翌朝、俺と深雪は、始業時刻に間に合う時間よりも三十分以上早く家を出た。
昨日は第一高校の入学式だった。今日は入学の報告をしておく必要があるし、俺にとってはそれだけではない。
師匠との朝稽古は、第一高校へ入学したからといって休んでいい理由にはならなかった。
境内へ入ると、朝の冷気の中に湿った土と木の匂いが混じっていた。
本来ならこの段階で門下生が二十人ほど――しかも総当たりではない総掛かりで――俺に襲い掛かってくる。
それが今日は妙に静かで、何かあったのかと思ったが、声そのものがないわけではない。
道場の前には十人ほどの門下生が集まっており、その輪の中に、一着だけ場違いな第一高校の制服が混じっていた。
風間ミーシャ、昨日、学校で知り合ったばかりのクラスメイトだ。何かを調べているのか、首の動きはほとんどない。
「あら?」
隣で深雪が小さく声を漏らすが、ミーシャはこちらを向かなかった。
もっとも当然ではある。俺たちは彼女の真後ろ――つまり、視覚補助の角度や距離以前に完全な死角だった。
それより目についたのは、ミーシャの前にしゃがみ込んでいる門下生の方だった。
稽古着の右太腿が、二十センチほど裂けている。転倒した拍子に何かへ引っ掛けたのだろうか。
どうすればあれほど綺麗に裂けるのかは少々気になったが、とりあえず今は考えないことにする。
「おはよう、達也君。深雪君も」
剃髪し墨染の衣を着た細身の人影が忍び寄る。この寺の住職かつ俺の師匠、九重八雲だ。
「おはようございます、師匠」
「おはようございます、九重先生」
俺と深雪が揃って頭を下げる。師匠はいつもの笑顔で俺たちを迎えた。
「二人とも入学おめでとう。それにしても深雪君……それが第一高校の制服だね」
「はい。昨日は入学式でしたので」
うんうんとうなずく師匠の表情は、相変わらず表面上は穏やかだった。
由緒正しき忍びとは到底思えない、どこか飄々とした佇まいでそこに立っている。
「……今日改めて入学のご報告をと思いまして」
深雪が姿勢を正して答える――ここまでは何の問題もなかった。
ところが八雲師匠は顎へ指を添え、その視線を深雪の制服の上から下へ、品定めでもするようにゆっくり滑らせた。
「うん、いいね。真新しい制服が初々しくて、清楚な中にも隠しきれない色香が――」
深雪の眉尻が固まり、笑顔のまま後ろに下がりだす。
俺は何も言わず、右足を半歩だけ後ろへ引く。いつでも踏み込める位置だ。
挨拶を済ませた直後に師匠を蹴るのは、礼儀としてどうなのか。
一応それくらいの疑問は頭をよぎったが、このまま続けさせるよりはましだろうと結論を出し、腰を切りかけた、その時だった。
「はい! そこストップっス! セクハラっス!」
境内にミーシャの声がよく通った。
門下生たちから笑いが漏れたが、驚いている者はいない。
寺の人たちは、すでに彼女の性格については十分な理解が共有されているらしい。
八雲師匠が不服そうに眉を上げるが、完全に声は遊んでいる。
「ひどいなあ、ミーシャ君。僕は制服について率直な感想を――」
「師匠」
俺は引いた足を戻さないまま言った。
「そこで止めておいた方がいいですよ」
八雲師匠の目が俺の顔から足元へ落ちる。
「おやおや、物騒だね」
「止めなければ蹴っていました」
「判定正しかったっス」
なぜかミーシャが勝ち誇った。サムズアップが妙に様になる。
深雪は頬をわずかに染めたまま俺の足元を見ていたが、口元だけは少し緩んでいた。
その横では、稽古着を裂いた門下生が完全に話題から取り残され、所在なさげに座っていた。
ミーシャもそれを思い出したらしく、そちらへ向き直る。
「お待たせっス。セクハラ判定マシーンは廃業して、裁縫屋に転職っス」
腰につけた革製のポシェットを開き、中から小さな鉄黒色の石――おそらく磁鉄鉱だろう――を二つ取り出した。
見たところ、ただの磁鉄鉱だった。CADとして機能するような加工は施されていないし、起動式を格納した媒体らしいものも見当たらない。
ミーシャは二つの磁鉄鉱を指で挟み、裂け目の両側へ軽く触れさせる。
やがて、その唇が動いた。
「割れたるものよ、欠けたるものよ。砕け、裂け、断たれ、形を失いしものよ。
