超嬉しかったです!なのでちょっと頑張って投稿!
vsペストです!
それは火龍誕生祭のメインギフトゲーム・"造物主の決闘"の決勝戦後のことだった。
始めに気付いたのは十六夜。
観戦していたバルコニーから彼が見ていたのは、ゲームの舞台である闘技場ではなく、遥か上空。
「………白夜叉、
「何?」
上空から、雨のようにばら撒かれる黒い封書。笛を吹く道化師の印が入った封蝋が為されたそれ。
「黒く輝く"
黒ウサギはすかさず手に取って開ける。
『ギフトゲーム名 "The PIED PIPER
of HAMELIN"
プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。
プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・太陽の運行者・星霊 白夜叉。
ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服・及び殺害。
プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスターを打倒。
二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
"グリムグリモワール・ハーメルン" 印』
*
ーー境界壁・上空2000m地点。
遥か上空に佇む四つの人影。
「ーーギフトゲームを始めるわ。貴方達は手筈通り御願い」
「おう、邪魔する奴は?」
「殺していいよ」
「「イエス、マイマスター」」
魔王のギフトゲームが始まった。
*
変化は"ノーネーム"を含めた面々が観戦していた、本陣営のバルコニーで起きた。
突如として白夜叉の全身を、黒い風が球体状に包み込んだのだ。
「な、何ッ⁉︎」
「白夜叉ッ⁉︎」
その風は加速度的に勢いを増していき、最終的には白夜叉以外の全ての人間を一斉にバルコニーから押し出した。
"ノーネーム"一同は舞台側へ。
"サラマンドラ"一同は観客席へ。
舞台側に飛ばされた面々は黒ウサギの元へと集合し、状況を確認する。真っ先に尋ねたのは最も重要なことだった。
「魔王が現れた。………そういうことでいいんだな?」
「はい」
黒ウサギは真剣な表情で頷くと、その場の殆どのメンバーに緊張が走る。
阿鼻叫喚渦巻く会場。
蜘蛛の子散らすが如く、観客席は大混乱に陥っていた。
「ねぇ見て! あれ!」
耀が指差す先には、境界壁の上から降りてくる人影が四つ。
「あれが魔王様なのかな?」
「あぁ、そうだろうな」
十六夜は彼等を見るや否や瞳を輝かせる。その様は新しい玩具を手に入れた子供のような表情だ。
「遂に御出でなすったか」
「黒ウサギはサンドラ様を探しに行きます。その間に十六夜さんと咲さんとレティシア様で、魔王に備えて下さい」
「はーい」
咲は未だ緊張感のない返事をしている。しかしこれからのことに対して何一つ思うことがないわけではなく、少し悩んでいたことがあった。
「相手は飛べるのかぁ。このままじゃ分が悪いかな」
「なんだよ、咲。やめるのか?」
「冗談♪」
咲は十六夜の心配を一笑に付す。
そして、箱庭ではまだ見せていない新たなギフトを展開する。
「"
咲の身体を、純白の光が包み込んだ。その光の中で、瞬く間に咲の姿が変わっていく。
徐々にその輝きが薄れていき、やがて完全に光を失ったころには、咲の姿は一変していた。
衣装は元の制服ではなく、純白のドレスに。
髪には紅いカチューシャ。
頭上に浮かぶのは、幾何学的な模様を描き廻る光輪。
背には黄金色に淡く輝く三対六枚の翼。
背後から包みように靡くのは鮮やかな紅の羽衣。
手に持つは天使の羽根飾りが施されたスピア。
神々しい輝きを纏うその姿は、正に天使だった。
「おいおい、なんだよそれ」
「恥ずかしいんだよね、これ」
「強ければ俺は何でもいいがな」
準備は完了した。
十六夜は両拳を強く叩き、咲とレティシアに叫ぶ。
「んじゃいくか! 黒い奴と白い奴は俺がやる!」
「それじゃ私は、白黒の斑模様のワンピース着た女の子を。レティシアちゃんはあの大きいのをお願い!」
「了解した
各自自身が対応する敵対目標を決め、十六夜は音速を超える速さで跳び、咲とレティシアも同等の速度で飛翔した。
*
「ーー先勝」
「ーー⁉︎」
速度を維持したまま咲は、斑模様の少女の目の前に転移した。相手がどんな実力者であろうと先手を取れるギフトを用いての先制攻撃。
「はぁっ!」
手にしていたスピアの、疾風の如き一刺しで少女の胸を貫く。
「あれ?」
しかし、返ってきた感触はまるで鋼にでも打ち付けたかのような硬質なもの。驚くべきことに、咲の突き出したスピアの尖端は貫くどころか真面に刺さってもいなかった。
(なら!)
