北神三世の兄-弟に勝つため本気出す- 作:ドゥンピドゥンピ
『龍神』オルステッドを前にして、アルフレッドは考えていた。
(さて、どうやって逃げるか)
アルフレッドは、自身が情の深い人間だと考えていない。
自分の手の届く範囲で、大切なものを守れればいいと考えている。
そして、守るべきものには優先順位がある。
今はこの腕の中にいるイゾルテである。
彼女を守れるのであれば、他は見捨てていい。
そして更に、人神は言っていた。
『ルーデウスはね。将来的にイゾルテを殺すよ』と。
であれば、ルーデウスという男を助ける義理はない。
ここでオルステッドに殺されてくれた方がいい。
そう考えていた。
「…………」
故に、アルフレッドは龍神と戦おうなどと考えていなかった。
イゾルテを抱き抱えながら、剣も抜いていなかったぐらいだ。
今すぐ、この場から逃げ出したい。
だが、オルステッドはそれを許さないだろう。
どう、すべきか。
アルフレッドが悩み、オルステッドが訝しむ中……ルーデウスが転がったまま、オルステッドの足を掴んだ。
「……何をしている」
その気になれば、振り払えるだろう。
だが、オルステッドは振り払いもせず、振り返りもせず。
ただ、アルフレッドに視線を向けたまま……ルーデウスに声を掛けていた。
「ヒトガミが、言ったんだ……あんたが、世界を滅ぼそうと、してるって……それを、俺の子孫が手助けして……ヒトガミを殺してしまうって……」
「……なんだと?」
そこでようやく、オルステッドの視線が外れた。
アルフレッドはイゾルテを抱き抱えながら、一歩下がった。
逃げる好機だと思ったのだ。
「ヒトガミは、死なないために……世界を滅ぼされないように、あんたと戦ってるって言ってたんだ……」
「…………」
「だから、あんたを殺せば……ヒトガミは、もう家族に手を出さないんだ……」
しかし、アルフレッドは足を止めた。
足を止めて、イゾルテを抱き抱えながら……ルーデウスを見ていた。
「お願い、します……世界を、滅ぼさないで下さい……俺は死んでも、いいから……俺の家族を、子供を、未来を……奪わないで下さい……ヒトガミを諦めてください、お願いします……」
ルーデウスは無様に、泣きながら。
無力に、懇願するように、声を震わせていた。
「……それは、できん。俺はヒトガミを殺す」
その言葉を聞いた瞬間、ルーデウスはオルステッドの足に噛みついた。
「う、あああぁぁあ……っ!」
両腕を失い、血を失い、魔力を失い……それでも、ルーデウスは家族を守るためにオルステッドに噛み付いていた。
「ぐ、ふぐう、ぅう……っ!」
そして魔力を練って……だが、霧散した。
「……いかにラプラスの因子を持っていようと、そう立て続けに大規模な魔術を扱えば魔力切れになる。無駄なことをするな」
ルーデウスは振り払われて地面を転がった。
ただ情なく、無様に。
それでも執念深く、家族を守るために。
その様子をアルフレッドは見ていた。
ただ、見ていた。
そして。
「……すまない、イゾルテ殿。少し待っていてくれ」
「……アルフレッド、さん」
アルフレッドはイゾルテを木陰に下ろした。
イゾルテの縋るように伸びた手を握り、目線を合わせた。
「どうにも、やらなくてはならない事が増えたみたいだ」
「……いや、です……いや……行かないで、ください……」
「すまない」
そうして、手を解き……アルフレッドは立ち上がった。
「オルステッド殿」
そして、剣を抜いてオルステッドと向き合った。
「『北帝』アルフレッドか。お前はどうしてヒトガミの命令に従う」
「従っているつもりはないとも。私はただ、彼女を助けに来ただけだ」
「使徒ではないのか……?ならば、安心するといい。俺はイゾルテ・クルーエルを殺しはしない。ここで戦う理由など無い筈だが」
オルステッドの言葉には確信があった。
アルフレッドはその確信を読み取っていた。
「はは、それは安心できますね。貴方は約束を守ってくれそうだ……では、そこのルーデウス殿は?」
「……お前には関係のない話だ」
振り払うような言葉に、アルフレッドは剣を構えた。
二振りの剣を。
