個性チャクラで影分身 作:切って捨てて
禁じ手1日三話目の投稿になります
轟が緑谷達を見つけたのは偶然だった。
緑谷からの不可解な連絡を頼りに向かっている最中に、進行方向からばったり出会えただけだった。
「お前らその傷、それにプロヒーローまで・・・・・・」
急いで来て良かった。
間に合ったことに安堵する轟だが、場の空気がやけに重たいことに気がつく。
「と、轟君! 忍堂君達を一緒に止めて!」
「ござるござる。いいところに来たでござるよ轟、緑谷達を安全な場所に避難させて欲しいでござる」
「とりあえず話を聞かせろ」
緑谷から伝えられたことの流れに、轟はため息を吐いた。
別の反応を期待していた緑谷は、不安な表情を浮かべる。
「もしかして、轟君も賛成するわけじゃないよね?」
「緑谷には話したよな、俺の親父の。個性婚のこと」
「う、うん・・・・・・」
轟は自身の腕、忌むべき男の力を見つめる。
「職場体験で俺は親父の事務所を選んだ。そこで、少しはヒーローとしての親父を見てきた。色々、見えてないもんがあった。でも俺は、飯田の気持ちってのは少しでも分かるつもりだ」
「そんな・・・・・・」
「儂様別に可笑しな話はしていないでござるよ。人殺しは確かに犯罪にござるが、刑法に人殺しの罪は存在しないでござる。理由は簡単、大義名分があれば、人を殺しても良い形にしているからでござる」
理解できない。
それは轟、緑谷、そしてステインに並々ならない復讐心を抱く飯田も同じだった。
「昔の武将。彼らは総じて何十何百の人を殺したでござる。しかし、彼らは後世に英雄と評されるでござる。少し古いところはシモヘイヘが公式で500余りを殺し、白い死神と呼ばれたでござるが。彼も同じく英雄と呼ばれるでござる」
面白いでござろう。ステインの20倍以上の記録を持ちながら、銅像まで建てられているでござるよ。と、忍堂は感慨深く続けた。
「それは、戦争だから。しかたが――」
「仕方がなければ殺して良いのでござる。少なくとも、ダメだなどとは言われないでござるよ。証拠に、家に来た強盗を殺しても罪にはならないでござる」
「でも、飯田君のはそうじゃないはずだ。飯田君がヒーロー殺しを殺せば、罪になる」
「覚悟はござろう。法で裁かれても、世間では称賛されるかも知れぬでござるよ?」
ありえない。
人を私怨で殺して、バッシングではなく褒められることなんてあって良いはずがない。
しかし、忍堂は変わらない。淡々と否定を続ける。
「自身の子供を殺した罪人を、法廷で親が撃ち殺す事件が昔あったでござる。親はちゃんと逮捕されたでござるが、世間の反応はどうだったと思うでござる?」
ここまで自信満々に言うのだ。おおよそ想像は付いた。
「よくやった。彼女を無罪にしろ。正義の鉄槌だ。デモが起きるほど世間は親の味方をしたでござるよ」
忍堂が顔をズイと緑谷に近づける。
緑谷の揺れる瞳を、薄く光る瞳が射貫く。
「緑谷。なぜ飯田を止めるでござる?」
沈黙。
人一倍考えに没頭しやすい緑谷は、頭の中で自問自答を繰り返した。
友達だから? 殺しが良くないから? 罪になるから?
