X791年。
フィオーレ王国、天狼島近海。
七年前、突如として姿を消した島。
妖精の尻尾にとって、特別な意味を持つ聖地。
その天狼島が、再び海の上に姿を現していた。
「……本当に、戻ってきたんですね」
空中に浮かぶ二人の少女。
黒髪のハーフツインテールを揺らす、青と金のオッドアイの美少女。
イリス・アストレア。
そして、その隣に立つ金髪の少女。
妖精の尻尾の初代マスター、メイビス・ヴァーミリオン。
二人は空間転移で天狼島の上空へ移動し、眼下に広がる景色を見つめていた。
「……はい」
メイビスが、小さく頷く。
懐かしい森。
美しい海岸。
そして、島の中央にそびえる巨大な天狼樹。
すべてが、七年前と変わらない。
「……イリス」
「はい?」
「……みんな、いますよね?」
その声は、少しだけ震えていた。
イリスは、そっとメイビスの手を握る。
「……ええ」
そして、優しく微笑んだ。
「迎えに行きましょう」
「……はいっ!」
二人は、ゆっくりと天狼島へ降り立った。
◇
「……じっちゃん!!」
森の向こうから、大きな声が響いた。
「うおおおお!! みんな無事か!?」
「ナツ! 少しは落ち着け!」
「だってよ、エルザ!」
聞き覚えのある声。
懐かしい声。
七年間、ずっと聞きたかった声。
「…………!」
メイビスが、勢いよく顔を上げた。
「……イリス!」
「……はい!」
二人は、声のする方へ駆け出した。
木々の間を抜ける。
そして。
「……あっ!」
開けた場所に、見覚えのある仲間たちが集まっていた。
ナツ。
グレイ。
エルザ。
ルーシィ。
そして、マカロフ。
七年前と、何も変わらない姿。
「……みんな!!」
メイビスが、声を上げた。
「「「……!?」」」
仲間たちが、一斉に振り向く。
「……メイビス!?」
最初に声を上げたのは、ナツだった。
「イリスもいるじゃねえか!!」
「……ナツさん!」
イリスが、嬉しそうに微笑む。
「お久しぶりです!」
「おう!!」
ナツが、勢いよく駆け寄ってきた。
「なんだよ! いつ帰ってきたんだ!?」
「……ふふっ」
イリスは、少しだけ目を細めた。
「……実は、七年前から戻っていました」
「……は?」
ナツが、首を傾げる。
「七年前?」
「はい」
「……何言ってんだ?」
その隣で、ルーシィも不思議そうな顔をした。
「イリスさん? 七年前って……?」
しかし。
「……初代?」
小さな声が、響いた。
マカロフだった。
その瞳は、メイビスを見つめている。
「……マカロフ」
メイビスが、ゆっくりと歩み寄った。
「……無事だったんですね」
「……初代」
「……よかった」
その声が、震えた。
「……本当に、よかったです……!」
次の瞬間。
メイビスは、マカロフへ抱きついていた。
「……っ!?」
マカロフが、目を見開く。
「……初代?」
「……七年です」
「……?」
「……七年間、ずっと待っていたんですよ……!」
その言葉に、マカロフの表情が変わった。
「……七年?」
「……はい」
メイビスが、顔を上げる。
その瞳には、大粒の涙が浮かんでいた。
「……天狼島が消えてから、七年も経ったんです……!」
「…………!」
マカロフが、息を呑んだ。
七年。
自分たちにとっては、ほんのわずかな時間だった。
しかし。
目の前の少女は、その七年間を過ごしてきたのだ。
「……そう、じゃったか」
マカロフは、ゆっくりとメイビスの頭に手を置いた。
「……心配をかけたのう」
「……はい」
「……すまんかった」
「……もう!」
メイビスが、涙を拭いながら笑った。
「謝らないでください!」
「……!」
「……帰ってきてくれたんですから!」
その言葉に、マカロフも小さく微笑んだ。
「……そうじゃな」
そして。
「……イリス」
「……はい」
マカロフが、彼女へ視線を向ける。
イリスも、静かに微笑んでいた。
しかし、その青と金の瞳には涙が浮かんでいる。
「……おかえりなさい、マカロフさん」
「……うむ」
