個性チャクラで影分身 作:切って捨てて
さてさて、雄英体育祭も第一第二種目を終えて残すは最終種目のトーナメント戦になったでござる。
第二種目は? と思う方もござりましょうが、1000万ポイントで生徒から狙われるはずだし、そんなスッキリ終わるなんてありえない。と思っている方もござりましょう。
そんな皆様のために、大変面白くない第二種目を一応ダイジェストでお送りするでござる。
☆
第二種目開始と同時に、全員が忍堂のチームを探した。
しかし、
『こ、こいつはどういうことだ! 騎馬戦注目の1000万ポイントを持っている、忍堂チームがいないだとォ!?』
プレゼントマイクの絶叫が、スタジアム全体の思いを代弁していた。
どこを探しても忍堂の姿がない。
そのまま絶妙な空気が場を支配するなか、真っ先に動いたのはB組だった。
『おーっと! ここで1年B組物間が1年A組爆豪の鉢巻を搔っ攫っていったぞ!』
そして、第一種目トップの忍堂がいない中、第二種目が始まってしまう。
中には忍堂の姿を血眼になって探す者もいたが、いないならいないで近くの鉢巻を奪えばいい。
そうして混戦になれば忍堂の存在を忘れはせずとも、低い優先順位に配置されるのは当然だった。
『第二種目終了~!』
誰もが気味の悪い感覚を抱きながらも、果敢に戦った第二種目。
確かに熱い戦いがあった、取って取られプライドのぶつけ合いがあった。
トップさえ不在でなければ、例年通り盛り上がっていたはずだった。
「いやー。皆ご苦労様でござった! 儂様も見ていて大興奮でござった!」
盛り上がりに水を差す最たる原因が、平然とスタジアムに立っていた。
「テメエ忍者野郎どこに隠れていやがった!!」
「儂様はずっとこのスタジアムにいたでござるよ。お主達が儂様の下に来なかっただけでござろうに」
「ンダトォオ! テメエ!」
『はいそこ! 騒がない! それじゃ、騎馬戦1位通過は10000290ptを獲得した忍堂君チーム!』
「やったでござるな! 心操、尾白、庄田! 儂様達の圧倒的な勝利でござる!」
わざとらしく名前を呼び、忍堂はチームメイトたちにハイタッチをする。
心操はどこか拍子抜けした顔を見せ、残る二人はどうしたもんかと頭を掻いていた。
だが、それに異議を唱えたのは峰田チーム。
「ふざけんなよ! お前らのチームの鉢巻はオイラ達が奪ったはずだ! そのあと爆豪に取られたけどよ!」
不正が発覚すれば運営サイドからお達しがあるはず。それがないということは種も仕掛けもあるということ。
「クソ忍者野郎ォ! テメエ! 舐めたことしてくれんじゃねえか、ァア!?」
「お、流石爆豪。気づいたでござるか」
隠すほどでもないと、忍堂は変化の術を使い290ポイントの鉢巻に変化する。
ソレを見た全員が思い出す。第一種目で忍堂がどうやって地雷ゾーンを抜けたのか。
「いやー。梅雨ちゃんのベロにからめとられた時はゾクゾクしたでござるよ。未知との遭遇でござる。それに比べ、爆豪の髪はちくちくして痒かったでござるよ。トリートメント使ってるでござるか?」
「~~~~~ッ!!!!???」
爆豪の言葉にならない絶叫がスタジアムに響いた。
☆
ということでござる。
うん。儂様まーじでなんもしてないでござる。
でも、勝てればOKスタイルな儂様。
ちなみに、心操たちをチームに誘ったのは流れでござる。
最初は尾白に頼もうと思っていたのでござるが、心操の個性によって洗脳されていたんでござる。
この時点で運営によるお咎めもなかったので、黙認されているのでござろうと分かったので、尾白たちを起こして心操と話し、試合開始前に変化していたってことでござるよ。
「心操の洗脳を解いてくれたのはありがたいけどさ、正直この勝ち方もどうかと思うぞ」
「騎馬戦はチーム戦を前提にしている。競技の趣旨に鑑みれば、忍堂のワンマンプレイによる勝利に僕達の力は示されていない」
他のチームも大なり小なり互いの個性を連携させていた、それに引き換え儂様のチームはそれがない。
そう言われればなるほどと納得するのでござるが。
「適材適所と答えるでござるよ。尾白に庄田。連携するのは必要があるからにござる」
「つまり。チームの構成が僕達である必要はなかったと」
庄田のこれはプライドはあるが、事実は事実として受け止めたい。という顔でござるな。
「なかったでござる。特に、明確な騎馬への攻撃を制限されている以上、リスキーでしかないでござるよ」
「ふむ。これは自らの実力不足を認めるべきか。しかし、このままトーナメントに参加することは、自身の矜持に反する」
「……俺もだ」
庄田と尾白が去っていく。
残った儂様に心操が声を掛けてきたでござる。
「どうして、俺をチームに入れたんだ」
「作戦を他のチームに流布されても困るでござるよ。儂様がどこのチームにいるのかすら、儂様は隠したかったでござる」
「ヒーローらしくないな」
「もちのろんでござる。儂様が目指すところは心操達とは別の光にござる」
「……俺の個性知ってるのに、会話するんだな」
はて、こやつめは何が言いたいのでござるか?