「緑谷君・・・・・・いいんだ、俺は既に覚悟を決めている。許せないんだ、アイツは兄を偽物と言った。人を助け導き、これから先もそうするはずだった、僕の兄を・・・・・・! 僕は、継いだんだ・・・・・・インゲニウムを!」
暗い光を放つ瞳を見せる飯田に、轟が首を傾げる。
「飯田。俺の見たことあるインゲニウムは、そんな顔してなかったと思う。お前が憧れる兄は、お前にそんな顔を継がせたのか?」
「・・・・・・っ!」
「飯田君。僕、忍堂君みたいに犯罪がどうのとか、あんまり深く考えてなくて。轟君や飯田君みたいに、ヒーローの家系じゃないし、飯田君達が背負っている物をちゃんと理解できてはいないんだと思う」
でも。そう言って顔を上げた緑谷の瞳は、揺れず真っ直ぐに飯田を見ていた。
「僕は、飯田君に人を殺して欲しくない。真面目で、皆のために行動ができて、クラス委員長で、僕の大事な友達には笑っていて欲しいんだ。僕の友達は優しい人だから、ヒーロー殺しを殺したら、もう、心からは笑えなくなると思うから」
誰かのためではない、自身のため。
悩んだ末にたどり着いた緑谷のロジックは、至極簡潔だった。
飯田の瞳に涙が浮かぶ。
夢であった兄を傷つけられ、憎しみからヒーロー殺ししか見てなかった自分を、友はこんな状況になってまで心配してくれていた。
「僕は・・・・・・僕は・・・・・・っ!」
(緑谷、お前はそうやって。俺のときみたいに、また・・・・・・)
轟の世界を変えた言葉、簡単なのに見ない振りをしていた自分を変えてくれたあのとき。
時計の針を止めていた楔を壊してくれた緑谷が、今度は飯田も助けようとしている。
なら、自分も飯田に伝えなくちゃいけない。助けられたのだから、今度は目の前の友人を助けたい。
「飯田。お前のなりたいヒーローって、なんだ?」
「僕の、俺の、なりたい。ヒーロー・・・・・・」
そんなもの、一つしかない。
ずっと、子供の頃からずっと憧れ続けてきた夢の姿。
緑谷にとってのオールマイトのように、自分が目指す、皆を助け導く最高のヒーローの姿。
「本当に、無粋でござるよ」
忍堂が場違いにも軽い声で、担架ごと飯田を突き飛ばした。
緑谷達が驚く間もなく、金属同士がぶつかる甲高い音が響く。
刃こぼれだらけの刃と、赤いマントが地面に降り立ったのだ。
「ヒーロー殺しっ!?」
「こいつが・・・・・・!」
「偽物にしては、よく気付いタ・・・・・・」
「ござるござる。偽物にすらなれない木っ端がほざくでござるよ」
挑発しながらも、忍堂は状況を把握していた。
動けるのは緑谷に轟、飯田と意識が回復してきたプロヒーローはまだ動けていない。
そして、ステインの目的は飯田だった。
「おかしいでござるな。儂様を狙うと思ったでござるが、儂様魅力ないでござる?」
「お前はいい・・・・・・。先の言動、俺の意識を逸らすためだったのだろう。その偽物を守るため・・・・・・」
「轟君気をつけて! おそらくヒーロー殺しの個性は血の摂取が発動条件だ!」
「全身に武器を仕込んでるのはそのためか」
負傷者を抱えているが、1対3と有利な状況。
忍堂に至っては影分身で頭数を増やせる。
「皆落ち着いて。僕らの方が有利だ」
「親父も数分で駆けつける、時間稼ぎするぞ」
「え、やらないのでござるか?」
負傷者は二人いるが、時間を稼ぐなら問題ない。
そう思っていたが、忍堂のまさかの言葉に緑谷が目をひんむく。
「に、忍堂君っ!?」
「儂様が殺したいわけではないでござるよ。あくまで飯田に委ねるでござる」
「俺は・・・・・・」
「無駄だ、人は変わらん。偽物が本物になることは、ない・・・・・・」
「お前に、飯田君の何が分かるって言うんだ!」
緑谷が吠える。友を馬鹿にされて黙っていられなかった。
それでも、ステインは薄く笑った。
「分かるさ。コイツだけだ。コイツだけが他者を見ず、己の欲のため力を行使する。正義とは真逆、正しき社会には不要な、腐った贋作だ。ヒーローを貶める忌むべき存在」
