォン!!!!

 

巨大な衝撃波が発生した。

 

ヴァン・ティエンは目を細める。

 

だが――

 

その拳は、赤眼黒龍の手によって受け止められていた。

 

奴はヴァン・ティエンを見る。

 

身体には傷を負っている。

 

それでも――

 

口元には笑みが浮かんでいた。

 

「お前……」

 

「思ったより、やるじゃないか」

 

その言葉が終わった瞬間――

 

ドゴッ!!

 

稲妻のような蹴りが、ヴァン・ティエンの腹部へ突き刺さった。

 

圧力によって腹部が大きく歪む。

 

身体が折れ曲がる。

 

そして――

 

そのまま吹き飛ばされた。

 

ヴァン・ティエンの身体は砂の上を長く滑り――

 

海際近くでようやく止まった。

 

「ゴホッ……!!」

 

激しい痛みに、ヴァン・ティエンは激しく咳き込む。

 

遠くでは、赤眼黒龍が立ち上がる。

 

奴は手で口元を軽く拭った。

 

そこには血が流れている。

 

その目が――

 

冷たく鋭くなる。

 

そして――

 

一瞬。

 

奴の姿が消えた。

 

次の瞬間――

 

ヴァン・ティエンの目の前に現れる。

 

「……!?」

 

ヴァン・ティエンが反応するよりも早く――

 

奴の手が、ヴァン・ティエンの首を掴んだ。

 

そのまま――

 

赤眼黒龍は高く跳び上がる。

 

傷ついたヴァン・ティエンの身体を、そのまま空中へ連れていく。

 

首を締める力が、徐々に強くなる。

 

空気が――

 

ヴァン・ティエンの喉の中から押し潰されていく。

 

「ぐっ……」

 

呼吸が――

 

苦しくなる。

 

そして、ある高さまで上がったところで――

 

赤眼黒龍は止まった。

 

奴はヴァン・ティエンを見る。

 

そして――

 

首を掴んでいた手を、突然離した。

 

ヴァン・ティエンの身体が落下する。

 

その前に――

 

赤眼黒龍は腕へ力を込めた。

 

そして――

 

何度も。

 

何度も。

 

稲妻のように速い拳を、ヴァン・ティエンの身体へ叩き込んでいく。

 

一瞬たりとも呼吸させない。

 

拳は豪雨のように飛び交う。

 

密集し――

 

隙間がない。

 

左のフック。

 

続いて右。

 

拳圧が、あらゆる方向からヴァン・ティエンを包み込む。

 

ドゴッ!!

 

深く腹へ突き刺さった一撃。

 

胸が締めつけられる。

 

肺の中の空気が――

 

すべて押し出される。

 

耳鳴りが響く。

 

視界が血で滲む。

 

もう――

 

聞こえるのは、骨と肉が激しくぶつかる音だけ。

 

そして――

 

自分の身体が、何度も何度も弾き飛ばされる感覚。

 

そして最後に――

 

赤眼黒龍が、巨大な槌を振り下ろすような蹴りを――

 

ヴァン・ティエンの頭へ叩き込んだ。

 

ドゴォン!!!!

 

ヴァン・ティエンの身体が――

 

空から真っ直ぐに落下する。

 

そして――

 

白藤江の水面へ、一直線に叩きつけられた。

 

ドォォン!!!!

 

身体が――

 

徐々に水の中へ沈んでいく。

 

手も。

 

足も。

 

もう動かせない。

 

意識が――

 

徐々に薄れていく。

 

首のペンダントから放たれていた光も――

 

少しずつ弱くなっていく。

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