ヤンデレキヴォトスの被害者な先生を助けたら、先生もヤンデレ化したんだが?   作:エタるマン

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チュートリアルに出てくる系作中上位帯強者によるヤンデレ

 

 シャーレの先生であるルナを拾って一緒に暮らす(というか匿う)ようになって一夜が明けた。あ、ちなみに昨日の夕食はカップラーメンです。元実家暮らしの男子高校生に料理スキルを期待してはいけない(戒め)

 

「ほはよぉ……せい〜……」

「……おはようさん、ルナ」

 

 寝ぼけ眼を擦りながら、俺のTシャツとジャージを着たルナがふわふわした雰囲気を纏いながら挨拶をしてきた。うーん……やっぱりどことなく小動物味を感じる。なんかこう可愛がりたくなるというか……まあ過度な接触はルナのトラウマを呼び起こす可能性があるのでNGだが。

 

「ほら、寝ぼけてないで朝飯にするぞ」

「うん〜……」

 

 朝ごはんはパックごはんとインスタントの味噌汁という文明の利器万歳メニューである。ルナの栄養バランスのことも考えるともう少しまともな食生活を送った方がいいんだろうが、それは明日からにしよう(魔法の言葉)

 

「さて、と……いただきま

 

 ドガーン!!!

 

  はぁ!?」

 

 凄まじい爆発音と共に自宅(賃貸)の壁やら窓ガラスやらの欠片が吹き飛んでくるのが目に映る。俺は咄嗟の判断でルナを抱き寄せ体を丸めた。

 

「せせせ、セイ!?」

「悪い!今は動くな!」

 

 体に飛散物がいくらか当たるが、そこは流石のキヴォトスクオリティー。多少痛い程度でなんとも……いや痛いは痛いんだよクソが。

 

「私(わたくし)のあなた様を家に連れ込んだばかりか、あまつさえその汚れた手で抱きしめるなど……神や仏が許そうが、この狐坂ワカモが許しませんッ!」

 

 狐面を被り振り袖を身に纏った少女、ワカモがその手に持つ銃剣をこちらに向ける。

 

「っておい待て!こっちには先生がいんだぞ!?」

「人質でも取ったつもりですか?往生際の悪い!」

 

 思わず上げた頭の中心、脳天にヘッショを叩き込まれる。ワカモは作中描写から鑑みても確実に上位の強さを持つ強者。そんな相手の渾身の攻撃がクリーンヒットした俺の意識は急速に薄れ……

 

「……あなた様。私たちの仲を邪魔する下賤な輩は打ち倒しました。さあ、今度こそ一緒に愛を育みましょう?」

「セイ……せいぃ……!」

 

 声がする……これは……誰、だ。

 

「おきてよぉ……おきてってばぁ!」

 

 ルナだ。これは、ルナの泣き声だ。こんな一晩過ごしただけの俺を信頼してくれた、あいつの声だ。

 

「その男がそんなに大事ですか?私は理解しかねますが……あなた様がそこまで仰るのなら、四肢の骨を砕いて可愛がれる愛玩動物(ペット)にでもして差し上げましょう」

「セイ…………わたしの、せいで」

 

 違う。それだけは違う。

 

「んなこと……ねえ、よ……」

「おや、案外しぶといですね。所詮はただの平和ボケした一生徒だと思っていましたが」

「セイ……逃げて……!わたしのことは……」

「もういい、だなんて言わせねえぞ」

 

 俺は、この世界に転生してきたくせに何もしないでいた臆病者だ。原作を変えるのが怖くて、原作を悪化させてしまうことに怯えて、先生の苦労や苦悩を知っていたにも関わらず何もしなかった大馬鹿もんだ。

 

「ルナ、これでも俺はお前のことがそれなりに好きなんだよ」

 

 俺は、生徒のために文字通り全てをかけられる先生のことが好きだ。

 

「だから……お前のことは、俺が守ってやる」

「セイ……!」

 

 絶対に、守りきってみせる。それが俺にできる唯一の贖罪だ。

 

「はぁ……くだらないですね。先生を守る騎士、いえ武士気取りか何かですか?それなら結構。あなたのような弱い者がせずとも、わたしがあの狂った方々から先生……あなた様のことはお守りしますので」

 

 あくまで自分はそうではない、そう言いたいわけだな?ワカモ。だったらその幻想(妄言)を、ぶち壊してやるよ。

 

「ああ、譲ってやるよ……お前の頭がマトモになったらな!」

 

 窓際に立つワカモに殴りかかるべく、拳を構え飛び出す。ワカモはそれを何事もなかったかのように躱した上に、逆に拳を叩き込んできた。

 

