ヤンデレキヴォトスの被害者な先生を助けたら、先生もヤンデレ化したんだが?   作:エタるマン

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ヤンデレな生徒はいいが、ヤンデレな先生もいい
そんな感じの小説です


ヤンデレに交わればヤンデレになる(未来形)

 

「ちょっ!?なにしてんだ止まれって!」

「いやだ。だってそうしたら、セイは逃げるでしょ?」

 

 暗いエメラルドグリーンとでもいうべき髪を持つ少女のような体躯の女性が、四肢が拘束された俺の上に跨ってくる。普段の俺なら彼女くらい簡単に押しのけられるはずなのだが、さっきの食事に何やら一服盛られたらしく、体が思うように動かせない。

 

「そりゃ逃げるだろ!?てかあんたそういうの嫌ってたんじゃないのか!?」

「それはそうだけどセイとなら……ううん、セイとだからシたいんだよ?」

「ヒロインっぽいセリフで誤魔化してんじゃねえよ!こっちの気持ちも考えろ!」

「大丈夫、だってわたしハジメテじゃないし。いっぱい気持ちよくしてあげる方法知ってるから」

 

 いやそういう問題じゃねえよ!と叫びたいのだが、段々舌すらも上手く回らなくなってきた。それでも、これだけは伝えなければ。

 

「ひゃ(や)め、ろ……あんた、は、せ(・)ん(・)せ(・)い(・)、にゃ(な)んは(だ)ろ……?」

 

 この人は、どんなに辛い目にあっても生徒のためを思える優しい先生だ。だから一時の気の迷いなんかで志に反するような真似をさせるわけにはいかない。

 

「先生?ああ、もうそんなものどうだっていいんだ。ねえセイ、覚えてる?セイがわたしを助けてくれたあの日のこと。わたしね、あの出会いは運命だったと思ってるんだ。みんなが狂ったこの世界に残った、一つだけの希望。あなただけがわたしに純粋な愛情をくれた。だから……大好きだよ、セイ。身も心も一つになろ?」

 

 恍惚とした表情でそう語る彼女の目は、俺がこの世界で何度も見てきたものと同じくどす黒く濁っていた。

 

 ああ、俺はいつどこから間違えたんだ?

 モヤがかかり始めて上手く回らない頭で、ヤ(・)ン(・)デ(・)レ(・)だ(・)ら(・)け(・)のこの世界で、俺はただただ考え続けた。

 

 

 

 

 

 

 並行世界、という概念について知っているだろうか。

 これはフィクションの世界では今いる世界とは似ているようでどこか違う世界のことを指す概念だ。

 誰々がいない、あるいは知らない人物がいる。男だった人が女になっているかもしれないし、善悪の立場すら入れ替わってしまっている世界があるかもしれない。

 

 さて、ここまでの前置きでもうなんとなくわかってきただろうが、俺の転生先であるこの世界……キヴォトスもまた、原作とは違う並行世界だ。

 ではここは一体どういった差異のある世界なのか。

 俺はある日、それを知ることになった。

 

 

 

「ふんふふんふふんふ~ん♪」

 

 ザアザア振りの雨の中、適当に鼻歌を歌いながらブラックマーケットにほど近い路地を歩く。理由は単純で、俺の自宅がこっち方面にあるからだ。

 俺は正当な転生者。原作改変が嫌い……とまではいかないけど、自分がオリ主として積極的に原作キャラと関わるのは解釈違いだった。

 だからある伝手を使ってこの人通りの少ない家に住み、適当な学園に所属する日々を送っている。

 その日俺はその人に出会った。

 

「うぅ……あ、れ?わたし、転んじゃって……ひっ!?」

 

 朝から降りっぱなしの雨に濡れてしまい透けている上に、それ以前に誰かにそ(・)っ(・)ち(・)の(・)意(・)味(・)で(・)襲われたかのように着崩された衣服を纏う少女……否女性が、通りすがった俺に気付いた途端心の底から怯えきったようなか細い悲鳴を漏らした。

 

「あー……大丈夫そうですか?」

「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!もう逃げたりしないから、しませんから!ど、どうか許して……」

 

 なるべく優しい声音を意識して声をかけてみるも、俺の言葉なんて耳に入っていない様子でここにいない誰かに許しを請う彼女に、俺はもう根気強く話しかけ続ける。

 

「……大丈夫ですよ、俺はあなたになんにもしませんから。この辺りにあなたを襲う人はいませんよ」

「え……?ほん、と?」

「本当ですよ。ほら、自分の目で確かめてみてください」

 

