AIをがっつり使った練習作です。これで終わりです。
「大魔王を倒せ」
それは、神からの宣告だった。
白一色の空間。目の前にいる存在は、神としか呼びようのない何かだった。
神は、いずれこの世界に大魔王が現れると告げた。
大魔王は人々を苦しめ、世界に災厄をもたらす。
だから、お前が大魔王を倒せ。
それだけだった。
大魔王の名前も、居場所も、姿も、いつ現れるのかさえ教えられなかった。
そのための力は与えてやる。使いこなせ。
そう言い残し、強大な存在は去っていった。
質問する余地も、交渉する時間もない。
ただ、その使命だけが魂に刻み込まれた。
そして、次に目を開けたとき、俺は見知らぬ世界に生まれ変わっていた。
剣と魔法が存在し、人間以外の種族も暮らす世界。
どうやら俺は、本当に大魔王を倒さなければならないらしい。
ならば、やることは決まっている。
情報を集め、力をつけ、仲間を集める。
相手がどれほど強大な存在であろうと、何も知らずに挑むわけにはいかない。
幸い、この世界には冒険者という仕事がある。
危険な依頼をこなし、未知の土地を訪れ、時には人々から情報を集める。大魔王を探すには、うってつけの仕事だった。
そうして俺は、十五歳になると冒険者として旅立った。
それから六年。
俺たちは、冒険者の最高位であるアダマンタイト級まで上り詰めた。
俺は今、四人の仲間とともに帝国からの依頼を終えたところだった。
依頼内容は、アゼルリシア山脈に巣くうと言われる竜王の討伐。
簡単な仕事ではなかったが、五人で力を合わせ、どうにか成し遂げた。
討伐の証を持ち帰った俺たちは、十分な報酬を受け取り、盛大な祝宴まで開いてもらった。
徒歩で帰ってくる帝国の部隊が到着すれば大規模な祝勝会を開催されるらしい。
俺たちは転移魔法で帰ってきたので、戦利品や捕虜は後続部隊が引き連れてくるのだ。
その帰り道、俺は仲間たちの顔を見回した。
「……これで、ひとまず区切りがついたな」
「何がだ?」
そう尋ねたのは、和風の衣装に身を包んだ男だった。
腰には刀。脚には袴。見た目はまるで、異国の物語に登場する侍である。
男の名は、ブレイン・アングラウス。
「いや、お前と出会ったときのことを思い出していたんだ」
「あの頃の話か」
ブレインは、少しだけ口元を緩めた。
俺が十五歳のとき、旅の途中で彼と出会ったのが始まりだった。
当時の彼は武者修行の最中で、いつか王国戦士長ガゼフ・ストロノーフと剣を交えることを目標にしていた。
しかし、相手は一国の軍を率いる立場にある人物だ。普通の冒険者が、気軽に決闘を申し込める相手ではない。
そんな彼が刀を使っていると知り、俺は日本で得た知識をいくつか話した。
刀について詳しかったわけではない。せいぜい、昔の日本文化に関する雑学程度だ。
たとえば――。
『袴には膝を隠す意味もあるらしいぞ』
といえば、なぜかブレインはその話を真剣に受け止めた。
その結果、彼は袴を身につけ、ますます侍らしい格好になった。
そして、俺が冒険者として活動していると知ると、彼は同行を決めた。
彼は旅を通じて経験を積める。俺は強力な前衛を得られる。
お互いに利のある話だった。
何より、ブレインは俺にとって最初の仲間であり、最も気の置けない友人でもある。
「懐かしいな。あの頃は、まだ何もかも手探りだった」
「今も大して変わらんだろう」
「それはそう」
ブレインの隣で、ニニャが小さく笑った。
彼女は優れた魔法使いであり、俺にとって頼れる相談相手でもある。
彼女には、魔法を通常よりも早く習得できるタレントがあった。その才能と努力によって、二十歳になる前に第六位階魔法を習得した。人類史上、二人目の快挙である。
彼女が仲間になったのは、俺が十六歳のときだった。
当時の彼女は、行方不明になった姉を探していた。
しかし、個人の冒険者が人探しに使える資金も、情報を集めるための伝手も限られている。
俺にも、大魔王を探すための情報と人脈が必要だった。
そこで俺たちは、ブレインを含めた三人で話し合い、竜王国の危機を解決するために向かうことを決めた。
隣国のリザードマンの侵攻を受け、国家存亡の危機に瀕していた竜王国。
リザードマンの侵攻を退け、国を救う。
その功績をもって王家の支援を得られれば、ニニャは姉を探す手掛かりをつかめる。ブレインにはガゼフとの決闘の機会が近づき、俺も人脈と情報を得られる。
