個性チャクラで影分身 作:切って捨てて
どうもUSJ襲撃事件をパーペキに対処した儂様にござる!
え、ナイーブになってないのかって?
課題が見つかったのなら、克服すればいいだけでござるよ。そんな子供じゃあるまいに、うじうじ悩む時間があるならさっさと行動を起こせばいいのでござる。
「体育祭が始まる」
だからこそ、相澤先生が朝のHRで衝撃的な話をしている最中も、儂様は訓練を続けているでござる。
家には朝作った影分身がチャクラギリギリまで訓練を続けている。
儂様の個性はチャクラの作成。
個性であるがゆえか、面白いことに儂様にとってチャクラ切れ即ち死。というわけではない。
というか、チャクラが切れてもなんら問題はないのでござるよ。
どっちかと言えば、チャクラを練る方が疲れるでござる。
そんなこんなで、雄英高校の体育祭に対して説明がなされたわけでござるが、前世とは違い、この学校の体育祭は全国に中継されるし、プロのヒーローも見に来るといくつもの意味を持っているのでござる。
「それじゃ、これでHRを終わりにするが、忍堂。あとで俺のところに来い」
「え、儂様呼び出しでござるか!? 怒られることはしていないはずでござるよ!」
「怒るわけじゃないから。あとで来るように」
もしかして話半分に聞いていたことがバレたでござるか?
ビクビクと職員室に向かった儂様でござるが、幸いにも本当に怒られることはなく、相澤先生となぜか根津校長と対面することになったでござる。
「先日のヴィラン襲撃をいち早く伝えてくれて、本当にありがとう。感謝するよ!」
「感謝されるほどのことでもないでござるよ。して、どうして儂様は呼ばれたでござりまするか?」
根津校長の見た目はマジでネズミでござるが、その頭脳は雄英どころか世界単位でも飛びぬけているでござる。
そんな人が感謝を伝えるためだけに、この場を設けるとは思えないでござる。
「USJからこの学校までを瞬間移動したことについて、少し話があってね」
「学校に付けたマーキングを消せということでござるか?」
「違うよ。今回の襲撃、考えうる中で最良の結果に終わりはした。それでも、敵連合の首領は逃がしてしまったからね」
「今回、ヴィランが授業の科目をどこかで手に入れた可能性がある。奴らの目的はオールマイトの抹殺。つまり、今後も連中が襲ってくる確率は高い。そして、オールマイトの授業を最も多く受けるのはヒーロー科だ」
なるほど。相澤先生の言葉で理解したでござるよ。
「逆口寄せの術についてでござるな」
「話が早くて助かる。まず、逆口寄せの術について詳細を教えてくれ。距離やマーキングの設置可能数、条件、テレポートとの違い。緊急時にお前の個性が必要になる可能性がある」
「御意にござる」
距離に制約はなく、マーキングの設置数自体はいくらでも可能、条件は特になく媒体はなんにでもマーキングが可能。そして、逆口寄せ可能なのは自分自身だけ。
ということを伝えると、二人は想定していた通りと頷く。
「それじゃ。いくつか、このプレートにマーキングを付けてくれ。俺、オールマイト、根津校長が1枚ずつ所持する。今後、また敵連合が襲ってきた際には、これらを使って情報を伝えてくれ」
「御意に」
渡された3枚の手の平ほどのプレートにマーキングを付けると、根津校長が頭を下げてきたでござる。
「申し訳ない。学生の君にこんなことをお願いするなんて羞愧に堪えない、本来はありえてはいけないんだ。しかし、連絡手段を封じられた今回の件をそのままにしておくことの方が、君達にとっての危険につながってしまう」
根津校長。流石ヒーローを育成する機関のトップだけあって、出来た人でござるよ。
相澤先生も、初日の一件以来あまり好かない先生であったでござるが、USJの時は儂様達の安全を第一に考え、自らを犠牲にするためらいすら見せなかったでござる。
この人たちの精神性は、儂様の目標にも通じるでござるよ。
「謝罪は要らぬでござるよ。どちらかと言えばお願いがあるでござるよ」
儂様はマーキングしたプレートを持つ。
「儂様は逆口寄せの術を世に出すつもりはないでござる。他先生方にも、伝えず。情報を知っている人は最小限にして欲しいでござる」
距離も状況も関係なく、瞬時に移動が可能と知られれば、敵に真っ先に狙われるのは儂様にござる。
儂様の命の価値が高くなる状況は、総じて危機的な状況だと容易に想像できるでござる。
そんなとき、誰よりも早く、誰よりも確実に情報を伝えることがどれほど重要か、子供にだって分かるでござるよ。
「それについては俺達から願い出ようと考えていたが、いいのか?」
「いい、とは何でござるか?」
分からず首を傾げると、根津校長が説明してくれたでござる。
「瞬時に移動できる個性は、ヒーローにとって治療系の個性と同じぐらい貴重なものなのさ。忍堂君の場合は、影分身で瞬時に人手を確保できる。つまり、君はヒーローが求める人手と速度の両方を持っているということ。次の体育祭でこの二つをアピールすれば、プロヒーローからオファーが多く来るはずだよ」
なるほど。つまり儂様のアピールポイントが減ってしまうぞ、というわけでござるか。
「舐めないでいただきたい」
馬鹿にしているのか?