 彼女は恐る恐るキョロキョロと周囲を見渡し俺以外の人間がいないことを確認すると、少しだけ安心できたようにほっと息を吐いた。

 

 ……さて、これからどうしよ。まずこの人はほぼ確でシャーレの先生だ。ちなみに情報源はネットニュースとかに乗ってた顔写真だ。そして諸々の状況から察するにそ(・)う(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)をされた後、いわゆる事後ってやつの可能性が非常に高い。流石にそんな状態の人を放置して去るのはナシだ。

 

「ええと……もしよかったら、俺の家に来ませんか?」

「……っ!」

 

 推定先生が警戒態勢になる。ヤベ、言葉選びミスったか?

 

「あ、いやその変な意味じゃ……」

「……たも」

「え?」

「あなたも、わたしにあんなことをするの?」

 

 ……は?なんて?

 まてまてまて、一旦状況を整理しよう。まず俺の外見はヘイローありの一般生徒だ。まあ性別は男だけど。その辺は些細なことだろう。大事なのは、一目見て生徒だとわかる初対面の相手に対して先生が警戒を見せたところと、今の先生の事後感溢れる雰囲気だ。つまるところ先生はそう考えざるをえないほどの回数、無理矢理生徒たちに「あんなこと」をされてきたわけで……なんだこれ地獄(先生凌辱もの)かね?

 

「そんなことしないですよ。というか『あんなこと』ってなんですか?」

 

 俺はこの時、簡単にこう聞くべきではなかった。大した覚悟もなしに、その深淵に足を踏み入れるべきではなかったのだ。

 

「それは……」

 

 俺が聞かされたのは簡単に言えばR18な話。ただし「ナマモノ」「先生受け」「無理矢理」のような注意書きが付随するような内容であり、それを臨場感たっぷりに、というか確実に経験談として語られた。多分SAN値がいくらか減った。

 しかも最悪なのは、当の本人がそれを嫌なこと望ましくないことだと認識していないところだ。だって今世間話の延長戦的なノリで話してきてるもん。これ多分ちょっと精神イっちゃってるよ。

 

「まあ、大体こんな感じかな」

「……わかりました。ところでここにはどうして?この辺りには特に目ぼしいものはなかったと思うんですけど」

「……逃げてきたの。もうああいうのは嫌だったから」

 

 【朗報】先生に逃げるという選択肢がまだあった。

 【悲報】多分これ今裏でめっちゃ先生捜索されてる。

 いやこれどうする?でも放置して帰ったら確実に捕まるよな。となるとやっぱ一旦連れ帰るしかないか……

 

「……これは提案なんですけど、俺と一緒に来ませんか?もちろん最低限の安全は保証しますよ」

「……どうせあなたもわたしにそういうことするんでしょ?」

 

 本来お互いの愛情を確かめ合うその行為は、先生にとって忌まわしいものとなってしまっている。なら、俺はその穴を突こう(エッチな意味じゃないよ!)

 

「そんなことしませんよ。それによく考えてみてください。あなたが『そういうこと』をされた相手は、女子生徒だけですよね?」

「……うん」

「ということは、男子生徒にされた記憶はないわけですよね?」

「……うん」

 

 ほんとなくてよかった。だってそもそも俺は世界にとっての異分子だ。キヴォトスに、「ブルーアーカイブ」に存在し得ないはずの存在。そんなやつに会ったことすらないのは当然と言える。

 

「なら、何もされたことのない男子生徒の周りはあなたにとって過ごしやすい場所と言えるんじゃないですか?」

「それは……」

 

 まだ躊躇っている、か。まあ当然だな。そもそも今言ってること方便でしかないし。常識的に考えて男と二人で過ごす方が危険だろ。でも俺的にはここで頷いてもらわないと困るわけで。というわけでもう一押しだ。

 

「それでも不安だと言うのなら、今ここで約束を……いえ、『契約』をしましょう。俺があなたに過剰な愛情を向け、欲情することはない。もし仮にそうなってしまったら俺はあなたの下を去り、二度と関わらない。この条件でどうですか?」

 

 一応善意からくる申し出であるとはいえ、俺もひどいことをする。これは悪魔の契約だ。それこそ黒服の言うところの「決して拒めない提案」ってやつだ。

 まあでもこうでもしないと安心しないだろうからなあ、この人。

 

「……わかった。それで、いい」

「そうですか。じゃあよろしくお願いしますね、先(・)生(・)」

 

