個性チャクラで影分身 作:切って捨てて
そして、本当にこんなに色んな人が読んでくれて感無量ですたい
ヒロアカパワーやべっす
頂いてる感想を読んでいると深く世界観とか人間模様を考えてる方が多いなと
そしてヒロアカに出てくるネームドのヴィランって、単純な悪役ほとんどいませんよね
AFOとか筋繊維個性とかぐらいで
あとはみんなヴィランとして一括りにするには色々違いすぎますねと
今更ながら思いました丸(あれ、感想文かな?)
「正さねば……。誰かが、血に染まらねば……」
一歩。唾液を垂らし、今にも倒れそうな一人の男が陽炎の如く揺れる。
だが、その男を前にヒーロー達が動けなくなった。
「ヒーローを、取り戻さねば……! 来い、来てみろ偽物共ォ」
気圧されたのだ。
場数を踏み、死地を経験してきたヒーローが、後ずさる程の禍々しい意思に恐怖した。
「俺を殺して良いのは、ホンモノのヒーロー。オールマイトだけだァアア!」
誰もが怯え、すくみ上がってしまう。
誰も血を舐められていなかった。なのに、死すら覚悟した視線に、誰も、動け、
「良い覚悟だ! やろうぜ! ヒーロー殺しィ!」
ウサギが駆け、ステインの顎を蹴り飛ばす。
「「「え・・・・・・?」」」
そもそもの外傷は少ないが、忍堂が仕込んだ痺れ薬は効果を発揮していた。
数分で抜ける物ではなく、そんな中でも動けたこと自体が驚愕。
まともな戦闘ができる状態ではなかった。
だから、ミルコの蹴りを一切の構えもなく食らえば、強化系の個性を持たないステインが意識を保てるはずがなかった。
「流石ムチムチエチチバニーヒーロー。場を読まない戦闘狂にござるよ」
崩れ落ちるステインに忍堂が頷き、拍手を送った。
☆
儂様的には今回のヒーロー殺しの一件、自己評価は上出来だったでござるよ。
儂様と轟は無傷。緑谷達の傷も刺し傷が少々で後遺症もなし。
しかし、あの場にヒーロー資格を持たない者が、保護管理者がいない状態で個性を行使した。
規則違反にござる。
結果、儂様達の保護管理者であるミルコ達にペナルティが下ることになったでござる。
そう、犬が目の前で言ってるでござる。
うんうん、そうなるでござるよねー。と納得してたら、轟が食ってかかったでござる。
「待ってくださいよ。飯田が動いてなきゃネイティブさんが殺されてた。緑谷と忍堂が来なけりゃ、二人は殺されてた。誰もヒーロー殺しの出現に気付いてなかったんですよ」
そこは、儂様もちょっと気になったでござるな。
「規則守って見殺しにするべきだったって?」
普段クールな轟にしては珍しいでござるが、元々こっちよりだったのでござろうか?
しかし、熱い轟と違って、警察の偉い犬はクールでござる。
「結果オーライであれば、規則などうやむやでよいと?」
答えられないときの常套句でござるな。
「くっ・・・・・・! 人を助けるのが、ヒーローの仕事だろ!」
「だから君は卵なんだ。まったく、良い教育をしているワンね、雄英も」
「この犬・・・・・・!」
おー。青春にござるなー。
詰め寄る轟を飯田達が止めようとするでござるが、止まる気配は無し。
犬の言い分も、轟の言い分も視点を変えればどちらの筋も通ることが、一層歯がゆいのでござろうな。
「以上が、警察としての公式見解。で、処分うんぬんはあくまで公表すればの話だワン」
犬はどこか言い難げに鼻を掻いて続けた。
「公表すれば世論は君らを褒め称えるだろうが、処罰は免れない」
お、緑谷がこっちを見たでござる。
言ったとおりでござろう? 罪と評価は別問題でござるよ。
ただし、これで処罰をすれば困るのは儂様達ではなく、彼らの方でござるが。
なぜなら、国家の犬達とプロヒーローがステインに適切に対処できず、学生が対処してしまった事実を彼ら自身が認めることになるでござるよ。
しかも今一番ホットな雄英生徒がとなれば、少しばかり動けば面白いことになるでござるよ。
「一方で汚い話。公表しない場合、ヒーロー殺しの打撃痕から、ミルコを功労者として擁立してしまえるワン。実際、ヒーロー殺しに一撃を加えるミルコの姿を、ヒーロー達も見ているワン。この違反はココで握りつぶせるんだワン」
ミルコグッジョブ! ただの戦闘大好きエチチバニーヒーローではなかったでござるか!
