妖精と聖剣使い   作:使い手なない

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第98話「月神竜との再会」

 

 X784年。

 

 フィオーレ王国、マグノリア。

 

 魔導士ギルド、妖精の尻尾。

 

「……できました!」

 

 ギルドの一角に設けられた研究室。

 

 そこに、メイビス・ヴァーミリオンの嬉しそうな声が響いた。

 

「イリス! ちょっと見てください!」

 

「はい?」

 

 机の上に広げられた大量の資料。

 

 古代魔法の術式。

 

 空間座標に関する計算式。

 

 そして、複雑な魔法陣。

 

 イリス・アストレアは、メイビスの隣へ歩み寄った。

 

「……これは?」

 

「以前、世界の境界について調べたときの資料です!」

 

「ああ、あの研究ですね」

 

 イリスが頷く。

 

 少し前、二人は世界の境界に関する古代魔法の研究を進めていた。

 

 その過程で、異なる世界同士の接続について、新たな可能性を見出していたのだ。

 

「それでですね!」

 

 メイビスが、机の上に一枚の紙を広げる。

 

「ずっと気になっていたことがあるんです」

 

「気になっていたこと?」

 

「はい!」

 

 メイビスは、魔法陣の一部分を指差した。

 

「世界と世界の間には、それぞれ異なる魔力の流れが存在している可能性があります」

 

「……なるほど」

 

「もし、その違いを正確に読み取ることができれば……」

 

 メイビスが、にっこり笑う。

 

「移動先の世界を特定する手掛かりになるかもしれません!」

 

「……!」

 

 イリスの金色の瞳が、わずかに見開かれた。

 

「それは……」

 

「はい!」

 

 メイビスが頷く。

 

「イリスの故郷を探すための、新しい方法です!」

 

「…………」

 

 イリスは、しばらく資料を見つめていた。

 

 元の世界。

 

 魔法学院。

 

 懐かしい街並み。

 

 そして、自分を育ててくれた大切な家族。

 

 もう百年近く、会っていない。

 

「……メイビス」

 

「はい?」

 

「ありがとうございます」

 

 イリスは、柔らかく微笑んだ。

 

「ずっと、私のために考えてくれていたんですね」

 

「もちろんです!」

 

 メイビスは、当然のように答えた。

 

「だって、イリスの故郷ですから!」

 

「……ふふっ」

 

 イリスの表情が、少しだけ緩んだ。

 

 そんな彼女を見て、メイビスが楽しそうに笑う。

 

「それで、お願いがあるんです!」

 

「何でしょう?」

 

「久しぶりに、セレーネに会いに行きませんか?」

 

「……セレーネさんに?」

 

「はい!」

 

 月神竜、セレーネ。

 

 かつて二人がギルティナ大陸を旅した際に出会った、異世界を渡る力を持つ神竜。

 

 あれから、約九十年。

 

 長い年月が流れていた。

 

「セレーネなら、世界を渡るときの感覚について、何か教えてくれるかもしれません!」

 

「なるほど……」

 

 イリスは、少し考えた。

 

 そして。

 

「いいですね!」

 

 にっこり笑った。

 

「私も、久しぶりにお会いしたいです」

 

「決まりですね!」

 

 メイビスが、嬉しそうに両手を合わせた。

 

◇

 

 数日後。

 

 妖精の尻尾。

 

「……また旅に出るのか?」

 

 マカロフ・ドレアーが、二人を見上げていた。

 

「はい!」

 

 メイビスが元気よく頷く。

 

「ちょっと、研究の続きをしてこようと思いまして!」

 

「今回は、少し長くなるかもしれません」

 

 イリスが付け加える。

 

「長く、か……」

 

 マカロフは、小さく息を吐いた。

 

「まあ、お前さんたちのことじゃ。心配はいらんじゃろうが……」

 

「ふふっ。ありがとうございます」

 

「ギルドのことは、任せてくださいね!」

 

 メイビスが笑う。

 

「……それは、わしの台詞じゃろう」

 

「えへへ!」

 

 そのやり取りに、イリスも笑った。

 

 すると。

 

「おい! イリス!」

 

 背後から、元気な声が響いた。

 

 ナツだった。

 

「またどっか行くのか!?」

 

「はい。少し遠くまで」

 

