個性チャクラで影分身 作:切って捨てて
投稿するのがめんどく感じます、書き溜めって切迫感ないから好きですけど
じゃあそれをまとめて投稿スケジュールってなった瞬間……うん、はい。投稿します
儂様にとって緑谷の評価とは、純粋な心を持つ少年。
そのくせ、保有する個性は火力という一面では驚愕の一言、自壊しなければマジで2代目オールマイトになれたのになー、と大変残念に思っていたでござる。
「緑谷の動きなんだよアレッ!?」
ヒーロー基礎学で行われた救助訓練レース。
本来超パワーの自壊しかできない緑谷にとって、目標地点に素早く移動することは難しいでござる。
一緒にレースを走る瀬呂や飯田といった移動に適した面子が多い中、素の力でしか走れない緑谷は大変厳しいと言わざるを得ないでござる。
「個性の出力を調整できるようになったでござるか」
「おー緑谷! 足が壊れてねえぞ!」
そのはずでござったが、意外や意外。なんと緑谷は自壊することなく、建物の上から上へと高機動を繰り返しているにござるよ。
たった1週間。職場体験で最も分かりやすく成長したのは、緑谷なのかもしれないでござるな。
「あ、滑った」
「落っこちたでござる」
ま、それでも最後には笑ってしまう結果になったでござるよ。
「それにしても、もったいないでござるなー」
「どういうことだよ忍堂」
「峰田は分からぬでござるか? 一見緑谷は確かに速くはなったでござるが、その分無駄が多いでござる」
おや、皆が儂様を見ているでござる。しかも、あの爆豪がめっちゃ睨んでいるでござる。あ、これはいつもでござった。
これ、話さないとダメな流れでござるか?
「丁度緑谷達が戻って来たぜ」
「どうしたの上鳴君?」
「いやよ緑谷、お前個性の調節ができてすっげー速くなったじゃん? でもよ、忍堂がもったいないって言ってんだよ」
「え? それってどういうこと!?」
うぉっ。近い、近いでござる!
成長に対して貪欲すぎるでござる!
とりあえず一度離れてもらうでござる。
「簡単にござる。目標地点までどうすれば早く移動できるのか。その最適解はスタートから一直線に目標地点まで突き進むことにござる」
「おめーさっきの見てなかったんかよ。建物やら配管で真っ直ぐなんて行けるわけねえだろ」
「そうか! 僕のあの移動はかっちゃんのをベースにしている、でも地面を蹴る僕と爆破の推進を使うかっちゃんじゃ根本が違う。加速するなら足のばねを強く意識した動きになるけど、滞空時間は空気抵抗を受けて減速がしやすい、それに……」
峰田が目を半分にするでござるが、緑谷は合点がいったようで、お決まりのぶつぶつ詠唱が始まったでござるよ。
瀬呂、飯田といった移動に強い者も半分気が付いたようでござるな。
緑谷の場合、爆豪よりもオールマイトのワンジャンプ移動の影響が強そうにござるが。
意外とミルコのような加速が合っているのかもしれぬでござる。
「あとは実践でお見せするでござるよ。体育祭の障害物競争1位の儂様を手本にすると良いでござるよ!」
「うん! ありがとう忍堂君!」
「忍者野郎! テメー今なんつったア!?」
「ひー。爆発三太郎が怒ったでござる。緑谷シールドの術!」
「え、あ、に、忍堂君!?」
「デクテメエ。ちっと個性使えるようになったからって調子に乗ってんじゃねエぞ!!!!」
「ヒーッ!? ち、ちがうよかっちゃん! 誤解だって!?」
緑谷を盾にして儂様はスタート地点に向かうでごーざる。
「あいつ、ホントいい性格してるよな」
「我が道を行くは強者の常。俺達も負けてはいられない、スタート地点にいくぞダークシャドウ」
「アイヨ!」
スタート地点もゴール地点も変わらず、早々にスタート地点に着いた儂様に爆豪が突っかかってきたでござる。
「こっからだ。こっからテメーをぶっ殺して、俺が一番になる」
しかし、いつもの個性と同じ爆破した感情を見せず、静かに言い放ってきたでござる。
うむうむ。競争の精神は大変良きにござる。
「なに意味深に頷いてんだテメエ!」
☆
忍堂達がスタートする瞬間を緑谷たちはモニタールームで見守っていた。
「緑谷君、さっきの忍堂君の言葉。君はどう受け止めたんだい」
緑谷に話しかけてきたのは職場体験で、共に死地を切り抜けた飯田だった。
「多分だけど、脚と地形の使い方なんじゃないかなって思ってる」
「俺が把握している中で、純粋な身体能力の強化を行っているのは緑谷君、忍堂君、それと砂藤君だ。僕の場合はエンジンによる外付けの推進力を使っているから、忍堂君の動きは君にとっても有意義なものになるだろう」
ただし。と飯田は眼鏡の位置を直し、挑発的に笑う。
「速度において俺が君たちに負けるつもりはない。俺の目標のため、吸収できるところは何でも取り入れていくつもりだ。忍堂君のも、そして君のもだ。緑谷君」
「うん。僕も負けない、いろんな人から吸収して自分の力にする」
