砂浜の中央。
ラウとゾロが向かい合った。
ゾロは刀を抜かない。
ラウも拳を軽く握るだけだった。
「先に言っとくぜ。俺の戦い方はちょっと変わってる」
「構わねぇ。来いよ」
先に動いたのはゾロだった。
踏み込みと同時に拳が飛ぶ。
ラウは頭を傾け、紙一重でかわした。
反撃の拳を放つが、ゾロは腕で受け止める。
ラウは笑った。
「いいねぇ!」
今度はラウが攻める。
拳を二発。
続けて肘。
さらに低い位置から蹴りを繰り出す。
白打を応用した、全身を使う近接格闘。
ゾロは防御しながら、少しずつ後退した。
だが、ラウは闇雲に攻撃しているわけではなかった。
ゾロの右足。
踏み込む直前に、ほんのわずかに重心が移る。
肩の動き。
攻撃を切り替える瞬間に、筋肉が微かに緊張する。
呼吸。
攻撃の連続で、わずかに間隔が変わる。
ラウの目は、その一つ一つを捉えていた。
「……なるほどな」
ラウが小さく呟いた。
ゾロが踏み込む。
その瞬間、ラウは正面から受けず、手のひらで腕の軌道を逸らした。
柔拳を応用した、精密な受け流し。
そして、ゾロの腕へ指先を伸ばす。
「そこだ!」
しかし、ゾロは寸前で腕を引いた。
ラウの指先は空を切った。
二人は距離を取る。
「今のは何だ?」
ゾロが尋ねた。
「ノッキング。相手の身体の動きを見て、適切な箇所に打撃を入れる技術だ。うまく決まれば、一時的に動きを鈍らせられる」
「触れれば勝ちってわけじゃねぇんだな」
「当たり前だろ!」
ラウは豪快に笑った。
「身体の仕組みが違えば効き方も変わるし、相手が速すぎりゃ当てることすらできねぇ!」
「なら、もう少し速くしてやるよ」
ゾロが踏み込んだ。
先ほどよりも鋭い拳。
ラウはかわしたが、次の一撃が肩に当たった。
「ぐっ!」
ラウは後ろへ下がった。
肩を回し、痛みを確かめる。
それから、にやりと笑った。
「ははっ! 今のは読めなかったぜ!」
「全部読めるわけじゃねぇだろ」
「その通りだ!」
ラウは拳を構え直した。
「だから面白ぇんだよ!」
再び二人がぶつかる。
勝負は決着しなかった。
だが、互いの実力を認めるには十分だった。
最後に二人は拳を合わせた。
「またやろうぜ、ゾロ!」
「次は刀も使うかもしれねぇな」
「おお! そりゃ楽しみだ!」
少し離れたところで、ルフィが大笑いしていた。
「お前ら、気が合うな!」
「「どこがだ!」」
またしても声が重なった。
夕方。
ルフィとゾロが出航の準備を始めた。
ラウは浜辺に立ち、二人を見送っていた。
「ラウ! お前も一緒に来るか?」
ルフィが船の上から尋ねた。
ラウは少し考えた。
楽しそうな誘いだった。
ルフィとなら、面白い冒険ができるかもしれない。
ゾロとなら、もっと強くなれるかもしれない。
だが、ラウにはラウの目的があった。
「悪ぃな! 俺はもう少し、この島を調べていく!」
「そうか!」
ルフィはあっさりとうなずいた。
「じゃあ、また会おうぜ!」
「ああ! 海賊王になったら、うまい飯をおごれよ!」
「いいぞ!」
「おいルフィ、勝手に約束すんな」
ゾロが呆れた声を出した。
船が岸から離れていく。
ラウは大きく手を振った。
「おーい! 死ぬんじゃねぇぞ、二人とも!」
「お前もなー!」
ルフィの声が、海風に乗って届いた。
やがて船は水平線の向こうへ消えていった。
ラウはしばらく海を眺めていた。
「……海賊王、か」
笑みがこぼれる。
「面白ぇ男だったな」
ラウは振り返り、島の奥へ歩き始めた。
まだ、彼は麦わらの一味ではない。
これからルフィたちがどんな仲間と出会い、どんな冒険をするのかも知らない。
そして、自分がいつか彼らと再会し、その航海に加わることになるとも、想像していなかった。
その夜。
ラウは海岸近くの岩場で、見慣れない貝を見つけた。
鼻を近づける。
「……こいつは初めて嗅ぐ匂いだな」
潮の香りの奥に、柑橘のような爽やかさと、土のような深い香りが混ざっている。
ラウの目が輝いた。
「こいつは……食ってみる価値がありそうだ!」
未知の味。
未知の海。
未知の出会い。
ラウの冒険も、まだ始まったばかりだった。
ノッキング使えるオリ主小説増えてほしいです..