覚悟ガンギマリ系一逸転生者による幻想郷破壊録 作:フリッツⅩ
俊宏が外界へ出る方法を具体的に考え始めたのは、復讐計画の骨格を頭の中に組み立ててから、しばらく経ったころだった。
幻想郷の内側から妖怪社会を変えることが難しい以上、外の世界へ活動の場を移すべきだという方針は、すでに定まっていた。
しかし、目標を掲げるだけでは何も変わらない。実際に外界へ出る方法を見つけなければ、その先の計画を実行する機会さえ得られないのである。
俊宏は、前世で得た東方Projectの知識を改めて整理した。
幻想郷には、外の世界から迷い込んでくる人間がいる。
そうした人々は外来人と呼ばれ、運よく人里へたどり着けば、博麗神社へ案内されて外界へ帰還できる場合がある。
一方、幻想郷をさまよううちに妖怪に捕らえられ、命を落とす者も少なくない。
外来人にとって、幻想郷は好奇心だけで歩き回れる場所ではなかった。
この情報は、前世で読んだ『東方求聞史紀』の記述にも合致していた。
そこには、外来人の特徴や遭遇する危険、人里へ到達した場合の対応などが記されている。
外界から来た人間を帰還させる経路が存在するということは、幻想郷と外の世界の間を移動する手段が、完全に失われているわけではないことを示していた。
俊宏には、大結界を破壊できる力などない。
結界を維持する側にいる強大な存在と正面から争うことも、現実的な選択肢ではなかった。
だが、すでに存在する帰還の仕組みを利用できるのなら、圧倒的な力の差を覆す必要はなくなる。
重要なのは、結界を力ずくで突破することではなく、外来人が帰還できる仕組みがどのような条件で働くのかを理解し、自分にも適用される可能性を確かめることだった。
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外来人の話は、人里でも時折話題になっていた。
山道で見慣れない服装の人間を見かけた話や、迷い込んできた者が奇妙な道具を持っていたという話は、子供たちの興味を引いていた。
しかし、彼らが知っているのは、外から来た人間が珍しい品物や知識を持っていること、そして妖怪に襲われる危険があるため、不用意に近づいてはならないという程度だった。
俊宏は、そうした会話に耳を傾けながら、外来人が実際にどのように扱われるのかを調べていった。
大人たちの話も聞いたが、すべての外来人がどこから来て、どのような経路で幻想郷へ迷い込むのかを、詳しく説明できる者はいなかった。
外界についての知識を持つ人間は限られており、外来人と接した経験があっても、その事情まで理解しているとは限らないのである。
それでも、いくつかの話には共通点があった。
外界から来た人間が人里へたどり着けば、博麗神社へ案内され、帰還の機会を得られる場合があるという。
一方、人里から離れた場所で妖怪に遭遇すれば、無事に生き延びられるとは限らなかった。
俊宏が前世の知識から得ていた情報は、人里で聞いた話ともおおむね一致していた。
ただし、ここで彼は慎重にならざるを得なかった。
外来人が外界へ帰還できるという事実は、自分も同じ方法で脱出できることの証明にはならないからである。
俊宏は、幻想郷で生まれ育った人間だった。
両親とともに人里の外で暮らし、土地の言葉や習慣を身につけ、この世界の生活の中で成長してきた。
前世の記憶を持っていることは彼自身にとって大きな意味を持つが、それだけで現在の立場が外来人へ変わるわけではなかった。
この違いを無視すれば、計画の出発点そのものを誤ることになる。
そこで俊宏は、外来人に関する情報を、確かめられている事実と、まだ答えの出ていない問題に分けて考えた。
外界から迷い込む人間が存在することと、人里にたどり着いた者が博麗神社を通じて帰還できる場合があることは、前世の知識と人里で聞いた話の両方から確かめられた。
しかし、その仕組みが幻想郷生まれの人間にも適用されるのかどうかは、誰からも明確な答えを得られていなかった。
俊宏に必要なのは、その最後の疑問を解き明かすことだった。
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博麗神社について考えるとき、俊宏がまず思い浮かべるのは、幻想郷と外界の境界上に位置するという設定だった。
『東方求聞史紀』では、神社のある場所は厳密には幻想郷の内側ではないと説明されている。
外界から来た人間が帰還する際に重要な役割を果たすのも、神社の特殊な立地と関係しているのだろう。
この設定を思い返すほど、俊宏は博麗神社が単なる参拝の場所ではないことを実感した。
そこには博麗の巫女である博麗霊夢が暮らし、幻想郷の秩序を守る役割を担っている。
異変が起きれば解決のために動き、妖怪と人間の間に問題が生じれば対処する。
そして、外来人が帰還できる経路にも関わっているのだった。
外来人についての記憶を辿るうちに、俊宏は同じ書物に記されていた龍の項目も思い出した。
そこでは龍神が幻想郷の最高神として扱われ、普段はほとんど姿を現さず、最後に記録された出現は博麗大結界の成立時だったとされている。
空を覆う龍と激しい雷雨の伝承は壮大なものだったが、俊宏はそれを脱出の手段として考えようとはしなかった。
龍神を呼び出す方法も、その意思を確かめる方法も分からない以上、自分の計画に奇跡を組み込むことには何の意味もなかったのである。
彼に必要なのは、実現できる可能性のある方法を探し出し、必要な条件を一つずつ確かめることだった。
過去の伝承がどれほど壮大なものであっても、それだけで現在の自分を取り巻く状況が変わるわけではない。
俊宏は龍神についての記憶をいったん脇へ置き、外来人が帰還できる仕組みを利用するという、当面の課題へ意識を戻した。