「だったら、今度帰ってきたら勝負しろよ!」

 

「ふふっ。いいですよ」

 

「よっしゃ!!」

 

 ナツが嬉しそうに拳を握る。

 

 その隣では、ルーシィが呆れた顔をしていた。

 

「ナツって、本当にそればっかりね……」

 

「なんだよ!」

 

「少しは普通に見送りなさいよ!」

 

「……あはは」

 

 イリスが小さく笑う。

 

 メイビスも楽しそうだった。

 

 いつもの妖精の尻尾。

 

 賑やかで、温かくて。

 

 帰ってくるたびに、笑顔になれる場所。

 

「では、皆さん」

 

 イリスが、にっこり微笑んだ。

 

「行ってきます!」

 

「行ってきまーす!」

 

 そして。

 

 二人の足元に、黄金色の魔法陣が浮かび上がった。

 

 ――ふわり。

 

 空間が、静かに揺らぐ。

 

 次の瞬間。

 

 二人の姿は、ギルドから消えていた。

 

◇

 

 ギルティナ大陸。

 

 人里から遠く離れた、山々に囲まれた静かな土地。

 

 夜空には、大きな月が浮かんでいた。

 

「……懐かしいですね」

 

 イリスが、周囲を見渡した。

 

「はい!」

 

 メイビスも頷く。

 

「この辺りも、あまり変わっていません!」

 

 かつて二人が旅した大陸。

 

 約九十年前。

 

 異世界への帰還方法を探して、数え切れないほどの土地を歩いた。

 

 その旅の中で、二人は月神竜と出会ったのだ。

 

「……さて」

 

 メイビスが、空を見上げる。

 

「セレーネは、どこにいるでしょう?」

 

「そうですね……」

 

 イリスも、金色の瞳を細めた。

 

 魔力の流れ。

 

 大気に漂う微かな残滓。

 

 その中に、ひときわ異質なものが混じっていた。

 

「……あら?」

 

「どうしました?」

 

「いえ……」

 

 イリスが、少しだけ笑った。

 

「どうやら、向こうも気づいているみたいですよ」

 

「……え?」

 

 その瞬間。

 

 ――キィィィン。

 

 夜空に、黄金色の光が走った。

 

 空間が、静かに開いていく。

 

 月明かりに照らされた、その向こう側。

 

 一人の女性が立っていた。

 

 長い金髪。

 

 優雅な着物姿。

 

 そして、人間とは明らかに異なる、圧倒的な存在感。

 

「……ほう」

 

 女性が、ゆっくりと微笑んだ。

 

「これは、珍しい客が来たものじゃ」

 

「セレーネさん!」

 

 イリスが、嬉しそうに声を上げる。

 

「お久しぶりです!」

 

「お久しぶりです、セレーネ!」

 

 メイビスも笑顔で手を振った。

 

 月神竜、セレーネ。

 

 五神竜の一角。

 

 世界の境界を渡る力を持つ、規格外の存在。

 

 セレーネは、二人を交互に見つめた。

 

 そして。

 

「……ふふっ」

 

 楽しそうに笑った。

 

「九十年近く経ったというのに……」

 

 その瞳が、細められる。

 

「二人とも、まるで変わっておらぬではないか」

 

「ふふっ。そうですね」

 

 イリスが微笑む。

 

「いろいろありまして」

 

「いろいろ、か」

 

 セレーネが、面白そうに笑った。

 

「人間というものは、本当に不思議じゃのう」

 

 そして。

 

 その表情が、わずかに変わった。

 

「……いや」

 

 セレーネの視線が、二人を捉える。

 

「変わっておらぬのは、見た目だけか」

 

「……?」

 

 メイビスが首を傾げた。

 

 セレーネは、ゆっくりと口元を吊り上げる。

 

「以前より、ずいぶんと強くなっておるな?」

 

「……分かるんですか?」

 

「妾を誰だと思っておる?」

 

 セレーネが、得意げに笑った。

 

「月神竜じゃぞ?」

 

「ふふっ。そうでしたね」

 

 イリスが笑う。

 

 セレーネは、そんな二人を眺めながら、ますます楽しそうな表情になった。

 

「まったく……」

 

 そして、小さく呟く。

 

「興味が尽きぬ人間たちじゃ」

 

◇

 