「あくびが出そうな動き、とはこのことですね。まああなた様を連れ戻すのを邪魔する輩を処理する手間が減って助かりますが……っ!?」

 

 ワカモが一瞬同様を見せる。その理由は一つ、俺があえて初手素手で殴りかかることによって今持っていないと思わせていた銃で、彼女のお面を狙い撃ったからだ。

 キヴォトスの生徒たちは皆女子だからなのか、銃撃戦において基本顔面付近を狙わない。そしてそのルールが暗黙の了解になるくらいには浸透している。

 つまり、ワカモも自分のお面が撃たれることは想定しておらず、その耐久性もキヴォトスのアクセサリーにしては低い。

 

「……ははっ、いい面してんじゃねえかよ!」

 

 その結果、顔を覆い隠していた狐面は割れその尊顔が丸見えになる。そしてその顔は、とてもではないが他人に見せられるものではなかった。

 化粧で隠してもなおその影が見える隈、瞳孔が開いたどす黒い欲望剥き出しの眼、そしてなにより……唇(・)か(・)ら(・)血(・)が(・)滲(・)む(・)程(・)必(・)死(・)で(・)歯(・)を(・)食(・)い(・)し(・)ば(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)表(・)情(・)が見えた。

 

「セイッ!」

「こっちは大丈夫だ!ルナは部屋の隅にでも隠れてろ!」

 

 こちらを心配してくるルナを安地に逃がしつつ、俺は改めてワカモと相対する。

 

「おいおいどした?ひっでぇ面してんじゃん。まるでこ(・)ん(・)な(・)こ(・)と(・)本(・)当(・)は(・)し(・)た(・)く(・)な(・)い(・)って顔だぜ?」

「くっ……黙って聞いていればペラペラと……!私があの方を魔の手から救い出したいと思っていないとでもお思いで!」

 

 先生を手に入れられない怒りを、それを邪魔する俺に対する憤りをむき出しにして叫ぶワカモ。お面が割れたおかげでその表情がはっきり見える。ついでにその照準も。

 

「セイ!右!その次は前!」

「了解!」

 

 ルナの指示を受けて射撃を回避する。やっぱ先生の指揮スキルは違うな。

 

 ……さて、さも俺たちが有利ですけど?みたいな顔をしているが、今の状況は明らかにこちら側の不利だ。ブチギレて多少理性を失おうが、強者は強者。このままだとシンプルにステータス差でゴリ押されて負ける。

 だからここからは賭けだ。この異常な状況を、暴走している愛情の正体を解明してワカモを止める。俺に残された手はそれしかない。

 

「なあワカモ、お前先(・)生(・)を(・)わ(・)ざ(・)と(・)放(・)置(・)し(・)て(・)俺(・)に(・)拾(・)わ(・)せ(・)た(・)ろ(・)。その後も場所が割れてるからいつでも襲撃できるってのにわざわざ朝まで待ったりしちゃって、本当は別に先生のこと好きでもないんだろ?」

 

 煽って煽って煽りまくる。これも作戦の内だ。別に思いっきりヘッショされた恨みをせめて言葉責めで晴らそうとかは思ってない。そのままワカモの本心を揺さぶる言葉を投げかけ続け、

 

「私が!あの御方!愛していないわけがないでしょう!」

「ははっ、だよな。お前は根(・)っ(・)か(・)ら(・)の(・)ド(・)S(・)で(・)好(・)き(・)な(・)相(・)手(・)を(・)支(・)配(・)し(・)た(・)い(・)派(・)だもんな」

 

 最後の引き金を、引いた。

 

「違うっ!」

 

 戦闘の真っ最中だというのにワカモの動きが止まる。そして彼女はルナの方を向くと、何かに気付いたように呟いた。

 

「そうです、私はあなた様に好かれるような女性でありたくて……こんな、こんな風に無理矢理迫って襲うことなど論外の行為のはず……では、私は……ア」

 

 ワカモが獲物を下げようとしたその時、突然彼女の様子が変わった。その顔からは表情が抜け落ち、瞳は虚無を向いている。

 

「ア、ア、アナタ、サマ、アナタサマアナタサマアナタサマ……アナタサマ?(逃げてください……!)」

 

 壊れた機械音声のような言葉と共に、悲痛な叫びが聞こえた気がした。

 

「なんだよこれ……!」

 

 ワカモが倒れ伏し、その肉体から黒いモヤが湧き出てくる。それは徐々に人の形を取り始め、最終的に真っ黒なワカモの影とでも呼ぶべき姿へと変化、否進化した。

 影ワカモはしっかりとした意思を宿した瞳でルナを見つめると、俺をいないものとして一目散に駆け出した。

 

