『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

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第61話 赤鎖と大刀

風がさらに強く吹き始めた。

海の波も、ますます激しく、途切れることなく打ち寄せている。

 

赤眼黒龍と、陳國寶将軍は向かい合っていた。

 

次の瞬間――

陳國寶は身を低くし、足を踏み込むと、獲物に飛びかかる猛虎のように一気に飛び出した。

 

赤眼黒龍はすぐに腕を上げ、さらに一つの球体を作り出して攻撃しようとした。

 

だが――

指先の上で球体が形を作り始めた、その瞬間。

 

突然、奴の身体が止まった。

 

激しい激痛が、突然、胸の奥から込み上げてきた。

 

「ぐっ……!!」

 

顔が苦痛に歪み、身体が大きくよろめく。

 

作りかけていた球体も、消えてしまった。

 

その隙を逃さず――

陳國寶将軍はすでに目の前まで迫っていた。

 

強烈な拳が、凄まじい衝撃力をまといながら、真っ直ぐ奴の顔へ突き進む。

 

赤眼黒龍は驚いて、咄嗟に頭を下げてかわした。

 

若き将軍の攻撃は外れた――

そう思った。

 

だが――

 

陳國寶は突然身体を回転させ、重心を低く落とした。

 

腕を引き、強く折りたたむ。

 

そして――

 

下から突き上げるような、危険極まりない肘打ちを放った。

 

「バキッ!!」

 

鋭い打撃音が響き渡る。

 

赤眼黒龍は完全に反応できなかった。

 

陳國寶の肘が、奴の顎を真正面から打ち抜く。

 

その身体が空中へ弾き飛ばされた。

 

一瞬たりとも間を置かず――

 

陳國寶は素早く飛び込み、両腕を奴の脇へ通す。

 

そして腰を完全にロックした。

 

腹筋と太腿に力を込める。

 

腕には青筋が浮かび上がる。

 

そして――

 

奴の身体を丸ごと持ち上げた。

 

「うおおおっ!!」

 

そのまま――

 

地面へと激しく叩き落とす。

 

「ドォン!!!!」

 

赤眼黒龍の背中が地面へ叩きつけられた。

 

大地に亀裂が走り、砂埃が一面に舞い上がる。

 

「ぐはっ……」

 

奴の口から黒い血が吐き出された。

 

胸が締めつけられ、激痛と驚愕が同時に襲いかかる。

 

それでも――

 

奴は残った僅かな力を振り絞り、陳國寶の背中へ真っ直ぐ蹴りを放った。

 

軍人としての鋭い本能。

 

陳國寶は一瞬で身体を振り返り、両腕を胸の前で交差させ、攻撃を受け止めた。

 

「ドン!!」

 

防いだとはいえ――

 

蹴りの威力は凄まじかった。

 

陳國寶の身体は後方へ弾き飛ばされ、砂の上を長く滑っていく。

 

それでも――

 

彼は倒れなかった。

 

赤眼黒龍は苦しそうに身体を起こした。

 

片手を地面へ強く突き、倒れないよう身体を支える。

 

胸にはまだ痛みが残っている。

 

だが――

先ほどの激痛は、少しずつ弱まっていた。

 

それでも、一呼吸するたびに胸が詰まる。

 

奴は力を込め、身体をゆっくりと立ち上がらせた。

 

そして自分の胸へ視線を落とす。

 

そこには――

 

胸の鍵穴から、紫黒色の気が噴き出していた。

 

奴は心の中で呟く。

 

「忌々しい……! 身体がもう持たない……」

 

「さっきの一撃で、身体がかなり傷ついた……」

 

「早く……この戦いを終わらせなければ……」

 

だが――

 

奴がまだ考え込んでいる、その時。

 

顔を上げた瞬間――

 

目の前を、黒い影が覆った。

 

陳國寶将軍が、いつの間にか目の前まで来ていた。

 

奴が状況を理解するより早く――

 

陳國寶の足が動いた。

 

踵を引っかけるようにして、足を払う。

 

同時に――

 

若き将軍は掌へ力を集中させ、奴の胸へ強烈に押し込んだ。

 

重心を完全に崩し――

 

奴を再び地面へ叩き倒す。

 

反撃する隙など、一切与えない。

 

陳國寶は素早く相手の手首を掴む。

 

そして身体を回転させ――

 

肩関節を逆方向へ捻り、背中へと完全に折り込んだ。

 

「アアアアアッ!!!!」

 

赤眼黒龍の苦痛に満ちた絶叫が、辺りを切り裂いた。

 

陳國寶は膝を奴の背中へ強く押しつける。

 

片手で腕を完全に封じ、奴の動きを一切許さない。

 

そして冷たい眼差しで見下ろし、低い声で言った。

 

「生死を懸けた戦場で――

よそ見をするな」

 

奴の身体は完全に拘束されていた。

 

腕も――

脚も――

 

まったく動かせない。

 

その瞬間――

 

胸の鍵穴から、紫黒色の黒気が激しく爆発した。

 

「ゴゴゴゴゴ……!!」

 

紫黒色の気が奴の身体全体へ一気に広がっていく。

 

そして――

 

奴の目が、徐々に赤く染まっていく。

 

背後からそれを見た陳國寶は、状況がおかしいことに気づいた。

 

次の瞬間――

 

赤眼黒龍が咆哮した。

 

「アアアアアッ!!!!」

 

陳國寶はすぐに後方へ跳び退いた。

 

赤眼黒龍はよろめきながら立ち上がる。

 

紫黒色の気が全身を包み込んでいる。

 

そして――

 

傷ついた腕から、一筋の鎖がゆっくりと形を作り始めた。

 