 月明かりに照らされた、美しい庭園。

 

 セレーネに招かれた二人は、用意された席に腰を下ろしていた。

 

 机の上には、香りのよいお茶と菓子が並んでいる。

 

「わあ……!」

 

 メイビスが、目を輝かせた。

 

「とっても美味しそうです!」

 

「ふふっ。好きなだけ食べるがよい」

 

「ありがとうございます!」

 

 早速、菓子に手を伸ばすメイビス。

 

 その隣で、イリスが小さく笑った。

 

「メイビス。研究の話を忘れないでくださいね?」

 

「わ、忘れてませんよ!」

 

「ふふっ。そうですか」

 

 セレーネが、二人のやり取りを面白そうに眺めていた。

 

「相変わらず、仲がよいのう」

 

「はい!」

 

 メイビスが即答する。

 

「もちろんです!」

 

「……ふふっ」

 

 セレーネが笑う。

 

「九十年も一緒におれば、そうなるものか」

 

「それだけではないと思いますよ」

 

 イリスが、穏やかに答えた。

 

「私にとって、メイビスは特別な人ですから」

 

「……イリス!」

 

 メイビスが、嬉しそうに笑った。

 

 セレーネは、しばらく二人を見つめていた。

 

 そして。

 

「……さて」

 

 お茶を一口飲む。

 

「それで、今日は何の用じゃ?」

 

「はい!」

 

 メイビスが、待っていましたとばかりに資料を取り出した。

 

「実は、世界の境界について、新しい仮説ができたんです!」

 

「……ほう?」

 

 セレーネの瞳が、興味深そうに細められた。

 

 メイビスは、机の上に魔法陣を展開する。

 

「世界を渡るとき、異なる世界同士を区別する何らかの情報が必要なのではないか、と考えたんです」

 

「…………」

 

「もし、世界ごとに異なる魔力の特徴があるのなら……」

 

 メイビスが、イリスを見る。

 

「イリスの魔力から、故郷の世界を特定できる可能性があります!」

 

「……なるほどのう」

 

 セレーネが、静かに頷いた。

 

「面白いことを考える」

 

「本当ですか!?」

 

「うむ」

 

 セレーネは、魔法陣を眺めた。

 

「確かに、世界ごとに魔力の在り方が異なることはある」

 

「……!」

 

 メイビスが身を乗り出す。

 

「では!」

 

「じゃが」

 

 セレーネが、指を一本立てた。

 

「それだけで、目的の世界へ辿り着けるとは限らぬ」

 

「……やっぱり、そうですよね」

 

 メイビスが頷く。

 

 セレーネは続けた。

 

「世界を渡ることと、望んだ世界へ辿り着くことは、別の話じゃ」

 

「……なるほど」

 

 イリスが、静かに呟く。

 

「道を開くことができても、その先がどこへ繋がるか分からない……ということですね」

 

「その通りじゃ」

 

 セレーネが微笑む。

 

「妾とて、知らぬ世界の場所を、何も手掛かりなしに見つけられるわけではない」

 

「…………」

 

 イリスは、少しだけ考え込んだ。

 

 しかし。

 

「……それなら」

 

 顔を上げる。

 

「手掛かりを見つければいいんですね」

 

「……ほう?」

 

 セレーネが、楽しそうに笑った。

 

「諦めぬか」

 

「はい」

 

 イリスは、穏やかに微笑んだ。

 

「もう、百年近く探していますから」

 

「……ふふっ」

 

 セレーネが笑う。

 

「なるほど。そういうことか」

 

 その隣で、メイビスも力強く頷いた。

 

「私も、まだまだ諦めませんよ!」

 

「……まったく」

 

 セレーネは、二人を交互に見つめた。

 

「本当に、面白い人間たちじゃ」

 

◇

 

「……では、少し試してみるかのう」

 

 セレーネが、ゆっくりと立ち上がった。

 

「試す、ですか?」

 

 メイビスが首を傾げる。

 

「うむ」

 

 セレーネが、片手を掲げた。

 

 その瞬間。

 

 ――キィィィン。

 

 庭園の中央に、黄金色の空間の裂け目が現れた。

 

「……!」

 

 イリスとメイビスが、同時に目を見開く。

 

「これは……」

 

「世界の境界じゃ」

 

