皆誤字報告ありがとう、マジで助かりますっ!
毎度毎度7000字くらいに収めようとしてるのに、大体超過しちゃうのが悩みだわ。
雑多な騒がしさが流れている。
金属が擦れ合う音に取りとめのない話し声が絡み合う中、多くの者が周囲を行き交い何らかの作業に勤しんでいた。器材を肩に担ぐ者、地面に鉄杭を打ち込む者、小走りで伝言を言い渡していく者、様々だ。
中規模ほどの野営風景。
【アストレア・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】は合同で野営地を形成していた。
理由としてはアリーゼの圧倒的コミュ力を以てフィンを圧倒し、打算など挟ませる余地すらない速攻で合同で野営地を組むことが決定した。
野営地の設営については、「サポーターだしな」とザルドが一手に担う…というより、遠征に帯同しながら何もしないで地上に帰ったらアルフィアに何を言われるか分かったものではないザルドは、フィンに頼まれたのもあって進んで雑事をこなしていった。
そんなザルドを遠巻きに見やる、白髪の少年が居た。
白黒の
男女どちらもイケるのではないかと思わせるほど中性的な顔立ちの少年──ベルはザルドの料理姿を見て、そのアンバランスな見た目を見ながら笑いを堪えていた。
そんなベルが、背後から声をかけられる。
「ベル、お前何やってんだ?」
「ヴェルフ…いや、なんでもない」
自分の名前を呼ぶ声に、ベルは振り返る。
そこに居たのは赫灼の髪を持つ青年、ヴェルフだった。
彼はベルに声をかけるなり、顔に笑みを浮かべながらある一点を指さした。
そこに居たのは一人の
長い脚を用いてアマゾネスの少女の腰を蹴りつけるという非道を行うその獣人の青年を視界に捉え、毎度のお約束よろしく、二人は盛大に馬鹿にした。
「ねぇねぇ、ヴェルフさん。見ましたかぁ?」
「えぇえぇ、見ましたよベルさん。お隣のベート君、まだやんちゃな時期から抜けられないのねぇ」
「ほんとに困った子よねぇ」
「いつまでも親に迷惑かけてちゃ、ろくな大人になれないのにねぇ」
「「ねぇ〜」」
「聞こえてんだよ、ベルっ!バ鍛冶師っ!」
ベルとヴェルフが神々から教わった
「なんだよベート、まだやっててよかったんだぜ?」
「そうだよベート。僕達は気にしないから、さ」
「よし、ブッ殺す」
「「きゃーこわーい」」
その棒読みの悲鳴が逆にベートの逆鱗に触れ、ベルとヴェルフに突撃するが、
ベートに勝ち目などないので、いつも通りベルがベートの全ての攻撃を往なし、ヴェルフが首に手を回して絞め上げ、拘束する。
「なんでアルゴノゥト君達はベートとそんなに仲がいいのさぁ!!」
「別に、仲がいいわけじゃありませんよ。ティオナさん」
「そうだな、強いて言うなら腐れ縁だな」
健康的な小麦色の肌。その顔立ちには一片の曇りもなく、彼女持ち前の快活さが滲み出ている。
服装はアマゾネス特有の踊り子のような衣装で、露出が多い。上は薄い胸回りを覆う布一枚、腰には長いパレオを巻いている。
臍やしなやかな肢体を惜しみなく晒していた。
そのアマゾネスの少女の名はティオナ。
ティオナは心底不思議そうな顔をしてベルに問う。ちなみに『アルゴノゥト君』という呼び名は初めてランクアップした時の二つ名がそのまま使われたものであり、その二つ名を付けたのは彼の祖父であるゼウスだった。
何が何でもソレをつけてもらうために、ゼウスはあのヘラに頭を下げて他の神々を脅し、この二つ名をアストレアにもぎ取ってもらった。
「確かに…、もしかしてベルも不良なの?」
蒼色の軽装に包まれた線の細い体。肌はきめ細かいと同時に瑞々しく、繊細な顔立ちは遠目からでもわかるほど整っている。透いた輝きを宿す瞳は、髪の色と同じ金色だ。
性別問わず見る者の目を奪う美しいその容姿は、エルフにも、女神にさえ劣らない。
そんなリューとも春姫とも毛色の違う金色の髪の少女─アイズも心底不服そうにベルに言う。