「人神の使徒は殺すと、以前、貴方は言っていましたね。彼が殺されぬよう、逃げる時間ぐらいは稼がせて貰いましょうか」
「……あの時か。お前を殺し掛けた時があったな。恨んでいるのか」
「いいや、恨んでませんよ。貴方の技は大変参考になった……故に──
転がったルーデウスの先に、若い女性が集まっていた。
白髪のエルフらしき少女と、青髪の魔族らしき少女。
白髪の少女はルーデウスに治癒魔術を掛けている。
青髪の少女は顔面蒼白になりながら、そんな二人を守ろうとしている。
ならば、彼女達が、ルーデウスの家族なのだろう。
アルフレッドは思った。
自分は『家族愛』というものに、弱いのだ。
父や、母。
祖母、弟。
良くして貰った、良くしたい。
掛け替えのない者を守りたい。
そう思えた。
イゾルテもそうだ。
彼女も家族だ。
だから、守る。
だから、守りたい気持ちが分かる。
だから、逃げる事など出来るはずがない。
「オルステッド殿。一手、御指南願う」
両手で剣を構えた。
右に魔剣『カジャ』、左に魔剣『バクラ』を。
「……今はお前の相手をする余裕など、無いのだがな」
オルステッドはため息を一つは吐いた。
ルーデウス、エリス、イゾルテ……予定外の戦闘。
既に消耗し始めている。
そして、オルステッドは消耗を嫌っている。
アルフレッドは考えた。
何らかの理由で、『龍神』オルステッドは本気を出せない。
出し渋っているのだ。
「聞いてくれ!余裕がある人は、誰かを助けて、ここから逃げて下さい!」
作戦を暗に伝える余裕など、アルフレッドには無かった。
大きな声で、そう口にした。
ルーデウスの妻らしき女達が、治癒魔術で剣士達を助けるだろう。
余裕が出来れば、オルステッドから逃す事ができる。
ルーデウスが逃げるまでの間、自分が戦うのだ。
だが、アルフレッドは確信していた。
オルステッドは無用な殺害を避けているように見えた。
本気になれば、エリスやイゾルテ、ギレーヌを殺せている筈だ。
赤竜の下顎でもそうだ。
フィリップやヒルダを殺せていた。
なのに殺していない。
誰も、死んでいない。
それが理由だ。
だがしかし、彼には例外がある。
それが『人神の使徒』という存在だ。
アルフレッドは確信していた。
人神の使徒とは、人神の助言を聞き入れた者だ。
自分と、恐らくはルーデウス。
ならば、戦えば、殺される可能性が高い。
今はただ、オルステッドの優先順位がルーデウスとなっているだけだ。
だから見逃されかけていた。
しかし、だ。
戦えば、殺されるだろう。
死ぬのは困る。
約束が果たせなくなる。
だとしても、見捨てるという選択肢はなかった。
(精々、ルーデウスに恩を売って……人神の言っていた未来は避けるとしよう。イゾルテのことも、無碍にしないだろ……多分)
闘気を身体に満ちさせる。
全身の細胞を覆うように、力で満たす。
「……ほう」
5年だ。
5年の間、地の底に一人で居た。
何もしなかった訳ではない。
身体を闘気で纏う、その精度を高める訓練をしていた。
一念発起。
一つの願いに真摯であれば、形になるものなのだ。
「我が名は北神流、『北帝』アルフレッド・カールマン・ライバック!行くぞ!」
声を張り上げ、覚悟に満ちて。
アルフレッドはオルステッドへと踏み込んだ。
「…………」
オルステッドは考え事をしているようで、ただ受け止めるべく消極的に構えただけだった。
馬鹿にされている。
舐められている。
そうは思ったが、憤りはなかった。
あれは傲慢ではなく、余裕なのだ。
そして、油断は付け入る隙となる。
「ふっ!」
アルフレッドは右の手で、剣を振るった。
それを受け止めるべく、オルステッドは左の腕で受け止めた。
水神流奥義『流』である。
ただの、素手の防御が水神流の奥義となる。
オルステッドの卓越された技量が可能とする反則技だ。
「むっ」
だが、オルステッドは違和感を感じた。
受けた剣に、重みが全くなかったのだ。
重みがなければ、受け流して反撃に使う力もたかが知れている。
気付いた。
アルフレッドは既に剣から、手を離していた。
そして、もう片方の剣を両手で握っていた。
「はぁっ!」
剣神流奥義『光の太刀』。
それが放たれようとしている。
オルステッドは察して、もう片方の手で手刀を放った。