「個性が洗脳だと、会話しないのでござるか?」
「だって、怖くないのか? いつ洗脳されるかもわからないだろ」
ははーん。こやつめNARUTOを知らぬでござるな!
ごめん。この世界に無かったよね、NARUTO。
儂様は心操の額に指を置く。キョトンとする心操に「怖いでござるか?」と聞けば、首を横に振るったでござるよ。
「今、儂様が力を籠めれば心操は死んでいるでござるよ」
そう言って、今度は壁に指を当てて、チャクラコントロールによる強化をして指を壁に打ち込む。
「なっ!?」
「わははは! そういうことでござるよ。力は所詮力でしかないでござる。誰が、いつ、なぜ行使するのか。重要なのはここにござる」
再び心操の額に指を当てる。
今度はビクリと儂様の指を見る。
「知らぬは日常、知れば恐怖、原理まで理解すれば恐怖は力を失うでござる」
ま、高校生だし。ヒーローを本気で目指しているのなら、儂様としては大歓迎でござるよ。
「心操は、ヒーローを目指す者が理由もなく、むやみやたらに力を行使すると思うでござるか? 行使するだけの、自分にそれだけの価値があると、思い上がっているでござるか?」
不意打ちは難しいでござるが、こうしてチャクラコントロールで不安定なチャクラを維持しておけば、洗脳と同時にチャクラが軽く暴発して洗脳は解けるでござる。
ヒーローを目指すと言うのなら、プライドはあるはず。現に儂様を強く睨みつけてるでござる。
指を放して笑う。
「ヒーロー科で待っているでござるよ。儂様、ヒーロー科でも一番強いでござるから」
「はっ。じゃあこのトーナメントも優勝するんだろ。なんせ、一番強いんだからな?」
「そうでござるな。優勝する理由も増えたし、頑張るでござるよ」
もともとA組の成長のため、優勝するつもりでござった。
と言っても、別に儂様的には自分がトップである必要はないでござるが。
必要な時、必要な分の力で、求める結果に至れるのなら、たとえ最下位だったとしても気にしないでござる。
今回は、皆の成長が儂様の求める結果でござる。
ちなみに、尾白とぽっちゃり君は棄権したでござる。
☆
トーナメントが始まる前。
熱くなったスタジアムと選手に休憩の時間が設けられた。
『全員参加のレクリエーション! 開始よ!』
ミッドナイトの宣言によって始まったそれは、戦い競う体育祭において、例外ではなかった。
最初に行われたのは借り物競争。
「忍堂! ギターだ!」
「任されよ!」
「忍堂! 今度はアロハシャツ!」
「ほほい!」
「ボクシンググローブ!」
「アフロ!!」
「超合金ガンデロイザー!」
「ほほいほほいほほいのほい!」
「あいつがいればオイラ達の圧勝だぜ!」
「峰田君、コレ本当にいいのかな……?」
A組の借り物競争はそのすべてが忍堂の下に送られ、忍堂は変化の術でお題のすべてを再現していった。
そのあとにもボール転がしや三角ベースが催され、スタジアムを大いに盛り上げた。
そんな中、事件が起きる。
「峰田さん、上鳴さん。こ、これはどういうことですの!?」
絶叫にも似た声を挙げるのは八百万。
両手にはポンポンを持ち、へそ出しのチア衣装に身を包んだ姿である。
しかも、八百万だけではない。
後ろで二人を射殺さんばかりに睨む同じ衣装のA組女子。
「ほほう! これはなんと眼福! 儂様大歓喜でござるよ!」
件の仕掛け人である二人と、見ていた忍堂が固い握手を交わす。
「忍堂さん!」
「忍堂君~? ウチ等だけこんな格好させるのはずるくなーい?」
「あ、そう言えば衣装がまだ余ってたよ。ウチ持ってくる」
「ま、待って耳郎! 男の俺らがしてもマジで寒いだけだって!」
「オイラは見る専門だぜ!?」
この先起きる出来事に青ざめる二人だが、忍堂が豪快に笑った。
「わはは! 持ってくるがいい!」
「テメ忍堂! お前はいいのかよ!?」
「お前頭おかしいんじゃねえの!?」
「ギャグ要員上忍、忍堂! いきまーす!!」
「行くな忍堂ゥ! お前が行ったらオイラ達も行かなくちゃいけなくなるだろ!」
「そうだぞおめー! 人の気持ち考えろ!」
「なにやってんだ、アレ」
「心操、気にするな。巻き込まれるぞ」
そして出来上がったのは大衆のお笑い三トリオ。
ヒーロー科で鍛えられた体を惜しみなくさらす、男チアの姿であった。
峰田と上鳴は死んだ魚の目を浮かべ、力なく笑い、忍堂だけが豪快に笑っていた。
「よくぞ笑ってくれた大衆の諸君! 今度はいい物を見せてやるでござるよ!」
忍堂は印を結ぶ。
「分身の術! からの変化の術! 題して! お色気チアハーレムの術!」
スタジアムに響いていた笑い声が止む。
それもそのはず、白煙が上がり中から出てきたのは10数人の絶世のチア美女軍団!
