個性チャクラで影分身   作:切って捨てて

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 学校以外で協力を取り付けられる相手を見つけた儂様は、さっそく分身体として轟の家にお邪魔したでござるよ。

 というか、学友初めてのお家訪問がこんな形になるとは思わなかったでござる。

 

「話とはなんだ。俺は今学生の相手をしている暇はないんだ」

 

「ござるござる。それでも、超常解放戦線なるテロリストに関する情報は無視できないでござろう?」

 

「お前の話が本当ならばな。そのような集団を俺は把握してないがな」

 

 いやーそれにしてもいかついでござるよ。

 なんで普段から燃えてるでござる?

 

「再三の確認申し訳ないでござるが。この話、誰も聞いていないでござるよね?」

 

「くどい。インターンに来ている焦凍達は部下達に任せている」

 

「そういえば緑谷と爆豪も来ているとか、雄英の実力派とはさすがNo1でござるよ」

 

 あ、そうそう。

 オールマイトの引退とともに空いたNo1の地位にエンデヴァーが収まったでござるよ。

 順当にござるな。

 

「皮肉か? 雄英1年でトップの実力を持つお前はミルコに師事しているらしいな」

 

 ちなみに、ミルコはヒーロービルボードチャート10位以内に入ったでござるよ。

 儂様鼻高にござる。

 本人は順位をあまり気にしてないようでござるが、その意味は理解しているご様子でちょっと前にご高説賜ったでござる。

 とまぁ、本題前の軽い? 雑談を終えたので本題にござる。

 

「現在、死柄木を始めとする敵連合は異能解放を訴えるテロリスト集団を吸収、超常解放戦線なる巨大勢力になっているでござる」

 

「それは……っ!」

 

 まー驚くでござるよなー。

 雄英を二度も襲撃し、オールマイトを引退に追い込んだ巨悪、オールフォーワンなる敵が率いていた超注意組織が、見ない間にもっとやべー集団になってたでござるよ。

 

「また、超常解放戦線構成員には多くのヒーローも加盟してるでござる。現段階で儂様が信用できるヒーローはエンデヴァーのみといっても過言ではないでござるよ」

 

「いや、まて! その前に貴様はなぜそれを知っている! どこから情報を得ているのだ!」

 

 自身の目と耳を指さす。

 とはいえ、潜入しているなんて言わない。

 確定的な言質を与えては儂様の動きが抑制されかねないでござるよ。

 

「……俺だけが信用できるというのはどういうことだ」

 

「敵連合の一人がエンデヴァーを仇敵にしているでござるよ。そんな相手が解放戦線のメンバーであるはずがないでござる」

 

「道理、ではあるが……俺が標的ということは、過去にとらえた敵の一人か?」

 

「えー、あー、そのー、ご、ござるぅ」

 

 え、どうしよう。言っちゃっていいのでござるか?

 いやー、でもなー、荼毘は一度エンデヴァーと会敵してるし、気が付いてないでござるか。

 死んだと思った息子でござれば、生きてるなんて思わないでござるよなー。でもなー。話がめんどくなるんだよなー。

 ……うん。

 

「で、儂様が他ヒーローを信用できなくなったのは、メンバーの一人にNo2ヒーローがいたからでござるよ」

 

「ど、どういうことだ! 虚偽虚言ではないのだろうな?」

 

 すっ、とトビ仮面カメラで撮った映像を見せる。

 そこにはトゥワイスと談笑するホークスの姿がバチコリ映っているでござる。

 信じられないと息を吞むエンデヴァー。

 

「儂様の十八番は使ってないでござる。正真正銘本物にござるよ」

 

 影分身と変化を使えばいくらでも偽装できるけど、この状況でする理由がないでござるよ。

 

「解放戦線は現在潜伏しているでござるが、3か月後。死柄木の完成を待って一斉攻勢に出る腹積もりにござれば、エンデヴァーにはNo1として動いてほしいでござる」

 

「聞きたいことは多い。まず、死柄木の完成とはなんだ?」

 

「死柄木は己が持つ崩壊の個性が成長し、崩壊対象と威力だけ見れば日本を崩壊させることも可能になっているでござる。しかし、強大な力に体がついていけず、今はとある場所で肉体の改造を行っているでござる」

 

 絶句するNo1。

 ぶっちゃけ、火力でいえばオールフォーワンをたやすく凌駕している死柄木の存在は、日本崩壊の時限爆弾そのものでござるよ。

 

「超常解放戦線の構成員総数約11万からなる兵隊による一斉蜂起。死柄木の目覚めを待ってこれが実行されれば、日本は崩壊するにござる」

 

 実際に日本が消滅するわけではない。

 そんな事態になればヒーロー飽和社会とはいっても、ヒーローの絶対数が足りない。

 ヒーローの助けがなくなれば市民の武装化が進み、内戦にもならない戦国時代以下の血なまぐさい時代が到来する。

 儂様はそう予想しているでござる。

 

