ヤンデレキヴォトスの被害者な先生を助けたら、先生もヤンデレ化したんだが? 作:エタるマン
読者の皆さんありがとうございます
今回は急いで書き上げたので若干荒いかもしれません
ワカモから話を聞いた後、俺たちは正体不明の黒幕をどうにかするべく動くことになったわけだが……
「どうしたもんかね……」
今の状況をまとめると、ほぼ全員敵の四面楚歌かつ真犯人の居場所も不明という最悪な詰みっぷりだ。そしてこの詰み具合をどうにかするためには、何よりもまず味方と情報がほしいわけなんだが……
「なあルナ。ちょっと外で情報集めしてくるだけだって。すぐ帰ってくるからさ」
「だめ。セイはわたしとずっといっしょにいるの」
ルナが玄関口でさっきからずっと粘ってきてる件について。今の状況は一人家を出ていこうとする親に縋り付く子供の図をイメージしてもらえば大体わかると思う。合法ロリとでも呼ぶべき体格のルナが頬を膨らませて足に抱きついているのを振り払うのは、正直言ってかなりやりづらい。だがここは心を鬼にしてでもやらなければ。
「……ちょっと買い物に行ってくるだけだ。すぐ帰ってくる」
「……すぐ帰ってくるの?」
「ああ。それに何かあったら呼んでくれていい。だからちょっとの間だけ、家で待っててくれるか?」
「……うん」
若干不満気なルナが大人しく首を縦に振ったのを確認して、俺はすっと立ち上がりドアノブに手をかけた。
「じゃあ行ってくるな」
「……いってらっしゃい」
多くの生徒に狙われている彼女を、短時間とはいえ一人にするというこの判断を、俺はすぐ後に後悔することになる。
「とりあえず日持ちしそうな食い物と……弾薬なんかの消耗品……後は何かしら装備を新調でもしようかね」
セーフハウスに程近い商店街で、俺は物資を買い込んでいた。食料や物資はもちろん、ルナを守り切るために使えそうな便利グッズなんかがないかも探しておく。前回ワカモに勝てたのが偶然の産物であったことは、俺が一番よくわかっている。何の対策もなく次に挑めば負けてしまうであろうことも。俺個人の戦闘力なんてたかが知れてるからな。
「閃光弾……スモークグレネード……やっぱ取れる手段としては逃走がメインだろうしこんなところかね」
前世の価値観からすれば物騒なラインナップのショッピングを早々に終え、そろそろ帰宅するかと考えたその時だった。
「……ん?」
ポケットに入れておいたスマホから聞き慣れない音が鳴る。この音は確か……
「セーフハウス付近のトラップが解除された時に設定した音声っ!」
無理矢理罠を解除してまで敷地に入ってくるってことはつまり、これは新たな
……セイ、遅い。
何もすることもないのでぼぅっとセイの帰りを待っていたが、それもそろそろ限界だ。何が限界かといえば、わたしの心が。
一人でいると安心する。そう感じるようになったのはいつからだっただろうか。みんなにぐちゃぐちゃにされた後、満足したように帰っていく後ろ姿を見て安堵するようになった。誰とも時間を共にしない孤独な一時が恋しくなった。大事な生徒たちと一緒にいる時間に、苦痛を覚えるようになった。……だから逃げ出した。
それなのに今はセイがそばにいないと恐怖を感じる。そう思うようになったのはきっと、あの時からだ。ワカモに襲われた時、セイがわたしのことを好きだって言ってくれた時から。だってその時気付いたから。セイはずっとわたしの味方でいてくれるんだって。
だからセイにはずっとそばにいてほしい。離したくない。……絶対に離さない。
でも、本当にずっと一緒にいることなんてできないことくらいわかってる。今みたいに買い物に行く時があるし、わたしを守るためにセイが一人でどうにかしなきゃいけない時だってある。それはしょうがないことだと理解はしている。
……だけど、わたしの本能は違う。今もセイとずっと一緒じゃなきゃやだ!って叫んでるし、一人でいるだけで誰かに襲われるんじゃないかという不安が体をガタガタと震わせる。こんなんじゃ駄目だってわかってるのに、セイに迷惑だって理解しているのに、頭の中でこの気持ちを全部ぶちまけてしまえばいいと誰かが囁く。
……ああ、本当に今のわたしは一人じゃだめみたいだ。頭の中が恐怖と不安と混乱と、それ以外の色んな感情でごっちゃになって、上手く考えがまとまらない。セイ、早く帰ってきて。
ガチャリ。
玄関の方からドアの開いた音がした。セイだ。やっと帰ってきてくれた。やっと会える。セイ、セイ、セイ……!
