十文字先輩所有のハマーは、第一高校を出てから10分ほど走り続けていた。
車内にいるのは俺と深雪、十文字先輩、エリカ、レオ、ミーシャ。それに、急遽加わった桐原武明先輩だ。
出発直前――
「よう、司波兄。それとっスっス娘」
「桐原先輩」
「おっ、新呼称っスね」
「あんまり驚かねえのな」
「……いえ、十分驚いてますよ」
「達也はポーカーフェースの達人っスからね。達也だけに達――」
「行くぞ」
――こんな調子で、桐原先輩は合流したのだった。
桐原先輩を連れて行くことについては、十文字会頭が許可したらしい。
学校へ侵入してきた相手を迎撃するのと、こちらから武装組織の拠点へ踏み込むのとでは意味が違うし、その危険性は桐原先輩自身も理解していたはずだ。
それでも本人は引かなかった。
「俺は中学時代の壬生の剣が好きだった。ずっと目標だった。俺より剣が上手くて、いつか追いついてやろうって思ってた。
でも、ここ一年くらい……あいつの剣がおかしくなったんだ。下手になったとかじゃない。
迷ってるっていうか、濁ってるっていうか……見ててずっと腹が立ってた」
壬生先輩が変わっていくことに腹を立てていたのか、その理由に気づけなかった自分に腹を立てていたのかは分からない。
本人の中でも、そこまで整理されてはいないのだろう。
「奴の剣を変えちまった、汚染したやつらが、今回の一件で壬生を利用したやつがいる。こんなのは壬生のためですらない。俺の八つ当たりだ」
それを止める者はいなかった。
郊外へ向かう間、俺は端末で司甲先輩の家族関係を辿っていた。
司甲先輩は、あの毛髪が義兄の司一のものだと答えた。司一がブランシュ日本支部のトップであることは、以前、風間少佐から直接聞いている。ミーシャも《スクライング》の際に、その情報を皆へ伝えていた。
もっとも、少佐から得た情報の出所を、ここで明かすわけにはいかない。それに司甲先輩自身、暗示を受けている可能性がある。
名前が一致するだけでは足りない。少なくとも家族関係については、別の経路から裏を取っておく必要があった。
司甲先輩を起点に、照会可能な記録と関連資料を突き合わせる。
結果、司一という人物が司甲先輩の義兄であることを確認できた。本人の顔写真も見つかった。
「これだ」
車内中央ディスプレイとナビの画面へ転送した。
三十代前後。写真だけなら、ごく普通の法律家か研究職にでも見える。少なくとも、反魔法政治結社の国内責任者だと一目で分かるような顔ではない。
レオが座席から身を乗り出した。
「こいつが日本支部の頭か」
「ああ。ミーシャが言っていた司一だ。司甲先輩との続柄も確認が取れた」
十文字先輩は前方を確認しながら、ディスプレイに映る司一の顔写真と、その隣の司甲先輩の情報へ一瞬だけ目を向けた。
「司甲の供述とも一致するな」
「はい。少なくとも、別人を取り違えている可能性は低いでしょう」
「剣道部主将の兄貴……?」
桐原先輩の声が少し硬くなる。俺はそれに補足する。
「はい、義兄ですが」
「義理とは言え、弟にまで洗脳まがいのことしやがったのか」
レオが吐き捨てるように言い放つ。
有志同盟に司甲先輩が関わり、その義兄がブランシュ日本支部を率いている。
家族関係の裏付けも取れた。そこへ壬生先輩やエガリテの腕章まで重ねれば、学校内で別々に起きていたことを偶然として扱う方が難しかった。
車はさらに郊外へ進んだ。
ミーシャが《スクライング》で絞った範囲にあともう少しというところまで近づいたところで、後部座席にいた本人が身体を起こす。
「そろそろっス」
「分かるのか?」
レオが聞く。
「今から分かるようにするっス」
ポシェットから取り出したのは灰褐色の毛皮だった。大きさと毛質から見て、犬、それも猟犬系のものだろう。
エリカが興味深げに茶化す。
「でたでた。いつもの面白アイテム」
