北神三世の兄-弟に勝つため本気出す-   作:ドゥンピドゥンピ

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#4 日記②

甲竜歴413年▲月◇日

アスラ王国にて、水神レイダの弟子になることに成功した。

水神流の技は俺に取って目新しいものばかりだった。

特に、水神レイダの扱う剣技は素晴らしいものだった。

技術だけならば、北神アレクサンダーにも勝るだろう。

 

まぁ、アレクには不死魔族譲りの肉体と、王竜剣カジャクトがあり、水神レイダでは勝てないだろうが。

 

人の身でありながら、アレクに勝る剣技を持つレイダを尊敬に値する。

 

そうして、水神流の門下生となった訳だが……道場近くにあるレイダの家に住まわせて貰える事となった。

宿無し金無しの俺からすれば、ありがたい話である。

 

レイダの家には、孫息子と孫娘が居た。

孫息子……兄のタントリスは剣の腕こそ平凡だが、気のいい礼儀正しい男だ。

孫娘のイゾルテだが……イゾルテは、才能溢れる少女であった。

兄より優れた妹、という訳だ。

 

……なんとも、ウチの家に似た家族だと思う。

 

平凡な兄と、優れた弟……こちらは妹か。

英雄である父、祖母……。

 

何となく、兄のタントリスとは仲良く出来そうだ。

 

しかし、問題は妹のイゾルテである。

歳は十と聞いた。

気の難しい年頃だ。

 

だからなのか、俺に対して当たりがキツい。

真正面から悪口を言ったりする訳ではないが、心を許されていないのだと態度の節々から感じる。

 

住まわせて貰っている身。

同居人とは仲良くしたいのだが……いや、仲良くする必要はないか。

 

この身は不死魔族である。

寿命は彼等よりはるかに長い。

事実、老婆である水神レイダより俺の方が歳上なぐらいだ。

 

であれば、仲良くなれば……別れが悲しくなるだけだ。

必要以上に仲良くなるべきではないだろう。

 

うむ。

 

かといって、嫌われたい訳ではないのだが。

困ったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲竜歴413年▲月◇日

 

道場の剣士達から見れば、俺は外様である。

侮るような目で見られる事も多い。

 

北神二世の息子であると言えば、敬ってくれるのかも知れないが……父の威光で威張るような真似はしたくない。

 

まぁ、侮られた所で実害はない。

見て見ぬフリをしよう。

 

 

 

最近は水神レイダの指示により、イゾルテと手合わせをする事が多い。

かといって、そのまま戦えば、俺とイゾルテでは腕の差があり過ぎる。

それでは鍛錬にはならない。

 

よって、俺は水神流の剣技のみで戦うようにレイダに言われた。

縛りプレイという奴だ。

 

となると、イゾルテに一日の長がある。

良い勝負……どころか、俺の方が負け越している。

俺が勝った試合は水神流の練度が原因ではなく、ただ身体能力で勝っただけの試合だ。

実質的な敗北である。

 

道は遠い。

 

そして、試合の様子を門下生達は見ている。

俺がぎこちない水神流を扱っている事からも、彼等は侮っているのだろう。

 

北神流の道場でも思ったが、剣士というのは初心者に厳しい奴が多い。

格下認定した相手にはどんな態度を取っても良いと考えている。

 

腹が立たないといえば嘘になる。

しかし、こちらは教わっている身だ。

大人しく受け入れて、鍛錬を続ける。

 

しかし、イゾルテは不快そうだ。

彼女はいつも笑顔を浮かべているが、俺と相対している時は内心イラついているように見える。

 

何が彼女を苛立たせているのか。

俺には分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲竜歴413年▲月◇日

 

イゾルテはミリス教徒である。

休みの日は教会に行く事もある。

 

俺は行かない。

だって、不死魔族の血を引いているし。

 

ミリス教は昔、魔族排斥主義が主流だった。

今は魔族迎合派もいるらしいが、不死魔族の血を引いているというだけでトラブルの種だ。

まぁ、俺の見た目は人間そのものなのだが。

 

しかし、イゾルテが俺に厳しいのもミリス教徒だからか?

彼女は魔族排斥主義者なのだろうか?

 

そう思って一度聞いてみたが──

「何を聞きたいのですか?私は別に魔族排斥派ではありませんよ」

と返されてしまった。

 

つまるところ、彼女が俺を嫌う理由は教義ではなく、俺自身に対する嫌悪感かららしい。

ううむ。

 

必要以上に仲良くしたいとは思わないのだが、こうも嫌われていては息が詰まる。

何か悪いのだろうか?

直せるのなら直したいが、どう直せば良いか分からない。

 

こんな事なら、父から女の侍らせ方を教えて貰うべきだったか。

実際、父は妻を沢山娶っていた。

対して俺は女性経験が無い。

女性に対するコミュニケーションは上級どころか、低級だろう。

 

ああ、父は今、何処にいるのだろうか。

あの鬱陶しさが懐かしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲竜歴413年▲月◇日

 

道場に来て三ヶ月。

水神流についての理解も深まってきた。

完璧ではないだろうが、『流』も使えるようになってきた。

水神レイダからも、水神流上級剣士を名乗っても良いとお墨付きを頂いた。

 

イゾルテとの鍛錬も気合が入るというもの。

しかして、イゾルテとの稽古の勝率は大して向上していなかった。

 

それは何故か?

単純な話だ。

 

イゾルテも強くなっているからだ。

俺が強くなると同時に、彼女も強くなる。

だとすれば、力の差は埋まらない。

 

良い稽古相手だ。

 

この道場にはイゾルテ以上の剣士は居る。

水帝や水王級の剣士達だ。

 

だがそれでも、レイダは孫娘であるイゾルテと打ち合わせるよう指示してくる。

きっと、俺の存在がイゾルテの良い鍛錬になると思われているのだろう。

 

利用されている。

そうは思うが、不快ではない。

 

互いに身になっているのだ。

不平不満などある訳がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲竜歴413年▲月◇日

 

イゾルテが帰って来ない。

レイダは不在だ。

タントリスに頼まれ、探しに行く事とする。

 

 

 

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