ブルーロック 〜もう1人の天才MF〜   作:真神楽

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皆さんお世話になっております。
いきなりで申し訳ないのですが、風邪を引いてしまいまして…体調が良くなるまでお休みさせて頂きます。
残業明けに張り切り過ぎましたね…反省です。
この話は8割程出来てたので、完成させて一応投稿させて頂きますが、細かい確認取れてませんので、誤字・脱字あれば報告よろしくお願いします。


日本サッカーの転換期

日本での用事を終えた白瀬朔は、再びドイツへと戻っていた。

慣れ親しんだ街並み。聞き慣れた言葉。そして、いつもと変わらないバスタード・ミュンヘンの練習場。

ブルーロックで過ごした時間は、ほんのわずかなものだった。

けれど、そこで出会った選手たちの姿は、白瀬の記憶にしっかりと刻まれていた。

 

 日本から戻って数日後――。

 

練習を終えた白瀬は、自室でパソコンを開いていた。

何か調べたいことがあったわけではない。

ただ、ふと思い出したのだ。

あのとき出会った選手たちは、あれからどうなったのだろう、と。

何気なく検索していると、ひとつの試合映像が目に留まった。

 

 ブルーロックと、U-20日本代表の一戦――。

 

試合はすでに終わっており、結果も公開されている。

 

 勝者は――ブルーロック。

 

「……へえ」

 

白瀬は小さく声を漏らした。

日本サッカー界の未来を懸けた一戦。協会が誇るU-20日本代表を相手に、ブルーロックが勝利を収めたらしい。

世界選抜との戦いを経験した彼らが、どこまで変わったのか。

気にならないはずがなかった。

 

「せっかくだし、見てみようかな」

 

白瀬は迷わず映像を再生した。

試合序盤から続く攻防。ブルーロックの選手たちとU-20日本代表が、それぞれの意地をぶつけ合っている。

白瀬は特定の選手だけを追うことなく、試合全体を眺めていた。

 

 

 

 

 

画面の中では、ブルーロックと日本代表U-20の選手たちが、互いに一歩も譲らない攻防を繰り広げている。

白瀬は頬杖をつきながら、じっと画面を見つめていた。

ブルーロックの選手たちは、試合を通して少しずつ変化している。

個々の能力だけではなく、互いの武器を理解し、それを組み合わせながらゴールへと迫っていく。

 

 そして、映像は試合後半に差し掛かかった――。

 

スコアは拮抗し、両チームともに一歩も譲らない。

ブルーロックの選手たちは、それぞれの武器をぶつけ合いながら、U-20日本代表の守備を崩そうとしていた。

 

 ――その中で、白瀬の目を引いたのは糸師凛だった。

 

世界選抜との試合で見た少年は、あのとき以上に激しいプレーを見せていた。

世界選抜での、相手の動きを読み、隙を見つけ、ゴールへと迫っていた動きとは違った。

 

 凛の表情が変わる――。

 

それまでの冷静さをかなぐり捨てるように、凛は目の前の相手へと食らいついた。

勝つために整えられたプレーではない。

相手の動きを読み、隙を突き、合理的にゴールを奪う――そんな綺麗なサッカーですらなかった。

 

 ただ、壊す――。

 

相手が持つ武器も、積み上げてきた技術も、そこに懸けてきた意地さえも。

自分の前に立ちはだかるものを、何もかも引きずり出して、醜く、徹底的に破壊する。

その衝動に突き動かされるように、凛は最後の勝負へと身を投じていた。

画面越しでさえ伝わってくる、剥き出しの殺気にも似たエゴ。

白瀬は思わず、画面に目を凝らした。

 

 ――ああ、これだ。

 

かつて白瀬が知っていた糸師凛のサッカー。

相手のすべてを引きずり出し、それを真正面から壊そうとする、荒々しくも純粋な破壊衝動。

その姿を目にした瞬間、白瀬の口元にかすかな笑みが浮かんだ。

けれど、その勝負の果てにゴールを奪ったのは、凛ではなかった。

 

 凛が最後の勝負へと身を投じる――。

 

誰もが目の前の攻防に意識を奪われる中、ひとりの選手が守備陣の死角に潜んでいた。

 

 ――潔世一。

 

冴に凛が勝つと信じ、その瞬間を待ち続けていた男。

そして、訪れた好機を逃さず、潔はゴールを決めた。

 

 試合終了――。

 

 ――勝者、ブルーロック。

 

画面の中で歓声が上がる。

白瀬は最後まで映像を見届けると、再生を止めた。

黒くなった画面に、自分の顔がぼんやりと映っている。

 

「……なるほどね」

 

思わず、そんな言葉が漏れた。

 

 ――そのときだった。

 

コンコン、と部屋の扉がノックされた。

返事をするより先に、扉が開く。

 

「Was machst du da, Saku?」

(何をしているんだ、朔?)

