北神三世の兄-弟に勝つため本気出す-   作:ドゥンピドゥンピ

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#5 イゾルテ・クルーエル

最近、厄介な居候が家に住み着いている。

そう、イゾルテは思っていた。

 

アルフレッド・カールマン・ライバック。

曰く、北神カールマンの孫。

曰く、北帝剣士。

 

地位も、力もある。

尊敬する祖母、水神レイダと打ち合える数少ない剣士。

 

だというのに、随分と卑屈な男だとイゾルテは思っていた。

 

兄弟子達に侮られても、気にする様子はない。

格下である筈の自分に水神流縛りの稽古で負けても、気にする様子がない。

 

プライドなど、無いのだろうか。

イゾルテはこの男のことを訝しんでいた。

 

家でもそうだ。

自ら進んで家事をする。

料理、洗濯、掃除……居候だからと家事に励む。

 

勝手に下着を洗われた際には、苦言を呈した。

乙女の下着を触るなど、どういうつもりかと。

 

対して、アルフレッドは申し訳なさそうにするだけだった。

 

 

「いや、すみません。イゾルテ殿……以後、気を付けます」

 

 

それだけだ。

恥じらう様子もなく、ただ申し訳なさそうにするだけ。

勝手に意識しているのが自分だけのように感じて、腹が立った。

 

イゾルテはまた、アルフレッドのことが嫌いになった。

 

 

 

 

兄と仲が良いのも腹が立つ。

 

一度、会話を盗み聞きした事がある。

曰く、似たもの同士だとか。

アルフレッドには優秀な弟がいるらしく、兄も同じだろうと話していた。

 

そんなわけない。

兄とアルフレッドは、似ていない。

責任感がある誠実な兄と、軽薄で卑屈なアルフレッドは似ていない。

 

イゾルテはまた、アルフレッドのことを嫌いになった。

 

 

 

 

アルフレッドのやること、なすこと。

イゾルテは全てに苛立っていた。

 

自分の敬愛する祖母に、一目置かれているのが苛立つ。

親愛なる兄と、仲が良さそうにしているのが苛立つ。

誰かに負けても、気にする素振りがないのも苛立つ。

そんな奴に、勝てない自分に苛立つ。

 

イゾルテはアルフレッドが嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の事だった。

教会から帰る中、背後を襲われた。

 

毒を付与した武器による一撃。

それはイゾルテの意識を昏倒させた。

 

そうして目を覚ませば……どこかの倉庫に縛られていた。

 

 

「おいおい、こいつ水神の孫娘じゃねぇか。なんでこんなの連れてきたんだよ」

 

「だ、だってよ、兄貴。仕方ねぇだろ?知らなかったんだから」

 

 

彼等は人攫いであった。

しかし、ただの人攫いとは思えなかった。

 

イゾルテは水神流の聖級剣士であるにも関わらず、不意打ちを受けた。

その事実は重い。

 

 

「……あなた、達は……」

 

「おっと……ちょっと静かにしておいてくれよ。嬢ちゃんをどうするか、今相談中なんだ」

 

 

彼等の会話を聞けば……元々は変態貴族に売ろうとしていたらしい。

だが、イゾルテが剣士であることに加えて、水神レイダの孫娘である事実に困っているらしい。

 

 

「素直に帰した所で、はいそうですかとはならんだろ。返す必要あるか?」

 

「だよな」

 

「ここは剣を握れないよう手足の腱を切って、売っぱらうべきだぜ」

 

「まぁ、結局、バレたら報復されるしな……さっさと処分して、こことはおさらばすべきだな」

 

 

人攫い達の会話に、イゾルテは身の毛もよだつ思いだった。

悪人対する憤り、不快感……そして、自分を待ち受けるであろう未来への恐怖。

 

どう切り抜けるべきか。

悩み、イゾルテは口を開いた。

 

 

「私に何かあれば、お師匠様が黙っていません!今すぐ解放して──

 