「くっ・・・・・・!」
「はぁ。コレだからバカは困るでござる。正義だ悪だ、正しい正しくないなんて話、犬の糞にも役に立たない話でござるよ」
ピキ。そんな音が、どこからか聞こえた。
「緑谷には丁度良い教材にござる。過程を、手段を目的にした者の末路がヒーロー殺しにござるよ。ヒーローに憧れ、ヒーローを目指すからこうなるのでござる。ヒーローなどという道化に踊らされている姿は、実に滑稽にござる」
カタカタ。ナニカが、強く握られ震えた。
「俺の前で、ヒーローを愚弄するか・・・・・・」
「ぶっは。ヴィランがおらねば成り立たないのがヒーローでござるよ? 彼のオールマイトも、ヴィランが存在し、事件が起きなければタダの気さくな筋肉ムキムキマッチョマンの変態にござる」
ヒーローのジレンマ。
事件が起きなければヒーローは責務を果たせない、ヒーローとして活躍できない。危険がなければ助ける必要はなくなる。
平和な世にヒーローの存在意義はない。
華々しいヒーローの活躍には、相応の脅威が必要不可欠。
光の中で、ヒーローは輝けない。ヒーローが最も輝くのは、絶望的な闇の中だから。
「ホント、滑稽にござるよ。ござるござる」
「死ね」
ヒーロー殺しの刃が、忍堂の首を切り飛ばした。
「ござぁ!? ブチ切れでござる!? もしかしてオールマイトのファンにござった?」
首を飛ばされた忍堂が煙りとなり消え、別の忍堂が反応する。
危機的な状況にいるとは思えない忍堂の言動に、緑谷達も言葉を失うが、残っている忍堂の影分身と目が合う。
ふざけている様子はない。真剣な目に、緑谷は気付く。
(そうか。ヒーロー殺しの戦法は血による盤面コントロール。影分身なら血は出ない、つまり僕達が取るべき行動は)
轟と視線を合わせ、うなずき合う。
飯田とプロヒーロー、そしてヒーロー殺しの立ち位置を把握しながら、緑谷は苦笑いを堪える。
(気を引く作戦は分かるけど。多分、忍堂君は本心を言っているんだと思う。さっきの話だって、嘘は一つもないのかもしれない。でも、誰よりも周りを見て守ろうとしてくれた)
現に、忍堂が気がつかなければ飯田が死んでいたかもしれないのだ。
複雑な気持ちではあった。
しかし、ヒーロー名考案のとき。忍堂のあの言葉を聞いていれば納得がいった。
(忍堂君が目指しているのはヒーローじゃない。でも、根本は一緒。だから安心できる)
護影。忍道を話したあの姿は普段と変わらなかったが、確固たる芯があった。
守ることにおいて、忍堂は文字通り命を掛けている。
たとえソレが褒められたやり方じゃないとしても、結果を見る忍堂からすれば100点満点以外のなにものでもない。
「はっはーん。やはりお前も偽物、いや。本当に偽物にすらなれなかったでござるな?」
言葉もなく、ステインは跳躍した。
冷静になったわけではない。忍堂を睨む、血走った目を見れば怒りが頂点を超え、言葉すら発しなくなっただけだと分かる。
「させぬでござる!」
場にいる忍堂は3人。そのうちの2体がステインの前に立ちはだかる。
「シィッ!!」
だが、火事場の馬鹿力でも発揮したのか、たった一振りで2体の忍堂が消える。
「挟撃することもなく無駄な時間稼ぎ、つまりお前が本体だな・・・・・・」
「くっ・・・・・・!」
分身体が全て消え、忍堂の表情に焦りが見える。
雄英体育祭ですら見せなかった、追い詰められた忍堂の姿に余裕はない。
「忍堂君っ!」
「忍堂ッ!」
緑谷達の叫びが聞こえるのと、ステインの刃が忍堂の胸を突き刺したのはほぼ同時。
「死ね。ヒーローを汚す偽物・・・・・・、全ては正しき社会のために」
両手で持ち、胸から肩にかけて振り抜く。
明らかな致命傷、血肉を撒き散らし即死する一撃。
そんなダメージを喰らえば分身体は消える。
「っ!?」
「水遁! 水針の術!」