 

入ってきたのは、ミヒャエル・カイザーだった。

その後ろには、アレクシス・ネスの姿もある。

白瀬はパソコンの画面から視線を外し、二人を振り返った。

 

「Ein Spielvideo aus Japan.」

(日本の試合映像だよ)

 

そう答えてから、白瀬は画面を指し示す。

ネスが不思議そうに覗き込んだ。

 

「Japan?」

(日本?)

 

カイザーも画面へと視線を向ける。

そこに表示されていた試合結果を見て、彼は興味深そうに口元を歪めた。

 

「Ich habe gehört, dass du dort gewesen bist.」

(お前がそこへ行っていたとは聞いたが)

「Ja. Ich war neugierig.」

(うん。ちょっと興味があってね)

 

白瀬はいつもの調子で答えた。

カイザーはそれ以上追及することなく、白瀬の隣へと歩み寄る。

 

「Na, Saku. War jemand Interessantes dabei?」

(なあ、朔。面白い奴はいたのか?)

「Ja. Zwei besonders.」

(うん。特に二人かな)

 

白瀬は即答した。

 

「Wer denn?」

(誰だ?)

 

「Yoichi Isagi und Rin Itoshi.」

(潔世一と、糸師凛)

「Der Itoshi … ist das Saes jüngerer Bruder?」

(糸師……あいつは糸師冴の弟か?)

「Ja. Rin Itoshi. Der jüngere Bruder von Sae.」

(うん。糸師凛。糸師冴の弟だよ)

「Hm. Interessant.」

(ふうん。面白いな)

 

カイザーはそう呟き、口元に薄い笑みを浮かべる。

 

「Und der andere? Yoichi Isagi, richtig?」

(それと、もう一人は? 潔世一、だったか?)

「Ja. Isagi hat darauf vertraut, dass Rin gewinnt. Deshalb hat er sich im toten Winkel der Verteidiger versteckt und auf seine Chance gewartet.」

(うん。潔は凛が勝つと信じていた。だからDFの死角に潜んで、チャンスが来るのを待っていたんだ)

「Er hat also auf den richtigen Moment gewartet.」

(つまり、絶好の瞬間を待っていたわけか)

「Genau. Und als sich die Gelegenheit bot, hat er sie ergriffen.」

(そう。そして、機会が訪れた瞬間に、それを掴み取った)

 

白瀬は、最後のゴールを思い返す。

潔はただ運に身を任せていたわけじゃない。凛が勝つと信じ、自分がゴールを奪える瞬間を待ち続けていたのだ。

 

「Und Rin? Was hältst du von ihm?」

(それで、凛はどうだった?)

「Rin war der egoistischste Spieler, den ich je gesehen habe.」

(凛は、僕が今まで見てきた選手の中で、一番エゴイスティックなプレーをしていたよ)

「Der egoistischste?」

(一番エゴイスティック、だと?)

「Ja. Er hat den Gegnern alles abverlangt und versucht, sie mit seiner eigenen Kraft zu zerstören. Genau deshalb war es so interessant.」

(うん。相手の持っているものをすべて引きずり出して、それを自分の力で壊そうとしていた。だからこそ、面白かったんだ)

 

カイザーはしばらく白瀬を見つめ、それから小さく笑った。

 

「Du findest wirklich überall interessante Spieler.」

(お前は本当に、どこにでも面白い選手を見つけるな)

「Vielleicht.」

(そうかもね)

 

隣で話を聞いていたネスが、遠慮がちに口を開く。

 

「Kaiser, Sie interessieren sich doch auch ein wenig für diese Spieler, oder?」

(カイザーも、あの選手たちに少しは興味を持たれたのではありませんか?)

「Wer hat gesagt, dass ich mich für sie interessiere, Ness?」

(誰があいつらに興味があると言った、ネス?)

「V-Verzeihung, Kaiser!」

(も、申し訳ありません、カイザー!)

 

ネスが慌てて頭を下げる。その様子を横目に、白瀬は再び黒くなった画面へと視線を戻した。

 

 適応する潔世一と、破壊する糸師凛――。

 

あの二人は、これからどこまで変わっていくのだろう。

それを見届けるのが、今から楽しみだった。

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