「せ……い?」
「にはは!探しましたよ?先生。やっと見つけました♡」
そこに立っていたのはわたしが求めていた人ではなく、桃色の髪を揺らした少女だった。
「おいワカモ!今どこにいる!?」
『今は百鬼夜行の方にいますが……何か急用ですか?』
「ルナが危ねえんだよ!」
『はい!?何事ですか!?』
「買い出し中にセキュリティが突破された!これに関しては油断してた俺が悪いんだが、それはそれとしてお前の力を借りたい!どれくらいでこれそうだ?」
『……難しいですね。ここからでは急いでもそれなりにかかります。私を待っていては手遅れになる可能性の方が高いかと』
「ちっ、結局俺一人でどうにかしろってことかよ……!」
俺のせいでこうなったのだからある意味自業自得ではあるが、それでも押し寄せる面倒事に舌打ちの一つくらいは出る。ワカモを相手にした時のようなミラクルはそう起こせるものではないのだから。
『私にできることは増援が来ないように撹乱をしておくくらいです。身勝手な話ではありますが……』
「わかってる!ルナを守るって宣言したのは俺だ!何が何でもどうにかしてやるよ!」
自分を鼓舞するようにそう叫んで通話を切る。セーフハウスはもう目と鼻の先だ。
「せめてまだ家にいてくれよ……ぐっ!?」
住み着くようになってから24時間も経っていない家の敷居を跨ごうとしたその瞬間、
「今のは……セットしてあった地雷、か?でもなんで……」
セキュリティシステムはさっき侵入者に解除されたはず……いや、解除できるなら任意のタイミングで再起動もできるか。それに気付けなかったのは俺の落ち度だ。
「ってことはあの防衛設備が全部敵かよ……」
この家のセキュリティはワカモがガチガチに組んだ最上級の代物だ。それこそ並の生徒では束になっても敵わない程に。
クソッ、どうすりゃいいんだよ……!
「にっはっは〜!残念でしたね!先生はもう私のものです!」
「セイ……っ!」
帰宅手段をどうにか模索していた俺の耳に、そんな生意気そうな声が響いた。ガバっと顔を上げると、そこにはピンク色の髪をツインテールにした背の低い少女がもがく先生の腕を掴んで拘束している光景が目に入った。
「なるほど……これを無力化したのはお前か、コユキ」
「その通りです!」
コユキには異能レベルのハッキングスキルがある。それを駆使すればこの家のセキュリティを丸ごと乗っ取ることも容易いだろう。
「それでえーと……なにさんでしたっけ?まあいっか。とにかく、あなたには私と先生のために大人しくしてもらいます!」
コユキがそう俺に対して敵対宣言をすると同時に、セキュリティシステムが本領を発揮し始めた。格納されていたオートマタが稼働し、設置された自動タレットの銃口がこちらを向き、空中にはドローンが飛び交っている。これ全部どうにかするのは無理ゲーだな。だけどまあ……
「……待ってろルナ。今助ける」
……無理ゲー程度で音を上げてちゃ話にならねえだろ。
俺は愛銃を構え、危険地帯へと足を踏み入れた。
それから数分後。
「まあこうなるわな……」
即堕ち二コマもかくやの速度で戦闘不能にさせられた俺は、ボロボロになって地に伏せていた。
「セイ!だいじょむぐっ……!」
「はいはーい、先生はあんなの見なくて大丈夫ですよ〜?これからは私のことだけ見てればいいんですから」
俺の下に駆け寄ろうとするルナをコユキが抑える。生徒に比べて無力な先生は為すすべなくコユキにされるがままだ。このままだとルナがコユキに連れ去られてゲームオーバーが確定してしまう。というわけで、ここからは
「……お前だけを見るって具体的にはどうするつもりだ?」
「ん?そうですね……とりあえずどこかの部屋に監禁して、そこで一生私とだけ暮らすとかですかね?」
「なるほど。そうかそうか、つまりお前は
さて、ここでヤンデレ化生徒への対処法(推定)を解説しよう。ゆっくりしていってね!