「……ずっと、待っていましたよ」
「……そうか」
マカロフは、二人を見つめた。
幼い頃から、自分を見守ってくれた少女たち。
父ユーリの時代から、妖精の尻尾と共に歩んできた二人。
その二人が、七年間も自分たちを待ち続けてくれた。
「……ありがとう」
マカロフが、静かに頭を下げた。
「……二人とも、本当にありがとう」
イリスとメイビスは、顔を見合わせた。
そして。
「……ふふっ」
「……えへへ」
二人は、涙を浮かべながら笑った。
◇
「……ちょっと待ってくれ」
グレイが、頭を抱えた。
「……七年?」
「はい」
イリスが、頷く。
「皆さんが天狼島で妖精の球に守られている間、外の世界では七年が経過していたんです」
「……マジかよ」
ナツが、目を丸くする。
「俺たち、そんなに寝てたのか!?」
「厳密には、時間が停止していたんですよ」
メイビスが、説明する。
「妖精の球は、内部の時間を止めて対象を守る魔法なんです!」
「……なるほど」
エルザが、腕を組む。
「つまり、私たちは七年間、年を取っていないということか」
「そういうことです!」
「……すごい魔法ね」
ルーシィが、感心したように呟いた。
しかし。
「……あれ?」
イリスが、ふと首を傾げた。
「……?」
その視線の先。
ミラジェーンの隣に、一人の少女が立っていた。
白い髪。
見覚えのある顔。
「……リサーナさん?」
「……あっ!」
リサーナが、嬉しそうに手を振った。
「イリスさん! メイビスさん!」
「…………」
イリスが、固まった。
そして。
「……え?」
メイビスも、目を瞬かせる。
「……リサーナ?」
「はい!」
「…………」
二人は、顔を見合わせた。
そして。
「「……えええええっ!?」」
見事に声が重なった。
「リ、リサーナ!? 生きてたんですか!?」
メイビスが、驚きの声を上げる。
「……私たち、亡くなったと聞いていたのですが……!」
イリスも、珍しく動揺していた。
すると。
「えへへ……」
リサーナが、少し照れくさそうに笑った。
「実は、いろいろありまして……」
「いろいろ!?」
メイビスが、思わず叫んだ。
「いろいろで済ませていい話じゃないですよー!?」
「……ふふっ」
ミラジェーンが、楽しそうに笑った。
「二人とも、驚いたでしょう?」
「……ええ!」
イリスが、大きく頷く。
「本当に驚きました……!」
そして。
「……でも」
イリスが、優しく微笑んだ。
「……生きていてくれて、よかったです」
「……!」
リサーナの表情が、柔らかくなる。
「……ありがとうございます!」
メイビスも、嬉しそうに笑った。
「おかえりなさい、リサーナ!」
「……はい!」
リサーナが、元気よく頷く。
その隣では、エルフマンが目元を擦っていた。
「……漢だぜ……!」
「……エルフマンさん?」
「……なんでもねえ!」
そんなやり取りに、周囲から笑い声が上がった。
◇
「……あの」
控えめな声が、聞こえた。
「……?」
イリスが、振り向く。
そこには、青い髪の小柄な少女が立っていた。
隣には、白い猫のようなエクシード。
「あ、あの! 初めまして!」
少女が、慌てて頭を下げる。
「ウェンディ・マーベルです!」
「……あら」
イリスが、嬉しそうに微笑んだ。
「初めまして。イリス・アストレアです」
「私はメイビスです! よろしくお願いします!」
「は、はい!」
ウェンディが、元気よく頷く。
すると。
「……あなたたちが、イリスとメイビスなのね」
白いエクシードが、じっと二人を見つめた。
「私はシャルルよ」
「ふふっ。よろしくお願いします、シャルルさん」
イリスが、優しく微笑む。
「……それにしても」
シャルルが、首を傾げた。
「あなたたち、ずいぶん若いのね」
「えへへ。よく言われます!」
メイビスが、嬉しそうに笑う。
「……そうなの?」
「はい!」
その隣で、ウェンディが目を輝かせていた。
「……あの!」
「はい?」
「イリスさんって、剣を使う魔導士さんなんですよね?」