外界へ出ることを目指す以上、霊夢との接触は避けて通れない可能性が高い。
しかし、彼女が人間であるからといって、俊宏の目的に協力してくれるとは限らなかった。
博麗の巫女として幻想郷の秩序を守る立場にある以上、彼が何をしようとしているのかを知れば、外界へ送り出すことに慎重になる可能性もある。
そもそも、俊宏が目指しているのは、自分一人の生活を変えることではない。
外界で創作活動を行い、幻想郷の存在を広く認識させ、最終的には人間が自らの意思で外へ出られる道を作ることだった。
その目的を率直に説明したところで、霊夢が理解してくれる保証はない。
まして、計画の全容を知られれば、外界への脱出そのものが難しくなるおそれもあった。
俊宏は、霊夢と争うつもりはなかった。
大結界を破る力がない以上、博麗の巫女を敵に回すことは、計画を自ら危険にさらす行為にほかならない。
既存の帰還経路を利用するつもりなら、その仕組みに関わる相手と無用な対立を起こすべきではなかった。
彼が探すべきなのは、霊夢を倒す方法でも、自分の考えを彼女に認めさせる方法でもない。
彼女が外来人に対して普段行っている対応の中に、自分が利用できる余地があるかどうかだった。
最大の問題は、俊宏自身が外来人ではないことにあった。
外界から迷い込んできた人間を帰還させる仕組みが存在しても、幻想郷で生まれ育った人間が同じ扱いを受けられるとは限らない。
霊夢に事情を正直に説明した場合、どのような判断を下されるのか、俊宏には見当もつかなかった。
生まれも育ちも幻想郷である以上、彼は本来、外来人ではない。
その事実を伝えれば、通常の帰還手続きの対象にはならないと判断される可能性があった。
一方で、外界へ帰りたいという希望を持つ人間を、どのような条件で帰還させるのか、その判断基準のすべてを俊宏が知っているわけでもない。
ならば、最初から不可能だと決めつける必要もなかった。
外来人が帰還できることは、少なくとも幻想郷と外界の間に、人間の移動が成立する経路があることを示している。
その仕組みがどのような条件で働くのかを理解できれば、自分にも利用できる可能性が残されているはずだった。
俊宏は、これまで漠然と考えていた可能性を、一つの仮説として意識するようになった。
もし自分が外来人として認識されれば、博麗霊夢によって外界へ送り返されることができるのではないか。
もちろん、そう考えたからといって、成功が保証されるわけではない。
身分を偽れば必ず霊夢を欺けるとは限らず、彼女が外来人を判断する際に、どこまで事情を確かめるのかも分からなかった。
それでも、大結界を破壊しようとするよりは、実現性のある道に思えたのである。
紫をはじめとする強大な存在と力比べをする必要はなく、幻想郷の秩序を正面から破壊する必要もない。
外来人として扱われる条件を満たせるのなら、既存の帰還経路を利用して外界へ出られる可能性がある。
その方法を探ることが、今の俊宏にとって最も重要な課題になった。
結界そのものに挑むのではなく、その内側から外へ通じる経路を利用する。
この発想によって、俊宏の脱出計画は、初めて具体的な検討対象を持つことになった。
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俊宏は、仮説を思いついたからといって、すぐに博麗神社へ向かおうとはしなかった。
霊夢に会い、自分を外来人だと説明したとしても、それだけで帰還できるとは限らない。
早い段階で失敗すれば、自分の存在を彼女に強く印象づけ、次に接触する機会まで失うおそれがあった。
まずは、外来人についての知識を整理し、帰還の条件を推測する必要がある。
外界から来た人間は、服装や髪型、言葉遣い、持ち物などから、幻想郷の住民とは異なる存在として認識されることがあるだろう。
彼らが使う道具や、語る暮らしの様子も、里の人々にとっては珍しい情報になるはずだった。
ただ、前世の記憶があるからといって、外界で暮らしていたころの身分や経歴をそのまま使えるわけではない。
どのような服装なら不自然ではないのか、どのような言葉遣いなら外来人らしく見えるのか、そして霊夢が何を手掛かりに外来人を判断するのか、現時点では分からないことばかりだった。
俊宏は、まず自分にできる範囲で情報を集めることにした。
人里の人々が外来人について何を知っているのか、外界から持ち込まれる品物にはどのようなものがあるのか、博麗神社が人々からどのような場所として認識されているのかを、日常の中で確かめていく。
目立った行動は避けながら、必要な知識を少しずつ蓄えていけば、いつか脱出の条件が見えてくるかもしれなかった。
自分が立てた仮説を、確定した計画として扱うつもりはなかった。
外来人の帰還経路が利用できるという情報は、あくまでも手掛かりにすぎない。
自分がその仕組みを使えるかどうかは、今後の調査と準備にかかっている。
それでも、目指すべき方向は明確になり始めていた。
いつか博麗神社へ向かい、外界から迷い込んできた人間として認識され、霊夢が通常行う帰還の手続きを利用して幻想郷を脱出する。
そのために何が必要なのかを考え、実現できる方法を探し続けることだった。
今はまだ、霊夢に会う時期ではない。
どのような態度で彼女の前に立ち、何を伝え、何を伏せるべきなのかについても、答えは出ていなかった。
それでも、外来人が帰還できる仕組みが存在する以上、可能性を追究する価値はある。
俊宏は、人里での生活を続けながら、必要な知識を頭の中に積み重ねていった。
外へ出る道は、力ずくで大結界を破壊することだけではない。
すでに存在する帰還経路を理解し、自分もその対象として扱われる方法を見つけることが、彼の脱出計画を具体化する最初の一歩になったのである。