個性チャクラで影分身   作:切って捨てて

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 無事、雄英体育祭を1位で勝った儂様だ!

 雄英体育祭は楽しかったでござるが、まさかそれ以降外を出れば必ず誰かに声を掛けられるでござるよ。

 外国人にも「ニンジャー! ニンジャー!」ってされたので、外人に変化して一緒に「ニンジャー!」ってしたでござる。めっちゃウケたでござる。

 そして意外にも、子供よりもおっさん連中にすっごい人気になってしまったでござる。

 あの派手じゃない感じが良いと言われたので、おっちゃん分かってるね! と返したでござる。

 そう、儂様が求める忍の戦いは柱間様ではなく扉間様でござる。

 派手さよりも実用性、見栄えよりも効率を求めているでござる。

 

「いやー。儂様大忍気になってつらいでござるなー」

 

「人気の漢字違くね?」

 

「おっと。人気者は大変でござるなー。めっちゃ声かけられたでござる」

 

 わははと峰田に自慢していると、瀬呂と切島がやって来たでござる。

 なにやら瀬呂が落ち込んでいるでござるよ。

 

「お前はいいよな。俺なんか、どんまいって言われたんだぞ……」

 

「そういえば、瀬呂はトーナメント戦で轟に一発KOされてたでござるな。うむ、どんまいにござる」

 

「チクショー! お前が言うんじゃねえトーナメント戦1位が、馬鹿にしてんじゃねえぞ!」

 

 正直、轟のアレは初見殺しもいいところでござるよ。

 飯田も、緑谷も、あれを初見で受けていたらその場で終わっていたでござる。

 

「爆豪ぐらいなら、氷漬けになっても気合で出てきそうでござるな」

 

「実際、あの初見殺し技に一番手で対応できそうなのって、A組でもほとんどいなそうだよな」

 

「オイラのモギモギじゃ破壊力ゼロだし。芦戸の酸か常闇のダークシャドウぐらいしか対応できそうにねぇ……!」

 

「氷って通電すんのかな。多分むずいよなぁ」

 

 雄英生のヒーロー科として脚光を浴びた儂様達でござるが、学校内ではいつもと変わらない日常が広がっているでござる。

 ここら辺は、やはりヒーロー科といったところでござろうか。

 しかし、儂様の目には一つの違和感が残っていたでござる。それが何かは分からぬでござるが、何か歯車がかみ合わないような違和感にござる。

 儂様の違和感が消えることはなく、相澤先生が教室に入って来たことで思考を中断したでござる。

 

「今日のヒーロー情報学は少し特殊だ」

 

 雄英高校において普通は特殊でござる。

 入学初日に個性把握テストが行われ、授業の中には個性を使った訓練があり、必要であればバスを使って移動することもあるでござるよ。

 つまり、特殊筆頭である雄英の教師があえて特殊と評したのであれば、皆の緊張もある意味経験によるものでござるな。

 

「コードネーム。つまりヒーロー名の考案だ」

 

「「「夢膨らむヤツきたあああああ!!」」」

 

 ふむ。テンションが上がる奴でござるな!

 

「……!」

 

 ギン。と個性故か普段の気だるげからは考えられない眼圧にござる。怖いでござる。

 当然。教室はシーンとするでござる。

 どうやら、雄英体育祭を踏まえてプロのヒーロー事務所から職場体験の指名が来ているとか、それに合わせてヒーロー名が必要になると。

 そして、ヒーロー指名にござるが、儂様、轟、爆豪がスリートップ。

 あとはトーナメント出場者をメインに、目立った生徒にも指名が来ている感じでござる。

 

「おい忍堂、お前トップの指名じゃねえか! オイラに少し分けろ!」

 

「ござるござる」

 

「え、それ笑ってんの?」

 

「ちょっとキャラも強くしていこうかと思っているでござる」

 

(((これ以上強くするの?)))

 

「喋り方をもう少し古風というか、江戸っ子? 歌舞伎? っぽい方向を目指すでござるよ」

 

(((色々渋滞してる……!?)))