「アイテムじゃないっス。物質要素っス。猟犬の毛皮」
ミーシャは膝の上へ毛皮を広げ、その中央に手を置いた。
「世界の糸を紡ぎ、万里の理を解き明かせ。我が魔力に応じ、司一の在り処をここに示せ」
祝詞が終わっても、俺には何も見えない。いつも通り、起動式も魔法式も確認できなかったが、ミーシャはしばらく黙ったあとで顔を上げた。
「お。幸先良いっス。一発で見つかったっス」
「もう?」
「《ロケート・クリーチャー》っス。見たことある相手なら、三百メートル以内にいれば方向だけ分かるっス」
そこに深雪が眉を寄せ疑問を重ねる。
「ミーシャは、彼と直接会ったことはないはずですが」
「スクライングで観察したっス。便利っスこのコンボ」
判るならそれでよい、俺はすぐ端末の地図を開いた。
「今はどっちだ」
「前方より少し右っス」
ミーシャが方向を指さし、俺が記録する。
運転していた十文字先輩が、道路状況を見ながら進路をわずかに変える。
「集中してれば一時間くらい持つっス。ただ、途中に幅三メートル以上の水の流れがあると探知できないっスけど」
幻想術には相変わらず妙な制約が付いてくる。
ただ、今欲しいのは理屈ではなく位置だ。
百メートルほど横に進んだところでもう一度方向を聞き、再度方向を確認する。
二つの地点から得た方向線を地図へ伸ばしていくと、十文字先輩がバックミラー越しに端末を見た。
「三角測量か」
「基本数学です」
多少の誤差を見込んでも、二本の線が重なる範囲は狭い。
「この辺りです」
指したのは郊外のバイオ燃料の廃工場だった。使われなくなった物流施設や、小規模な材料置き場が点在している。
ミーシャも地図へ顔を寄せる。
「ウィっス。この辺なら間違いないっス」
場所が分かれば、次に確認するのは残っている手札だった。
「幻想術の残りは?」
「上の方は、もうだいぶ品切れっス。強度五はゼロ。強度四があと一回。
強度三以下はまだそこそこあるっス。強度五を一回だけ回復できる秘義も時間的にできなかったっス」
「戦闘用は?」
「朝言った通り、今日は探索構成っス。殴り合い用はあんまり準備してないっスね」
正面戦力として数える必要はなさそうだ。
もっとも、ミーシャの場合は強度が低ければ大したことができない、とはならない。
高位の術を切らしていても、何を補助に持ち出すか分からない分、むしろ役割を限定しすぎない方が使いやすい。
頭の中で配置を組んでいると、運転席から十文字先輩が声を掛けた。
「司波、お前が指揮を取れ」
こちらから作戦案を提言するつもりでいたのだが、指揮まで任されるとは思わなかった。意外に思い、前席を見る。
「俺がですか?」
「ああ」
「理由を聞いても?」
十文字先輩は前を見たまま答えた。
「お前が一番怒っている」
予想していた理由ではなかった。
「しかも、今のところ判断は鈍っていない。感情に任せて突っ込む人間より、よほど任せやすい」
少し間を置き、運転席から小さな笑い声が漏れた。
「それに渡辺が何度か言っていた。司波は逸材だ、と」
そこまで買われていたのか。最初に名前を聞かれた時から思っていたが、渡辺先輩はどうにも俺を過大に見ているらしい。
隣の深雪は口を挟まない。ただ、わずかに緩んだ口元から、嬉しさを隠しきれていないことは分かった。
「任せる。お前が決めたことについて、必要なら責任は俺が持つ」
十師族次期当主であり、部活連会頭でもある十文字先輩からそこまで言われれば、辞退する理由もない。
「分かりました」
地図と工場の配置を見ながら、順番に役割を決める。
「正面から入ります。包囲に時間を掛けるより、相手が逃走準備に入る前に奥まで届いた方がいい。レオ、ハマー全体へ硬化を掛けられるか?」
「この車くらいなら余裕」
「入口にバリケードがあっても、そのまま突破する」
エリカが口笛を吹いた。