「俺の求めるヒーローとは大衆向けのピエロではありません。もてはやされるつもりも、ヒーローとして大成したいわけでもありません」
「それなら、君はどうしてヒーローを目指すんだい」
「守るため。俺の忍道は、たとえ影の暗がりだろうが、大衆に認められず非難されたとしても、守るべきもののために命を賭してもやり遂げることです」
NARUTOのイタチがいい例だろう。国のため、肉親すら殺して見せた裏切り者。
任務のため、自らの命を対価に英雄を守った名もなき忍達。
名があろうがなかろうが、俺にとっての憧れだ。
自分が成れないからこそ、彼らの光が俺の瞳を焼くのだ。
「ま、儂様はお金はいっぱい欲しいでござるが!」
「君は、すでに立派なヒーローなんだね」
根津校長に、まさかと答える。
「儂様がヒーローになるのは、死したときのみでござるよ」
守るモノのために死ぬ。今の俺にはとうてい無理なことで、いつかはできるようになりたいと思っている程度のガキでしかない。
「なので、今度の雄英体育祭では逆口寄せの術は使わないでござる故、承知の程よろしくお願いするでござる」
了承する二人に頭を下げて、儂様は職員室を後にしたでござる。
後日。儂様は悶えたでござる。
「ねえ、忍堂君はどうしてたまに震えてるの?」
「やめとけ緑谷。オイラの秘蔵コレクションにも無反応、なんか今日のアイツ変なんだよ」
あぁああああやってしまったでござるよおおお!
あんな、あんなの……まるで普段おちゃらけている奴がたまにきりっとした姿を見せる、ハズイシーンでござるよおおおおおお!
アニメでああいうキャラを見るたび、儂様はバカにしてたでござる。
「はは。はいはい、かっこいいかっこいい。ぷぷ」ってめっちゃ馬鹿にしてたでござるのに!
恥ずかしい! 超、恥ずかしいでござるよおおおおお!
「体がうるせえんだよ! 黙れや忍者野郎!」
「うるせえでござるよボンバヘアー! 儂様は今突発性思い出し羞恥心を発症させているでござる故、触ってくれるなでござる!」
「誰が触るかゴラ!」
くぅ。爆豪はいいでござるよな。
チンピラ言動が素だから、儂様のような失態もないでござろうし。羨ましいでござる。
恨めしく爆豪を見ていたら、何やら教室の出入り口が騒がしいでござるな。
「君達、A組に何か用か?」
対応に向かった飯田の先を見れば、無数の生徒が廊下に広がっていたでござるよ。
あれじゃまともに外にも出れないでござるな。
「出れねえじゃん! 何しに来たんだよコイツ等!」
うむ。身長が低い峰田からすればまさしく壁でござるな。
そして、それを見ていた爆豪がつまらないとばかりに口を開いたでござる。
「敵情視察だろ、ザコ! ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな、体育祭の前に見ときてえんだろ」
おー。他人が言いづらいことを堂々と言うそのスタンス。最高にバッチグーでござる。
「そんな事したって意味ねえから。どけ、モブども!」
「知らない人をとりあえずモブって言うのやめなさい」
瀬呂が的確なツッコミで場を和ませようとするが、正直焼け石に水でござる。
ちなみに、焼けてるのは見知らぬ雄英生徒と爆豪でござる。
だが、一度ヴィランと戦った爆豪の気迫に、生徒たちが怯む中、ひとりの生徒が前に出てきたでござる。
「噂のA組がどんなもんかと見に来たが、ずいぶんと偉そうだな。ヒーロー科に在籍するヤツは、皆こんななのかい? こういうの見ちゃうと、幻滅するな」
紫色の髪をした生徒が爆豪と真正面から見合う。
「普通科とか他の科って、ヒーロー科を落ちたから入ったってやつ、結構いるんだ。知ってた?」
倍率300ともなれば自明の理でござろう。
そして、中にはヒーロー科の枠に漏れた、ヒーロー科に一歩及ばない程度の才能がいるはずでござる。