 セレーネが、当然のように答えた。

 

「もっとも、向こう側へ行く必要はない」

 

 その指先が、ゆっくりと動く。

 

 裂け目の向こうから、微かな魔力が流れ込んできた。

 

「……なるほど」

 

 メイビスが、真剣な表情になる。

 

「イリス!」

 

「はい!」

 

 イリスの金色の瞳が、その魔力を捉えた。

 

 普段、この世界で見慣れている魔力とは、どこか異なる流れ。

 

 しかし。

 

「……あら?」

 

 イリスが、首を傾げる。

 

「どうしました?」

 

「いえ……」

 

 少し考える。

 

「確かに違うのですが……」

 

 イリスは、自分の手のひらを見つめた。

 

 そこに、微かな魔力を集める。

 

「……私の魔力とは、また違いますね」

 

「……!」

 

 メイビスの瞳が輝いた。

 

「ということは……!」

 

「うむ」

 

 セレーネが頷く。

 

「少なくとも、異なる世界の魔力を比較することはできそうじゃな」

 

「……なるほど!」

 

 メイビスが、勢いよく資料に書き込み始めた。

 

「世界ごとの特徴を比較できれば、識別する方法を作れるかもしれません!」

 

「ただし」

 

 セレーネが、楽しそうに笑う。

 

「お主らの仮説が正しいと証明されたわけではないぞ?」

 

「はい!」

 

 メイビスが元気よく頷く。

 

「だから、もっと調べます!」

 

「……ふふっ」

 

 セレーネは、思わず笑った。

 

「よい返事じゃ」

 

 そして、イリスへ視線を向ける。

 

「それにしても……」

 

「はい?」

 

「お主のその金色の瞳」

 

 セレーネが、興味深そうに見つめた。

 

「やはり、ただの人間の目ではないのう」

 

「……そうでしょうか?」

 

「普通の人間には、今の魔力の違いなど見えぬ」

 

「……ふふっ」

 

 イリスが、少し困ったように笑う。

 

「昔から、こう見えているものですから」

 

「そうか」

 

 セレーネは、満足そうに頷いた。

 

「ますます興味が湧いたわ」

 

◇

 

 それから、数日。

 

 イリスとメイビスは、セレーネのもとで研究を続けた。

 

 異なる世界の魔力の比較。

 

 空間の接続に必要な座標。

 

 境界を越える際に発生する魔力の変化。

 

 セレーネは、気が向いたときに助言を与えた。

 

 しかし、答えをすべて教えることはなかった。

 

 それもまた、彼女にとっての楽しみだったのだろう。

 

 人間が、自分たちの知恵だけでどこまで辿り着くのか。

 

 その過程を眺めることが、何より面白かった。

 

 そして。

 

「……できました!」

 

 ある日の午後。

 

 メイビスが、嬉しそうに声を上げた。

 

「イリス! 見てください!」

 

「はい?」

 

 机の上には、新たな術式が描かれていた。

 

「まだ完成には程遠いですけど……」

 

 メイビスが、にっこり笑う。

 

「異なる世界の魔力を比較するための、基礎術式ができました!」

 

「……!」

 

 イリスが、目を輝かせた。

 

「本当ですか!」

 

「はい!」

 

 メイビスは、嬉しそうに頷く。

 

「これをもっと発展させれば、いつか……!」

 

「……ふふっ」

 

 イリスは、そっとメイビスの手を握った。

 

「ありがとうございます」

 

「……イリス?」

 

「また一歩、近づきましたね」

 

「……はい!」

 

 メイビスが、満面の笑顔で頷いた。

 

 その様子を、少し離れた場所からセレーネが眺めていた。

 

「……ふふっ」

 

 小さく笑う。

 

「たかが人間。されど人間、か」

 

 九十年前。

 

 初めて出会ったときも、そうだった。

 

 強大な力を持ちながら、決して傲慢ではない黒髪の少女。

 

 そして、恐るべき才能と知識欲を持つ金髪の少女。

 

 どちらも、常識では測れない存在だった。

 

 しかも。

 

 あれから九十年。

 

 二人は、さらに強くなっていた。

 

「……まったく」

 

 セレーネは、楽しそうに微笑んだ。

 

「興味が尽きぬのう」

 

◇

 

 数日後。

 