 

 ヒーロー名は既に考えていた故、儂様個人としては悩む必要がないのでござったが、とある問題が発生したでござるよ。

 

「それじゃ、書けた人から発表してもらうわよ」

 

(((まさかの発表式!?)))

 

「ござるござる」

 

 ここは一花咲かせるしかないでござる。

 誰よりも早く一番にインパクトを、それが流れを作るコツにござる。

 すっと手を挙げる。

 

「はい、忍堂君!」

 

「忍堂! 頼むぞ!」

 

「任せるでござるよ峰田。ござるござる」

 

「すっげー不安!?」

 

 安心するといいでござるよ。峰田だけではなく、皆の固唾をのむ視線に儂様は答えるでござる!

 

「お色気ヒーロー! ハーレムマン!」

 

 分身と変化の術で体育祭の美女軍団を作るでござる。

 

「うほおおおおお! きたああああ!」

 

「どうでござる! パーペキにござるよ!」

 

 果たしてミッドナイト先生の査定は?

 

「いいわね! 私も好きよ!」

 

「勝ちにござる!」

 

 さて、相澤先生の眼光がマジで怖いのでササっと席に戻るでござるよ。

 儂様に続いた芦戸は「エイリアンクイーン」と、なんとも儂様の流れを読んだ素晴らしい回答にござる。

 むむ。なぜか皆からすっごい睨まれてるでござる。

 

「耳郎。なぜ儂様は睨まれてるでござるか」

 

「アンタが大喜利の流れを作ったからでしょ」

 

「ござる!? 皆の熱い視線は、それを望んでいたのではないのでござるか!?」

 

「ち・が・う! てか、忍堂はヒーロー名がアレで本当に良いの?」

 

 思い違いでござったか、そうでござったか。

 儂様反省!

 

「致し方なし。儂様がしっかり空気を整えてみせるでござる」

 

「うっわすっごい不安なんだけど」

 

 本命を手に再び前にでるでござるよ。

 

「あら、さっきのから変えるの?」

 

(((本気だったの先生!?)))

 

「ござる。儂様には昔から決めていた名前があるでござる」

 

 プラカードを皆に見せる。

 

「影となり守る忍ヒーロー、護影」

 

「なるほど。後ろの意味も掛けているわけね。人気商売な面を持つヒーロー業界で、光の当たる物の後ろに現れる影となって護る。そういえば貴方の技に影分身があるけど、思い入れがあるのかしら」

 

「影分身の本質は身代わり、偵察といった影に徹すること。儂様は承認を求めず、見返りを求めず、光を求めず。ただ影となり、儂様が守りたいと思ったモノを護る。この個性を手にした時に決めた、儂様の忍道にござるよ」

 

「あなた……。青臭くて最高ね!」

 

「ござるござる。でも、貰えるものは貰う主義でござるから、くれるならちゃーんと貰うでござるよ」

 

 よし。これでそれっぽい空気になったでござるな。

 

「どうでござった耳郎! 完璧に任務を遂行したでござるよ!」

 

「え、あ、あ~うん。そうだね、できればもうちょっとラフな空気が良かったかな」

 

「ござる?」

 

 おや。思っていた反応ではなかったでござるな。

 どういうことでござる? と首を傾げてたら峰田がめちゃ睨んできたでござる。

 

「急転直下過ぎんだよ! 名前に意味持たせ過ぎだ! ギャップ萌えとか狙ってんのかよ!?」

 

 ますます分からんでござる。

 しかし、次に出てきた蛙吹が「フロッピー」なるキャッチーな名前を出したことで、儂様理解したでござる。

 フロッピーのおかげで空気が良くなったのか、皆が続々と名前を公開していくでござる。

 

「爆殺王!」

 

 爆豪はちょっと方向が過激にござったが。

 皆思い思いの良い名前にござる。

 ヒーロー名決めが終わった休憩時間、峰田が儂様のところにやって来たでござる。

 

「指名数1位の忍堂はどこの事務所にするんだ?」

 