汝が未だ傷を知らず、一つの形として在りし時を、我ここに辿る。
残されし欠片よ、かつての隣を思い出せ。離れた縁よ、結ばれし場所を思い出せ。
裂けた面よ、その境を忘れよ。砕けた形よ、己があるべき姿を思い出せ。
一つであったものは、一つへ。在るべきものは、在るべき姿へ――汝、かつての姿へと還れ」
短い詠唱ではなかった。ミーシャは裂け目を指先でなぞりながら、急ぐ様子もなく言葉を重ねていく。
時間にすれば一分近い。現代魔法の感覚で言えば、実戦使用を考慮する以前の長さだ。
俺は自然と目を細めていた――起動式が見えない。
現代魔法であれば、起動式の展開を俺が認識できないはずはない。
古式魔法の呪文や呪符、魔法陣といった、起動式に準ずるものですら例外ではない。
そして信じられないことに、そこには魔法式さえ存在していなかった。
それなのに、布が動いた。
裂け目の両端が、互いの位置を探るようにゆっくりと寄っていく。縫い合わされているわけではない。
何かで接着している様子もなく、繊維の切断そのものが、いつの間にか存在しなくなっている。
切れていた、という状態そのものが失われていた。
ミーシャの指が離れた時には、二十センチほどあった裂け目は跡形もなく消えていた。
「もう大丈夫っス」
ミーシャはぐいっと背を反らし、足を五十センチほど開くと、腰に手を当てた。顔は上向きだ。
――好きなのか? そのポーズ。
「好感度ポイント稼いだっス」
「ありがとうございます、風間さん」
門下生は苦笑しながら立ち上がった。もう慣れ切ってるのか、ミーシャの軽口が、完全に流されている。
俺は返事をしなかった。修復された右腿の部分から、どうしても目が離せない。
加工痕がない。
繊維を移動させて再構築したのなら、そこに至る過程で何らかの事象改変が生じる。
だが、それがない。少なくとも俺には何も見えなかった。
結果だけを見れば、俺の《再成》に近い。
表面的な現象だけを比べるなら似ていると言っていいだろう。
しかし、過程がまるで違った。
《再成》では、過去のエイドスを読み取り、それを基に構築した魔法式で現在のエイドスを上書きする。
どれだけ特殊であろうと、魔法式によって事象を書き換えているという点では現代魔法の枠内にある。
今の現象には、それすらなかった。
しかもミーシャが使ったのは、どう見ても、ただの磁鉄鉱だ。
古式魔法の術具であるなら、外見が単純なこと自体は問題ではない。
だが術具なら術具で、起動式に相当する情報が何らかの形で刻まれているはずなのに、それも俺には認識できなかった。
「ミーシャ君がいてくれて助かったよ」
師匠が、まるで散歩の途中で天気の話でもしているような口調で言った。
「ミーシャ君の《幻想術》の、確か――」
「《メンディング》っス」
「そう、それだ。あれは本当に便利だからね」
八雲師匠は門下生たちを見回す。
「とはいえ、皆も気をつけてくれ。いつもミーシャ君がいるとは限らないんだから」
「そっス。レアイベントっスよ」
ミーシャがすぐに乗った。だが、そう答える首の動きは少ない。九重寺は、すでに慣れている場所なのがわかる。
「今回は裂け目が三十センチ以内だったから良かったっス。強度零の《メンディング》で対処できたっスから」
強度零? 聞いたことのない分類だ。
「もっと大きく破れた場合は?」
思わず俺が口を挟むと、ミーシャの顔がこちらを向いた。そこでようやく挨拶していなかったことに、気づいたらしい。
「あ、達也。深雪もおはようっス」
「ああ、おはよう」
「おはようございます、ミーシャ」
ミーシャは挨拶を済ませると、そのまま何事もなかったように説明を続けた。
「もっと大きい損傷なら、強度四の《ファブリケイト》っスね。
麻糸とかボタン用の素材を用意して、稽古着そのものを一から作り直す感じっス」
「一から?」
「ウィっス。10分くらいでできるっスよ」
あまりにもさらりと言われたので、一瞬言葉の意味の認識が遅れた。
『糸から衣服を作る』それを現代魔法で実行しようとすれば、繊維一本一本の位置や方向と織り方の密度、寸法、厚み、ボタン縫い――まだ足りない――等の演算項目が必要だ。
項目を並べるだけで嫌になってくるような処理を、一つの魔法式として成立させるというのか。