「……!」
剣神流奥義『光返し』である。
オルステッドの手刀は、アルフレッドの手首を落とすべく迫る。
『光返し』は『光の太刀』が最高速度に到達する前に、その手首を落とす技である。
剣神流としては拙いアルフレッドの『光の太刀』など、見てからの対応が余裕で可能なのだ。
だが、しかし。
「……っ!」
アルフレッドは剣を振らず、防御姿勢を取った。
それは、オルステッドにも想定外の事だった。
フェイントだ。
見くびっていたのだ。
アルフレッドの剣神流は拙い。
だからこそ、この遅さは『光の太刀』が不得手だからだ、と。
これが『剣神』ガル・ファリオンや、エリスならば、不自然な遅さにフェイントだと気付く事が出来た。
だが、アルフレッドだからこそ、オルステッドは見極められなかった。
その構えは、『光の太刀』ではない。
水神流奥義『流』である。
「はッ!」
瞬間、オルステッドの手首が切断された。
『光返し』を放とうとした力を受け流され、切断されたのだ。
アルフレッド命名、『光返し返し』である。
「……くっ」
オルステッドは不快そうに舌打ちをして、後退しつつ……浮いた手首をもう片方の手で取った。
だが、隙は確実に生まれていた。
「だぁっ!」
アルフレッドは蹴りを放っていた。
しかし、普通の蹴りならば、オルステッドは傷を負わない。
龍聖闘気による防御を貫くことは出来ない。
だが、アルフレッドの蹴りはオルステッドへ直接触れるものではなかった。
オルステッドに弾かれ、宙へ浮いた魔剣『カジャ』の柄を蹴り飛ばしたのだ。
「なに……?」
手首を治癒魔術で治療していたオルステッドに対して、魔剣『カジャ』が弾丸のように放たれた。
エリスの放った苦し紛れの北神流とは違う、本物の北神流奥義『飛燕』である。
それは闘気を纏って射出され、オルステッドの肩を貫いた。
「……ッ!」
その光景を見た瞬間、アルフレッドは地面を蹴り砕いた。
続けて、踏み砕いた地面を、岩を、土を、剣で掬い上げて弾き飛ばした。
北神流『土流石』である。
「チッ」
片方の腕は繋がっていない。
もう片方の腕は、肩がやられて動かせない。
治癒魔術をかけて治りつつあるが、それを受け止める手段がない。
オルステッドは顔を逸らし、体勢を整え、その土や岩による目潰しを避けた。
だが、身体には確実にダメージが入っている。
「はぁっ!」
奇策による一撃。
それが通って産まれた隙への更なる奇策。
不意打ち、目潰し。
北神流として、その隙を見逃す慈悲などない。
アルフレッドは踏み込み、剣を振りかぶった。
「……仕方ない」
オルステッドは後退しつつ、地面へ刺していた刀を抜いた。
神刀、オルステッドの持つ最強の武器である。
瞬間、アルフレッドに怖気が走った。
良いように出来ている、などとは思っていなかった。
だが、ここまで加減されているとは思っていなかった。
「……ッ!?」
即座に仰け反った。
それはアルフレッドの五感全てから生み出された警鐘が齎した回避であった。
しかし、それは正解でもあった。
「がっ!?」
アルフレッドは斬られていた。
だが、薄皮一枚……とは言わず、骨の手前まで断たれていたが。
それでも、即死は免れた。
即座にアルフレッドは魔剣『バクラ』による『活性』を稼働させた。
傷を急速で治しつつ、オルステッドから離れた。
「ふ、ぅ……けほっ」
口に溜まった血を吐きつつ、傷口の具合を確かめる。
既に治っている。
表面上は、だが。
それでもまだ、戦える。
アルフレッドは剣を構えた。
しかし、オルステッドは剣を下ろしていた。
構える事もなく、ただアルフレッドを眺めていた。
「アルフレッド・カールマン・ライバック」
「……ふ、は……なん、でしょう?私と話がしたいと?」
オルステッドは既に肩の傷も、手首も治っていた。
対して、アルフレッドはどうか。
傷は殆ど治っていたが万全とは言い難い。
身体の内部を治す時間が欲しい。
少しでも話をして、時間を稼ぎたかったのだ。
「お前は何故、俺と戦う。ヒトガミに言われたからか?」
「……いえ、元はイゾルテ殿を助けに来るつもりでした」
「なら既に目標は達成している筈だ。そこに居るイゾルテ・クルーエルを連れて、さっさと去れ」