友でありライバル、互いの認識を新たに二人はモニターに視線を向けた。
『救助訓練レース第二班! スタート!』
オールマイトの合図で、忍堂達が走り出す。
爆豪が爆破で空中を飛び、峰田がモギモギの反発を利用して跳躍し、砂藤が地面を陥没させる力で走り出す。
各々が自身の個性を使いスタートするなか、忍堂は緑谷の手本を見せるべく。
影分身して、自身は手裏剣に変化し、影分身に自身を全力で投擲させた。
「え?」
「は?」
個性把握テストではソフトボールを数百メートルも飛ばした肩は、手裏剣の空気を切り裂く形状の特性を生かし、ソフトボールの時よりも速く真っ直ぐ飛んだ。
『わはは! これが速度において最速にござる! 緑谷よ! 儂様を参考にするでござる!』
変化を解除してトップに躍り出た忍堂が声高らかに笑う。
緑谷達は首を横に振った。
「い、飯田君。参考になったら教えてくれる?」
「み、緑谷君こそ、参考にしたまえ。指名されているぞ」
「いやいやいや」
「どうぞどうぞどうぞ」
「ちぇ、参考にしてやろうと思ったけど、あんなの忍堂以外にマネできるわけねえじゃん」
瀬呂が胡散臭い壺を見せられた時の疲れた顔をしていると、忍堂がカメラを見る。
『さて。本来はこの分身投擲移動を連続で繰り返すのが、速度の一点において儂様の最適解。そして、これが』
今度は変化も影分身も出すことはなく、障害物の間を走った。
建物の間、配管の組み込み、それらのすべてに隙間が存在している。
緑谷はそれらを飛び越えながら移動を繰り返していた。
しかし、忍堂は違った。
「走ってる……?」
「うぅむ。なんと表現するべきなのだろうか……」
強いて言うなら、障害物同士の間を走っていた。
それは、緑谷達が当初想像していた動きではある。緑谷が皆を驚かせた動きに近いようで違う、しかし何が違ってああなるのか、目を疑う程度には練度が違った。
『これぞ忍者走りの術にござる!』
速度を緩めず、体は常に一定の高さを維持、むしろ障害物を足蹴にするたび加速。
障害物同士の高さや形状の違いはあるが、それによって膨らんだ軌道を見せることはなく、ほぼ真っ直ぐ直線運動を繰り返していた。
上に、右に、左に、下に。障害物同士を点と点で線で結び、線の上を真っ直ぐ駆け抜ける。
「ただ速いだけじゃないぞアレは。機動力がずば抜けて高いんだ」
「一歩間違えば大怪我になりそうだけど、忍堂君の顔に緊張はない。それほどまでに忍堂君の中では安定した動きなんだ……」
「緑谷達以上に脚が速い、轟より戦闘能力が高い、爆豪より個性の使い方が上手い。認めたかねーけど、A組で一番強いのは忍堂だよな」
それでもと挑戦的に笑う切島。
皆が頷く中、緑谷は言葉には出せないがステインとの一戦を思い出し、飯田と目を合わせる。
(それに、影分身を使った徹底的なリスク管理能力)
(数多のプロヒーローを下した奴を術中にはめ、一撃で無力化する戦術力)
((学ぶには、丁度いい!))
自分が至らないことはアノ一件で嫌というほど叩きつけられた。
学生だからなんて言い訳はしない。あの時、あの場、自分たちは本物のヴィランと戦ったのだから。
次こそ絶対に守り切る。貪欲にモニターの映像を観察する。
忍堂だけではない、爆豪の戦闘センス、麗日の格上に対する戦い方、教材はそこら中にあるのだ。
全ては、自分が目指すヒーローに成るために。
☆
どもども、今回も無事1位で爆豪をムキーってさせた儂様達は、来る林間合宿に向けた話題で盛り上がっていたでござる。
学力。学生にとって切っても切り離せないパラメータの一つ。
1学期期末前の学力成績順位が発表されれば、林間合宿に募る希望の分だけ加重される重石のごとくにござる。
「ござるござる。生徒の学力を数値化し、逸らすことも不可能な現実を叩きつける。恐ろしいでござるな」
「くっそー! なんでいつもござるござる言ってる奴が、やおもも抜いて1位なんだよ!!??」
「そうだーそうだー! 戦闘力だけじゃなくて、学力も高いなんて差別だー!」
「勉強教えろチクショー!」
儂様自身の頭の能力はそこまで高くないでござるが、影分身を使った何倍もの効率を使えば楽勝にござる。
いくら学力の順位がトップとはいえ、教えに適しているかと言われれば疑問にござる。
しかし、教えてと言われて断るのも忍びないでござる。
「任せるでござる! 一人1体の儂様を配置、全員を24時間体制で隙も与えぬ完璧な学習環境を提供するでござるよ!」
「「「あ……ヤオモモおーしーえーてー」」」
「まぁ!」
おかしいでござる。
5秒で目の前から人が消えたでござるよ。
「なぜでござる……」
項垂れている儂様の前に峰田がやって来た。
「そらお前みたいな訓練大好きマンが、勉強も同じ度合いを見せたら皆逃げるだろ」
「不名誉にござる。訓練大好きマンとはなんでござる」
うそ。儂様そんな呼ばれ方してたの?