それぞれの目的は違っても、進む方向は同じだった。
結果として、俺たちは国を救い、三人とも望んでいたものに手を伸ばすことができた。
ニニャはその後も、姉を探すだけでなく、自分自身の意思で冒険者を続ける道を選んだ。
「それにしても、ドラゴンまで倒すことになるとは思いませんでしたね」
「俺もだよ」
俺は肩をすくめた。
「でも、これで大魔王候補を探すための情報も、だいぶ集まった」
「候補って、そんなにいるものなのかしら?」
そう言って手を振ったのは、クレマンティーヌだ。
彼女は斥候として優秀で、隠密行動や奇襲、人間相手の戦闘においては、俺たちの中でも突出した腕を持っていた。
そして、身につけている装備にも特徴がある。
彼女は、やたらと露出の多い鎧を好んで着ている。その上からマントを羽織っているのだから、初めて見たときは妙な格好だと思ったものだ。
本人は、動きやすさのためだと言い張っている。
……本当だろうか。
少しばかり露出狂のケがあるのではないか、と俺は密かに疑っている。もちろん、本人には言わない。
クレマンティーヌが仲間になったのは、十九歳のときだ。
彼女は法国で人類最強の部隊に所属していた英雄だったが大罪を犯し、法国から討伐令が出ている危険人物だった。
要人を殺害し、秘宝を盗んだ極悪人だと。
実際に彼女が、俺たちのパーティーを襲撃してきたのが始まりだった。
俺たちが英雄として称賛されていることが気に入らず、人気のない道で待ち伏せしてきたのだ。
彼女の目には、俺たちは自分より弱いくせに持ち上げられている連中に見えたらしい。
実際、ブレインは一対一の戦いで彼女に敗れた。
周辺国家最強と呼ばれたブレインをタイマンで倒すとは、あの時は非常に驚いたものだ。
だが、俺とニニャを交えた三人の連携によって、最後には彼女を打ち負かした。
負けたなら勝者に従う。
それが彼女なりの流儀だった。
俺たちも彼女の実力を認め、仲間に迎えることにした。
もちろん、彼女がそれまでに犯した罪が消えたわけではない。奪った宝物を返し、危険な任務を引き受けることを条件に、これまで築いてきた人脈を使って彼女の活動を認めてもらっている。
法国から黙認と不干渉を勝ち取れたのは、正直運がよかった。
家族への反発も、自由への執着も、危険を楽しむ性格も、そう簡単には変わらない。
それでも、今では背中を任せられる仲間だ。
「候補が何人いるかなんて、俺にも正確にはわからないさ」
「それで大魔王を倒そうっていうんだから、あなたも大概よね」
「だからこそ、仲間が必要なんだよ」
「はいはい。わかってるわよ」
クレマンティーヌは楽しげに笑った。
そして、俺は最後の仲間へと目を向けた。
彼は俺たちの少し後ろを歩いていた。
身につけているのは、ゆったりとした魔法使いの装備。顔は仮面で覆われ、露出している肌は魔法の道具による幻覚で人間のものに見せかけている。
その下にある本当の姿は、肉も皮膚もない骸骨だ。
彼の名は、モモンガ。
俺たちが初めて出会ったとき、彼は全身鎧に身を包み、モモンと名乗る新人冒険者だった。
あの日のことは、今でもよく覚えている。
冒険者組合で依頼を探していた俺は、受付の近くにいる全身鎧の男を見かけた。
立派な装備を身につけているものの、本人は新人冒険者らしい。受付嬢と話している様子からも、まだ仕事に慣れていないように見えた。
俺は何気なく視線を向けた。
その瞬間だった。
――逃げろ。
不意に、頭の中で警告が鳴った。
いや、正確には逃げろというよりも、敵に回すなという感覚だった。
目の前の男を怒らせるな。
不用意に挑むな。
できることなら、味方にしておけ。
そんな直感が、俺の中で強く警鐘を鳴らしていた。
相手は全身鎧の新人冒険者だ。
見た目だけなら、特別な脅威には思えない。
それなのに、俺の直感は彼を危険な存在だと告げていた。
これまでの冒険でも、俺の勘は何度も危険を知らせてくれた。
魔物と遭遇する直前。待ち伏せに気づく瞬間。仲間が見落とした危険を察知したとき。
そうした場面で、俺の直感は妙によく当たった。
だからこそ、今回も無視する気にはなれなかった。
――こいつ、相当強いぞ。
いや、もしかすると、俺たちとは比較にならないほどの実力を隠しているのかもしれない。
そう考えると、恐ろしいという気持ちと同時に、興味も湧いてきた。
敵に回すのは避けたい。
ならば、味方になってもらえばいい。