「そんな俺達にも、学校側はチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆も、また然りらしいよ」
あぁ。なんとも、
「敵情視察? 少なくとも俺は、いくらヒーロー科とはいえ調子乗ってっと、足元ごっそりすくっちゃうぞっつう宣戦布告しに来たつもり」
なんと馬鹿な考えでござろう。
一度負けた者が、敗者が宣戦布告とは。なんと滑稽なことにござろう。
お前らがするべきはそこに立つことではないでござる。血反吐を吐くまで鍛え、血便出るまで踏ん張ることにござる。
その程度の覚悟で立つなんて、ダサすぎるでござるよ。
高校生にソレを求めるのは時代錯誤かもしれない。しかし、世間が求めるヒーロー像というのは、酷く歪なものにござる。
そして、A組に来て分かったことでござるが、ヒーローの卵が世間に求めるモノは酷く純粋にござる。
このギャップに苦しまないことを祈るでござる。
「おうおう、隣のB組のモンだけどよオ! ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ったんだがよ! えらく調子づいちゃってんなァおい!」
銀髪のあんちゃん。自己紹介ありがとうでござる。
B組も面白そうなメンツがいるでござるなぁ。
「あんまり吠えすぎてっと、本番で恥ずかしいことになっぞ!」
しかし悲しいかな。我らA組きってのチンピラ爆豪は無視して廊下に歩いて行ってしまうでござる。
「無視かテメエ!」
これには爆豪の言動に真正面からぶつかる切島が口を挟んだ。
「待てコラ爆豪! どうしてくれんだっ、おめえのせいでヘイト集まりまくってんじゃねえか!」
「関係ねえよ」
爆豪の静かな声。
「上に上がれば、関係ねえ」
上ってなんでござろうか。
「忍者野郎」
「む、儂様でござるか?」
「体育祭でテメエを完膚なきまで叩きのめす。そんで俺が一番になってやるよ」
ま、まさかのライバル宣言でござるぅ! もしかして、実技入試1位のことまだ根に持ってるでござるか!?
しかし、爆豪。なにか思い違いをしているでござらないか?
「すまぬが、儂様とお前では見ている世界が違うでござるよ」
儂様はこの学校でトップになるつもりなんてサラサラないでござる。
求めるは結果のみ。過程で儂様が最下位になろうが、求める結果に至れるのなら関係ないのでござる。
しかし、爆豪もまだ高校生。儂様と求めるヒーロー像は違えど、善良なる国民と国を守る存在を目指すもの。それはA組のみならず、そこに集まる有象無象も変わりはないでござる。
彼らの輝きは敵でも大衆でもなく、仲間によって磨かれるときなのだ。
「だからこそ、あえて言おうぞ。お前が届くほど、低いところに儂様は座っておらんでござる」
ぐるりとA組と、廊下にいる生徒たちを見る。
「雑魚の吠える姿ほど、滑稽なものはないでござる」
「けっ」
吐き捨てるように、爆豪は去っていったでござる。
「ふっ。決まったでござる」
「なに決めてんだエセ忍者コラー!」
「いだい!? 峰田! 背中がこうビタンてしたでござる! すっごい痛いでござる!」
不意の一撃に悶えていると、切島と瀬呂がやってくる。
「おーおー、A組トップの男は言うことが違うねー」
「爆豪の気概もそうだが、忍堂の受けて立つ構え! 男だったぜ!」
「何か勘違いをしているでござるよ。そもそも競うなんて考えが馬鹿らしいのでござる」
へ。と固まる周りを気にせず、言葉を続ける。
「1位になれば。敵を倒せるのでござるか? 守れるでござるか? 儂様が求める結果は明確にござるが、お前たちの求める結果は見えているのでござるか?」
さてと、言いたいことも終えたでござる。
訓練場の申請はすでに出しているし、さっさと修練に向かうでござるよ。
と、席を立って廊下に出た儂様を止める声が。
「どうしたでござる、尾白」
「ちょっと、いいか?」