「現在、儂様特製の爆弾を超常解放戦線のアジトに多数設置ずみでござる。起爆すればおおよそ9割9分の敵を排除できると自負しているでござるよ」

 

「……ッ!?」

 

 リデストロやマキアといった、肉体的に強い個性を持つ者は無理でござろうが、荼毘やトゥワイス、トガといったメンバーなら仕留められるでござる。

 地味に長い時間をともにした敵連合、情がないわけではない。

 しかし、彼らが抱える爆弾の規模は無視できない領域でござる。

 もとより一般人の殺害を数多繰り返す凶悪犯、好きなように生きるなら好きなように殺されても文句は言わせないでござるよ。

 なにより、トガとトゥワイスはエリの顔を知っている。

 

 生かすわけにはいかない。

 

「ここに来たのは確認のためにござる。起爆にためらいはないでござるが、一部の強力な個性持ちは爆発では仕留められないでござる。それらに備えてヒーローを集めてほしいでござるよ」

 

 解放戦線で危険な項目は二つ。

 死柄木やマキアを始めとするチート持ち共。

 11万という圧倒的な構成員。

 

「今ならまだどうにかできるでござる。敵は拠点に集まっているでござるし、死柄木は動けない。タイムリミットは死柄木が覚醒するまでの間でござる」

 

 しかし、エンデヴァーを始めとするヒーローが集まれば、大多数の敵連合はつぶせるし、マキアが動いたとしても火力でごり押せる。

 AFOの側近が氏子だけであることも知った。少なくとも日本でAFOと密接に関わっていた者が氏子だけというのは、本人が自慢げに話していた。

 

「……ダメだ」

 

 今しかない。今なら勝てる。

 そう思い、この数か月の成果を持ってきたというのに、No1の返答が理解できなかった。

 

「な、なぜでござる。今しかないでござるよ! 今ならまだ、被害を最小限で」

 

「気づいていないのか。お前のそれは11万人の命を殺すということだ」

 

 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?

 

「確かに、お前の言う通り11万の暴徒、敵連合の存在は確かに未曾有の脅威。しかしだ、それが人の命を奪っていいわけではない。我々はヒーローだ」

 

「なにを、言っているでござる……?」

 

「わからんのか。お前のソレは敵の思考だ。ヒーローのソレではない」

 

「……さすが、息子を殺したヒーローは言うことが違うでござるよ」

 

 毅然としていたNo1の顔が冷や水を浴びたものになる。

 呆然と、なぜそれを知っていると問いかけてくるが、そんなものはどうでもいいでござる。

 

「No1ヒーロー。俺の考えたプランは完璧だと自負している。被害を最小限に抑え、凶悪な敵どもを一網打尽にできるからだ。たとえ11万人を一斉に検挙できたとしても、収容できる場所があるのか? それらに対する混乱が生まれないとは言わせないぞ。俺のプランならそんな問題もない。やるべきは死体処理だけになる、マスゴミを使って情報操作をすれば社会的混乱も少ないはずだ」

 

 残念ながら、そこらへんを行う力を俺は持たない。立場がないのだ。

 

「答えろNo1。俺のプランを覆すほどの作戦を用意できるのか? 市民の命を危険に晒すことなく、完璧に11万の敵を捕らえることができるのか」

 

 今、俺が作戦を断行すれば雑魚はともかく、厄介な力を持つ敵達を逃がす羽目になる。

 そして俺が実行犯だとエンデヴァーは気づく。俺が捕まれば全てが白日の下に晒され、その影響は両親にまで及ぶ。

 雄英生徒が、なんてなれば学園、ひいてはエリにあらぬ危険を招くことになりかねない。

 だからこそ、大義名分がいる。ヒーローが、国が差配したという大義が。

 用意はある。作戦も、実現性もある。

 だが、ないのだ。大義が、後ろ盾が。

 

「早く、答えろよNo1。俺は思い通りにいかないからと断行するつもりも、犯罪者になるつもりも今はない。守りたいモノのためにこうして動いている俺の、お前たちが呑気にランキングで盛り上がっていた間、危険を冒してまで集めた情報と状況をお前のヒーロー観で潰すんだ。この意味が分かるか? 分かるよな!? 人を守るためじゃなく、No1にだけ執着して家族すら犠牲にした、息子殺しの家庭壊しのクズヒーロー!」

 

 お前だって殺してるじゃないか。

 よりにもよって自分の息子だぞ。実は生きてましたーで許される話じゃあない。

 

「……貴様の言いたいことはそれだけか?」

 

 いっちょ前に覚悟決めた顔してんじゃねえよ。

 こちとら生まれた時から覚悟ガンギマリなんだよ、そのために修行してきたんだ。

 

「ようやく、見つけたんだ。俺が、守りたいと思えたんだ……! 時間なんて関係ない、一度守るって決めたんだ! 何があっても、何をしても守るんだよ! 見えるか、俺の覚悟をお前は踏みつけているんだ! ガキの癇癪だって笑えばいい、だが覚えておけ。そのガキがお前たち役立たずが探しても見つからなかった決定的情報を、お前達の虚栄心が育てた日本の膿の首を、唯一ガキだけが掴めたってことを! 敵だヒーローだなんて下らねえことでお前等が自慰している間にだ!」