「4桁超えているゆえ、どうしても時間が掛かってしまうでござる」

 

「10人に分身して作業してんのに何言ってんだ?」

 

 ま、こういう時こそ影分身は役立つでござる。

 全部読み終えたので分身体を消してフィードバックを受けるでござる。

 

「ござるござる。決めたでござる」

 

「すげぇ。セリフの半分以上がござるだぞコイツ」

 

「なになに、忍堂行くとこ決めたんか!」

 

 瀬呂、切島、障子がやってきたでござる。

 

「ここにござる!」

 

 ☆

 

 ヒーロー職場体験当日。

 儂様はだだっ広い草原に、一人のむっきむきな女性と相まみえたでござる。

 

「よう! 来たな!」

 

「指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いするでござる。ミルコ」

 

 そう、儂様が選んだのはプロヒーローでも超武闘派として知られる、ミルコにござる。

 ここを選んだ理由はひとえに、ミルコの戦闘力にござる。

 他のヒーローが個性を使った見栄えの良い火力を出す中、近接戦闘のみで彼らと渡り合える存在は稀有でござる。

 彼女の戦闘映像を見た時は痺れたでござるよ。

 

「よっし! じゃあ早速やるか!」

 

「胸を借りるでござる!」

 

 そして性格も事前に調査済み。

 どこまでも勝気で戦うことを楽しむ。

 出会って5秒で戦闘態勢になった彼女を見れば、調べずとも分かるでござるよ。

 

「しゃっ!」

 

 ミルコの個性は兎。

 名前だけ見れば可愛らしいものでござるが、地面を抉りながら秒で最高速度に到達する姿を見れば、可愛いなんて嘘でも言えないでござるな。

 想像以上の速度に腕の防御が遅れてしまい、側頭を思いっきり蹴られてしまったでござる。

 あまりのダメージに消し飛んだ影分身のフィードバックから、チャクラコントロールをした防御でなければまず防げそうにないことが分かったでござる。

 

「あん?」

 

「ミルコを相手に初手から本体で行くには分が悪いでござるよ」

 

「体育祭んときに見せた影分身ってやつか! いいじゃねえか、全力で蹴れるなんて最高だ!」

 

「これは生身でござる。死ぬでござる」

 

 だからと言って、手加減してほしいわけではないでござるが。

 

「死地こそ儂様の求める職場体験でござるよ」

 

「いい覚悟じゃねえか! 死んだら文句聞いてやるぜ!」

 

「水遁、水鉄砲!」

 

 現時点で儂様が用意できる最高火力の攻撃。

 超高速で射出される水は銃弾のソレを凌駕し、レーザのごとく地面を削り切りながらミルコを狙う。

 

「いい火力じゃねえか! 当たったら腕の一つぐらい簡単に飛ぶな!」

 

 最小限の回避から一息にトップギアで突っ込んでくる。

 回避からの接近が早いでござるな。

 印を結ぶ時間はなし。ならば、

 

「水遁、水針の術!」

 

 口から細い水の針を射出。印を結ぶことなく扱え、チャクラ消費も少ない便利な術にござる。

 水鉄砲と威力を比べるまでもないが、木に深く刺さる程度には威力があるでござるよ。

 

「器用じゃねえか! 面白い口してんなア!」

 

 互いに手が届く間合い。

 ここからは組み手にござる。

 

「おめえ本当に学生か! 楽しませてくれるじゃねえか!」

 

 勘弁してほしいでござる。

 チャクラコントロールによる受け流しでどうにか防げているが、流石に腕が痺れるでござる。

 爆豪達は個性と運用は上手いが、格闘術に関しては素人にござった。プロのヒーローを見ていてもその毛色は変わらないが、ミルコは逆。

 圧倒的なパワーと速度を武が凶悪な代物に昇華させているでござる。

 ミルコの拳が儂様の防御の隙間を突く。

 

「身代わりの術!」

 

 近場の木と入れ替わり、距離を稼ぐ。

 