「あなた様!あなた様!ああ、あなた様……!早く私のものにしてさしあげます!」

 

 狂い果てたような風貌の影ワカモが、ルナに向けて弾丸を放つ。幸いにも急所は狙われていないようだが、それでも彼女の体には細かな傷が増えていく。

 

「うぅ……!」

 

 ルナにそれに対抗する力はない。これは今気付いたことだが、現在彼女はシッテムの箱らしきものを所持していない。つまりキヴォトス人と比べて、あまりにもか弱い存在ということだ。だが影ワカモはそんなことお構い無しに攻撃を続ける。

 

「テメェ……!こっち向きやがれ!」

 

 怒声と共に銃撃を浴びせるも、ほとんど効果が見られない上反応すらされない。俺はただルナがいたぶられているのを見ているしかできないのか?

 

 ……いや待てよ?あの影ワカモは恐らく先生への狂った愛情の化身のような存在。なら先生(ルナ)に関することでなら気を引ける可能性がある。

 

「おいお前!俺は昨日先生の裸を見たぞ!」

「……は?」

 

 脈絡なんてあったものじゃない俺の言葉に、影ワカモの首がホラー映画に出てくる人形のようにグルンと回る。よし、反応した。

 

「なんなら夜は隣で寝たりもしたな。つまりだ、俺はお前より先生と深い関係にあるってわけだ。理解したか?ならとっとと……っ!?」

 

 ヤベッ……!煽るのに集中しすぎた……。一瞬遅れたら致命傷だったぞ今の!

 

「あなた如きが?先生と?……そのような妄言を口にしたこと、万死に値します。死になさい」

 

 影ワカモのヘイトがこっちに移った。後はこいつを倒すだけだな、ヨシ!

 

「死んで!」

「がッ!」

「死んで!!」

「グッ!?」

「死んでくださいませ!!!」

「ガボッ!?」

 

 何を見てヨシ!って言ったんです……?

 いやマジでどうすんだよこいつ。なんでまだ立っていられるかもわからんくらい強いぞ。俺こいつ相手に後何秒保つんだ?ルナもボロボロだから援護も期待できないし……

 

「しぶといですね。では……」

 

 は?おいおいそれはまずいだろ……!

 

「こ(・)れ(・)でいきましょう。さようなら」

 

 影ワカモが銃の先に取り付けられた剣先でこちらの首元を狙う。いや待って速……避……無理!ならガード?どうやって?そもできるのか?否、死……!

 

「あなたのような偽物は……そこでお亡くなりになりなさいっ!」

「ガッ⁉」

 

 刃が俺の首元を切り裂く直前、一発の凶弾が影ワカモを撃ち抜いた。それを放ったのは……

 

「”私”が、あなた様の大切にしている者を壊してしまうなど、あってはならないのですから……!」

 

 苦痛に満ちた表情を浮かべ膝を付きながらも、どうにか信念で銃を構える本物のワカモだった。

 

「サンキューワカモ!んじゃこっちも……これで終わり、だ!」

 

 本物の一撃に怯んだ影に銃口を向け、さっきの意趣返しの意図も込めて脳天に弾丸をぶち込む。打ち込んだ銃弾はそのまま貫通し、影は跡形も残らず霧散していった。

 

「勝った、のか?」

「セイっ!」

「うおっ⁉ルナ⁉」

 

 緊張の糸が切れ、どさりと床に座り込んだ俺の胸に、同じくボロボロのルナが飛び込んできた。

 

「セイ、大丈夫?」

「……ああ、問題ねえよ。それよりそっちは……」

 

 改めてルナの全身に目をやる。あちこちに銃弾がかすったことでできた傷跡が残っており、そこから血が滲んでいる。だが、それよりも俺が気になったのは……

 

「あ、これ?大丈夫だよ。こういうの、たまにやられてたから」

 

 そう、ルナの体には今さっきついたものではない、無数の傷跡が刻まれていた。彼女の言い分から察するに、これは他のやつらにつけられたもの。キュートアグレッション的衝動を持ってたやつでもいたんだろうな。そのおかげでこの惨状でも平気そうな顔をしているのは、怪我の功名というかなんというか。

 

「……あなた様、そしてセイさん。この度は大変ご迷惑をお掛けいたしました。こればかりはどうお詫びすればいいか……」

「ひぃっ……」

 

 俺がなんとも言えない感情を抱えていると、復活したらしいワカモが近寄って謝罪をしに来た。しかし当の謝罪相手たるルナはワカモの姿を見た途端、俺の後ろに隠れてしまった。