勢いを利用した突撃で、少女を境界壁へと叩き付ける。巨大な亀裂を作ったが、ダメージが与えられているとは到底思えない。咲は一度距離をとって様子を見ることにした。
「生きてる?」
「生きてるわ」
抑揚のない声が返ってきた。予想通り先程の一撃は苦にもなってないようで、少女は薄い微笑すら浮かべている。
「挨拶もなしに失礼じゃない? とても痛かったわ」
「えっ? そういうのっているの? てっきり魔王っていうのは悪者だから、様式美とかないんだと思ってた」
「失礼ね。魔王とはいえこちらはホストよ。プレイヤーをもてなすのは当然のことだわ」
全プレイヤーの殺害などというスプラッタな内容の"契約書類"をばら撒いた魔王とは思えない発言だった。きっと魔王なりの『もてなす』の解釈なのだろう。何それ怖い……遠い日本の『お・も・て・な・し』とは次元も世界も違い過ぎる。
「それじゃ私から自己紹介する?」
「いいえ、ここはホストである私からするわ。私のギフトネームは"
「うん、別に構わないよ。私の名前は宮永咲。所属は"ノーネーム"だよ」
コミュニティの名前を聞いたペストは、大層意外そうに瞳を見開いた。
「"
「うん。その反応だと、やっぱり"ノーネーム"ってのはよっぽどなんだね。流石に慣れてきたよ」
蔑称で呼ばれたにも関わらず、咲は全く気にした様子を見せない。事実、全く気にしていない。箱庭の外から来た咲からすると、コミュニティの名や旗などは関心を持つに値しないのだ。
「勿体無いわね。貴方、私の仲間にならない? きっと貴方も楽しめると思うわ」
「うーん。そっちもそっちで魅力的だけど、今はいいかな。折角出来た友達もいるからね」
「そう、残念だわ。ーーそれなら」
少女はその手から、生物的に蠢く不気味な黒い風を発生させる。
「力ずくで屈服させてあげる」
「その言葉、そっくりそのままお返しするよ」
黒い魔王と白い天使が激突した。
*
「………す、凄いな。あれが咲の実力なのか?」
陶器のような材質で造られた巨兵の相手をしていたレティシアだったが、その目は同士の一人である咲へと向けられていた。
白と黒が入り乱れる超高速戦闘。互いが光かと見紛うような速度で飛翔し続けながら肉薄し合う。魔王相手だというのに、咲は全く引けを取っていない。
(しかし相手は魔王。いくら速度に対応出来たところで決定打に欠けては倒せない……!)
ギフトカードから取り出した長柄の槍で、レティシアは目の前の巨兵を貫く。身体の機能を維持することが不可能になったのか、その巨兵は粉々に砕けていき土へと還っていった。
倒せたことに一安心するが、純血のヴァンパイアとはいえ神格すら失った自分程度が倒せる相手だ。恐らく雑兵程度のただの駒だろう。
レティシアは全体の戦況を確認する。
十六夜が相手取っている黒い軍服の男は、それなりの実力者であることが伺えるが十六夜相手には分が悪そうだ。こちらは時間の問題で、助太刀する必要すらなく十六夜が勝利を収めるだろう。
もう一人いたはずの白装束の女は見失っているため、レティシアには何処にいるのか分からない。
最後に斑模様の少女を見るが、その戦闘能力の高さからレティシアは改めて確信する。彼女が魔王だと。
(しかしどうする……。私程度では確実に足手纏いだ)
昔と違い今のレティシアは圧倒的に弱い。あの二人の闘いに混ざれる自信も力もなかった。
「仕方ない。魔王は咲に任せて、私は飛鳥たちを探そう」
仲間を援護すら出来ない自身の力不足に歯噛みするが、無い物ねだりをしても無益である。
(無理は禁物だぞ、
咲の身を案じながら、レティシアはその場を移動していった。
*
「ーー赤口」
咲は空間一杯に炎で構成された数多の武器を出現させ、
「
一斉射出する。斑模様の少女目掛けて殺到していくが、彼女は球体状に黒い風を纏って全てを弾き返す。傷を付けるどころか、防御すら突破出来ない。
「無駄よ。その程度では私には届かない」
無造作に腕を振る。すると纏っていた黒く不気味な風が衝撃波となって咲を襲ってきた。思わぬ一撃だったため咲はそれを回避することが出来ず、上空へと打ち上げられる。
空中で体制を整えるが、それなりのダメージがあったようで軽く吐血した。傷自体は浅かったので大事ないが、咲が本気になるには充分だった。
「私を……怒らせたね」
「何のことかしら? それに、貴方程度が怒ったところで、私は怖くないわ」