驚き、硬直したステインの背中に水の針が突き刺さる。
「ぐっ!」
「儂様が人殺しの前に生身で立つわけがないでござるよ。ちびっちゃうでござる」
無傷の忍堂が、ステインの後ろに降り立つ。
「忍堂君!」
「おう。緑谷達、驚かせてしまったでござるな!」
手を挙げる忍堂だったが、轟達が慌てて声を出す。
「まだヒーロー殺しが!」
緑谷達から見て、不意を突いた一撃は威力が低く見えた。
それこそ、自分達が受けても耐えられると思えるほど。
「大丈夫でござるよ」
しかし、ステインは立ち上がらない。
それどころか、苦しげに地面に横たわってしまう。
「サポート科特製の痺れ薬を仕込んでるでござる。しばらくは満足に動けぬでござるよ」
「痺れ薬って、またえげつないことするね。でも、助かったぁ~」
全身に張っていた緊張が解けていく。
USJ以来の命の危機がようやく過ぎ去ったのだ。
緑谷程ではないが、轟も安堵のため息を吐いた。
「飯田、再三にござる。今を逃せばチャンスはもう来ないでござるよ」
だが、忍堂の一言で緩んだ紐が再び張り詰める。
轟も、緑谷も口を開こうとした。しかし、忍堂の向ける鋭い瞳に一歩、後ろに下がってしまう。
「家族を害され、臆病風にふかれて諦めでござるか? 飯田、お前の兄は今、どんな状態だ。どうしてそうなった、誰がやった。誰がお前の家族を傷つけた、お前の光を奪った?」
悪魔の誘い。
忍堂はゆっくりと歩み寄り、飯田の手に銀色に光る刃を渡す。
それはステインが持つ、数多の人間の血を啜った凶刃。
「僕は……」
飯田は訳が分からなかった。
最初はただ復讐心が心を支配していた。だが、緑谷と轟の言葉と、ステインを前にしたときの皆の姿に、別の想いがこみ上げてきた。
手に持つ刃に街灯の光が反射して自分の顔が写る。
目に隈を浮かべ、うつろな瞳を揺らす汚れきったソレは、とても自分だとは思いたくなかった。
「こんな、こんな顔を、僕はしていたのか……」
轟が問うたわけだ。こんな奴がインゲニウムを継いだ? それは何の冗談だ。
「違う、こんなやつ、インゲニウムじゃ……ないっ」
立ち上がる。今だふらつく足取りで、しかし進むべき方向は違わず仇敵に向く。
「飯田くんっ!?」
「飯田……」
友の不安げな声が聞こえても足取りは変わらない。
そして、憎むべき敵の喉元に手が届く位置にたどり着く。
刃を掴む気だるい手を持ち上げ、振り下ろす。
パキッ。
振り下ろした刃は狙い違わず、自身の眼鏡を破壊する。
真っ二つに割れ、地面に落ちる眼鏡の乾いた音が聞こえ、再び刃に自らを映す。
「俺は、インゲニウムを継ぐんだ。兄の築いたヒーローを、想いを、俺が終わらせたりなんかしないっ!」
ポケットから新品の眼鏡を取り出し、明瞭になった視界に自分の顔を見る。
「インゲニウムは、いつだって皆を導く強くてカッコイイ。ヒーローなんだ」
そう言ってぎこちなく笑った飯田の姿に、緑谷達の緊張がようやく終わった。
場の空気が緩やかになる中、緑谷の視界に忍堂が映った。
普段の独壇場だと言わんばかりの威勢はなく、飯田の選択に憤る様子もなく、ただジッと飯田を見つめていた。
「ささ、万が一のために縛るでござるよー」
「でも、縛る道具が」
「そんな貴方にご紹介する商品がこちら!」
心配する緑谷を安心させるように、忍堂が懐からロープを取り出して見せる。
「担架もそうだけど、すごいね・・・・・・」
「準備万端にござる! 救急セットもあるでござる!」
「どっから出してんだ?」
その後、ステインを縛り、飯田とプロヒーローを簡易的に治療、動けるようになるも負傷者と言うことで分身体に運搬され、大通りに向かうことになった。
歩みを進める中、緑谷が忍堂に小さく声を掛ける。
「忍堂君、さっきの、その。飯田君の、話なんだけど」
だが、緑谷の言葉に被せて忍堂が話し始める。
あくまであっけらかんと、昼休みの雑談をしているとさえ思える気軽さで。