男性のみならず、女性をも魅了するチア集団がスタジアムの中央で踊る。
「「「うぉおおおおおおおお! 雄・英! 雄・英! 雄・英!」」」
男達が湧いた。
「いいわねえ! 私も混ざるわよ!」
ミッドナイトも大興奮で参加した。
『えー。1年A組、忍堂。俺のところに出頭するように』
「今が楽しければ問題ないでござる!」
「刹那的やねっ!?」
忍堂はやり切った。スタジアムは大盛り上がり。
相澤は怒った。忍堂はガチトーナメントまで正座で反省文を書いた。
雄英体育祭は例年以上に盛り上がり、スタジアムが興奮に包まれる中、ガチトーナメントが開始した。
ガチトーナメントは緑谷と対戦した心操が見せ場を作るも負け、緑谷が第二回戦にコマを進めた。
次戦、轟VS瀬呂。緑谷達の時とは打って変わり、試合開始と同時に轟がスタジアムを超える程の巨大氷河を展開、一方的な試合でおわる。
塩崎VS上鳴は、上鳴の電気を個性の髪で防ぎ切った塩崎が勝利。
飯田VSサポート科の発目は、発目のベイビー(サポートアイテム)のお披露目が終わると自ら棄権。不完全燃焼な飯田が2回戦に進んだ。
そして、忍堂VS芦戸の対人戦闘訓練いらいのマッチングが始まる。
スタジアム中央に設置された専用の対戦場で、芦戸と忍堂が向かい合う。
「戦闘訓練以来だね、忍堂」
「そうでござるな。芦戸も成長しているようで何よりでござる」
「ほんと、上から目線だよね。もう勝ったつもりでいるの?」
「儂様純粋に称賛しているだけでござるのに……」
少し忍堂が落ち込んだ様子を見せたまま、試合が始まった。
「当たったら溶けちゃうぞー!」
最初に動いたのは芦戸。
腕から酸を出しながら忍堂に迫る。
(防御すれば酸の餌食! 避けるしかないよ、忍堂!)
声を挙げながらも冷静に勝ち筋を探す芦戸。
影分身が脆いことは対人訓練の時に把握済み、変化の術も物体になれば自分から動くことはできない。
土分身の術を見ていない芦戸だったが、コンクリートの上でその分身を出すには相当数のチャクラを消費する。
結果的に、芦戸が把握する中で忍堂が取れる行動は絞られていた。
じりじりと逃げ場を詰めて場外狙い。
忍堂の動きを見逃さぬよう集中。対して忍堂の動きは。
「なっ!?」
防御でも回避でもなく、回し蹴り。
足への強打によって膝を崩した芦戸に、忍堂は容赦なく詰め寄る。
「酸は強力かもしれないが、ジャージを溶かすまいと腕からしか出さないのはダメでござるよ」
腹部に再び蹴りが飛ぶ。
吹き飛ばされながら、内臓を押し上げられる感覚に思わず口を押えてしまう。
「衣類を攻撃すれば酸はない。現状接近戦しか手段を持たぬ芦戸にとって、明確な弱点でござる。格闘戦の心得もなし、致命的でござるよ」
回復する余裕も与えず、倒れた芦戸の足を掴み強引に場外に投げ飛ばす。
「以後、精進するでござるよ」
『き、決まったー! 1年A組忍堂! なんと個性を使わず体術のみで完封しちまったぜえ!』
『元々体術関連はA組でも並ぶ奴はいない。純粋な近接戦になれば忍堂に軍配が上がる』
『それにしても女相手に容赦ねえなァ! 忍堂! スポーツマンシップってか!』
『むしろ、相手が女だからと手を抜くならヒーローとは言えん。それは芦戸に対する侮辱だ』
忍堂、1回戦突破。