我ながら打算的な考えだが、冒険者の世界では大切な判断だと思う。
「なあ、ちょっといいか?」
俺が声をかけると、全身鎧の男はこちらを向いた。
「何か用か?」
「俺たちも冒険者なんだ。よかったら、一緒に依頼を受けないか?」
「……私と?」
「そう。見たところ、まだ新人だろ? 経験者と組んだ方が仕事も覚えやすいと思うぞ」
もちろん、それだけが理由ではない。
俺の直感が、こいつを放っておくなと告げていたのだ。
男は少し考えたあと、うなずいた。
「なるほど。確かに、経験者と行動するのは悪くないか。私はモモンという。よろしく頼む」
「よろしくな、モモン」
こうして俺たちは、最初の依頼を一緒にこなすことになった。
そして、その依頼の中で、俺の直感が正しかったことを思い知らされた。
モモンは、明らかにおかしかった。
敵の動きを見極める判断力。危険な状況での落ち着き。仲間の行動を見て、必要なときだけ手を貸す絶妙な加減。
どれも、冒険者になったばかりの人間にできることではない。
それなのに、本人は自分のことを新人だと言い張る。
何か事情があるのだろう。
俺は無理に問いたださず、ひとまず一緒に依頼をこなすことにした。
依頼の合間、俺たちは雑談をするようになった。
最初は冒険者としての経験や、訪れた土地についての話だった。
だが、話をしているうちに、俺は妙なことに気づいた。
モモンは、妙に話が合うのだ。
物事の考え方。冗談への反応。何気ない話題の選び方。
この世界の人間とは、どこか違う。
まるで、同じ故郷で育った人間と話しているような感覚だった。
「なあ、モモンって妙に話が合うよな」
「そうか?」
「うん。なんというか、故郷が同じ人間と話しているみたいだ」
俺は冗談半分にそう言った。
すると、モモンは一瞬だけ黙った。
「……故郷、か」
「ああ。俺、実は遠いところから来たんだよ。こことはずいぶん違う文化の場所でさ」
俺は、この世界の人間に前世のことを話す機会がほとんどなかった。
日本の文化について説明しても、異国の珍しい風習として受け取られるだけだ。
だから、普段はわざわざ話題にしない。
しかし、モモンと話していると、妙に懐かしい感覚があった。
俺は、ふと思いついて尋ねた。
「なあ、もしかしてモモンも……日本って国を知ってたりするか?」
その瞬間、モモンの動きが止まった。
「……日本?」
聞き返す声に、先ほどまでとは違う響きがあった。
「知ってるのか!?」
俺は思わず身を乗り出した。
モモンはしばらく黙っていたが、やがて静かに答えた。
「知っている。私も、そこから来た」
「マジで!?」
思わず大声が出た。
慌てて口を押さえる。
まさか、この世界で日本人に出会えるとは思わなかった。
俺は、自分が転生者であることを話した。
神に大魔王討伐を命じられたことも、隠さずに伝えた。
モモンは驚いた様子を見せたが、俺の話を最後まで聞いてくれた。
そして、彼もまた、元いた世界のことを少しずつ話してくれた。
細かな事情は違っていたが、同じ日本で暮らしていた人間同士だ。話題は尽きなかった。
この世界の常識に合わせて言葉を選ぶ必要もない。
前世の文化や習慣について、いちいち説明しなくても話が通じる。
そんな当たり前のことが、驚くほど嬉しかった。
「いやあ、まさか日本人に会えるとはなあ!」
「私も驚いたよ」
「もっと早く会いたかったな。こっちに来てから、こういう話ができる相手がいなかったんだ」
「それは……確かに」
モモンの声も、どこか楽しげだった。
それから俺たちは、依頼の話だけでなく、前世の思い出についても語り合うようになった。
好きだったもの。暮らしていた場所。何気ない日常の話。
そんな話をしていると、モモンが単なる強力な冒険者ではなく、同じ世界を知る人間なのだと実感できた。
もちろん、俺は彼の実力を警戒していた。
初めて会ったときから、直感がずっと告げている。
この男は、途方もなく強い。
その確信は、依頼を重ねるたびに強くなっていた。
しかし、それ以上に俺はモモンという人間に好感を持つようになっていた。
強いから仲間にしたい。
それも間違いではない。
だが、同じ日本人として話が合い、一緒にいて楽しい。困ったときには頼りになり、こちらの考えも尊重してくれる。
それなら、仲間になってほしいと思うのは当然だった。
ある日、俺は思い切って切り出した。
「なあ、モモン。これからも俺たちと一緒に冒険しないか?」