「緑谷、人の心は移ろう物でござる。どれだけ崇高な志を持とうとも、一度も打たれたことのない鉄は曲がりにくく、しかし容易く折れるものでござるよ」
忍堂は手でハンマーを振る素振りを見せながらワハハと笑う。
「刀を作るには熱し、叩き、最後に冷やす。ただ熱く叩いただけの鉄は未完成でござる、儂様のような鈍らになるには、お前達は」
スラスラと普段から言葉を止めることのない忍堂の口が、数瞬止まる。
まるで小さい頃から集めていた綺麗な宝石を、初めて誰かに見せることに葛藤しているかのようだった。
「誰かのためと本気で思える、お前達は眩しすぎるでござるよ。儂様はそれができたことが一度としてなかったでござる」
「それってどういう……」
「別に小難しい話ではないでござるよ。どれだけ豪勢な料理を前にしても、一度として口にしていなければ夢想するしかない。頬を緩ませ、大事に食べている者達を羨ましいと眺めるだけ。ただソレだけでござれば、お前達とはそれを食しているだけの差でござる」
それ以降、忍堂が口を開くことはなく、緑谷も安易に続けるべきではないと考え、半開きになっていた口を閉じた。
☆
大通りに出ると、現場に駆けつけていたヒーロー達が集まり、緑谷達は保護されることになった。
中には緑谷の職場体験先のヒーロー、グラントリノなどもおり、彼らを中心に情報の伝達が行われた。
「3人とも、僕のせいで傷を負わせた。本当に済まなかった」
報告を終えた轟、緑谷、忍堂に対して飯田が頭を下げる。
「怒りで、何も・・・・・・見えなくなってしまっていた」
目には涙を浮かべ、全身は悔しさに震えていた。
飯田の姿に、緑谷も、轟も言葉に詰まる。
「儂様だけ無傷でちょっと情けないでござるな。どれ、ここはお揃いの傷を」
「俺もだ。何だったら戦ってすらいない、俺も付けた方がいいのか?」
「うそ。この流れでぼけるの?」
気を取り直して。緑谷が口を開く。
「僕もごめんね、君があそこまで思い詰めてたのに。全然見えてなかったんだ・・・・・・。友達なのに」
「しっかりしてくれよ、委員長だろ」
(違う。二人は俺を見てくれていた。見れてなかったのは俺だけだった・・・・・・)
兄の傷が元に戻ることはない。
事件は解決したが、残った傷跡は深く残酷だ。
それでも、こんな自分のために傷を負ってまで助けてくれた友のためにも、前を向く。
いつか、憧れたヒーローになるためにも。
「おー、コレがヒーロー殺しか! 戦ってみたかったぜ!」
「ミルコ、今は黙るでござるよ。今すっごい良いシーンでござる。青春シーンをエチチバニーが性癖ともども破壊しちゃダメでござる」
「つれないこと言うんじゃねえよ。つかお前の戦い方ってやっぱアレだな、ヒーローよりヴィランだったな!」
「やっぱり見ていたでござるか。道理でミルコが全然来ないなと思ったでござる、無線も返答してくれないと意味がないでござるよ。儂様の分身体も口止めされてたでござるな?」
思いをぶつけ合っていた緑谷達だったが、直後に繰り出される軽いノリにスンと涙を引っ込めた。
そして、緑谷の瞳が輝いた。
「ら、ラビットヒーローのミルコ!?」
「お? 誰だお前」
「まさか既にエチチバニーの被害者が同級生にいたとは・・・・・・」
「つか、お前は本体で来い。10秒後に来なかったらミルコ様の抱擁をくれてやる、ビビり君」
「褒め言葉にござる。10秒で戻る故、マジで勘弁してくださいお願いしますでござる」
「え!? この忍堂君も分身体なの!?」
「もちのロンでござる。本体が出たことは一度もないでござるよ」
まさか過ぎる忍堂の徹底ぶりに、緑谷達は乾いた笑みを浮かべた。
その後、大所帯で移動を開始したときだった。
「え・・・・・・?」
緑谷が、飛来した翼の生えた脳無に連れ去られてしまう。
直後、拘束されていたはずのステインが取った行動が、世界の歯車を回し始めた。