「いや、ベートやアレンさんと一緒にしないで下さいよ」
「そうだな、そりゃベルが可哀想ってもんだ」
「テメェ等、いい加減マジでブチ殺すぞ」
「やってみろよ
「そうだよベート。確かに
そうベルが言うと、ベートは渋々参ったと言わんばかりに両手を上げ、それを見たヴェルフも首の拘束を解く。
「──フッ!」
「──っんな?!」
瞬間、ベートがヴェルフに不意打ちの
その一撃はヴェルフの顎を正確に捉え、そこから互いに火がついた二人はドンパチを行い、ベルは少し離れたところからそれを笑いながら見ていた。
「ほ…本当は仲が悪いんじゃぁ…」
「まぁ、仲が悪いわけじゃないと思うけど。そうだったら二人の性格上、即座に殺し合ってるし」
「いや、でも実際に殺し合ってるじゃないですか…」
「…はい。そこは否定できないかもです」
そこには、山吹色の長髪を後ろでまとめたエルフの少女が立っていた。
顔の両端に垂れる一房の髪から伸びるのは、木の葉のように細く尖った耳。
容姿端麗で知られる、エルフの種族だ。
「お久しぶりです、レフィーヤさん」
「はい、お久しぶりです。ベル」
花のような可愛らしく尖った耳をピョコンと跳ねさせながら、エルフの少女─レフィーヤはベルに声をかけた。
目の前で行われている殺し合い(笑)を観ながら、信じられないと言った表情をするレフィーヤに、ベルは苦笑しながら、弱々しく言い返す。
小振りな目鼻立ちにはどこかあどけなさも窺えるが、種族特有の麗しさがやはり色濃い。その優美な相貌は、今は引き攣った表情へと変化している。
「ベルのモフモフは…、渡さないっ!」
「アイズさん…?」
楽しくベート達とじゃれ合っていたベルが気に入らないのか、兎の飼い主を自称するアイズはベルの頭を両手で梳ながらベルの
その一連の行動にレフィーヤは固まり、「破廉恥ですっ!」と連呼するだけの
「(いや…お義母さんがいないところでやるなら、まだ分かる。だけどこの人…、お義母さんの前でも平然とやるからな)」
もう数年前に遡るが、当時のアイズちゃん(九歳Lv.3)がベル(七歳恩恵なし)を追い回し、その頭をバチクソにモフり散らしたのは当時を知る冒険者達の間ではかなり有名な事件。その際、アイズがアルフィアに「この
そう、彼女は頭に“ド”が付くほどの天然。流石に生きていけるのかすら怪しいほどではないが、コミュ力の低さも相まってベルからすると『手の掛かりすぎる妹みたいな姉』という認識が固まっていた。
「何やってるのよ……まぁ、聞かなくても見当はつくけど」
「……ティオネ」
何処からか騒ぎを聞きつけたのか、ティオナと同じアマゾネスの少女がアイズ達の隣に並ぶ。
腰まで届く長い髪型と雰囲気、後は一部の胸囲を除けば、ティオナと瓜二つだ。
ティオナの姉妹、双子の姉でもあるティオネが、溜息を堪えながらアイズに振り向く。
「アイズ、団長が呼んでいたわ、行ってきなさい。あれは私がやっておくから」
「……ごめん」
「いいわよ。──ほら、あんた達、遊んでるなら野営の準備を手伝ってきなさい」
注意を促すティオネの声を背で聞きつつ、アイズはその場を後にした。
ティオネはそのまま、喧嘩もといじゃれ合っているベートとヴェルフの頭を殴りつけておとなしくさせた。
アイズがショボンとしながらフィンさん達のほうへと向かうのを確認し、そして同時に哀れにも若干思う。
「(あぁ、怒られるんだろうな、可哀想に)」
先程の『
強くなりたいのはわかるけど、他人を心配させちゃ駄目ですよ、アイズさん。
✕ ✕ ✕
携行用の『魔石灯』がいくつもの光を揺らす中、【アストレア・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】の面々は合同で食事を始めようとしていた。
厨房に立っているのは、巌の如き厳つさを誇るヒューマンのザルドと、対照的にお前もしかして