 これが彼女……この世界に苦しめられてきた先生との出会いだった。

 

 

 

 

 

 

「お、お邪魔します」

「いらっしゃいませ、はなんか違いますかね。とりあえず、先生は一回ゆっくり湯船にでも浸かってください」

 

 おずおずと我が家の敷居を跨いだ先生を、俺はバスルームまで案内した。

 

「い、いいの?」

「いいも何もこのままだと確実に風邪引きますよ。そうなったら反応する生徒なんかもいるんじゃないですか?」

 

 遠回しにピンクのテレポーター看護師のことを指すと、先生は慌てて服を脱ぎ始めた。……俺の目の前で。

 

「ちょちょちょ先生!?なにしてんの!?」

「え?お風呂に入るために服を脱いでるんだけど……」

「ちゃんとドア閉めて俺の見えないとこでそうしてくれ!羞恥心とかないのか?」

 

 言った後で後悔した。あんな状態で裏路地に倒れていた先生のことだ。この行動にも碌な理由がないことくらいわかりきっている。

 

「あ、ごめんね……みんな大体わたしが服を脱ぐところから見たいって言うから、つい癖で……」

 

 スゥ~ッ(放心状態)

 そうですよね、そりゃそんなことされてたらそうもなりますよね。ほんと誰かカウンセラー連れてこいよ。多分そうしたらカウンセラーもヤンデレ化するんだろうけど。

 

「……事情はわかりました。でも俺にそんな趣味はないですし、そうする必要はないですからね」

「……?うん、わかった」

 

 あー駄目だこれ。今の先生「あーそーゆーことね完全に理解した(画像略)」状態だわ。調教されまくったせいで本気で常識から捻じ曲げられてやがる。これもどうにかしないとな……

 

「じゃあ俺はリビングにいるんで、風呂から出たら呼んでください」

「うん。じゃあお風呂借りるね」

 

 無音でドアが閉められ、半裸だった先生の姿が見えなくなる。それを確認した俺はリビングのソファに寝っ転がると、盛大にため息を吐いた。

 

「はぁ〜……どうすんだよこの状況。ヘイロー持ってるだけのクソザコ野郎に先生を守りきれとか無理があるだろ。しかも相手は原作で散々強いところを見たネームドばっかだし……とりまこの場所がいつまでバレないかの勝負かな……」

 

 俺はれっきとした転生者ではあるものの、チート的なものは何一つ持ち合わせていない。そもそも神様に会わないタイプの転生だったしな。そんな俺にできることは原作知識を活かした細々とした小遣い稼ぎや一般モブと同レベルの戦闘くらい。この手の転生者あるあるなクソ広人脈とかもないし、もう今の時点で詰んでるまである。

 とはいえ流石にあの状態の先生を放置するという選択肢が取れる程、俺の心は強くない。強い後悔という形で今後確実に精神的影響が残るだろう。

 だったら俺が選ぶべき道は一つ。先生のメンタルケアをしつつ、他のヤンデレ集団から先生を匿う。両方やらなきゃいけないのが転生オリ主の辛いところだな。……わりぃ、やっぱ考えただけでつれぇわ。

 

 でも、俺がやらなきゃな。

 

「ふぅ……出たよー」

 

 そんな風に覚悟を決めていた俺の耳に、やけに蠱惑的というか艶のある声が入ってきた。声の方を向くとそこには一糸まとわぬ姿の先生が……

 

「ってちょっと先生!?」

「えっ……わ、わたし、また何か悪いことを……ごめんなさいごめんなさいごめんな「いやなんでもないです!ちょっと別のことで驚いただけですから!」

 

 俺が慌てた声を出したことに反射的に反応したのか、先生がハルカのように悲壮感溢れる謝罪を繰り返すのを大声で叫んでどうにか止める。今のは咎める感じで叫んだ俺が悪い。悪い、んだけどさ……!