オルステッドはまだ、見逃してくれるらしい。
それは自分に敵意を持っていないからか。
それとも、これ以上の連戦で無意味に力を使いたくないからか。
どちらかではなく、両方が理由なのだろう。
だが、アルフレッドは首を横に振った。
「……そうしたいのは山々ですが、どうにも助けたい相手が増えたのでね」
「ルーデウス・グレイラットか。何故だ?」
オルステッドはルーデウスを見た。
二人の妻に支えられて、魔力が枯渇して髪も白くなり、意識も朦朧としているようだ。
戦力として、頼りない。
「……彼が人たらしだから、ではないですかね」
「お前の自身ことだ、何故そうも他人事に言う」
「自分でも馬鹿だと思ってるからですよ。知らぬ相手の為に命を張るほど、私はお人好しではないつもりでしたが」
「……お前は、よく分からない奴だ」
よく言われる。
アルフレッドは自負していた。
自分は適当に生き過ぎている。
突発的にやりたい事をして、生きている。
そして、己のことを顧みない。
長く生きていた所為だ、と言い訳をするつもりはない。
ただ性分だ。
それでも、己の決めた事に対して責任は持ちたい。
「……お前は俺を恐れないな。何故だ?」
「え?怖いですよ……許してくれるなら、逃げ出したいほどには」
アルフレッドの言葉にオルステッドは顔を顰めた。
聞き覚えのある言葉だった。
かつてそんな事を宣う奴が、もう一人居たのだ。
オルステッドはルーデウスの方を一瞥して、己の両手を見た。
血に濡れた手を、何度か握り直して……再びアルフレッドに視線を戻した。
「このまま戦い続けても、意味はない……か」
そして、ぽつりと呟き……再びルーデウスを見た。
目の下に黒いクマを作り、茶髪は白髪になり、脚は産まれたての子鹿のように震えて、顔面蒼白……血の気も引いている。
今にも死にそうな顔で、二人の妻に支えられているルーデウスへ視線を向けたのだ。
そして、オルステッドは周りを見渡した。
エリス・グレイラットは腕を折られながらも剣を咥えて立ち上がっていた。
ギレーヌは傷だらけになりながらも、エリスと共に立ち上がっていた。
シルフィエットとロキシー、二人の妻はルーデウスを守るべく前に出ていた。
「……ふぅ」
オルステッドは深く、大きなため息を吐いた。
そのまま、口を開いた。
「ルーデウス・グレイラット!」
怒声のような大声が、森に響いた。
「俺はお前がヒトガミの使徒であり続ける限り、容赦はしない!この場にいる人間を皆殺しにしてもお前を殺す!」
そして、アルフレッドの方へ目を向けた。
「お前もだ、アルフレッド・ライバック!例え何をしても、何処に居ても、追い詰めて殺す!」
周りの人間は震えていた。
ルーデウスも震えていた。
だが、アルフレッドは首を傾げた。
どうして分かりきってる事を言うのだろうか、と。
そんなアルフレッドをオルステッドは睨み、そのままルーデウスに視線を戻した。
「俺はヒトガミの言葉など信用せん!だが!ヒトガミの言葉が真実ならば、俺はお前を殺した上で、お前の子供を使ってヒトガミを殺す!」
その言葉にルーデウスの震えが止まった。
目に力が戻った。
杖を握ろうとして、既に腕がないことに気付き、バランスを崩した。
ロキシーに支えられながら、それでもオルステッドを睨み付けた。
「だが、闘神を模した鎧と、お前の魔力!そして俺の呪いが効かぬお前の体質には、利用価値がある!ヒトガミを裏切って、俺に付け!」
その言葉に、周りの人間は驚愕した。
エリスは顔を顰めた。
シルフィもだ。
ロキシーは黙ったまま、ルーデウスを下げようと手を肩に置いた。
誰も彼も、オルステッドの言葉を信用していない。
だが、アルフレッドは周りの剣呑さを他所に戸惑っていた。
(やっべ、どうしよう……俺は誘われてないよな、これ)
アルフレッドは自身の弱さを自覚していた。
自分はあまり強くない。
オルステッドに一矢報いることすら出来なかった。
そこにいるルーデウスとは違うのだ。
この場にいる自分は部外者であり、急に戦いへ乱入して斬られた雑魚なのだ。
オルステッドからして利用価値はないだろう。
このままルーデウスがオルステッドの下に付けば、次は殺されるかもしれない。