「だが、君たちの英断と功績も、誰にも知られることはない。どっちがいい?」
どっちでもいいでござる。
「一人の人間としては、前途ある若者の偉大なる過ちにケチをつけたくないんだワン」
飯田が自身の保護管理者であるヒーローに頭を下げ、轟も緑谷も頭を下げる。
「君はどうするんだワン?」
「え、あ、儂様でござるか?」
ここで儂様? 関係ないムーブしてたでござるよ。
「話を聞く限り、彼らが軽傷に収まったのも、無力化に貢献したのも君だと聞いているワン」
「別にどうでもいいので、好きにするでござるよ」
というか、儂様的にはさっきから犬の話している内容が気に食わないでござる。
「大人のズルで、君たちが受けていたであろう称賛の声はなくなってしまうが、せめて・・・・・・」
犬が頭を下げる。
「共に、平和を守る人間として。ありがとう」
やはり気に食わないでござる。
ふむ。儂様は期待していたのでござろうな・・・・・・。
称賛、功績、偉大なる過ち。ステインが腐敗と言ったのも納得でござる。
『結果オーライであれば規則など、うやむやでよいか』なんて質問が出た時点で分かっていたことでござる。
そんなもの、良いに決まっているにござろう。
気付いていないのでござろう、その矛盾こそがステインを生み出したことに。
緑谷達の行動は英雄願望からじゃない、純粋に他者を想っての行動をちゃちな言葉に落としているのだと。
彼らが終始口にした言葉に「成果」を意図する物なんてなかったことに。
☆
ステインを捕まえて一件落着。
とは行かなかったでござる。
なんでも、ステインの最後の演説がニュースやらで拡散されたでござる。
合わせて、ステインの経歴やら活動が公開され、より一層世間の関心を集めてしまったでござる。
ま、そんなこんなで短いようで長いようで、やっぱり短い職場体験の1週間が終わったでござる。
ちなみに、ステイン事件の後も無傷だった儂様は、ミルコにみっちりボッコボコにされたでござる。
最近ではウサギを見るだけで体が震えるように成長したでござる。
で、久しぶりの登校でござるが、やはり教室の話題は職場体験とヒーロー殺しの話で持ちきりだったでござる。
「確かに怖えけどさ、尾白動画見た?」
そう言ったのは上鳴でござる。
「動画って、ヒーロー殺しの?」
「そう」
ちなみに、ヒーロー殺しに巻き込まれたということで、緑谷達の所に集まっているでござる。
最初は知らぬ存ぜぬで行こうかなとも思ったでござるが、ニュースではミルコが解決したことになっているため、儂様は逃げられなかったでござる。
「あれ見ると、一本気っつうか執念っつうか、かっこよくね? とか思わね?」
おう。ノンデリカシー上鳴。
流石儂様と並ぶ、『クラス内、人の心ないんかランキング』のツートップにござる。
すかさず緑谷が止めに入ったでござる。
「え? あ、わ・・・・・・悪い」
「良いさ、確かに信念の男ではあった。クールだと思う人がいるのも分かる」
おお、流石飯田。感情任せになることなく、しっかりと受け止めているでござる。
「ただ、やつは信念の果てに粛清という手段を選んだ。どんな考えを持とうとも、ソコだけは間違いなんだ」
ござるか。
「俺のような者を、これ以上出さぬためにも。改めてヒーローへの道を俺は歩む!」
おー。飯田の復活でござる。
久しぶりにカクカクした動きを見られた気がするでござるよ。
「でもよ。ヒーロー殺しが言ってたっつう、『ヒーローとは見返りを求めてはならない。自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない。』だっけか? 忍堂も似たようなこと言ってたよな」
峰田よ。良い感じに話が収まったのに儂様に振る? 振っちゃうの?