「うるせえな」

 

「うぐっ」

 

 

最後まで言葉は喋られなかった。

人攫いに顔面を蹴られたからだ。

 

鼻が折れて、血が垂れた。

 

 

「おいおい、傷物にはするなよ。高く売れなくなるぜ」

 

「こいつは剣士なんだろ?反抗心は折るに限る」

 

「剣を持てなきゃ、ちょっと強いだけの小娘だろ。そう怯えなくていい」

 

 

なんてことを言い、人攫いの一人がイゾルテを見下ろした。

 

 

「まぁ、安心しろよ。変態貴族の下でも従順にしてりゃ、いつかは帰れるだろ。何年後になるかは知ったこっちゃねぇが」

 

「……っ!」

 

 

イゾルテは恐怖した。

 

アスラ王国の貴族には良い噂がなかった。

元々王国の剣術指南役をしていたレイダも言っていた。

あそこの貴族は変態ばかりで、私欲と性欲を満たすためなら何でもすると。

 

他人事のように聞いていた。

だが、それが自分の身に降り掛かるとすれば……他人事ではない。

 

 

(助けて、おばあちゃん……!)

 

 

信頼する、敬愛する師匠に、祖母に助けを求める。

声は出せない。

刺激すれば、先程と同じような結末になるからだ。

 

 

(助けて……!)

 

 

すくんで、怯えて。

太ももに熱い何かが垂れた。

 

失禁したのだと、そう理解した。

だが、取り繕う余裕はなかった。

 

 

(助けて……)

 

 

奥歯を噛み締めて、目を強く瞑る。

涙を溢しながら、助けを心の中で呼べば──

 

 

 

倉庫の扉が、蹴り飛ばされた。

 

 

「なんだっ!?」

 

 

蝶番が壊れた扉が、倉庫の床を滑る。

火花が散る中、男が一人、倉庫へと足を踏み入れた。

 

 

「っと……声が聞こえてみれば……やはり、ここでしたか」

 

 

イゾルテは見た。

そこに居たのは、嫌いな同居人……アルフレッドだった。

 

 

「何者だ、お前……」

 

 

人攫いの一人が剣を握って立ち上がった。

剣は……不可思議な形をしている。

剣身は細いが、先端だけ厚い。

 

間違いなく、魔剣だった。

 

不意打ちとはいえ、イゾルテを打ちのめした剣士。

であれば……聖級以上は確実である。

 

そんな剣士が二人。

同格かは分からないが、間違いなく強者である。

アスラ貴族お抱えの人攫いなのだろう。

 

並の剣士ではない。

 

そんな二人をアルフレッドは交互に見てから……イゾルテを一瞥した。

 

 

「助けに来ましたよ、イゾルテ殿。もう安心です」

 

 

また、危機感のない笑顔を浮かべていた。

剣士二人に囲まれて……鼻から血を出して、失禁したイゾルテを前にして……大した事がないかのような笑みを浮かべている。

心配すらしていない。

 

だが、それでも……イゾルテは、その笑顔にこそ安心した。

この男ならば、何とかしてくれるとそう確信したからだ。

 

 

「お前、俺達が見えないのか?」

 

「自惚れてんのか。自信を持ちすぎると早死にするぜ」

 

 

人攫いの剣から、液体が垂れている。

恐らく、あの魔剣は毒を分泌するのだろう。

イゾルテはそう分析していた。

 

しかして、アルフレッドは人攫いに視線を戻した。

 

 

「いやいや、これは自信じゃないですよ」

 

「……なら、虚勢か?」

 

 

人攫いの言葉に、アルフレッドが剣を抜いた。

 

 

「ただの余裕です」

 

 

その言葉に、人攫いも剣を構えた。

 

 

「やっぱ舐めてんだろ。俺達は北聖、毒バチのグルト──

 

「君達、北神流なのか?」

 

 