ヤンデレ化した生徒への対処法は主に二つ。一つは強引な武力的制圧。そしてもう一つが、ワカモにやったような根本から解決する方法だ。
理屈ははっきりしないが、どうやら生徒たちが抱いている「先生への歪んだ愛情」の歪みの部分を指摘し自覚させると正気に戻すことができる……らしい。ソースはワカモだ。
「私が『私』を取り戻したのは、あなたが私のことを『根っからのドSで好きな相手を支配したい派』と罵った時でしたね。明確に言語化できるわけではないのですが……なんと言いましょうか、その時になってようやく
この言葉が真実なら、ヤンデレ生徒に対して最も有効なのは物理的な攻撃ではなくむしろ逆。舌戦による精神的なダメージである。
相手の狂っている点を自覚させる。それこそが生徒たちを正気に戻すための有効だであり、今打てる唯一の手段だ。
「な、何を言って……」
「だってそうだろ?お前は反省室に閉じ込められるのは嫌いだろ?でも先生のことは監禁しようとしてる。それって要するに自分がされて嫌だったことを相手に押し付けてるわけだよな?」
「ち、ちが……そんなこと……」
「いやー、お前も中々に悪いやつだよなー。なにせ大好きな人を二度と外に出られない場所に閉じ込めようとしてるんだから。その苦しさはお前が一番よくわかってるもんな?自分と同じ苦しみを味合わせようとか……中々に鬼畜だな」
相手の痛いところを
「わ、私は先生と一緒にいたくて……そのためには閉じ込めないといけなくて……あれ?でもそれって悪いこと、ですよね……?ならなんでそんなことを……アレ?」
さっきまで笑みを浮かべていたコユキの表情が固まった。瞳は虚無を見つめ、ルナを拘束していた手は力が抜けだらんと垂れる。
これはワカモのときにも見た現象だ。ということはこの後に……
「ニハ?ニハ、ニハハハハハハハ……アハハ♡」
出たな、影コユキ。ここからが第二フェーズってとこか。
「先生っ♡私と一緒に、
は?それはまずっ……!
「えーい!」
さっきまで俺を補足していた攻撃が、標的を変える。無力で何の防御手段も持たないルナの命を奪うため、引き金が引かれた。
「させるかよ!」
左のオートマタの群れにグレネード投擲。ドローンからの銃撃は俺が体で受ける。タレットは俺がどうにか速攻で倒しき……れる数じゃねえ。射線的にも俺一人じゃ庇いきれねえ。マジでヤバい……!
「ルナッ!伏せろ!」
「え?な――」
ばら撒かれた銃弾がルナをハチの巣にして、吹き出た鮮血が俺を赤く染める。そんな光景を幻視した。
「……あ、れ?」
だが、そうはならなかった。タレットだけじゃない。ドローンも、倒し損ねたオートマタも、全てが動きを止めている。一瞬本物のコユキによる援護を疑ったが、彼女は今も影コユキの影響でマトモに動ける状態じゃない。じゃあ誰だ?
「あれ?なんでですか?なんで動かないんですか?……まあいいです。なら私の手で死なせてあげますからっ!」
思考を戦場へと戻す。そうだ。まだ戦いは終わってねえ。今第一に考えるべきは影コユキの対処法だけだ。
影コユキが真っ黒に染まったコユキの愛銃「マリ・ガン」を構えこちらを向く。ここからは一対一だ。
「死んどけ偽物野郎!」
「あなたこそ死んでください!」
二発の銃声。それが開戦の合図だった。
武器種によるDPS的にも素の実力的にもこっちが不利。おまけにこっちは絶対に守りきらなきゃいけない護衛対象付き。でもさっきまでの無理ゲーよりかは勝機がある!