「ええ。そうですよ」
「わあ……!」
ウェンディが、嬉しそうに笑った。
「いつか、戦っているところを見てみたいです!」
「ふふっ。機会があれば、ぜひ」
すると。
「おい、ウェンディ!」
ナツが、横から顔を出した。
「イリスはめちゃくちゃ強えぞ!」
「そうなんですか!?」
「おう! 俺もまだ勝ったことねえ!」
「……ナツさん」
イリスが、苦笑する。
「それは、あまり自慢することではないと思いますよ?」
「なんだとー!?」
そんなやり取りに、ウェンディが楽しそうに笑った。
◇
「……あ」
イリスが、ふと声を上げた。
「……?」
メイビスが、首を傾げる。
そして。
「あっ!」
二人の視線が、一人の青年へ向けられた。
金髪。
大柄な体格。
そして、どこか不機嫌そうな表情。
「……ラクサスさん」
イリスが、嬉しそうに微笑んだ。
「あっ! ラクサス!」
メイビスも、元気よく手を振る。
「…………」
ラクサス・ドレアーが、ゆっくりと振り向いた。
「……あんたらか」
「お久しぶりですね」
イリスが、穏やかに微笑む。
「お元気でしたか?」
「……ああ」
「ふふっ。元気そうですね!」
メイビスも、嬉しそうに笑った。
「それにしても、また一緒にギルドで過ごせるんですね!」
「……そうだな」
ラクサスが、短く答える。
その表情は、相変わらずだった。
しかし。
「……ふふっ」
イリスが、優しく微笑んだ。
「おかえりなさい、ラクサスさん」
「…………」
ラクサスが、少しだけ目を細める。
そして。
「……ただいま」
小さく、そう答えた。
「……!」
メイビスが、嬉しそうに笑った。
「はい! おかえりなさい!」
その様子を、少し離れた場所からマカロフが見つめていた。
「……ふふっ」
小さな笑みが、その顔に浮かぶ。
七年前、ギルドを追われた孫。
そのラクサスが、今は仲間たちと共にいる。
マカロフにとっても、それは何より嬉しい光景だった。
◇
それから、しばらくして。
フィオーレ王国、マグノリア。
妖精の尻尾。
「……ただいまああああ!!」
ナツの大声が、ギルド中に響き渡った。
「「「おおおおおおお!!!」」」
次の瞬間。
ギルドは、歓声に包まれた。
「ナツ!!」
「グレイ!!」
「エルザ!!」
「みんな、生きてたのかよ!!」
七年ぶりの再会。
涙を流す者。
抱き合う者。
大声で笑う者。
妖精の尻尾に、懐かしい賑やかさが戻ってきた。
「……ナツ兄!!」
「……ん?」
ナツが、振り向く。
そこには、一人の少年が立っていた。
「……ロメオ?」
「……うん!」
「……お前、でかくなったな!?」
「七年も経ってるんだよ!!」
「うおおお! すげえ!」
ナツが、嬉しそうに笑う。
その隣では。
「……アルザック?」
ルーシィが、目を瞬かせていた。
「……あれ? ビスカさんと……?」
「……ああ」
アルザックが、照れくさそうに笑う。
「実は、結婚したんだ」
「「「えええええっ!?」」」
そして。
「……パパ!」
小さな女の子が、アルザックへ駆け寄った。
「……パパ!?」
ナツが、目を丸くする。
「……娘のアスカだ」
「「「えええええええっ!?」」」
再び、ギルドに驚きの声が響いた。
そんな光景を見て、メイビスが楽しそうに笑う。
「ふふっ。七年間、いろんなことがあったんですよ!」
「……そうみたいですね」
エルザが、感慨深そうに頷いた。
◇
「……ところでよ」
しばらくして。
ナツが、ふと首を傾げた。
「……七年間、ギルドはどうしてたんだ?」
「……ああ」
マカオが、腕を組む。
「いろいろあったぞ」
「……大変だったのか?」
グレイが、尋ねる。
すると。
「……いや」
マカオが、遠い目をした。
「……むしろ、前より儲かってる」
「…………」
「……は?」
ナツが、固まった。
「……なんでだよ!?」
「……そこの二人だ」
マカオが、イリスとメイビスを指差した。
「……?」
イリスが、首を傾げる。