「なんだ? 殴ったと思ったら木になったぞ」

 

 なお、その木は粉々に粉砕されてしまったでござるが。

 身代わり対象を鉄球とかに変えたら少しはカウンターができるでござるな。なぜ今まで考えなかったのでござろうか。

 やはり実戦は良いでござる。勝つため、相手を倒すための思考が研ぎ澄まされていくでござる。

 

「守ってばかりじゃ勝てねえぜ! さっきみたいな技を使えよ!」

 

「儂様の攻撃札は先の二枚が上限でござる」

 

「なら手詰まりかア!?」

 

 少しの距離であればひと飛びで詰められ、ミルコの攻撃が迫る。

 確かに攻撃に特化した術は水遁の二つだけにござるが、何も火力だけが攻撃ではないでござるよ。

 

「土遁! 岩隠れの術!」

 

 地面に潜り、ミルコの両足を掴む。

 

「土遁! 土水侵の術!」

 

 そのまま土を泥に変えながら潜る。

 儂様が持つ五大性質は水と土。他はからっきしでござるが、この二つには高い適性があるでござる。

 個性がチャクラであるため、血継限界や瞳術といった遺伝からなる体質に依存する術は使えないし、八門遁甲も習得はできない。

 しかし、だからこそのメリットがいくつもある。

 その一つが、遺伝以外の才能の分野で術を扱えること。

 そして、簡易的ながらオリジナルの術の開発も、チャクラコントロール力が高ければ比較的容易に行えること。

 

 ミルコの抵抗もあって、腰より少し上までしか地面に埋めることはできなかったでござる。

 これでは数秒もあれば抜けられてしまうでござろうが、数秒で十分でござる。

 

 ミルコを埋めた影分身を消し、隠れていた木の上から降りる。

 

「影分身の術!」

 

 ミルコを囲う形で自分を含め5体。

 

「「「「「水遁! 水針の術!」」」」」

 

 5方向から水の針がミルコを襲う。

 少しでもダメージが入ってくれると嬉しいでござるが、

 

「舐めんな! 月落衝撃<ルナインパクト>!」

 

 地面が内部から爆破され、水針ともども吹き飛んでいった。

 水針に痺れ毒でも混ぜた方がいいでござるな。

 現状ミルコに勝つためには、ミルコの戦力を下げる必要があるでござるよ。

 幸い、物はあるでござる。

 ポケットから小さな巻物を出し、封印術を解き、痺れ薬の入った試験管を隠し持つ。

 

「おら! 本体出てきな!」

 

 準備している間に分身体は全て消されたでござるか。

 怖いでござるが、木の後ろから出る。

 

「また影分身だとか言わねえよな?」

 

「影分身はダメージで消えるでござるよ」

 

 苦無で腕を軽く切り、血を見せる。

 痛い。別の手段を今後は用意するでござるよ。

 

「当然、影分身に血は流れないでござる」

 

「ハッ! 覚悟を決めたツラして、誘ってんのかア!!」

 

 顔もスタイルも最高なのに、すっごいごめんこうむりたいでござる。

 振りかぶられる腕を全力で止める。

 右を止めれば左腕が振られ、それも受け止め組み合いに持ち込む。

 

「力で私に挑むってか!」

 

 腕が締め上げられミシミシと嫌な音がするでござる。

 痛みに耐え、顔をミルコの胸に向ける。

 ここならそらすなんてできないでござるよ。

 

「水遁! 水針の術!」

 

 痺れ薬を仕込んだ水針を射出。これが刺されば流石のミルコでも。

 

「何度も見りゃだいたい分かんだよ! フンッ!」

 

 うそぉ。胸筋で止めちゃったよぉ……。

 木に刺さるぐらいには威力があるはずなんですけど……。

 

「まじかよ……」

 

「マジだぜ?」

 

 最後に見たのは凶暴な笑みで迫るミルコの顔。

 前頭部を襲った強烈な一撃で意識が真っ暗になったでござる。




ミルコに小細工で勝てると思うなよ
ばっちゃが言ってた
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