「派手ね」
「逃げる時間を与えるよりいい」
そのまま全員へ視線を回す。
「侵入後、エリカと桐原先輩は左右を。側面から来る相手を止めてください。十文字先輩は中央を押して、奥への進路を確保。司一は俺と深雪で押さえます」
「了解」
「任せろ」
「承知した」
深雪だけは確認するまでもなかった。
「はい、お兄様」
最後にレオとミーシャを見る。
「二人は後方警戒。ミーシャはレオの支援を中心に」
「ウィっス」
レオが楽しそうに笑う。
「今度は何が来るんだ?」
「とっておきの装備もあるっス」
「楽しみだな」
まったく、この二人は本当に相性が良い。
しばらくして、目的地が見えた。
廃棄工場の周囲には簡易バリケードが置かれ、出入口には見張りらしい人影が立っている。建物脇には複数の車両。
使われていない工場を装うにしては警戒が多すぎた。
「レオ、今だ」
「パンツァー!」
レオが車内で音声認識CADを介して硬化魔法を発動し、ハマーの構造強度を引き上げる。
十文字先輩は速度を落とさなかった。
正面の鉄製ゲートが一気に迫り、直後に鈍い衝突音が車内まで響く。支柱ごと吹き飛ばされたゲートを踏み越え、ハマーはそのまま敷地内へ入り込んだ。
車体に目立った損傷はない。
建物入口まで詰めて停車した時には、すでに警報が鳴り始めていた。
外へ出ると、左右から怒号と人影が近づいてくる。
エリカと桐原先輩がそれぞれ散り、十文字先輩が中央を押す。俺と深雪はその後ろから、余計な相手には構わず奥だけを目指した。
途中で十人以上は立ちはだかったが、足止めにもならなかった。
深雪が床から足元だけを凍らせ、動きを止める。そこから漏れた者だけを俺が近距離で倒す。
ある程度進んだところで通路が分岐し、十文字先輩と別れる。敵の戦力を分散させ、退路を遮断するためだ。あの人なら一人でもお釣りがくる。
最短経路を進み、倉庫の奥にある部屋へ入る。司一はそこにいた。
先ほど確認した写真と同じ顔だった。
こちらが誰なのかも分かっているらしい。
「君が司波達也か」
返事をしないでいると、司一の方が勝手に続けた。
「演舞場での顛末を弟から聞いているよ。アンティナイトを使用せずにキャストジャミングを使用したそうじゃないか」
「それで?」
「我々に加わらないか? 今回の作戦には非常に手間も資金もかかっている。それを台無しにされたのは実に忌々しい。だが、君が我々に加わるなら、その件は水に流してもいい。
もう一人の女子風紀委員はいらないな。盲目なんて役に立たない。それに、巨大化して三メートルだと? そんなでたらめを報告した弟に虫唾が走る」
それが狙いか。ならば腑に落ちる。壬生先輩を使って俺に接触したのも、襲撃をけしかけたのも、あのキャストジャミングもどきについて探りを入れるためか。
ミーシャを勧誘の対象から外したのも、初めから俺だけが目当てだったからだろう。
そもそも、彼女の《幻想術》は司一の理解を超えていて、報告を信じることすらできなかったらしい。
「交渉は対等な立場であってこそ、成立するものだ。お前は俺の障害物に過ぎない」
「賢明な判断とは言えないな。君ほどの力を持ちながら、この学校では正当に評価されない。今の制度に従っている限り、一生――」
演説が続く中、隣から冷気を感じた。当然だ。深雪の機嫌が悪くなる話題を選んだのだから。
司一は、よりによって虎の尾を踏んだ。
当の本人はそれに気づいた様子もなく、演説を終わらせた後、得意満面で眼鏡を外した。それを指先で一度回し、上へ放る。
あまりに不自然だった。
俺の注意を動かすための仕草だろう。
「司波達也よ。我が同志となるがよい!」
直後、CADが作動し眼が光る。
起動式を読む。光波振動系の邪眼。内容もわかる。
知覚閾下の指向性光刺激を利用して、無意識の視覚処理から催眠誘導を試みる――つまり、サブリミナル効果を応用した催眠術。