「私たちですか?」
「ああ!」
マカオが、大きく頷く。
「S級依頼を片っ端から片付けてくれたんだよ!」
「……え?」
ルーシィが、目を瞬かせる。
「……片っ端から?」
「おう!」
「……どれくらい?」
「……数えるのをやめた」
「…………」
ルーシィが、静かに頭を抱えた。
「……何それ……」
「ふふっ。楽しかったですよ!」
メイビスが、嬉しそうに笑う。
「いろんな場所へ行けましたし!」
「ええ。珍しい魔法装置も見つかりましたね」
イリスも、楽しそうに頷く。
そんな二人を見て、グレイが呟いた。
「……この二人なら、まあ……」
「……そうだな」
エルザも、納得したように頷いた。
しかし。
「……それだけじゃねえぞ」
ワカバが、にやりと笑った。
「……ん?」
「お前ら、今の妖精の尻尾が何て呼ばれてるか知ってるか?」
「……?」
ナツが、首を傾げる。
すると。
「……フィオーレ最強のギルドだ」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙。
そして。
「「「はあああああああ!?」」」
ギルド中に、驚きの声が響き渡った。
◇
「……大魔闘演武?」
ルーシィが、首を傾げた。
「そうだ」
マカオが、頷く。
「七年前から始まった、王国最強のギルドを決める大会だ」
「……そんな大会があるのね」
「おう」
そして。
「うちは、三年連続で優勝してる」
「…………」
「…………」
「…………」
再び、沈黙。
「……三連覇?」
グレイが、確認する。
「ああ」
「……誰が出たんだ?」
「イリスさんとメイビスさん。それから、アルザック、ジェット、ドロイだ」
「……なるほど」
エルザが、静かに頷く。
「それなら納得だ」
「……いやいやいや!」
ルーシィが、思わず叫んだ。
「三連覇って、そんな簡単な話じゃないでしょ!?」
「ふふっ。皆さん、頑張ってくれましたから」
イリスが、穏やかに微笑む。
「アルザックさんたちも、すごく強くなったんですよ」
「そうです!」
メイビスも、元気よく頷く。
「三人とも、いっぱい練習しましたから!」
「……そうなのか?」
ナツが、アルザックたちを見る。
「……まあな」
アルザックが、少し照れくさそうに笑う。
「……ただ」
ジェットが、遠い目をした。
「……あの二人との修行は、地獄だったぜ……」
「……本当に」
ドロイも、深く頷く。
そんな三人を見て、メイビスが頬を膨らませた。
「もう! そんなに厳しくしてませんよ!」
「「「…………」」」
三人は、何も言わなかった。
◇
「……で!」
ナツが、勢いよく立ち上がった。
「今年も大会があるんだろ!?」
「……ああ」
マカオが、頷く。
「……だったら、俺も出る!!」
「……ナツ」
エルザが、呆れたように笑う。
「相変わらずだな」
「当たり前だろ!」
ナツが、拳を握りしめた。
「フィオーレ最強を決める大会なんだろ!? 燃えてきたぜ!!」
すると。
「……ああ、そうだ」
マカオが、何かを思い出したように呟いた。
「……ただし、今年はイリスさんとメイビスさんは出られねえぞ」
「……は?」
ナツが、固まる。
「……なんでだよ?」
「……出場停止だ」
「…………」
「……は?」
ナツが、もう一度聞き返した。
「……出場停止?」
「ああ」
「……何かやらかしたのか?」
「……いや」
マカオが、遠い目をした。
「……強すぎるんだとよ」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙。
そして。
「「「はああああああああ!?」」」
ギルドが、再び揺れた。
「強すぎるから出場停止!?」
ルーシィが、叫ぶ。
「そんな理由、ありなの!?」
「……大会運営委員会が決めたことだからな」
マカオが、肩をすくめる。
「他のギルドからも、勝負にならねえって苦情が来てるらしい」
「……なるほど」
エルザが、妙に納得した顔で頷いた。