最初はリューも手伝おうとしたが、アストレアFの面々が決死の覚悟でリューを連れ出し、何とか事なきを得た。正直、リューの料理はアリーゼの料理と違って見た目だけは良質なのだ、故にこそ見た目では判断出来ず、アストレアFの面々は何度それに騙されて死にかけたことか。
その度に、【
あのアルフィアが言葉を濁すくらいには、リューには料理の才能がなかった。
「ベル様、ほかにお手伝いすることはありますか?」
「ううん、ありがと
ピョコンと生えた狐耳を揺らしながら、極東装束に身を包む春姫も、ベルとザルドの料理を手伝った。戦いの才能が一切ない春姫だが、それ以外、特に家事においてはかなりの才能を持っていたので、遠征時は春姫が進んで雑事を引き受けているが、今回は作る量が多すぎる為、ザルドとベルも手伝っている。
この50階層は、ダンジョンの中でもモンスターが産まれない貴重な
ダンジョンに数層存在する
『乾杯!』
アマゾネス姉妹の話に笑いながら、フィンが音頭を取り、みなの唱和が続く。ダンジョン内ということで誰もが心中で警戒を忘れない中、その飲み食いを通して、彼等はほんの少々羽目を外した。
いつも通りの能天気さを発揮しながら、アリーゼが思いっきり羽目を外し、リューや輝夜が
ネーゼ達前衛組の尽力でようやく気絶させて木に縛り付けることが出来たアリーゼだが、どうせ数分すれば起き上がるだろうとファミリアの全員が思っていた。
それも当然、あのアルフィアに躾けられた彼女達にとって、ただの打撃など痒いくらいだ。なので、アリーゼもすぐに意識を取り戻してお得意の魔法で縄ごと焼き払って、またこっちに来るだろうと皆は思う。
中央に設けられた大鍋を全員で囲む。鍋の中身は途中の階層で採った
迷宮産の木の実や
諸事情により、ダンジョン内の食事は携行食といった粗末なものになりがちなので、今回のこれはごちそうと言っていい。士気も考慮したフィンがベルとザルドに料理の依頼を出し、二人もそれを快諾。その計らいのおかげか、リューたちも、そして【ロキ・ファミリア】の団員達もダンジョン内では滅多に口に出来ない料理に舌鼓を打つ。
「で、なんでアイズさんは
「…私は、大丈夫」
「なーんて強がって、実はぐぅぐぅお腹鳴らしてるんじゃなーい? ほらほらー?」
「……」
ブロック状の携帯食を齧るだけのアイズを呆れましまりベルは問いただす中、ティオナがスープしか残っていない容器を近付けてくる。
食欲を存分に刺激する馥郁たる香りに視線が揺らぐが、アイズは鉄の意志でぷいっと顔を背ける。過剰な食事は
「僕が作った料理は、嫌ですか?」
「ンぐっ?! …それは、違う…けど」
「じゃあ食べれますよね。いつもじゃが丸君を山程食べてるんですから」
「……ベルの意地悪」
勝ったッ!内心勝ち誇るベルは大鍋からよそってきたスープのお椀をアイズへと渡し、アイズもそれを受け取る。そして一口食べようとした瞬間、アイズの視界に
「こ…これは、
「はい、しっかり食べて下さいね」
悪魔だっ!!アイズは内心嵌められた事に気づいて地団駄を踏んだ。もう受け取ってしまった以上は引き返せないので、食べるしかないが、そのお椀の中にはアイズの嫌いな人参が沢山入っていた。
「ベル、食べて良いよ」
「アイズさんの分なんですから、自分で食べていいですよぉ〜」
「駄目、姉の言う事に、弟は逆らえない」
「それ…誰から教わったんですか?」
「…ロキ?」
「なんで疑問形」
好き嫌いをしているのは、今までの経験上ベルも分かっているが、今回だけは違う。先程頭をモフってきたことに関してはまだ許してないので、これで手打ちとしよう。
アイズが必死に人参をベルに押し付けようとすると、何処からか鋭い視線、正確に言えば翡翠色のハイエルフの視線が少し遠くから鋭く突き刺さっている。
「し…してやられた……、ガクッ」