だが、俺にとっては子供だましだ。
起動式に術式解体をぶつける。それだけで十分。これで邪眼も単なる光信号だ。
司一は術を掛けたあと、数秒こちらの反応を待った。
「どうだ? まずはその共に歩んだ君の妹を始末してもらおうか! 妹さんも最愛の兄上の手にかかるのなら本望だろう!」
付け焼き刃ではない。人に命令し、従わせることに慣れた口調だ。この口調と催眠術で多くの人間を操ってきたのだろう。
「……猿芝居はよせ、見ているこちらの方が恥ずかしくなる」
そこでようやく表情が崩れた。本当に愚かすぎる。
「壬生先輩の記憶はこれで書き換えたんだな?」
「……この下種ども」
「……ひぃ! な、何をしている!撃て! 撃て!」
深雪の冷気がさらに鋭くなる。司一はその冷気に怯え、構成員に命じた。
素直に撃たせる気はさらさらない。俺はシルバーホーンを抜き《分解》を構成員の銃に放っていた。
「な、な、……」
「何だこれは!? 何が起こった!」
弾丸は一発も発射しない。すでに拳銃、アサルトライフル、サブマシンガンはすべて部品単位でバラバラにしてある。
パニックになっている構成員を俺は一瞥し、司一へ一歩進むと、向こうが一歩下がった。
「来るな!」
さらに詰めると、そのまま部屋の外へ逃げた。俺も追う。
残っていた構成員が我に返り、俺の後を追おうとする。だが、その背後には深雪がいた。
「お兄様追ってください。ここは私が」
「わかった」
背後で薄い氷が床を走り、広がっていく。深雪の冷えた声がそれに続いた。
「お前たちは運が悪いですね。
お兄様へ手を出そうとしなければ、もう少し穏やかに済みましたものを」
深雪の声が静かに響く。もう誰も動けないだろう。
「感謝なさい。皮膚一枚で済ませて差し上げたことを」
後方は深雪に任せ、俺は司一との距離を詰める。逃げられる方向は一つしかない。
だが、その先には十文字先輩と桐原先輩がいた。
角を曲がった司一が二人を見て、足を止める。
「な――」
慌てて拳銃を抜いた。構えるより先に、桐原先輩が踏み込む。
「お前が!」
桐原先輩の模擬刀が横一文字に走り、瞬く間に高周波が刀身を包み込んだ。
「紗耶香をたぶらかしたんだな!」
次の瞬間、床へ落ちたのは拳銃の一部だった。銃身が途中から綺麗に断たれて、司一の手首には傷一つない。
十文字先輩が切断された拳銃を一度見てから、司一へ視線を戻した。
「見事な切れ味だ」
淡々とした低い声だった。
「桐原の腕に感謝するんだな。並の腕なら、今ので手首まで落ちていた」
司一は震える手を開き、もはやガラクタと化した拳銃を床に落とした。
俺が腕を取って拘束しても、抵抗らしい抵抗はない。
日本支部の責任者にしては、終わってみれば随分あっけなかった。
逆に言えば、本人の戦闘能力は大したことがなくとも、他人の心を操るだけで、これほど大きな被害を生み出せたとも言えるだろう。
◆
司一を十文字先輩に引き渡し、先に工場の正面へ戻ったのは、俺とエリカだった。
突入時にハマーが押し破った門は、ひしゃげたままになっている。風が埃と油の匂いを運んできた。
俺とエリカは後方を任せていたレオとミーシャの様子を確認しようと、そちらへ視線を向ける。
――レオが大きい。
元々大柄な人間ではあるが、今はそんな程度ではない。四メートル近い。
倉庫前の空間に巨大化したレオが立ち、その周囲には見張り役だったと思われる男たちが十人ほど倒れていた。
他のメンバーからの報告も合わせると、これでここに残っていた人員は全て制圧したことになる。
転がった拳銃や短機関銃のいくつかはへしゃげており、男たちの倒れ方も、巨大なものに殴り飛ばされたとしか思えない。
しかも、なぜかマントまで羽織っている。短い肩掛け付きのそれは青いクラッシュベルベット製で、裏地は暗い赤。無駄に舞台映えする意匠だった。