「確かに、イリスさんとメイビスさんが出場すれば、そうなるだろうな」
「……エルザさん?」
イリスが、少し困ったように笑う。
「私たち、普通に参加していただけですよ?」
「そうですよ!」
メイビスも、頬を膨らませる。
「毎年、とっても楽しかったのに!」
「……普通、ねえ」
グレイが、苦笑する。
その隣で、ラクサスが小さく鼻を鳴らした。
「……あんたらが三年も出たら、そうなるだろうな」
「……ラクサスさんまで」
イリスが、思わず笑った。
すると。
「……よっしゃあああ!!」
ナツが、勢いよく拳を突き上げた。
「だったら、今年は俺たちの出番だな!!」
「……おう!」
グレイも、楽しそうに笑う。
「七年間のブランクがあるんだ。ちょうどいい腕試しになるぜ!」
「ふむ」
エルザが、腕を組む。
「だが、代表を決める必要があるな」
「……そうだな」
マカオが、頷く。
「今まで出場してた三人もいるし、希望者も多い」
「……だったら!」
ナツが、にやりと笑った。
「強え奴から選べばいいだろ!!」
その言葉に、ギルド中が沸き立った。
「おおおお!!」
「面白そうじゃねえか!!」
「代表選考だ!!」
そんな光景を見て、メイビスが嬉しそうに笑う。
「ふふっ。賑やかになってきましたね!」
「ええ」
イリスも、穏やかに頷いた。
七年間。
ずっと待ち続けた仲間たち。
その声が、再びギルドに響いている。
笑い声。
喧嘩の声。
楽しそうな歓声。
何もかもが、懐かしかった。
「……メイビス」
「はい?」
「……やっぱり、いいですね」
「……?」
「……みんながいる、妖精の尻尾は」
その言葉に、メイビスが嬉しそうに微笑んだ。
「……はい!」
そして、二人は顔を見合わせる。
百年以上前。
たった五人から始まった、小さなギルド。
数え切れないほどの出会いと別れを重ね。
幾度もの困難を乗り越え。
今も、こうして笑い声が響いている。
七年前。
イリスは、メイビスに言った。
――帰ってくる場所は、私たちが守ればいいんです。
その約束は、果たされた。
そして。
今度は、帰ってきた仲間たちと共に。
新しい物語が始まろうとしていた。
――おかえりなさい。
――私たちの、大切な家族。
【こそこそ妖精話】
~二代目マスターの最期~
ナツ「そういや、イリス! メイビス!」
メイビス「はい?」
ナツ「天狼島で、プレヒトってじいさんと戦ったんだ!」
イリス「……プレヒトさん?」
メイビス「……え?」
グレイ「ああ。悪魔の心臓って闇ギルドのマスターだった」
エルザ「自分は妖精の尻尾の二代目マスターだと名乗っていた」
メイビス「…………」
イリス「……そう、だったんですか」
ルーシィ「二人とも、知ってる人なの?」
メイビス「……はい。とても古い友人です」
イリス「妖精の尻尾を一緒に創った、大切な仲間なんですよ」
ナツ「……そうだったのか」
メイビス「……それで、プレヒトは?」
ナツ「ああ! 俺たちがぶっ飛ばしたぜ!」
グレイ「その後は、島から撤退したはずだ」
メイビス「……そうですか」
イリス「…………」
しばらく、沈黙が流れた。
メイビス「……イリス」
イリス「……はい」
メイビス「……少し、調べてみませんか?」
イリス「……そうですね」
そして、後日。
二人は、プレヒトがすでに命を落としていることを知った。
誰に殺されたのかまでは、わからなかった。
メイビス「……そう、ですか」
イリス「……メイビス」
メイビス「……大丈夫です」
メイビスは、小さく微笑んだ。
メイビス「……ただ、もう一度くらい、お話ししたかったですね」
イリス「……はい」
イリスは、そっとメイビスの手を握った。
かつて共に歩んだ仲間。
その最期を、二人が見届けることはできなかった。
それでも。
妖精の尻尾を創った、あの日々の思い出だけは。
決して、消えることはなかった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。