 

「せ、先生。その……なんで裸なんですか?」

「え?……あっ、ここじゃそ(・)う(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)はしなくていいんだっけ。ごめんね?いやなもの見せちゃって」

 

 はい、皆さん注目です。このセリフには普段から入浴後にはそ(・)う(・)い(・)う(・)行(・)為(・)をさせられていること、そして自分の肉体を汚らわしいものとして認識していることがわかります。これが、シャーレの深い闇だ……(味噌汁並感)

 

「いや、別に興味がないってわけでも……じゃなくて服を着ましょうか。俺のしかないですけど裸よりはマシなはずなので」

 

 なるべく先生のことを意識しないようにしつつ、クローゼットから先生でも着られそうな衣服を取り出す。

 

「これ着てください。サイズは大丈夫だと想いますけど……」

「うん。着られそうだよ。ありがとうね」

 

 感謝の言葉を背で受けつつ、衣擦れの音が止んだタイミングで先生の方を向く。

 

「どう、かな」

「あ、えっと……問題ないです」

 

 当たり障りのない言葉で場を濁す。俺の服を着た先生に対する正直な感想は、申し訳ないが「これは襲われるわ……」というものだった。

 オーバーサイズのTシャツの隙間から見える胸元や鎖骨。上気して赤くなったから感じるどことない艶めかしさ(エロさ)。体が温まったことで余裕が出来たのか、にへらっと笑顔を浮かべリラックスしているその仕草。全てが思春期男子にとって目に毒な要素で構成されているといっても過言じゃない。種類はどうあれ彼女に好意を持っている者がこれを見れば襲いかかりたくもなる、は言い過ぎにしてもなんらかの情欲は抱いてしまうだろう。

 

「……あ、そういえばまだあなたの名前、聞いてなかったっけ」

「あ、そ、そうですね。俺はセイ。蒼治(あおはる)セイです。学年は一年生。所属している部活はなし……とまあ自己紹介はこんな感じですかね」

 

 性欲に傾きそうになった思考を、先生の質問に答えることに集中することで正気に戻す。危ないところだった。先生にとっての安全圏を自称した俺が彼女を襲ったりでもしたら、本格的に人間不信になるところだ。

 

「……ねえセイ、もうなんにもわがまま言わないから、一つだけ言ってもいい?」

「いいですよ。なんですか?」

 

 今の先生の我が儘か。どういう内容だろうか。慰めックスとかだったら流石に断るが。

 

「その……敬語で話すのやめて?」

「え?」

「だってさっき、今とは別の口調で喋ってたでしょ?」

 

 ……ああ、先生が俺の目の前でストリップショーをしようとした時か。確かに焦ってたせいで敬語が崩れてたな。

 

「そんなことでいいんですか?」

「うん。わたしはあっちのセイの方がいい」

 

 まあ先生を必要以上に怯えさせないための敬語口調だったわけだし、本人たっての希望なら別にいいか。

 

「じゃあこれからはこっちでいくぞ、先生。後ついでにもう一つな」

「なに?」

「我が儘くらいいくらでも言ってくれ。それを聞くかどうかはそん時決めるけどな、わざわざ自分の気持ちを押し殺す必要なんてないんだよ。ヤなもんは嫌だって言っていいし、好きなもんはほしいって言ってもいい。それに文句を言う権利なんて誰にもないんだからな」

 

 今の先生は俺の機嫌を取ろうとしている。もっと言えば、俺に見捨てられることを恐れている。でもまともな関係ってのはそうじゃない。お互いがお互いに言いたいことを言い合える、それが健全な関係性だ。

 

「だから何かあったら言ってくれ。全部とはいかないが多少は聞くぜ?」

 

 さあ、これで先生はどう出るか。正直こんな言葉一つで全てが解決するだなんて都合のいい展開になるわけはないが、それでも少しは響いてくれるといいんだが……

 

「……琉月(ルナ)」

「え?」

「今のわたしは、先生じゃなくてただの記野(きの)ルナ。そう呼んで……ほしい」

 

 幼い子どもがするような上目遣い(恐らくは素)の仕草でそう言ってくる先生あらためルナの魅力にやられそうになりながら、俺はその名を呼んだ。

 

「……ルナ」

「なに?セイ」

「これからよろしくな」

「……うん」

 

 こうして、俺の全方位からヤンデレられる先生との生活が始まった。

 

「ああ、哀れなあなた様……卑劣な賊の手に囚われてしまったあなた様……少々予定は狂ってしまいましたが、私があなた様を救ってみせましょう。そして二人っきりで”お楽しみ”といきましょうか。フフフ……」

 

 そしてそんな生活は、開始早々俺の知らないところで終わりそうになっていた。

 

 




蒼治セイ

一般転生童貞男子生徒
「そういうこと」とは無縁の生活を送っている
ヤンデレられる未来が確定している


記野ルナ(シャーレの先生)

一般女先生
生徒たちにヤンデレられた結果「そういうこと」を日常的にされていた
ヤンデレる未来が確定している





作者が書いてみたいものをとりあえず詰め込んだ作品です
面白い・続きが見たいと思ってもらえたら高評価・感想をくれるとありがたいです
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