 

 ふー。

 

「言い切ったらすっきりしたでござるよ。先の失言、謝罪するでござる。それでNo1、儂様の情報を使ってどうするでござる」

 

 なんでござるー? 何コイツこわーみたいな目で見ないでくれでござるよ。

 大丈夫にござる。ひとつの手段が消えたとしても、守るための策を別に用意すればいいだけでござる。

 極論、トゥワイスとトガを殺せれば及第点。こちらは手段も実効性も実現性も隠蔽もパーペキでござる。

 

「別に殺したくてこんな作戦を考えたわけではござらん。先の話を天秤に掛けて、最も確実な方法を提示しただけにござる」

 

「そ、そうか……」

 

 でも、もしもこれで失敗しようものなら覚悟しろよ?

 

 それから話し合いは続き、儂様とエンデヴァーは個人的な密約を交わしたでござる。

 儂様はこれから解放戦線に加盟しているヒーローの情報などを、判明次第エンデヴァーに共有。

 エンデヴァーはそれらを基に、国と協力して作戦を用意する。

 とりあえず、今回の最低目標である協力者を得たでござる。

 

「この話、ミルコにはしていないのか?」

 

「性格的に大丈夫だとは思うでござるが、確証がないでござる」

 

「なるほど。貴様の疑り深さが今回の超常解放戦線の馬脚を現すに至った要因か」

 

「誉められて嬉しいでござるよ」

 

 さて、現状で話せることはなくなったでござる。

 さっさとお暇するでござるよー。

 

☆

 

 その話を聞いたとき、緑谷達が受けた衝撃からいくつかの思考が飛んでいた。

 

「エンデヴァー、人払いとは人を払うと書くでござるが……」

 

 だからこそ、忍堂が近くまで歩いてきたことも、聞き耳を立てていた襖が開けられたことにも気が付かなかった。

 

「儂様の情報がこんな簡単にバレるのであれば、渡す情報はもうないでござるよ」

 

 雪崩れ込むように緑谷、轟、爆豪が支えを失って倒れこむ。

 

「最近ナイトアイ事務所が忙しいからと、エンデヴァー事務所に預けられた緑谷とその他諸君。こんにちは、でござるよ」

 

「に、忍堂君……さっきの話って……」

 

「おいコラ忍者野郎! さっきの話はどういうことだ、アア!?」

 

「……」

 

 三者三様。緑谷と爆豪は学友に、轟だけは自らの父に視線が向けられていた。

 そんな三人の様子からすべては聞いていなくとも、事態の大きさを察していることははっきりとしていた。

 しかし、

 

「では、儂様は失礼するでござるよ。No1、これ以上儂様を失望させないで欲しいでござる」

 

「すまなかった。こちらの完全な落ち度、今後は細心の注意を」

 

「まずは自らの事務所に間者がいないか、それが分かり次第会合はそこで行うでござる」

 

 緑谷たちの疑問に答えることなく、言い捨てるように忍堂は部屋を後にしていった。

 

「テメエ! 待てや忍者野郎!!」

 

「さらばでござる」

 

 爆豪を一瞥した忍堂は一言告げ、白煙とともに消えてしまう。

 

「チィ!! 分身体かよ、戻ったらゼッテー問い詰めて吐かせてやる!」

 

「か、かっちゃん流石にそれは……」

 

「テメエはいいんかデク! 奴は敵連合の情報を持ってやがったんだぞ! しかも、連中の突かれたくねえ情報すべてだ!」

 

「口を閉じるんだ、爆豪。誰が聞いているかも分からん今、これ以上の情報流出は奴の身すら危険に晒す」

 

 エンデヴァーの咎める声はインターン中に見せた強い者のソレではなく、静かに責務を全うする大人のモノだった。

 

「オヤジ、忍堂のさっきの話はどういうことだ?」

 

「今はまだ何も言えん。この話が事実なら日本の命運が崖っぷちで揺れているのだ。お前たちも、今ここで聞いた話は忘れろ。少なくとも、状況が定まるまでは何もするな」

 

「アア!? 敵連合がクソデケー力持ったってことだろ、んな話聞いて知りませんでしたなんてできるわけねえだろうが」

 

 爆豪が納得いかないとエンデヴァーを睨むが、帰ってきたのは冷たい熱だった。

 

「分からんのか。奴が自らのインターン先すら警戒している、接点を持たない俺のところに今になって情報を持ってきたこと、奴が今なお危険にさらされながらも得た情報。言葉遊びではない、事実として日本に住む1億人以上の市民の命が、導火線に火のついた火薬庫の前に置かれているのだ」

 

 再三の忠告。

 プロとして数多くの修羅場と命を救ってきたヒーローの言葉は、1億という数値以上の返しを伴って緑谷たちの四肢にくさびを打ち込んだ。

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