無理矢理人参だけを先に食べ、アイズはスープを完食した。二杯目をベルがよそおうとしたので、危険を感知したアイズはせっせと自分でスープをよそい、人参だけを避けた結果、リヴェリアにより人参を追加させられるという地獄を見た。
✕ ✕ ✕
「それじゃあ、私達は数時間の
大鍋を片付け、【ロキ・ファミリア】と別れたアリーゼ達【アストレア・ファミリア】は、今回の遠征の目的でもある『到達階層更新』という強制
本来なら深層へと行くついでに様々な
前回の遠征では58階層に到達した際、何故かリューと輝夜が喧嘩したせいで陣形が乱れ、ベルは竜を狩り続けていた為援護に間に合わず、撤退を余儀なくされてしまった。
今度は喧嘩しないようにっ!とアリーゼに言われたリューと輝夜は肩身が狭そうにしながら、前回の遠征では招集していなかったヘディンやヘグニ、ヴェルフは何のことかさっぱりだが、それでも大抵の事のあらましは予想出来たが故に、三人は苦笑やらため息やらをついていた。
そして数時間のレストを挟んだ【アストレア・ファミリア】は、【ロキ・ファミリア】が個人的な
「(もうそろあの溶解液をばら撒いてくるモンスターが出てくるし、この不壊剣もようやく本領発揮出来るな)」
ベルは自分の左腰に佩いている漆黒の片手剣を引き抜きながら思う。
ここまで来るのにも相当な時間が掛かったのもそうだが、僕が転生前に会得した知識を露見させることが出来ない。文字に起こすのもそうだが、言葉にするのも駄目だ。した瞬間に世界の修正力よろしく、記憶ごと抹消されてしまうのだ。こればっかりは【幸運】様でも潜り抜けられない…いや、【幸運】のせいかも知れないけど。
なんでここまで来る過程で、皆をいい感じに誘導する術だけは、多分戦い以上に上手くなったと思う。
「それじゃあいきましょうかッ!」
そのアリーゼの声かけと共に、遠征隊のメンバーの全員が戦闘態勢へと入る。
『グオオォォオオオオ!!』
目の前から現れたのは『ブラックノイトス』の群れ。集団で現れたモンスターの群れを前に、アリーゼは突っ込んだ。
刺突。
アリーゼさんの持つ長剣《クリムゾン・オーダーⅣ》の矛先がモンスターの魔石部分を正確に捉え、穿ち抜いた。
穿ち抜いたモンスターの屍などこれっぽっちも気にする様子はなく、アリーゼはそのまま次なる獲物へと剣を向けた。
「な…?! アリーゼ、独断は止めてください!!」
「おいっリオン。団長の
アリーゼの背後を取ったモンスターの群れが、翡翠色と白銀の斬閃によって斬り倒されていく。
その金色の髪を靡かせながらリューは再度疾走する。
現在は51階層の最奥。
此処は『深層』のなかでは珍しく迷宮型の構造となっている。
平面を描く壁と床、天井。計られたように造られた規則正しい地下天然の通路が、いくつもの曲がり角や十字路を形成し、足を踏み入れる者を惑わせる。石とも土とも異なる材質で構成される壁の色は深い黒鉛色だ。
頭上に灯る燐光によって照らし出される下、幅広の直線通路でアイズ達と対峙するのは、ごつごつと黒光りした皮膚組織を持つモンスターの一群だった。
『ブラックライノス』。
前傾二足歩行を取る犀型のモンスター。二
鎧と見紛う皮膚は硬く厚く、49階層にて交戦した『フォモール』を遥かに超える硬度を誇っている、が…
『──ッ!?』
「はぁぁあ!」
それでも切断される。
迷宮という閉鎖的空間の中を縦横無尽に疾走り回る翡翠色と二振りの閃光によってブラックライノスの群れはいとも簡単に蹴散らされていった。
木刀と星剣、その二振りを用いてリューは更に疾駆する。
大聖樹の枝から作り上げられたそれは、剣としても、打撃武器としても使用でき、聖樹の枝特有のエルフとの魔力の親和性の高さから杖としても使用出来る木刀《アルヴス・ルミナ》。
もう一振りは、中央に翡翠色の魔法石が埋め込まれた長剣であり、魔力を込める事で武器の威力自体を強化出来る第一等級の
「──ッ!」
その二振りを持ってモンスターの群れを蹂躙する横で、輝夜もまた、見劣りしない程の速度でモンスターを屠っていく。