 

「……ええ、そうですよね。あんなことをした私に対して、そのような反応を取られるのも無理はありません。……セイさん」

 

 一瞬、ほんの一瞬悲しみに暮れた表情を見せた彼女は、すぐに真面目な顔になると俺に語り掛けてきた。

 

「……なんだ」

「壊してしまった身で言うのもなんですが、ここはもう使い物にならないでしょう。その上この規模の騒動があれば、間違いなくヴァルキューレが捜査に来てしまいます」

「そうだな。それで?」

「私が所有しているセーフハウスの一つが近くにあります。そこに来てください。私があなたたちを匿います」

 

 願ってもない提案だ。彼女の言う通り、ここに留まっていればいずれ人が来て見つかってしまうだろう。それは俺たちにとっても不本意だ。

 

「聞きたいことは一つだけだ。今(・)の(・)お(・)前(・)は信用できるのか?」

 

 俺だって元とはいえブルアカプレイヤーだ。狐坂ワカモがどんなキャラなのかはある程度知っているつもりだ。つもりだった。このキヴォトスにいる俺の知っているキャラたちには、俺の知らない何かがある。ならば、それを見極めなければいけない。

 

「……私にはもう、あなた様と……先生と結ばれる気はありません。他の誰よりも自らの手であれだけのことをしてしまった私自身が、あなた様の隣にいる資格などないと知ってしまっているのですから。ですからせめて、愛しい人を陰ながら支えることだけは……許していただけませんか?」

 

 そこに込められていたのは諦観、自己嫌悪、そして強い決意。それは偽りなどではない、一人の少女の本音だった。

 

「……だってさ。どうする?ルナ」

 

 だが最終的に彼女を許すか決めるのは渦中の人物たるルナだ。とはいえ今も俺に抱き着いては震えている彼女にまともな回答ができるとは……

 

「……ぅん。いい、よ」

「あなた様……」

「ワカモのことは、今でも怖い。でも、ワカモの気持ちは、思いは、ちゃんと伝わったから」

 

 ……ルナは今でも先生なんだな。どれだけ生徒に傷つけられ、辱めを受けようと、それでも生徒のことを思っている。ほんとすげーよ。

 

「ワカモ」

「……はい」

「私(・)たちのこと、手伝って」

「ええ。この不肖ワカモ、この手で犯した罪を償うため、あなた様に今一度の忠誠を誓いましょう」

 

 その言葉を聞くと、ルナは震える手で跪いたワカモの頭を撫でた。

 

「……ありがとう」

「いえ、お礼を言われるようなことでは……」

 

 ……さて、ちょっとここを離れる準備でもしとくかね。なんかあってもワカモがいりゃ大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

「……ここです」

 

 ワカモの案内する人目に付かない道を辿って着いたのは、一見ごく普通の一軒家。だが彼女曰く、この家の防犯設備はそこらの学校のそれを凌ぐらしい。

 

「ひとまず、先生を寝かせる寝室に案内しますね」

「ああ、頼む」

 

 今現在のルナはというと、俺の腕の中で抱きかかえられて寝ている。ワカモはここ数日の疲労が出たのだろうと言っていた。実際そう間違っていないと思う。全ての人間が敵に見える生活をし続けて、疲れがたまらないわけがないのだから。

 

「……よし。おやすみ、ルナ」

「……おやすみなさいませ、あなた様」

 

 ルナを布団に下ろすと、俺たちは自然とリビングへ向かった。

 

「……さて、話してもらおうか。今キヴォトスで何が起こっているのか、お前の身に何が起きたのかをな」

「ええ、私の知る限りのことをお話いたしましょう。この情報が少しでもお役に立てば良いのですが」

 

 そうして俺は知ることとなる。このキヴォトスで起こっている事態について。

 そして、この先俺がやらなければいけないことについても。

 

 




セイ

典型的な転生者らしく、救済行為や原作介入をしなかったことに対する負い目や罪悪感を抱えていた
ルナ(先生)を助けるのはその代償行為のようなもの
地味にクソボケの気がある


ルナ

どれだけ傷つけられようとも、本能から恐怖を感じようとも、彼女は先生であり続ける
だからあなたの前だけでは……
飴と鞭(またはDVされる側の精神状態)の要領で、下心なしで優しくしてくれるセイに対しては激甘かつチョロい


ワカモ

先生(あなた様)を自分のものにしようと企んでいたヤンデレ生徒
なお今のキヴォトスにおいてはこんな感じの思考がスタンダードな模様



今回も引き続き高評価・感想お待ちしております
いっぱいください(強欲な壺)
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