やっぱり、今すぐイゾルテを連れて逃げるか。
なんて、アルフレッドは考えていたが。
そんな事も知らずに、オルステッドは話を進めていた。
「俺の力があれば!龍神の加護があれば、ヒトガミはお前に手を出せん筈だ。今、この場の会話をヒトガミに届いていまい!」
「…………」
オルステッドは周りを無視して、ルーデウスへ話し掛けていた。
その隙にアルフレッドは、イゾルテの元へとこそこそ擦り寄っていた。
「……アルフレッドさん」
「静かに。ここから逃げるぞ……」
オルステッドに聞こえぬよう小声で話していたが……オルステッドが急に、アルフレッドへ目を向けた。
「…………」
無言で睨まれ、アルフレッドは苦笑する事しか出来なかった。
見られているなら逃げられないかも知れない。
さっきは見逃してくれると言ったのに……なんて、内心で悪態を吐いていた。
そんなアルフレッドから視線を逸らし、オルステッドは再びルーデウスを見た。
「選べ、ルーデウス・グレイラット!ヒトガミに付き、全てを失うか!俺に付き、守る為に戦うのか!お前なら、選べる筈だ!」
そう告げたオルステッドを相手に、ルーデウスはよろよろと立ち上がり……オルステッドの足元に倒れ込んだ。
その姿にアルフレッドは覚えがあった。
この世界には存在しない筈の姿勢……土下座だった。
「本当に、ヒトガミから……家族を守れる、んですか……?」
「守れる!奴は強力な未来視を持つが、絶対の存在ではない!ましてや、全知全能などではない!」
「貴方に従えば……絶対に、家族を守れるんですか……?」
「……絶対ではない。だが、尽力することを誓おう」
その言葉には誠実さがあった。
周りは訝しんでいるが、アルフレッドには分かった。
そして、ルーデウスにも分かった。
「俺は……貴方の、下に付きます……だから、家族を……助けて、下さい……」
そうルーデウスは返した。
人を操り、自分は何もしないヒトガミよりも……オルステッドを選んだのだ。
その様子を見て、アルフレッドは冷や汗をかいていた。
(……本格的に拙いな。オルステッドとルーデウスが協力するのなら、俺は完全に敵じゃないか。どうやって逃げるか……いや、逃げられるのか?命乞いの用意でもするか……俺はダメかも知れんが、イゾルテは助けて貰えるだろう)
なんて脳内でぐるぐると思考を回していたが。
「お前はどうする。アルフレッド・カールマン・ライバック」
名前を呼ばれて、姿勢を正した。
「ど、どうするとは?死に場所は選ばせてくれるんですか?」
問いかけると、オルステッドは顔を顰めた。
「…………」
無言で睨まれて、アルフレッドは気まずくなった。
しかし、周りの人間は怯えていた。
特に、イゾルテは怯えていた。
アルフレッドが生きていた。
嬉しいことだ。
だというのに、オルステッドに殺されるかも知れない。
それは嫌だ。
肺を痛めて、言葉を喋るのも辛い。
だから無言で、アルフレッドの服を引っ張った。
そうすれば何かが起こるかなど、思っていなかった。
それでも、引っ張らずにはいられなかった。
もうどこにも行って欲しくないからだ。
「…………」
そんなイゾルテを見て、アルフレッドはイゾルテの肩を抱いた。
苦しくて辛いのだろうと、察したからだ。
その原因が自分にあるとは気付いていなかったが、肩を抱けば少しは落ち着くだろうと考えていた。
そんな二人を見て、オルステッドはため息を吐いた。
「……アルフレッド。このままヒトガミに付き、俺と戦うか?それとも、ヒトガミと敵対するか。選べ」
「……選ばなきゃダメですか?中立というのは?」
「駄目だ。選べ」
オルステッドは少し苛立っていた。
アルフレッドが適当なことを言うからだ。
そもそも、真剣さが足りないと思っていたのだ。
この場に居る人間は皆、真剣だった。
だというのに、この男はどうか。
オルステッドが睨むと、アルフレッドは少し迷いながら……息を吐いた。
「……私も降伏します。オルステッド殿の下に付きます」
そうして、その日。
ルーデウス・グレイラットとアルフレッド・カールマン・ライバックの二人は龍神の配下となった。
次回、魔法都市シャリーア滞在編。