突然、アルフレッドの顔から笑みが消えた。

 

イゾルテは驚いた。

水神レイダを前にしても、格下である自分に負けても、門下生に侮るような言葉を掛けられても……崩さなかった笑みが、消えたのだ。

 

 

「それが何だって言うんだ?」

 

「いや……嘆かわしいと思ってね。栄えある北神流の使い手が、ここまで堕落しているとは」

 

 

いつもと口調すら違う。

目付きは真剣で、あの腹が立つ薄ら笑いもない。

 

これが彼の素なのかと、イゾルテは震えた。

 

 

「何を言ってんだ?北神流だからこそ、だろうが。誇りなんて知ったこっちゃねぇ。勝つ事が全てなんだよ」

 

「兄貴の言う通りだぜ。自分さえよけりゃ良いんだ。他人がどうなろうと知ったこっちゃない。それが北神流の──

 

「違う」

 

 

その否定の一声に、全てが静寂に染まった。

アルフレッドから放たれた威圧感と、怒気に空気が静まり返ったのだ。

 

 

「北神流は、弱者のための剣だ。弱者が強者に争うための剣だ。人間が不死者に勝つための剣だ。如何なる手段を取ってしても、守るべきものの為に振るう剣だ」

 

 

それは、そうあるべしという心構えのように聞こえた。

自信に満ち溢れた声だった。

 

イゾルテは驚いていた。

あの軽薄で卑屈なアルフレッドが……こうも、確信を持って話すことに驚いたのだ。

 

 

「……イカれてんのか?それとも理想主義者か?」

 

「兄貴。どっちにせよ、やる事は変わんねぇよ」

 

 

しかし、人攫いに響く事はない。

彼等は剣を構えて、アルフレッドへ一歩踏み込んだ。

 

 

「仕方ない……では、実力行使としよう」

 

 

瞬間、アルフレッドも踏み込んだ。

その直後、手首が二つ、宙に飛んだ。

 

 

「あ?」

 

「は?」

 

 

それは一瞬だった。

二人の人攫いの手が、剣を握ったまま……宙を飛んだのだ。

 

 

「……あっ」

 

 

一歩離れたイゾルテにも、見えなかった。

当人達に見える訳がなかった。

 

過程は見えなかった。

ただ結果として、二つの手首と鮮血が……宙を舞っていたのだ。

 

 

「北神流奥義……『二重琳斬』」

 

 

ぽつりとアルフレッドが呟いた言葉から、それが技の名前だと分かった。

しかし、何をしたのかは分からなかった。

 

二つの剣を抜いて、目に見えない速度で手首を切り飛ばした。

それしか分からなかった。

 

 

「あ、だっ!?」

 

「う、腕が!俺の腕が!?」

 

 

遅れて、人攫い達が自分の状況に気付いた。

流れる血を止めようともう片方の手で抑え、蹲った。

 

 

「君達に北神流を名乗る資格はない。二度と剣を握れぬよう、手首を落とさせて貰った」

 

 

しかし、治癒魔術があれば切断された腕も治る筈。

そう考えたイゾルテは、切断された手首へと目を向けたが……。

 

 

「……っ!?」

 

 

切断された手首は、溶け始めていた。

どろどろに溶けて、原型を留めていなかった。

 

それは技の効果なのか。

それともアルフレッドの持つ魔剣の効果なのか。

 

イゾルテには分からなかった。

 

 

「さて、これで分かったろう。君達は勝てない。同門のよしみだ……大人しく、お縄につくのならば殺しはしない」

 

 

アルフレッドの言葉に、人攫い達は目を見開いた。

アスラ王国での人攫い……それも水神の孫娘を。

どうせ捕まれば死罪は免れない。

その事実にアルフレッドは気付いていないのか。

 

 

「ちっ!」

 

 

咄嗟に、人攫いの一人が残った腕で剣を握った。

そして、イゾルテの元へと駆け寄った。

 

 