「ただ、《ファブリケイト》は一日三回までっス。贅沢モードなら五回いけるっスけど」
「贅沢モード?」
「そこはまた今度っス。《ファブリケイト》は用途も限られてるし、準備してる日は滅多にないっスよ。
達也も『今から友達呼ぶから土鍋が欲しい、今すぐ作ってくれ。』こんな頼まれ方あまりないっスよね? 今日頼まれても無理となって翌日提供っス」
俺は、その例えのセンスの酷さには触れず、それ以上は聞かずに口を閉ざした。
一つ疑問が増える程度ならまだいい。
今は一つ答えを聞くたびに、二つか三つ、新しい疑問が出てくる。
そもそも「一日三回」という制限からして奇妙だった。現代魔法にも術者ごとの限界はあり、サイオン量や魔法演算領域にも当然上限がある。
連続して無理に魔法を使えば、さまざまな要因によって精度も処理速度も落ちる。
だが、それは三回使ったから四回目が使えない、という種類の制約ではない。
さらに、今日使えないが、明日になれば使える。
CADへ起動式を格納しておくようなものか、と一度は考えたものの、それなら先ほどの磁石に何らかの情報がなければ説明がつかない。
視線を上げると、八雲師匠と目が合った。
最悪なことに笑っている。明らかに楽しんでいた。
「達也君」
「なんですか」
「彼女が風間君の娘だというのは知っているよね?」
「はい」
隣で深雪も頷いた。
「ミーシャ君は僕の弟子というわけじゃないんだけどね。今日は二人と同じで、入学の報告に来てくれたのさ」
その言葉を受け、ミーシャが深雪へ向き直る。
さっきまでの軽い調子をほんの少し引っ込めて、きちんと頭を下げた。
「昨日は他にも人がいたんで、名前も知らない初対面のふりして申し訳なかったっス。改めて、風間ミーシャっス。父がお世話になってるっス」
「いいえ。事情は承知しております」
深雪も微笑み、丁寧に頭を下げる。
「こちらこそ、兄がいつも風間少佐にお世話になっております」
俺は改めてミーシャを見る。引っ込めていた軽い調子は、すでに元に戻っていた。
もっとも、引っ込んでいたのはほんの数ミリ秒だけだったが。
「《幻想術》か」
「ウィっス」
「少なくとも、俺が知る現代魔法とも古式魔法とも、発動原理が一致しない」
ミーシャから感嘆の口笛が上がる。女子高生としてそれはどうなんだ?
「一発でそこまで行くっスか。やっぱりすごいっスね」
すごいと言われても困る。本来なら見えるはずのものが、一つも見えなかったのだから。
するとミーシャが、ふいに鼻先を少し上げた。何かの匂いを確かめるような仕草である。
「と、難しい話は後っス。朝ごはんの時間っス」
そっちの方が大事だと言わんばかりに、ミーシャは境内の奥へ顔を向ける。
「門下生の皆さんに朝食配るっス。
幻想料理――その単語を耳にした瞬間、なぜか眉間が少し重くなった。
そして直後、境内の裏手から大きな行李が現れた。
浮いている。少なくとも、俺の目にはそう見えた。
人の胸ほどの高さを保ったまま、何かに持ち上げられている様子もなく、こちらへ滑るように移動してくる。
下に人はいない。吊っている糸もなければ、外部から支えている物体もない。
「《アンシーン・サーバント》っス」
ミーシャが言った。
「見えない従者っスね。さっきまで台所借りて朝食作ってたっス。あまり力はないっスから、往復作業になるっス」
俺は行李から目を離さず、エイドスを追った。
位置情報は確かに変化している。速度もある。運動ベクトルにも異常はない。
問題なのは、その運動を生じさせた原因が存在しないことだった。
念動系魔法なら対象物の運動状態のエイドスを書き換える魔法式がある。
重力制御なら局所的な重力加速度の書き換えが生じるし、空気圧を利用しているなら周囲の気体分子にそれが出る。
どれも確認できないのに、それでも、行李は動いている。現象だけがそこにあった。
「人数多いっスから、《幻想術》を料理の補助に使ったっス」
ミーシャは俺の混乱など気にも留めず、平然と続ける。
「逐一、ニンジン切って、火をつけて、鍋かき回してと作業を命令しないと切り替えてくれないのが手間っスけど、発動してから一時間働いてくれるのはありがたいっスね」