隣にいたエリカも、思わず足を止めてレオを見上げた。
「本当に《エンラージ》をレオに使ったのね」
ミーシャが胸を張った。
「むしろこれが本来の使い方っス」
「本来?」
「体格ある人をさらに大きくした方が、元からでかい分だけ仕上がりも良いっス」
理屈だけなら分からなくもない。
「ただ一回一分しか持たないんで、切れるたび掛け直したっス。三回くらい」
「三回?」
「最後は強度三の分まで回したっス」
レオ本人はかなり機嫌がいいらしい。
「いやー、でかくなると当たりやすいのは欠点だけどさ。俺なら硬化すりゃ、多少食らっても平気だし」
身体が大きくなれば標的としても大きくなるが、レオの場合は硬化魔法でその欠点を補える。
その上でリーチと質量だけが増えるなら、確かに相性はかなりいい。
「全員レオが倒したのか?」
「ほぼ全部っス」
「ミーシャは?」
「《エンラージ》は集中いるんで自分は後ろっス。でも護身用の《カラー・スプレー》は適当に混ぜたっス」
エリカが怪訝な顔で聞き返す。
「何それ?」
「極彩色の光を手からぶわーって出すっス。あ、レオを巻き込まない位置取りにしたっス」
「それで?」
「致命傷を避けるための耐久力、身体能力、運、経験なんかをまとめた総合力が低い人ほど、先に視覚へ影響が出るタイプの目潰しっス」
レオが笑いながら続ける。
「相手が『眩しっ!』って顔押さえたところに、俺が行く」
レオが陽気に拳を前へ出す。そのサイズでの実演だけでも十分理解できる。
エリカはげんなりとした表情で言葉を漏らした。
「……それ、相当嫌ね」
「そうか?」
「四メートルのレオが正面にいて、いきなり視界まで潰されるんでしょ。次に見えた時には、その拳が来てるじゃない」
エリカの素直な感想に、ミーシャが満足そうに頷いた。
「ウィっス。コンボ成立っス」
「また、ゲームみたいに言うな」
「でも実際コンボっス」
主攻となるレオと、敵の視覚を奪うミーシャの連携。確かに否定しにくい。エリカが改めてレオを見上げた。
「で、これいつ戻るの?」
「一分っス。もう少しっス」
ミーシャが指を一本立てる。
「便利なんだか不便なんだか分かんない」
「幻想術、大体そんな感じっス」
本人が言うと妙に説得力がある。巨大化については分かった。だが、レオにはもう一つ気になるものがある。
「で、レオが付けているマントはなんだ?」
「《クローク・オブ・ビロウィング》っス」
魔法道具か。直訳すれば、はためく、もしくはなびくマント――香辛料ポーチといい、ミーシャは碌なものを作らない。
「どういう力がある」
少し呆れる口調になった。
ミーシャは何でもないことのように答える。
「そのまんまっス。『格好良くなびけ』って念じると格好良くなびくっス」
「は? なにそれ?」
「スゲーぞこれ。相手ビビってくれるしな!」
「なら二人に実演するっス」
そしてレオが少し横を向いた。
次の瞬間。無風なのに、巨大レオのマントだけが風を受けたように大きくはためいた。
しかもただ揺れているわけではない。
角度。速度。広がり方――全てが妙に計算されている。
まるで舞台演出か映画のワンシーンのようだ。
「どうっス?」
正直に言えば、似合っている。それが少し腹立たしい。隣のエリカは、もう何も言う気がなさそうだ。
「……無駄に格好いいな」
俺が言うと、ミーシャは例のポーズで満足そうに笑った。
※ D&DルールではエンラージにACが下がったり攻撃範囲が広がるルールはありません。
今回は小説の表現として、実際に大きくなった時の影響を採用しています。
【第25話:D&D使用呪文説明】
〇ロケート・クリーチャー(クリーチャー探知/Locate Creature)
呪文レベル:4レベル
発動時間:1アクション
射程/範囲:自身