「動くんじゃない!次に何かしたら、この娘を殺すぞ!」

 

 

イゾルテを人質に取ったのだ。

兄貴と呼ばれた方だったか、毒の魔剣をイゾルテの首元へと押しつけていた。

 

 

「……ふむ」

 

 

しかし、アルフレッドに心配する様子はなかった。

その仕草にイゾルテは苛立ったが……しかし、安堵もした。

この男ならば、何とかしてくれると思ったからだ。

 

 

「なんだ、何してやがる!早く剣を捨てやがれ!」

 

「そうだね。分かったよ、今、捨てるよ」

 

 

困ったような顔で、そう口にして。

アルフレッドは剣を下げて。

 

 

「そら」

 

 

直後、人攫いの頭に剣が突き刺さっていた。

 

 

「あがっ」

 

 

追い詰められた北神流は剣を投げる。

そんな話を、イゾルテは祖母から聞いた事があった。

しかし、見るのは初めてだった。

 

 

「あ、兄貴!?」

 

「こら動くんじゃない。動いたら、斬らなきゃならないだろう。これ以上、人殺しをさせないでくれ」

 

 

イゾルテの前で、頭に剣が突き刺さった男が……倒れた。

 

 

「ひっ」

 

 

思わず、悲鳴をあげてしまった。

人が死ぬ所を、殺される所を見るのは初めてだった。

 

こんなにも容易く、人が死ぬのだ。

まだ若いイゾルテにとっては、衝撃的な光景だった。

 

 

「さてと……」

 

 

そうして、一人を殺し、一人を制圧したアルフレッドはイゾルテへと歩み寄った。

背筋が凍るような中……アルフレッドが口を開いた。

 

 

「危ない所でしたね、イゾルテ殿。助けに来ましたよ」

 

 

真剣な表情ではなく、あの軽薄そうな笑みに戻っていた。

 

陰惨な光景、先程までの態度……普段とは違う、それでもいつもと同じ表情。

イゾルテは緊張していた息を、吐き出した。

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

そして、礼を口にした。

恩は恩である。

 

その辺りの分別はイゾルテにもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、現場に騎士が到着して……生きていた人攫いは拘束された。

事情聴取は受けたが、被害者であるイゾルテが水神レイダの孫娘であることを受けて、すぐに解放された。

アルフレッドが人を殺した件についても、正当防衛として認められたのだ。

それもこれも、騎士が水神レイダから剣術指南を受けていたからこその恩返しなのだが。

 

 

「では、帰りますか。イゾルテ殿」

 

 

人を殺したというのに、アルフレッドは気にする素振りはなかった。

対するイゾルテは……。

 

 

「……その、すみません。立てなくて」

 

 

腰が抜けていた。

騎士により応急処置として治癒魔術はかけて貰った。

だとしても、心の傷は治らない。

 

それは、恐怖心と安堵からくるものだった。

人攫いに会ったという恐怖心、そして、そこから解放されたという安堵だ。

 

膝が笑って、立てずに居た。

 

 

「では、私が支えましょう」

 

「え、ちょっ……と!」

 

 

返事するより早く、イゾルテはアルフレッドによって抱き上げられた。

お姫様抱っこ、と呼ばれる形だ。

しかし、ロマンチックのカケラも無かった。

 

 

「なんですか?イゾルテ殿」

 

「き、汚くないですか……?」

 

 

男の右腕はイゾルテの腰……というより、尻に当たっている。

そして、イゾルテは先程、失禁していた。

濡れているのだ。

 

 

「いえ?気にしていませんよ」

 

 

しかし、気にする素振りはない。

 

 

「わ、私が気にするんです……!」

 

 

イゾルテはアルフレッドを睨み付けた。

しかし、アルフレッドは困ったような顔をするだけだった。

 

釈然としない。

 

人混みから外れて、裏通りを歩いている。

街の人間にこの状況を見られないよう、人混みを避けてくれているのだろう。

気遣いを、イゾルテは感じていた。

 