その言葉に、行李を追っていた俺の意識が止まる。
「命令を聞くのか?」
「聞くっスよ」
さらっと答えた。
包丁を持つ、野菜を切る、鍋を運ぶ、火をつける、器へ盛る。
一度発動した魔法が一時間にわたって存在し続け、それだけでなく術者から新しく与えられた命令を認識し、内容に応じて行動を切り替える。
現代魔法で同じことをしようとするなら、一連の作業を一つの魔法へまとめるより、動作ごとに別々の魔法式を用意した方がまだ現実的だ。
一つの術式に命令解釈と複数の動作選択まで組み込むなど、非効率この上ない。
「強度一の幻想術でも、回数制限あるのは一緒っス。朝から使用回数消費するはダメダメっスけど」
「なら、今ので一回使ったのか?」
「いや、今回は10分余計に発動時間取って儀式化したんで、回数消費してないっス」
どこまで問題を増やすつもりだ、この術は。
「……儀式化? 発動時間を代償として使用回数を節約できる、ということか?」
「ウィっス。入学祝いなんで、奮発して従者に手伝ってもらって、門下生の分も作ったっス」
一体どこから手をつけて整理すればいいのか。
しかも本人は「幻想料理」などと言っているが、料理そのものは普通らしい。
見えない何かが包丁や鍋を動かして調理したというだけで、料理まで幻想になっているわけではない。
名称については、異議を申し立てたいところだった。
しかし門下生たちはそんなことを気にした様子もなく、浮いた行李から次々と朝食を受け取っている。
そのうちの一人が、箸を動かしながら言った。
「風間さん。入学したの、風間さんですよ。風間さんがお祝いで奮発してどうするんですか」
「そこは単なる詭弁っス」
ミーシャが胸を張る。
「『ミーシャちゃん可愛くて有能で料理までできる、惚れた』って言ってくれる人がいないか狙ってみたっス」
苦笑いが起こる。どうやら、恒例行事らしい。
昨日口にしていた「人生最高の日」といい、この手の話になると、彼女は妙に距離感がおかしい。
八雲師匠が俺の顔を見て、喉を鳴らした。本当に腹立たしい。
「面白いだろう、彼女の魔法は」
「笑えませんよ」
「おや? 何か見えたのかい?」
「見えないから不自然なんです」
俺は改めて、空中で料理を配っている見えない従者に目を向ける。
「エイドス改変も現象に先行していない。起動後も命令を受けて行動を変える。俺の知っている魔法とは、前提そのものが違います」
「だから面白いんじゃないか」
八雲師匠が声を立てて笑う。俺は額へ指を当てた。
すると、朝食を食べていた門下生の一人が、まるで遠慮というものを知らない口調で言った。
「でも風間さん、やっぱり味付け雑ですね。合格点にはちょっと足りないかな。たぶん惚れる人いませんよ」
ミーシャの動きが、配膳する姿勢のまま、数秒ぴたりと止まり肩を落とす。
「女子力アピール失敗っス」
境内のあちこちで笑い声が上がる。
もっと落ち込むかと思ったが、ミーシャはすぐに顔を上げた。感情の切り替えだけは妙に早い。
「そういえば達也と深雪は、もう自分たちの朝ごはんあるっスね」
ミーシャの顔が、深雪の脇に置かれたピクニックバッグへ向く。視覚補助CADで捉えたらしい。
中に入っているのは、深雪が家を出る前に用意してきた朝食だ。
ミーシャの背筋が伸びた。
「深雪」
「はい?」
「あとで一部、交換しないっスか?」
「朝食を?」
「味付けの工夫とか参考にしたいっス。これはかなりマジっス」
今度は声から冗談っぽさが消えていた。幻想術の説明では全く見せなかった声音だ。
その真摯さに引きずられ、深雪の声が軽くなる。
「喜んで。よろしければ、ミーシャのお料理も味見させてください」
「お願いするっス」
「では、少し頂きますね」
深雪はミーシャの煮物を一つ口へ運んだ。
すぐには何も言わず、ゆっくり咀嚼してから、もう一度箸で煮物を割る。
味を見るだけなら必要のない動作だが、火の通り方まで確認しているのだろう。
「美味しいですよ」
「うほっ」
奇声とともに、ミーシャの肩がわずかに上がった。
「ただ、少し味が強いかもしれません。朝食でしたら、お出汁をもう少し効かせて、お醤油を控えめにすると、寝起きにも合う優しい味になると思います」
「なるほどっス」