装備するのは極東固有の武器『刀』。
二振りの武器を縦横無尽に振るうリューには見劣りするものの、輝夜自身の極めて高い技量と速度を以てモンスターの強靭な外皮を容易に斬り裂いていく。
「ふぅ…、僕も前に出ようかな?」
そう言って、今まで後方腕組み──イメージの話であって、本当にしていたわけではないよ──をしていたベルも、抜き放った片方の愛剣を振るう。
次々とその漆黒の刀身が様々な角度からモンスターを斬りつけ、抵抗さえ許さず切断する。その刀身は幾ら斬ろうとも決して漆黒の煌めきを濁すことはない。
『
ヴェルフは四度その器を高次へと至らせ、いずれ神々の武具をも凌駕すると豪語して作成した高次の産物の一振りであり、ベルの片刃の片手剣は稀少な特殊武装の中でも『決して壊れない』という属性を有している。
威力そのものは他の第一等級装備に劣るものの、戦闘中での欠損はありえない。
深層の
【ヴェルフ・クロッゾ】謹製、第一等級
ベルのスキル【
「ベル、貴方は左を。私と輝夜で右を殺ります、いいですか?」
「お前に言われなくても分かっているっ!」
「はい、分かりました!」
暴風の如く戦場を疾走り回るリュー、そんなリューの指示を渋々聞き入れ、美しい銀の調べを奏でる輝夜、そんな二人とは別の方向では、一切の無駄を排した超効率重視の戦いを繰り広げるベルがおり、その動きは熟練の冒険者でも真似出来ない程だった。
リューと輝夜は口では罵倒し合いながらも、互いの間合いを尊重し、時には跳躍し、時には入れ違い、適宜な位置へと己の体を滑り込ませる。
以心伝心とは言い難い、好敵手故に互いを理解しているからこその連携。ベルはそれを見ながら呆れていた。
「(あの二人、なんであんなに罵倒しあえるんだろ)」
ベルはそんなリューと輝夜へ意識を向けながら、自身に迫りくるモンスターの群れを危なげなく屍へと変えていき、その山を積み上げていく。
「前後から新手が四。頼んだぜ、『白黒の騎士』様」
「ちっ、良いだろう。そういう契約だからな」
「まあ、異論もないしね」
互いに前後を向き、背中を預け合う。
瞬間、
瞬間移動とも見紛う程の速度での疾駆。
先刻のリューにも負けない程速度をもって疾走する闇の閃光が、
「ふぅ、これでいいかな」
たったの『一振り』。
握られる禍々しい気配を帯びる呪剣《ヴィクティム・アビス》による効果が『斬撃範囲』を拡張し、一閃のもとにモンスター達を斬り伏せる。
「【永伐せよ、不滅の雷将】」
その反対側。ヘグニとは違い一歩も動くことはせず、その場で徐に右手を前に向け、そしてその詠唱を紡いだ。
「【──ヴァリアン・ヒルド】」
第一級冒険者すらも一撃で丸焦げにする威力の雷撃が、ブラックライノス達を丸呑みにして、消し去る。
ベルの斬光にも劣らない威力と射程を有するその一撃をもってモンスターの群れは全滅。
第一級冒険者六名による戦闘は僅か五分。その僅かな戦闘時間を以て深層のモンスターの群れを全滅させた。
「わぁ、皆様本当にお強いのですね」
「春姫さん、毎度それ言ってますけど…」
「だって…、
何言ってんだ?このエロ狐はと、皆内心思う。
サンジョウノ・春姫、有する魔法は現在
【ウチデノコヅチ】:有する効果は
この効果だけを見たら、あのアルフィアでさえ目を見開く程だった。
「(だけど…、副作用がしょっぱいんだよね)」
その副作用として、発動時は対象が得られる【
なので、当然皆この魔法に頼りたがらない。春姫自身戦いに向いていないので、本当ならアルフィアと一緒に地上に残っているのが良いのだが、ダンジョンは何が起こるのか分からない。その為、一応
「(本当に…、それさえなければ最強だったのに)」
まあ、あるからこそ
「アリーゼさん、もう52階層へ──」
「皆、聞いてっ!」
『──ッ?!』
刹那、遠征隊全員の視線がアリーゼへと向く。