しかし、気まずい。

こうして抱き抱えられているのが、気まずかった。

 

その恥ずかしさを誤魔化すべく……イゾルテは気になっていたことを口にした。

 

 

「しかし、アルフレッドさん……先程はいつもと違う様子に見えたのですが」

 

「いつもと違う……?」

 

「はい……どうにも、口調も違いましたし」

 

「ああ、なるほど。それはそうですよ。嫌いな相手を敬う必要はありませんからね」

 

 

アルフレッドの言葉に、イゾルテは眉を顰めた。

 

 

「敬う、ですか……アルフレッドさんは、私達を敬っているのですか?」

 

「当然でしょう。お世話になっているのですから」

 

 

距離感を感じる敬語だ。

それをイゾルテは面白くないと感じていた。

 

 

「なら……今日、助けてくれたのですから……少なくとも、私とは対等ではないですか?」

 

「そうですか?」

 

「はい。ですから、敬語は辞めて頂きたいです」

 

 

イゾルテの言葉に、アルフレッドは……変な顔をした。

困ったような、ショックを受けたような顔だ。

 

 

「何故?」

 

「その敬語が変だからです」

 

「変ですか?人間語は得意なつもりですが……」

 

「文法などではありません。貴方の話し方からは距離感を感じるんです」

 

 

続くイゾルテの言葉に、アルフレッドはまた変な顔をした。

図星を突かれたような、それでいて困った顔だ。

 

 

「……だとしても、構わないですよね?イゾルテ殿も、私と仲良くなりたい訳ではないでしょう?」

 

 

その言葉に、今度はイゾルテが口を閉じた。

自分はアルフレッドと仲良くなりたかったのだろうか。

いや、そんな訳はないだろう。

軽薄で、卑屈で、胡散臭い……それでいて他人に優しく、思いやりのある男だ。

嫌いだ……だけど、本当は嫌いじゃない。

剣の腕を、尊敬している。

助けてくれた恩を感じている。

 

思い返せば、嫌う理由などなかった。

ただ、意固地になっていただけだ。

 

そう思えば……イゾルテの中にあった、アルフレッドに対する嫌悪感は霧散していた。

 

 

「いいえ、私は……アルフレッドさんと、仲良くなりたい……です」

 

 

だから、心の底から……想いを口にした。

 

 

「…………」

 

 

そんなイゾルテの言葉に、アルフレッドは固まった。

足すら止めてしまった。

 

 

「……そんなに変ですか?この敬語」

 

「変というか、気持ち悪いです」

 

「……き、気持ち悪い……?」

 

「はい」

 

 

悩むような仕草の後……観念したような顔で、ため息を吐いた。

 

 

「はぁ……分かった、イゾルテ殿。今後は畏まった喋り方をしないようにするよ」

 

 

軽薄な笑みもなく、アルフレッドはそう口にした。

引いた視線ではなく、こちらを見据えた目だ。

 

穏やかながら、真剣な表情に……イゾルテは顔が熱くなっていくのを感じた。

 

アルフレッドは美形だ。

北神と不死魔王の血を引く、整った目鼻立ちをしている。

筋肉質で色白で……艶やかな黒髪と、赤い目を持っている。

女子に聞けば、100人が100人、美形と答えるだろう。

 

 

「そ、そうですね……そっちの方がいいですよ」

 

 

対して、イゾルテは面食いだった。

自覚はなく、理想の男性は心優しく自分を愛してくれる人だと言っていた。

だが、面食いだった。

容姿の整った男が好きだった。

 

今まではアルフレッド憎しというフィルター越しに見ていた。

しかし今、そのフィルターは無い。

 

 

「……………」

 

「イゾルテ殿?」

 

「い、いえ……何でもありません」

 

 

自分の心臓が高鳴っているのを、イゾルテは感じ取っていた。

 

 

 

 

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