少女は余裕そうな態度を崩しもしない。本心からそう言っているのが分かり、咲はその生意気な鼻っ面を叩き折ることに決めた。
「開門」
現れたのは五つの大口径魔法陣。
その一つ一つに、仄かに黄金色に輝く純白のエネルギーが集束していく。
ただの一つでも絶大なる威力を発揮するであろう砲門が五つ。
(ーー喰らえ)
「《五門壊砲》‼︎!」
「ッ⁉︎」
眩い輝きが一斉に放射された。
黒を塗り潰す壮絶な白の煌めきは、少女を完璧に覆い尽くす。その威力は余波だけで大気を振動させる程であった。
(……どうかな?)
確実に直撃した。手応えも充分。
今までの攻撃とは一線を画す破壊力を有したその光線は。
「ーー今のは少し驚いたわ」
それでも、魔王を打倒するには至らなかった。
晴れた視界の先には、何事も無く佇む彼女の姿が。微かに服が破れて傷を負っているところを見ると、防御を突破すること自体は出来たらしい。しかしそれも瞬時に再生されては何の意味もない。《五門壊砲》による、実質的なダメージはゼロであるようだ。
「あらら〜。これでもダメかぁ」
表情には落胆した様子を見せていない咲だったが、実はちょっとだけショックを受けていた。
(今のは私が持つギフトでも上位の攻撃だったんだけどなー。無極点使わなくてもあと何門かは追加出来るけど、中途半端な威力じゃ焼け石に水っぽいし。これが効かないとなると、あとは風を纏うギフトを連発するか、
侮っていた訳ではないが、魔王というのがここまで強いとは。所持しているギフトは多種多様な咲だが、魔王を打倒出来る程のものとなると数える程しかなかった。
仕切り直してさて如何しようかと悩んでいたその時ーー激しい雷鳴が鳴り響いた。
「そこまでです!」
会場全域に聞こえるよう高らかに宣言するのは、"
「"
(…………………?)
咲には分からない専門用語が多過ぎて、黒ウサギが何を言っているのか理解出来なかった。唯一咲でも分かったのは、交戦を中止するということだけだ。
他のことは何が何だかさっぱりだったので、小首を傾げて目の前の少女に聞いてみる。
「………えーと、つまりどういうことなの?」
「貴方、それを私に聞くのね……」
箱庭の常識に疎い咲は、敵である魔王に状況を簡単に解説してもらうのであった。
*
審議決議。
"
これだけならば"
「要するに、ギフトゲームの仕切り直しでしょ?」
「大体合ってるわ」
審議決議を行う一室に向かう道中で、咲と斑模様の少女は軽く雑談していた。敵同士であるという自覚が両者ないのか、殺伐とした雰囲気はなく、むしろ比較的仲良さげに会話している。
敵から得た情報を鵜呑みにするのは本来ならあってはならないことだが、この局面で少女が咲に嘘を教えても大した意味を成さないことから、この話は本当のことだろう。咲はこの情報を真実として話を進める。
「でもさ、このギフトゲームに不備が無かったら私たちが不利じゃない?」
「その通りよ。よく分かってるじゃない」
もし咲の言う通りこのギフトゲームに不備が無いのなら、"参加者"は神聖なゲームにつまらない横槍を入れていることになるのだ。無実の疑いでゲームを中断させられている"主催者"としては、黙っていられないはずだ。何かしら不平等な条件を飲まされることになるのは想像に難くない。
「面倒な事態になってきたなー」
「面倒では済まないと思うのだけれど」
「まぁ、そこはジンくんと十六夜くんに任せて……」
そろそろ仲間の元に辿り着く。
咲は少女と別れの挨拶を交わす。
「それじゃ、またね。
「ーーッ⁉︎」
少女、ペストのその驚愕の表情を見ることが出来て、やっと咲は気分が晴れやかになった。戦闘時に溜まったストレスの発散には十分以上だ。サービスに嗜虐的な笑みを浮かべて、咲は一つだけ忠告する。
「あぁ、中途半端な時間稼ぎはおすすめしないよ。私に、私たちに、
「………どういう意味かしら?」
「言葉のままだよ。そこは自分で考えて結論を出してね。それじゃ、バイバーイ」
咲は「プラマイゼロ」と呟いて瞬間移動する。その不可思議な光景を目の当たりにして、ペストはまた驚愕に目を見開くのだった。
*
ーー境界壁・舞台区画。大祭運営本陣営、貴賓室。
交渉は順調に進んだ。
参加者側は"ノーゲーム"のリーダー・ジンという少年を中心に。時々、ジンの側に控えている金髪の男・十六夜という軽薄そうな雰囲気の青年が少年をサポートしながら。