「私が?」
「ああ。お前がいると、すごく助かる。それに……単純に、一緒にいると楽しいんだよ」
少しだけ照れくさくなり、俺は頭をかいた。
「せっかく同じ日本から来たんだ。これも何かの縁だろ?」
モモンはしばらく黙っていた。
やがて、ゆっくりとうなずいた。
「……そうだな。私も、君たちと冒険するのは楽しい」
「じゃあ!」
「ああ。これからは、正式に仲間として同行させてもらおう」
「よし! これからよろしくな、モモン!」
俺は差し出された手を握った。
その瞬間、初めて会ったときから感じていた警告めいた直感が、ふっと薄れた。
危険が消えたわけではない。
彼が途方もない強者であるという確信は、今も変わらない。
ただ、その力が自分たちに向けられることはないだろうと、信じられるようになったのだ。
それからしばらくして、彼は冒険者としての名をモモンからモモンガへと改め、魔法使いの装備に身を包むようになった。
仮面と魔法の道具による幻覚で肌を人間のように見せているが、その本当の姿は骸骨だという。
事情を聞いたときはさすがに驚いたものの、今さら仲間をやめる理由にはならなかった。
俺にとって大切なのは、彼の見た目ではない。
同じ日本から来た、気の合う友人であり、信頼できる仲間だということだ。
……それにしても、あの直感は何だったのだろう。
あれほど強く警告された相手と、今では気兼ねなく話し、一緒に食事をし、背中を預けて戦っている。
人生とは、本当に何が起こるかわからない。
そんな過去を思い返しながら、俺は改めて仲間たちを見回した。
ブレインは、ガゼフとの決闘を経て、周辺諸国最強の剣士へと成長した。
ニニャは、人類の到達点とされる魔法の領域に手を伸ばした。
クレマンティーヌは、誰にも捕まえられない斥候として、その腕を磨き続けている。
そしてモモンガもまた、俺たちとともに数々の危険な依頼を乗り越えてきた。
俺自身も、剣を振るい、弓を引き、魔法を使い、仲間を支えながら戦う術を身につけた。
誰か一人で解決できない問題も、五人なら乗り越えられる。
そう信じられるだけの経験を、俺たちは積み重ねてきたのだ。
大魔王を倒す。
そのために、俺は仲間を集めた。
そして今、俺たちは帝国の依頼を成功させ、ドラゴンの討伐という大きな成果を持ち帰った。
人々から英雄と呼ばれることも増えた。
各国に伝手ができ、情報も集まりつつある。
これなら、そろそろ次の段階に進めるかもしれない。
俺は満足げにうなずいた。
「よし。大魔王候補は、これで全部だ」
「……本当に?」
ニニャが首をかしげた。
「少なくとも、今まで調べてきた範囲ではな」
「それ、全部って言わないんじゃない?」
クレマンティーヌが呆れたように笑う。
「細かいことはいいんだよ。これからは、候補を絞り込んでいけばいい」
「その候補とやらが、本当に大魔王になるのかもわからんのだろう?」
ブレインの指摘に、俺はうなった。
「……そこは、まあ、神様のお告げだから」
仲間たちは顔を見合わせた。
俺が転生したこと。神に大魔王討伐を命じられたこと。
その話を、俺は仲間たちに隠していない。
もちろん、誰もが神の存在や転生の話をそのまま信じているわけではない。それでも、俺が本気で大魔王を探していることは理解してくれていた。
だからこそ、ここまで一緒に来てくれたのだ。
仲間の中で唯一信じてくれるのは、モモンガだけだった。
大魔王の存在に懐疑的だったモモンガは、個人的に調査を進めてくれていたらしい。
その結果、実在の可能性が高いと踏んだのだとか。
どんな調査をしたのかはわからない。
しかし、大魔王の存在を信じていない仲間の中で、唯一真剣に受け止めてくれるのがモモンガだけだった。
「まあ、あなたが本気なのは知ってるわよ」
クレマンティーヌが肩をすくめる。
「だったら、最後まで付き合ってあげる。面白そうだしね」
「私も、できる限り協力します」
「俺もだ。ここまで来たんだ、最後まで見届けてやる」
「俺も同じだ」
モモンガも静かにうなずいた。
頼もしい仲間たちだ。
俺は彼らの言葉を胸に刻み、改めて決意を固めた。
いつか必ず、大魔王を見つけ出し、倒してみせる。
そのために、これからも仲間とともに冒険を続けよう。
――その大魔王になるはずだった存在が、すでに自分の隣を歩いている可能性など、考えもしないまま。
なおモモンガを仲間にした模様。