「授業以外の大体が訓練漬け、尾白とか切島が参加すれば日が暮れるまでボッコボコ、そんなやつが今度は勉強に顔を出すなんざ。オイラじゃなくても逃げ出すに決まってんだろ」
「自身の成長が嬉しくないのでござるか?」
「限度があんだよ限度が。お前みたいに、授業に影分身を出してまで訓練時間を確保しようとする奴はイネー」
むむむ……。確かに時折相澤先生にバレて怒られているでござるが、USJやステインの事件がこうも立て続けに起きているでござるよ。
影分身は術を行使した時点の儂様をコピーするでござる。勉強等は分身体で賄えるでござるが、個性のチャクラや身体能力は本体である儂様が頑張るしかないでござる。
つまり、致し方のないルール違反を行っているだけにござる。
相澤先生は分身体の特性も知っているため、初回時に一応合理的判断で許してもらえたでござる。
一応制約として「授業中に分身体が消えた場合、欠席扱い」が布告されたでござるよ。
1度、面白がった耳郎が耳のイヤホンジャックで、本体だった儂様を突いてきたことがあるでござるが「耳でちょっかいって、エチチでござるな」と言ったらそれ以来ちょっかいはなくなったでござる。
「ちなみに、今日のお前ってどっち?」
「本体にござる。授業中にチャクラ生成するトレーニングにござるよ」
影分身が有用すぎて、儂様の戦術の大半が影分身ありきでござる。
本体が戦う必要がない以上、儂様の訓練は影分身の性能に直結する系統、戦闘時は安全圏でのチャクラ生成になっているでござるよ。
「あれ? これどっちが本体でござる?」
「自分の個性でアイデンティティやられてんじゃんか」
「ま、どっちが本体でも構わないでござるけど」
そうして悠々自適に学期末テストを迎えたわけでござる。
もちのろん、テストの点に抜かりはなく、不安だった上鳴たちも八百万のおかげで無事突破を果たしたようでござる。
これで学力面での脱落者はなく、次なる試験。
演習試験がやって来たのでござる。
「実技試験は二人一組のチームで行ってもらう。制限時間は30分、体重の半分の重りを付けたヒーローと対決してもらう。勝利条件は二つ、一つはヴィラン役の教師を手錠型のこいつを使って捕縛すること」
じゃらっと、手錠にしてはごつくポップなカラーリングのアイテムを取り出す。
しかし、いくらハンデがあろうとも13号のような、身体能力に左右されないヒーローならあってないようなハンデにござる。
そうでなくても経験も練度も格上。すでにプロヒーローとして結果を残し、雄英の教師として立つ先生。相性によっては戦闘にすら、ならなそうでござるよ。
「ただし、時に自身よりもヴィランが圧倒的に強いといったケースであれば。情報を持ち帰り、他ヒーローの救援を求める方が合理的な場合もある。なので、もう一つの勝利条件は脱出ポイントにどちらかが到達すること。このどちらかを満たせば勝利だ」
「戦うか、逃げるか……」
「重りは戦う選択肢を残すためってことかよ」
「オールマイトが相手なら土下座の一択だろ。オイラだってそうする」
「もう少し頑張れよ……」
当初、緑谷から仮想ヴィランとの戦闘が去年行われていたと、情報のタレコミがあったこともあり、対人において個性の調節が必須になる上鳴や芦戸は喜んでいたでござるが。
プロを相手にするなら調節どころの話ではないでござるな。
その後、チーム分けと対戦表が発表され、儂様は麗日とチームで13号と対戦することになったでござる。
「作戦どうする、忍堂君?」
試験は順次執り行われる。1回戦目は切島砂藤チームとセメントスの対戦。儂様達は5回目になるでござる。
その間の作戦会議でござる。
「麗日、一つ伺いたい」
儂様がいるなら作戦の幅は広く取れるでござるが、物事には順序とルールがあるでござる。
だからこそ、作戦を考える前にいくつかの確認が必要にござる。
「好いている者はいるでござるか?」
「へ?」
「緑谷や飯田とは他より交流が多いでござろう? どちらか、もしくはそれ以外に恋心を抱いている相手はいるのかと」
ビンタされたでござる。イタイ……。