一先ず出た結論としては、ゲーム開始は一週間後。そして、その二十四時間後に終了。終了した時点で主催者側の勝利。
これは両者にとって徳となる落とし所であった。
今後の準備や、ギフトゲームの謎解きの時間が欲しい参加者側。
優秀な人材を、黒死病で死なすことなく手に入れることが可能な主催者側。
ペストとしてもこの条件は悪くはない。だが、
(………気に入らないわ)
ペストは不快だった。全てが参加者側の目論見通りになっている。それがとても気に食わない。
不機嫌な顔を隠そうともしないペスト。このままこの条件で話を飲むことに、少なくない拒絶があった。
(………そう思えば、咲はこの場にいないのね)
ジンが率いる"ノーゲーム"の主力と思われる咲が交渉にいない。本人も十六夜とジンに任せると言っていたように、参加する気がなかったのだろう。
(あと気になったのは、黒死病が効かないというあのセリフ………)
交渉の際、ジンによってペストの正体がバレた。そのとき参加者側は驚いた反応を見せた。そして、黒死病の呪いを既に参加者の一部に潜伏させていると脅したところ、ほぼ全員が慌てた。
つまり、黒死病の脅威を十分理解しており、対処する方法などないというのが筒抜けになったのだ。ペストは参加者側の反応からそう判断した。
だが、そうすると咲の発言は奇妙である。
(咲は味方にその情報を伏せている? でも変よね。伏せる理由がないわ)
何が狙いかが正確に把握出来ない。
実はただの咲の気紛れなのだが、そんなことを知らないペストは頭を悩ませる。
(敵の言葉を信じるなんて論外なのだけれど、もし本当に黒死病が効かないのなら、参加者側に謎解きの時間を与えるだけになってしまう)
八日後が始まって二十四時間で強制終了というのは主催者側に有利な点である。しかし、当初は屈服若しくは皆殺しの予定だったのだ。自分にはその力があるし、不可能だとも思っていない。
(ここで交渉を止めるのは早計ね。………カマかけてみましょう)
ペストは表情を柔らかく一変させる。それを見た参加者側は何事かと警戒するのだが、続く言葉は想定外のものだった。
「一つ、風の噂で聞いたのだけれど、貴方達には黒死病が効かないというのは本当かしら?」
「「「「は?」」」」
疑問の声を上げたのは四人だ。ジン、黒ウサギ、サンドラ、マンドラの四人である。
しかし、参加者側でただ一人、十六夜だけがペストのその言葉にピクリとだけ反応した。ペストはそれを見逃さなかった。
「貴方、心当たりがあるようね」
「………さぁ、何のことだ?」
十六夜は咄嗟に惚けるが、自身のミスに対して舌打ちしたい気持ちで一杯だった。
(………しくじった。咲め、彼奴話したのか? 余計な事を)
幾ら咲でも懇切丁寧に説明したとは思えない。恐らくヒントでも言ったのだろうと推測する。最悪の置き土産である。
十六夜は咲に恨み言の一つや二つを言うと決めた。
ペストはペストで、十六夜の反応を見て確信していた。咲の言っていたことはブラフでは無く真実。
「………成る程、味方で把握していたのは一人だけだったのね。通りで噛み合わないはずだわ」
「おい貴様! 一体何の話をしている!」
「木偶の坊は黙っていなさい。今、貴方に用はないわ」
「なっ……!」
マンドラの抗議を一蹴する。
もう存在すら目に入れていない様子で、ペストは仲間に問う。
「ラッテン、ヴェーザー。この男と戦ったのはどっちかしら?」
「それは俺だぜ、マスター」
ヴェーザーと呼ばれた黒い軍服を着た男が答える。
「そう、なら聞くわ。貴方から見て、この男はどれほどの実力を持っているのかしら? 戦闘の面でも、知略の面でも、貴方が思った通りに教えて頂戴」
その問いに、ヴェーザーは不思議そうな顔でラッテンと呼ばれた白装束の女と目を合わせるが、彼女も意図を理解出来ていないようだ。首を傾げながら、とりあえず言ってみろと催促される。
「俺個人の意見でいいなら。恐らくだが、参加者側で最も厄介な相手のはずだ。頭も回るし強さも上々。一週間あれば、謎も解かれるかもしれねぇ」
「ではもう一つ。この男と同等以上に頭が回る参加者が居たら、謎はどのくらいで解かれると思う?」
「………下手したら二日、最悪一日ってところだな」
「そう、ありがと」
(………つまり、咲が信用を置いているのはこの男だけということなのかしら?)