構成要素:音声(V)、動作(S)、物質(M)(ブラッドハウンド(猟犬)の毛を少量)
持続時間:精神集中、最大1時間
系統:占術
攻撃/セーヴ:なし
ダメージ/効果:探知
あなたがよく知っているクリーチャーについて、その特徴を説明するか、名前を告げること。
そのクリーチャーがあなたから1,000フィート(約300m)以内にいる限り、あなたはそのクリーチャーがいる方向を感知できる。
また、そのクリーチャーが移動している場合、あなたはその移動方向も知ることができる。
この呪文では、あなたが知っている特定のクリーチャーを探知することも、特定の種類(人間やユニコーンなど)に属する最も近くのクリーチャーを探知することもできる。ただし、その種類のクリーチャーを、少なくとも一度は30フィート(約9m)以内の近距離で見たことがなければならない。
あなたが説明した、あるいは名前を告げたクリーチャーが、たとえば[ポリモーフ]の呪文の効果を受けているなどして、本来とは異なる姿になっている場合、この呪文ではそのクリーチャーを探知できない。
また、あなたと対象のクリーチャーを結ぶ直線上に、幅10フィート(約3m)以上の流水がある場合、この呪文ではそのクリーチャーを探知できない。
〇カラー・スプレー(色しぶき/Color Spray)
呪文レベル:1レベル
発動時間:1アクション
射程/範囲:自身(15フィートの円錐形)
構成要素:音声(V)、動作(S)、物質(M)(赤、黄、青に着色された粉末または砂をひとつまみ。)
持続時間:1ラウンド
系統:幻術
攻撃/セーヴ:なし
ダメージ/効果:盲目状態
あなたの手から、まばゆく明滅する色とりどりの光が放たれる。
6d10をロールする。その合計値が、この呪文によって効果を及ぼすことのできるクリーチャーのヒット・ポイントの総量となる。
あなたを起点とする15フィート(約4.5m)の円錐形の範囲内にいるクリーチャーは、現在のヒット・ポイントが低い順にこの呪文の効果を受ける。ただし、気絶状態のクリーチャーと、視覚を持たないクリーチャーは対象から除外する。
現在のヒット・ポイントが最も低いクリーチャーから順に処理する。この呪文の効果を受けたクリーチャーは、あなたの次のターンの終了時まで盲目状態になる。
クリーチャー1体に効果を及ぼすたびに、そのクリーチャーの現在のヒット・ポイントを、ロールで得た合計値から差し引く。その後、次にヒット・ポイントが低いクリーチャーについて同様に処理する。
ただし、クリーチャーの現在のヒット・ポイントが残りの合計値以下でなければ、そのクリーチャーはこの呪文の効果を受けない。
高レベルでの発動: この呪文を2レベル以上の呪文スロットを使用して発動する場合、1レベルを超えるスロットのレベル1ごとに、ロールするダイスを2d10追加する。
【第25話:D&D使用マジックアイテム説明】
クローク・オブ・ビロウィング(はためきのクローク/Cloak of Billowing)
分類: 魔法のアイテム、クロークおよびケープ
種類:その他の魔法のアイテム(Wondrous Item)
レアリティ:コモン
同調:不要
効果:ボーナス・アクションとして、クロークを劇的にはためかせることができる
クローク・オブ・ビロウィングは、着用者の命令に応じて空気をはらみ、勢いよくはためく魔法のクロークである。
これにより着用者を印象的に見せることができるが、ゲーム上の機械的な利益は一切もたらさない。ただし、「見た目がカッコいい」。
〇外見
このクロークには短い肩掛け(ケープレット)が付いており、青いクラッシュベルベット生地で作られている。裏地は暗い赤色である。
〇特性
着用者はボーナス・アクションを使用することで、このクロークを劇的にはためかせることができる。