女体化ロンのおっぱいを揉みしだくまで死ねない 作:ハッピーエンド大好きクラブ
今回は俯瞰視点となります。
セルシウスは目を疑った。鏡の中には自分ともう一人、ギネヴィアがいる。振り返っても誰もいない。鏡に視線を戻すと自分の真後ろに母親が立っている。
黄金色の髪に、淡い深緑の瞳。彼女は泣いていた。セルシウスから目を離さず、涙を流していた。
少しずつ、ゆっくりと鏡に近づく。もしかすれば、ギネヴィアに触れることができるかも。またあの時のように膝枕をしてくれるかもしれない。
鏡に手を伸ばす。指先が鏡に触れる寸前、ギネヴィアの顔がぐにゃりと変形した。
驚いて手を引っ込めた。鏡の中にいるギネヴィアの体があっちこっちにねじ曲がり、引き伸ばされる。何が起こっているのか理解できず、セルシウスは見入ってしまう。
すると、ギネヴィアの姿が少年のものへと変化した。それは前世の自分の姿だった。
久しく忘れていた顔立ちに、セルシウスは笑ってしまう。
──────ズキッ──────
「セルシウス?」
側で見守っていたハリーは「ゔっ」と頭を押さえたセルシウスに声をかけた。
「なんだ…………頭が………割れる………!」
頭が割れそうなほど痛い。冷や汗が吹き出し、呼吸がままならなくなっていく。目に広がる光景が白黒に点滅し、頭の中からランスロットの声が聞こえだした。
『やった──!やったぞ────!ギネヴィア、ついに完成したんだ!俺は偉業を成したんだ!』
『やっと創造できたのねランスロット!貴方の研究は間違ってなかったのね!』
これは記憶か────?それとも鏡を見たことで強烈な呪いにかかったのか────?
『魂の選別を始めなくては。やることが一杯だ。忙しくなるぞ、ギネヴィア。俺達の
「がぁっ────!」
視界が正常に戻り、セルシウスは尻餅をついた。息も絶え絶えになり、脇腹を押さえて額の汗を拭った。
「だ、大丈夫なの?」
「ああ。大丈夫だよハリー。ちょっと、びっくりしただけだから」
今見えた映像のようなものは一体………。セルシウスは呼吸を整えて立ち上がる。
今度はハリーが鏡の前にいた。彼女は嬉しそうな表情で鏡を見つめている。
「お前には家族が?」
「パパとママがいる。私の後ろにね、ほら、今も私に手を振ってるんだ」
それはハリーだけにしか見えない特別な光景だ。
「ハリー、もう戻ろう。先生に見つかったら大変なことになる」
「嫌だ」
「…………先に戻る。おやすみハリー」
返事はなかった。ハリーは何も発さず、ただ鏡を見つめていた。
ハリーは鏡の虜になった。常にあの鏡のことを考えるようになり、食事にも手を付けず家族に会いに行く。ロンが「ハリー、ちゃんと食べなきゃ死んじゃうぞ」と言ってくれたが、ハリーからすればどうでもいいことだった。
五日目の夜は鏡の前に座って家族と見つめ合う。この時間は自分だけのものだ、誰にも邪魔なんてさせない。もう一生、このままでいたい。ずっと、いつまでも。
「ハリー」
体中の血液がスーッと冷たくなった。振り返るとセルシウスが扉にもたれ掛かっていた。
「セルシウス……驚かさないでよ」
セルシウスは何も言わず、鏡の前まで歩いた。
「退いてよ」
「ハリー、もうこの部屋には近づかないほうがいい」
「なんで?どうしてそんなこと言うの?」
「お前は自分を見失ってる。何日もこの部屋に来て、何時間も座ってるんだろ。飯だって碌に食べてないってのに」
それがどうしたと言うんだ。何の権利があってセルシウスは鏡に近づくなと言うのか。ハリーは気づいた、セルシウスはこの鏡を一人占めしたいんだ。
心配してるふうを装って、本当は鏡を自分だけのものにしようと考えてるんだ。
「セルシウスだって、君だってお母さんに会いたいんじゃないの?」
「会いたいよ。でも母さんはもう死んでる」
「この鏡なら会えるんだ!君にだって見えたでしょ!鏡には君のお母さんが写ってた!そうでしょ!?」