「それと、こちらは少し火が通りすぎていますね。素材の食感を残したいので、もう少し早めに取り出した方が良いかと」
「なるほどなるほどっス」
ミーシャは何度も頷いている。
さっきまで俺が魔法理論について問い掛けていた時よりも、明らかに真剣だった。
深雪がバスケットを開き、サンドイッチを一切れ渡す。
ミーシャはそれを口へ入れ、そして止まった。
比喩ではなく、本当に完全に動かなくなった。
「……深雪」
「はい?」
「これ、本気でうまいっス」
「ありがとうございます」
「パンはふわっとしてるのに、具の水分でべちゃっとしてないっス。しかも味のバランスも完璧っス」
「そこは少し工夫しています」
ミーシャがいきなり深雪に向かって左の掌と右の拳を顔の前で合わせる。まるで、クンフー映画の弟子のポーズだ。
「師匠と呼んでいいっスか?」
「え?」
周囲からまた笑いが漏れた。
俺はサンドイッチを前にして、深雪へ弟子入りを迫っているミーシャを眺める。
俺はその横で、深く息を吐いた。
風間少佐から聞いていた情報は少ない。
あの人は、何をすればいいのかと尋ねた俺に、ただ「何も」と答えた。
特別扱いせず、普通の学友として接してほしい。そういう意味だと理解していた。
実際に会ってみれば、性格も魔法も、ここまで規格外だとは想定していなかった。
「……少佐も人が悪い」
思わず声が漏れ、深雪が振り返る。
「お兄様?」
「いや、独り言だ」
その向こうでは、ミーシャが何事もなかったように、門下生にリベンジを要求していた。
【第5話:D&D使用呪文説明】
メンディング(Mending/修繕)
レベル: 初級呪文(キャントリップ)
発動時間: 1分
射程: 接触
構成要素: 音声(V)、動作(S)、物質(M)(磁石(天然磁石)2個)
持続時間: 瞬間
系統: 変成術
攻撃/セーヴ: なし
ダメージ/効果: 汎用
この呪文は、君が触れた物体の破損や裂け目を1か所修復する。
たとえば、切れた鎖の輪、真っ二つに折れた鍵、破れた外套、液体が漏れる革袋などを修復できる。
破損や裂け目が、どの方向にも1フィート(約30cm)以下であれば、元の損傷の痕跡を一切残さずに修復することができる。
この呪文は魔法のアイテムを物理的に修復することもできるが、失われた魔力を回復させることはできない。
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アンシーン・サーヴァント(Unseen Servant/見えざる召使い)儀式呪文
レベル: 1レベル
発動時間: 1アクション(儀式)
射程: 60フィート(約18m)
構成要素: 音声(V)、動作(S)、物質(M)(糸の切れ端と木片)
持続時間: 1時間
系統: 召喚術
攻撃/セーヴ: なし
ダメージ/効果: 制御
呪文の説明
この呪文は、君の命令に従って単純な作業を行う、不可視で、知性も定まった形も持たない、中型サイズの力の存在を作り出す。この存在は「召使い」と呼ばれ、呪文が終了するまで働き続ける。
召使いは、射程内にある地面の、何も占有されていないスペースに出現する。
召使いの能力値は以下のとおり。
- アーマー・クラス(AC): 10
- ヒット・ポイント(HP): 1
- 筋力: 2
- 攻撃: 不可
召使いのHPが0になると、この呪文は終了する。
召使いへの命令
君は自分の各ターンに1回、ボーナス・アクションとして、召使いに精神的な命令を与えることができる。
この命令によって、召使いは最大15フィート(約4.5m)移動し、物体に対して働きかけることができる。
召使いは、人間が行えるような単純な作業をこなすことができる。たとえば、以下のような作業が可能である。
- 物を取ってくる
- 掃除をする
- 物を修繕する
- 衣服をたたむ
- 火をつける
- 食事を配膳する
- 飲み物を注ぐ
一度命令を与えると、召使いはその作業を完了するまで、可能な限り最善を尽くして実行する。
作業を終えると、召使いは君からの次の命令を待つ。
呪文の終了条件
召使いに、君から60フィート(約18m)以上離れる必要がある作業を命じた場合、この呪文は終了する。