「うっ!?」
「ルナ!ちょっと掴まってろ!」
「セイ!?」
スモークグレネードで影コユキの視界を塞いだ隙を突き、ルナを背負って距離を詰める。乱雑に撒き散らされた弾幕が重症の体に与える痛みを無視しながら、俺はそのまま影コユキの脳天に銃口を突きつけた。
「……チェックメイトだ、偽物野郎」
一発の銃声。それがこの戦いにおいて最後に響いた音だった。
「すいませんでした!先生!」
目覚めたコユキの第一声は、謝罪の言葉だった。
「一応聞くが、自分がなにしでかしたかはわかってるな?」
「……はい。今回は流石に反省してます」
中々見れない表情差分してんなこいつ。もう完全にヤンデレ化の影響はなくなったと見ていいだろう。
「まあ話は後でじっくり聞かせてもらうとして、これだけは聞いとくぞ。お前、他の誰かに先生の居場所を共有したか?」
「いえ、してません。その、なんというか……先生を独り占めしようと思ってきたので。ユウカ先輩たちもここのことは知らないはずです」
「ならいい。他にも言いたいことは色々あるにはあるが……とりあえずお前がいるとこいつの精神に悪い。一旦今日のところは……」
「はい、わかってます。帰りますね。……先生。本当にすいませんでした」
コユキが部屋から去っていく。
「さて……ルナ、ちょっと離れろ。怖かったのはわかったから」
「…………やだ」
ルナは俺の腹に顔を埋めたまま、くもぐった声でそう答えた。
さっきからルナはこんな調子だ。コユキが気絶している間も、俺が真面目にコユキと話している間も、ずっとこうして俺を離すまいとガッチリホールドしていた。それだけさっき俺と引き離されたことが怖かったんだろうと察することはできるし、それで精神が安定するなら好きなだけこうしていいと許可を出すのは簡単なのだが、今この瞬間だけはそうもいかない。
「……はぁ。しゃーない、もうこの際だ。
ルナを引き剥がすことを諦めて、俺は扉の奥で待機しているやつらに声をかけた。
「……よろしいのですか?」
「今は情報収集が先だ。テメェらもなんか言いたいことがあんだろ?」
「あなたがそう言うのであれば、遠慮なく入らせてもらいますよ。失礼します」
そう言って部屋に入ってきたのは、黒いスーツを身に纏った異形頭の大人、黒服だった。
「はじめまして、ですね。セイさん。私は黒服と申します」
「知ってるよ。さっき助けてくれたことも含めてな。それについては礼を言っとくぜ」
「クックック……なに、ほんの手助けですよ」
影コユキ戦の最中にセキュリティシステムが何故か稼働しなかった場面があった。あれは恐らく黒服がなにかしたのだろう。そのおかげでルナは助かった。その件に関してはこいつに恩がある。だがな……
「それはそうと俺はお前らゲマトリアに対する疑いをなくしたわけじゃねえからな。今度は何しでかしやがった」
「これは厳しい。そうは言われましても、そもそもゲマトリアは解散済みですし、私たちはこの件に関して何もしていないのですよ」
「なるほどな。言い分はわかった。でもそれはお前らがこの件について何も知らないって意味じゃないよな?」
ルナに腕を掴まれないようにしながら、黒服に向けて銃を構える。
「悪いが俺は大人じゃないんでな。子供らしく、生徒らしく、欲しい
これが「先生」相手の交渉であれば話は違っていたかもしれない。だが今テーブルに着いているのは俺。ならこっちなりのやり方でやらせてもらう。
「テメェらのとこのクソおばだの和マンチ野郎だのに散々やらかされてきたんだ。今回も全くの関係がないとは言わせねえぞ?」
「そこを突かれると痛いですね。しかし、今回は過去にそうであった者も含めて、ゲマトリアは何も干渉していません」
……そこまで言い切るか。
「じゃあ真犯人は別にいるって?」
「はい。そして私はその存在を知っています。それをあなた方に伝えるためにここに来たのです」
「そうか。なら話してもらおうか。キヴォトスをこんな状態にした元凶について」
こうして俺はこのキヴォトスを狂愛で満たした存在について知ることとなった。そして決断を迫られることとなる。ルナの、あるいはキヴォトスの未来について。
事態は動き出し、加速する。その先に待つものは果たしてなんなのか。今の俺には知る由もなかった。
(……セイ、構ってくれない。やだ。セイはずっとわたしを見てくれなきゃやだ。どうしたらわたしを見てくれるんだろう。みんなみたいにすれば――っ、ううん。それは違う。それは「先生」がしていいことじゃない。……じゃあ、
腕の中で肥大化しつつある想いに、俺はまだ気付いていない。
セイ
油断慢心は敵だと思い知らされた
口の悪さが功を奏してヤンデレ化解除の方法をある程度確立した
黒服到来で警戒心マックス
ルナ
だいぶセイに依存中
そして今回の一件でさらに依存は加速するッ!(某神父並感)
依存値が一定を超えると覚醒します
コユキ
今回のヤンデレ枠
コユキはヤンデレになっても監禁とかはしない代わりに常時監視してくるタイプだと作者が嬉しい(隙自語)
こんな行き当たりばったりの作品をランキングまで押し上げてくださり本当にありがとうございます
ここからは書き溜め(今回の前半まではあった)どころかプロットもないので十中八九更新が激遅になります
そんな時は高評価・感想を送って作者を応援するサク〜!(謎妖精並感)