「確かに母さんは居た。でも、ただそこに居るだけだ」
「それで十分じゃないの!?私は、私はやっとパパとママの顔を知れたんだ!鏡のおかげで、それがどんなに嬉しかったか………」
ハリーは今まで両親の姿を見たことがなかった。それが鏡のおかげですべて分かったのだ。
この部屋にいる時だけは家族に会えない悲しみや焦燥感とは無縁になれた。声なんて聞こえなくても、話しかけることは出来なくても、ただそこに居てくれるだけでハリーは幸せだった。
「私はずっとここにいる。ここにいればパパとママを近くに感じるんだ」
「────俺は寂しいよ」
彼の言葉に、ハリーは固まった。
「死んだ人間には二度と会えない。たとえ鏡の中であってもだ」
「乗り越えろって言うの?二人が死んだ事実を受け入れろって?」
「そんなの無理に決まってんだろ」
目を見開いて驚いた。セルシウスはさも当たり前のようにハリーが質問したことを否定した。
「親が死んだのをはいそうですかで流せる奴なんていない。俺が言いたいのは、一人で抱え込むなってことだ。お前には俺たちがいるだろ?」
「それは……君だって」
親を失ったのはハリーだけじゃない。セルシウスだって十分悲惨な目に合っている。兄は失踪、母親は自殺、父親はつい最近行方不明になった。
セルシウスが口にした言葉は、彼自身にも当てはまるものだった。
「セルシウスは家族を失くして辛くないの?」
「全然」
セルシウスの見せる笑顔は背筋が凍るほどぎこちなかった。明らかな作り笑いに、ハリーは胸の中が悲しみで一杯になった。
最初から愛を知らずに育ったハリーと、家族に愛された中で全て失ったセルシウス。
セルシウスの悲しみはハリーでさえ測れない。そうだ、本当は分かっていたことだ。
鏡に写る家族は現実ではないことに。でもハリーは自分を止められなかった。もう鏡に縋るしかなかったんだ。
「でも……やっぱり寂しいよ、パパとママに会えないのは」
「二人はお前の心のなかにいるよ」
「──────ぇ?」
セルシウスはハリーに微笑みかけた。さっきのぎこちない作り笑いとは違って、慈しむような優しい笑顔だった。
彼は手を伸ばし、手のひらをハリーの胸の上に当てた。
「二人はここにいる。心のなかでお前のことを見守ってる。俺の母さんも、俺の心の奥で生きてる。根拠なんてない、納得できる理由もないよ。でも、俺はそう信じてる」
引っかかっていたものが、少しずつ解かれていく。ハリーの頬を涙が伝う。ハリーは、胸に置かれたセルシウスの手の上に自分の両手を重ねた。
「どうしようもないくらい辛くなったら、傍に居てくれる?」
「いつでも傍にいる」
ハリーに必要だったのは鏡じゃなく、寂しさを分かち合える友人だった。
「やっぱおっぱいって柔けぇー」
「セルシウスのバカッ!」
「裏拳ッ────!?」
ハリーの胸に置いた手をさり気なく押してみると、ふにゅっと柔らかい感触が手のひら全体に伝わった。
胸を揉まれたと勘違いしたハリーは顔を真っ赤にしてセルシウスの頬に渾身の裏拳を放った。
床に倒れ込んだセルシウスに見向きもせず、怒ったハリーは透明マントをかぶって出ていってしまった。
だが次の日からハリーのセルシウスに対する距離感がずいぶんと縮んだように見えた。
それに真っ先に気づいたのはロン・ウィーズリーであった。
今回は俯瞰視点でのお話でしたが如何でしたでしょうか。
本作品は皆さんが求めるクオリティに届かないこともあると思います。ですがそれでも面白いと思ってもらえるように頑張っていきますので、どうか最後までお付き合い下されば幸いです。
全話では沢山の感想ありがとうございます。次回からはいつものセルシウス視点でのお話となります。
現状、セルシウスは闇堕ち寸前の精神状態となってます。ですがハリーやロン、ハーマイオニー、マクゴナガル先生の存在がデカすぎてギリギリで踏み止まってる状態ですね。