今回の鎖は――

 

赤ではない。

 

紫黒色。

 

鎖はどんどん長くなっていく。

 

奴は立っている陳國寶を睨みつけた。

 

腕に力を込める。

 

紫黒色の気が鎖の周囲へ集まり始めた。

 

そして――

 

一瞬。

 

「ブンッ!!」

 

紫黒色の鎖を横薙ぎに振り抜き、陳國寶へ叩きつけた。

 

若き将軍は即座に身体を深く折り曲げた。

 

紫黒色の鎖が、彼の髪の頂点すれすれを掠めていく。

 

「ズドォォォン!!!!」

 

陳國寶の背後にあった巨大な岩が――

 

真っ二つに、あまりにも綺麗に斬り裂かれた。

 

それだけではない。

 

頭上に広がっていた黒雲までもが切り裂かれ――

 

その向こうから、夜空が姿を現した。

 

そこには無数の星が、広大な空に広がっていた。

 

陳國寶の目に、一瞬だけ驚愕が浮かぶ。

 

だが――

 

考える暇すら与えない。

 

紫黒色の鎖が、再び襲いかかってきた。

 

陳國寶は横へ身をかわす。

 

時には身体を低く伏せ――

 

時には高く跳び上がる。

 

赤眼黒龍は狂ったように鎖を何度も振り回し続けた。

 

鎖が迫る。

 

四方八方から――

 

死の網が、陳國寶を包囲していく。

 

目の前へ鎖が飛び込んできた瞬間――

 

陳國寶は地面へ両手をついた。

 

そのまま身体を反転させ、数回転しながら後方へ跳び、距離を取った。

 

そして赤眼黒龍を見つめる。

 

心の中で、警戒する。

 

「攻撃範囲が広すぎる……。

どうやって、あいつへ接近する?」

 

その時――

 

戦場を見渡していた陳國寶の目に、あるものが映った。

 

先ほど投げ飛ばした――

 

自分の大刀。

 

少し離れた岩場の近くに、まだ浅く突き刺さっている。

 

若き将軍の目が光った。

 

「武器がある……!」

 

一方――

 

風が吹き荒れる高い崖の上。

 

興道大王は、今もなお静かに立ち、陳國寶と赤眼黒龍の戦いを見つめていた。

 

夜空の下に、巨大な影のように立つ。

 

その法衣の裾が、強風に激しくはためいている。

 

その顔には――

 

一切の動揺がない。

 

深い眼差しは――

 

まるですべての戦況を見通しているかのようだった。

 

戦場の下では――

 

赤眼黒龍が再び狂暴に鎖を振り下ろした。

 

陳國寶は絶え間なく動き続け、俊敏な身のこなしで危険な攻撃をかわしていく。

 

彼は心の中で計算する。

 

「どうやって岩場へ近づき、武器を取り戻す?」

 

周囲を一通り見渡した後――

 

敵の視界を遮る盾にできそうな、大きな岩を発見した。

 

「見つけた」

 

次の瞬間――

 

陳國寶は地面を強く踏み込んだ。

 

「ドン!!」

 

そして岩へ向かって一気に飛び出した。

 

赤眼黒龍はそれを見て唸り声を上げる。

 

絶対に逃がさない。

 

すぐさま鎖を振り、進路を塞ぐ。

 

鎖が後頭部へ迫る。

 

だが――

 

陳國寶は一歩早かった。

 

両脚を大きく開き――

 

砂埃の上を滑るように身体を低く走らせる。

 

頭を深く下げ、風を切り裂いて迫る鎖をかわした。

 

そして岩へ近づいた、その瞬間――

 

紫黒色の鎖が身体のすぐ横を掠めていく。

 

そのまま前方の岩を横薙ぎに斬り裂いた。

 

「ドォン!!!!」

 

砂埃が一気に舞い上がる。

 

やがて――

 

煙塵が晴れていく。

 

しかし――

 

陳國寶の姿は、消えていた。

 

赤眼黒龍は目を動かし、周囲を見回す。

 

「奴はどこだ……!?」

 

「シュッ!!」

 

その瞬間――

 

鋭く短い風切り音が響いた。

 

暗闇の中から――

 

大刀が真っ直ぐ赤眼黒龍へ飛んできた。

 

奴の反応は異常なほど速かった。

 

すぐさま鎖を引き戻す。

 

そして胸の前で鎖を丸く巻き――

 

頑丈な盾を作り上げた。

 

「ガキン!!」

 

飛んできた大刀は鎖の盾に弾き飛ばされ、遠くへ飛んでいく。

 

だが――

 

その一瞬。

 

空中から、一つの影が飛び込んできた。

 

両手で大刀の柄を掴む。

 

陳國寶だった。

 

彼は刀を強く握り締める。

 

全身の力を腕へ集中させる。

 

そして――

 

迷いなく、大刀を振り下ろした。

 

「ズンッ!!」

 

巨大な半月形の光が刀身から走り――

 

夜の闇を真っ二つに切り裂いた。

 

赤眼黒龍はすぐに鎖の盾を持ち上げ、受け止める。

 

「ドォォォン!!!!」

 

二つの凄まじい衝撃波が正面から激突した。

 

その瞬間――

 

強烈な爆発が巻き起こる。

 

凄まじい圧力によって、二人の身体が同時に後方へ吹き飛ばされる。

 

数十メートル――

 

二人はそれぞれ地面へ着地し、踏みとどまった。

 

そして――

 

互いの目が、真っ直ぐ相手を捉える。

 

一瞬の沈黙。

 

そして――

 

二人は同時に地面を蹴った。

 

真っ直ぐ――

 

互いへ向かって突進する。

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