ペストは咲を高く買っている。自分のことを迷いなくペストだと断定したことから、知識の面でも相当だと評価していた。戦力としては言わずもがな。しかもまだ手の内を見せ切っていないはず。それ程までに有能な咲が"ノーネーム"にいるのが驚きだが、同士を頼りにしているかと言われれば首を傾げる。
ペストはずっと気に掛かっていたことがあったのだ。咲は言った。「折角出来た友達がいる」と。普通、この場面では"仲間"だろう。互いに命を預けて助け合い、背中を任せられる者相手に"友達"という言葉は使わない。
(思考が横に逸れたわね。今こんなことはどうでもいいわ。分かったのは、何かしらの理由で黒死病が効かないということだわ)
実のところ、効かなくはないのだ。意味がないだけで。
咲のギフトを使えば、例え黒死病に感染したとしても即座に治療出来る。病原菌の存在をゼロにして。
もちろん、ペストは知らない。まぁ、効かないということさえ分かれば、詳しい事情は然程重要でもないのだ。
「なら、時間を稼ぐことに意味は無いわね。ゲーム再開は明日正午、制限時間は無し、箱庭の貴族は不参加、但し一つ条件を加えるわ」
「………何でしょうか?」
緊張した面持ちでジンが尋ねる。主催者側には有利な条件で始める権利があるのだから、警戒するのも無理はない。
そんなジンに対してペストは最大級の笑顔を浮かべて言ってみせた。
「ゲーム参加者はゲーム期間中、建物内に避難することを禁ずるわ」
「「ーーッ⁉︎」」
この発言の意図を正しく理解出来たのは十六夜とジンだけであった。
冷や汗を流した様子で、それでも軽薄な笑みを浮かべながら十六夜は問う。
「………いいのか? それだと、優秀な人材を確保出来ないぜ?」
「残念だけれど、もう構わないわ。白夜叉だけを手に入れてーー皆殺しよ」
それだけ言い残して、部屋に激しく黒い風が吹き抜ける。参加者達が顔を庇う最中に、主催者ーー"黒死斑の魔王"は消え、一枚の黒い"契約書類"だけが残った。
『ギフトゲーム名 "The PIED PIPER
of HAMELIN"
プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。
プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・太陽の運行者・星霊 白夜叉(現在非参加の為、中断時の接触禁止)。
プレイヤー側・禁止事項
・ゲーム期間中における、建物内への避難。
・休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ず。
・休止期間の自由行動範囲は、大祭本陣営より500m四方に限る。
ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服・及び殺害。
プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスターを打倒。
二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
休止期間
・明日正午までを、相互不可侵の時間として設ける。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
"グリムグリモワール・ハーメルン" 印』
ギフト説明
・さきっち…和の能力が由来。《五門壊砲》はプリズマイリヤから。
原作との相違点
・黒ウサギ、飛鳥の不参加
・ペストちゃん最初から殺る気満々
・参加者避難不可(死の風当て放題)
・謎解きは一日
てな感じでしょうか……次回、咲様超大暴れ(予定、多分、恐らく)!