こういうことは何度もある、アリーゼには【ロキ・ファミリア】の団長、フィン・ディムナと同じく『虫の知らせ』の如く突発的に
それは大抵、決まって悪いことの予兆。
「撤退しましょう」
刹那、遠征隊が全速力で疾走した。
行き先は50階層。
ベルは春姫を抱え、リューと輝夜が前衛となり、ライラが辺りを見回しながら警戒をする。ヘディンとヘグニでさえも逆らわず、黙って疾走する。
そんな全員の後ろにはザルドが立ち、
「なに…あれ?」
「新種のモンスターか?」
「あれは、俺でも見たことねぇぞ」
アリーゼ、ヘディン、ザルドの驚愕に満ちた声が響く中、先程まで遠征隊がいた場所には巨大なモンスターの群れが居た。
「芋虫型の、モンスター」
ベルがその躯体の全容を収め、声に出す。
全身を占める色は黄緑。ぶくぶくと膨れ上がった柔らかそうな緑の表皮には、ところどころ濃密な極彩色が刻まれており異様に毒々しい。無数の短い多脚からなる下半身はベルが言ったように確かに芋虫の形状に似ている。長い下半身に乗る格好の上半身は小山のように盛り上がっており、厚みのない扁平状の器官──恐らくは腕──が左右から伸びていた。先端には四本の切れ目が入っており、指に見えなくもない。
ダンジョン深層を何度も行ったことのあるアリーゼやベルも、ヘディンやヘグニも、ましてや71階層まで辿り着いたことのある最強の
そんなモンスターを前に、一人の少年が誰にも見つからないように笑みを零す。
進行に合わせ上下に振動するモンスターの巨軀が、四Mはある天井と何度もぶつかり合い削り落とす。横幅も道の両端にほぼ届き、通路一杯を塞ぎながらこちらへと迫ってくるその光景は、戦車という言葉をベルに連想させた。
尤も、美の女神が誇る戦車とは雲泥の差があるが。
「ネーゼさん、春姫さんをお願いします」
「え?! ちょ、ベルっ!!」
最も早く動いたのはベルだった。
隣で並走していたネーゼに春姫を預け、ベルは後方へと疾駆し、ザルドをも超えてモンスターへと肉薄した。
『─────』
「(ようやく…、来たッ!)」
愛剣を振り上げ肉薄するベルに対して、モンスターは顔面と思しき位置から、がぱっ、と嫌な音を立てて口腔を開き、次には勢いよく、大量の液体を放出した。
紫と黒が混合した悍ましい
『──────────ッッ!』
「──斬光」
モンスターの苦悶の叫び、破鐘のような啼き声が轟く中、ベルの背後にいるアリーゼ達から驚愕の声が漏れる。
敵の傷口から先程のものと同色の体液が迸り、眼前に飛散する。
ベルはそれをあたかも予見していたかの如く首をひねって避けた。だが、その液体はベルの近くにあった壁をじゅぅぅという溶解音と共に
凄まじい悪寒がアリーゼ達に迸る。だが、それでもベルは突貫してモンスター達を斬り伏せる。
ベルは遠距離攻撃の極致たる斬光の比類なき威力を以て、極彩色のモンスター達を両断し続けた。
はぁ、ようやく来てくれたね、クソ虫くん達。このために僕は不壊剣をヴェルフに打ってもらったんだからさ、精々僕の武器の錆になってよ。まあ、僕の武器は溶かせないけど。
あぁ、こんな雑兵じゃなくて、初っ端からエインとか出してくんねぇかな。レヴィスでも良いからさ。
適当にあしらってから、僕に
あぁ、マジで今頃
《あとがき》
【ミスリルテイン】
・『
≪ベル君被害者の回(マジの方)≫
エニュオ:アルフィアとザルド、才禍ベルと【アストレア・ファミリア】、オラリオの老いぼれ共もしっかり生きてる。都市破壊無理くね?
ノアール達は今頃『黄昏の館』でしっかり欠伸しながら門番したり、後進共の稽古をして上げてる。
原作より後進達が育ってフィンもうっはうは。でもそうしないと訛りきったオラリオの穴に火をつけるとかいってヘラが来ちゃうからね。ノアール達も一応必死なんだよね。しっかりLv.5だよ、本人達は一線を退けないと愚痴ってるけど、後進を育てるのには役立つから微妙な感じ。
モチベに繋がるのでコメントやお気に入り、評価などお願いします。