 ギルティナ大陸の山道。

 

「……さて」

 

 メイビスが、空を見上げた。

 

「次は、どこへ行きましょうか!」

 

「そうですね……」

 

 イリスが、手元の資料を眺める。

 

「世界の境界に関する古代遺跡を、もう少し調べてみたいですね」

 

「いいですね!」

 

 メイビスが嬉しそうに頷く。

 

「それなら、以前訪れた遺跡にも行ってみましょう!」

 

「ふふっ。懐かしいですね」

 

 二人は、顔を見合わせて笑った。

 

 セレーネとの再会。

 

 新たな研究成果。

 

 そして、少しだけ近づいた故郷への道。

 

 まだ、帰還方法が見つかったわけではない。

 

 けれど。

 

 以前とは違う。

 

 今は、確かな手掛かりがある。

 

「……メイビス」

 

「はい?」

 

「今回の旅も、長くなりそうですね」

 

「そうですね!」

 

 メイビスが、楽しそうに笑った。

 

「でも、イリスと一緒なら、どこまででも行けます!」

 

「……ふふっ」

 

 イリスも、柔らかく微笑んだ。

 

「私もですよ」

 

 二人は、並んで歩き始めた。

 

 遥か遠く。

 

 フィオーレ王国では、妖精の尻尾の仲間たちが、いつもどおり賑やかな日々を送っている。

 

 ナツ。

 

 ルーシィ。

 

 グレイ。

 

 エルザ。

 

 そして、数え切れないほどの仲間たち。

 

 今は、少しだけ離れるけれど。

 

 また、帰ればいい。

 

 あの賑やかなギルドへ。

 

 そう思いながら。

 

 二人の少女は、新たな旅へと歩き出した。

 

 ――このとき、二人はまだ知らなかった。

 

 自分たちが旅を続けている間に。

 

 妖精の尻尾に、かつてない大きな出来事が訪れることを。

 

 そして。

 

 再び故郷へ帰る道を探す旅が、思いもよらぬ形で中断されることを。

 

 それでも。

 

 二人の歩みは、止まらない。

 

 月明かりの下。

 

 黒髪と金髪の少女が、楽しそうに笑い合う。

 

 百年を越えて続く、二人の旅。

 

 その新たな一歩が、今、始まった。

 

 

 




【こそこそ妖精話】
~噂の二人~

 X784年。

 ニルヴァーナ討伐のため、四つのギルドから魔導士たちが集結した。

 妖精の尻尾。

 青い天馬。

 蛇姫の鱗。

 化猫の宿。

 それぞれが自己紹介を終えた頃。

一夜「ところで……妖精の尻尾といえば、最近話題の美しいお二人がいらっしゃいますねぇ。メェ~ン!」

ルーシィ「……美しい二人?」

ヒビキ「初代マスターのメイビスさんと、妖精の聖剣のイリスさんだよ」

リオン「俺も噂は聞いている。百年前の創設者が、今も現役で活動しているそうだな」

グレイ「ああ。しかも、二人ともとんでもなく強えぞ」

シェリー「百年前……!? それなのに、あんなにお若いんですの!?」

ルーシィ「そうなのよ! 私だって最初は信じられなかったんだから!」

ジュラ「……実は、私も一度お会いしてみたいと思っておりました」

ナツ「おっ! だったら今度、イリスと勝負してみろよ!」

ジュラ「……ほう?」

グレイ「やめとけ、ナツ。ジュラさんを巻き込むな」

ナツ「なんでだよ!」

グレイ「お前、前にイリスさんに一瞬で負けただろうが!」

ナツ「今度は勝つ!!」

ルーシィ「……その自信、どこから来るのよ」

一夜「それにしても、お二人とも実に美しい……ぜひ一度、私の香りを――」

エルザ「やめておけ」

一夜「……メェン?」

エルザ「特にメイビスさんの前で、イリスさんを口説くのはおすすめしない」

一夜「…………」

ヒビキ「……ああ、そういう関係?」

エルザ「……さてな」

 ――その頃、ギルティナ大陸。

メイビス「……くしゅんっ!」

イリス「あら? 風邪ですか?」

メイビス「いえ……誰かが噂している気がします!」

イリス「ふふっ。きっと気のせいですよ」

 ――こそこそ妖精話・完。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。


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