ONE PIECE ― 飢狼の航路 ―   作:HINRON

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獲物を狙う者

日が傾き始めた頃。

ラウは貝を保管し、浜辺で身体を休めていた。

そのとき、森の奥から物音がした。

 

ガサッ。

 

ラウの笑みが消えた。

風向きが変わる。

土の匂い。

汗の匂い。

そして、金属の匂い。

 

「……人間か」

 

足音は二人分。

一人は右側の茂み。もう一人は岩場の陰にいる。

ラウは立ち上がり、何気ない様子で焚き火のそばに立った。

 

やがて、二人の男が姿を現した。

腰には剣。片方の手には銃。

海賊らしい格好だった。

 

「おい、兄ちゃん。さっき海から上がってきた貝を渡しな」

 

ラウは眉を上げた。

 

「……見てたのか?」

 

「珍しい食材なんだろ? 俺たちがもらってやるよ」

 

「断る」

 

ラウは即答した。

 

「こいつは俺が苦労して獲ったんだ。欲しけりゃ、自分で獲りに行けよ」

 

男の顔が歪む。

 

「痛い目に遭いたくなきゃ、言うことを聞け!」

 

剣が抜かれた。

もう一人は銃を構える。

ラウは小さく息を吐いた。

 

「せっかく、いい食材に出会えたってのによ……」

 

肩を回し、拳を握る。

 

「邪魔するなら、相手してやるよ」

 

剣を持った男が突進してきた。

ラウは一歩だけ横へ動き、刃をかわす。

相手の腕が伸び切った瞬間、手のひらで軌道を逸らし、肘の動きを崩す。

 

続けて腹へ拳を叩き込んだ。

「ぐっ……!」

 

男が身体を折る。

ラウはその隙を逃さず、腕の動きに関わる箇所へ精密な打撃を入れた。

 

ノッキング

 

鍛錬によって磨いた、ラウの得意技の一つだった。

男の腕から力が抜け、剣が砂浜へ落ちた。

 

「な、何をしやがった……!」

 

「ちょっと動きにくくしただけだ」

 

ラウは笑った。

その瞬間、背後で銃声が響いた。

ラウは横へ跳ぶ。

弾丸が岩に当たり、砕けた石が飛び散った。

 

(銃を撃つ直前、肩が上がる……!)

 

ラウは相手の呼吸と腕の動きを観察した。

次の射撃。

男が銃を構え直した瞬間、ラウは遮蔽物から飛び出した。

 

銃口が向く。

 

だが、ラウは射線を外しながら一気に間合いを詰めた。

「遅ぇ!」

 

拳が男の腹へ沈む。

 

男はうめき声を上げ、銃を落とした。

ラウは二人を見下ろし、ため息をついた。

 

「食材を奪う前に、まず自分の腕を磨けっての」

 

それから、すぐに表情を明るくした。

 

「さて! 邪魔者はいなくなったし、夕飯の続きだ!」

切り替えの早さは、ラウの長所でもあり、欠点でもあった。

 

 

夕暮れの海。

 

ラウは小舟に荷物を積み込み、帆を上げた。

保管した幻潮貝。採取した海藻。そして、次の島で試してみたい調理法の数々。

食材探しは、まだ始まったばかりだ。

 

「世界には、まだ知らねぇ味が山ほどある」

 

ラウは潮風を吸い込んだ。

 

「次はどんな島だ? どんな生き物がいる? どんなうまい飯が待ってんだ?」

 

彼は豪快に笑った。

 

「全部、俺が確かめてやる!」

 

小舟は、東の海を進み始めた。

 

一方、その頃。

ルフィたちはオレンジの町へ向かっていた。

そこでは、泥棒猫と呼ばれる少女と、奇妙な道化の海賊が待ち受けている。

まだ互いの行く先を知らないラウとルフィたち。

しかし、海は広くても、冒険の道が永遠に交わらないとは限らない。

 

やがて彼らは再会する。

 

そしてそのとき、ラウは初めて知ることになる。

仲間と食べる飯が、一人で食べるどんな珍味よりも、特別な味になることを。

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