スルーしようかなと思ったが、皆の視線が集まっているでござる。
緑谷なんか緊張した視線を向けてきているでござるよ。
「奴に信念も一本気もないでござるよ。奴は落ち武者でござる」
「うっわ辛口評価」
「奴の経歴。オールマイトに憧れてヒーロー高校に行くとは、まるで緑谷みたいでござるな」
当時のヒーロー殺しは緑谷と同じ瞳をしていたのでござろうか。
「しかし、ヒーロー社会の腐敗に気付き、自主退学。一言で言えば逃げたんでござるよ」
「逃げ・・・・・・」
「奴が言っていた本物のヒーローなら、オールマイトなら自主退学をしたと思うでござるか? オールマイトファンの緑谷はどう行動すると思うでござる?」
オールマイトに憧れて、オールマイトに目をかけられ、オールマイトと似た個性を持つ緑谷は、躊躇いながらも確信を持って答えた。
「退学なんて絶対にしない。腐敗していたなら、自分が本物のヒーローの手本になれるように頑張るんじゃないかな。たとえどんなに大変で、苦しくても、絶対に諦めずに笑ってどうにかしちゃうんだと思う」
皆が納得して頷く。
そう、オールマイトならどんなに困難な道でも諦めない。
ナチュラルボーンヒーローと呼ばれる彼なら、どうにかしてしまうと思わせてくれる。
「ヒーロー殺しは自分がそうなれないと思った。ヒーローに憧れてヒーローに成ろうとした自分は、奴基準で既に偽物だったでござるよ。だから諦めた。本物のヒーローを目指すよりも簡単な道に逃げた。自分が本物のヒーローになって道を示すなんて無理だと」
こんな男のどこがカッコイイのだろうか。
映画で人気になるヴィラン、彼らは良くも悪くもブレない目的を持っている。だからこそ過程が輝き、ギャラリーの目には魅惑的に映る。
およそ人道的ではない事件を多く起こしたヒトラー。世間ではアンチと呼ばれつつも、根強いファンがいるのはなぜか。
彼にとって弾圧、虐殺は母国のためであり、虐殺が目的ではなかった。
だからこそ”美化”される。受け入れやすいように”曲解”する。
国のためならばここまでのことを実行可能だと、それほど国のために動いてくれるのだと。
ステインはどうだったのか。
彼もA組の生徒も目的は”ヒーローに成る”ことではない、根本は”人を助ける”ことだ。
だからこそ、人を己の個性で助ける”ヒーロー”に憧れるのだ。自分も、彼らのように人を助けたいと思い至る。
それは、どうしてほしいと他者に求めるものはなく、どうしたいかという自身の内から生まれるエゴイズムでしかない。
「ヒーローになることが目的か。人を助けるのが目的で、結果としてヒーローになるのか。言葉遊びにござるが、大きな違いにござろう。奴は過程を重視していたでござるが、過程は結果をブレさせないためのリトマス程度が丁度いいでござるよ」
自分を変えられない人間が、他人を変えるなんてバカな話でござるよ。
「お、おぉ・・・・・・。オイラが知ってる忍堂とは思えねえ回答だぜ」
「なるほどなー。ぶっちゃけ、忍堂の分析やばくね?」
「てか上鳴、アンタ余計なこと言わないでよ。変な空気になるでしょ」
「う、す、すんません・・・・・・」
☆
「夏休み、林間合宿やるぞ」
「「「知ってたよー! やったー!」」」
流石雄英。イベントごとには困らないでござる。
なお、期末テストで合格点に満たなかった場合、補習地獄らしいでござる。
ほんと、なんで素直に楽しませてくれないでござるのだろうか?