妖精と聖剣使い   作:使い手なない

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第3話「妖精の島に訪れた冒険者たち」

 

第一幕 新たな出会いの朝

 

X686年 ― 天狼島

 

 天狼島の朝は、今日も穏やかだった。

 

 木々の間から差し込む柔らかな陽光。

 

 森の奥から聞こえる鳥たちのさえずり。

 

 そして、窓の外を吹き抜ける心地よい風。

 

「……いいお天気ですね」

 

 窓辺に立っていたイリス・アストレアは、青と金の瞳を細めた。

 

 昨日、メイビスに案内してもらった丘。

 

 そこから眺めた、どこまでも続く青い海。

 

 夕暮れの光に染まった草花。

 

 そして、二人で交わした言葉。

 

『私はもう、友達だと思っていましたよ?』

 

「……ふふっ」

 

 思い出すと、自然に笑みがこぼれた。

 

 異世界へ転移してから、まだ二日しか経っていない。

 

 故郷へ帰る方法も、今のところ見つかっていなかった。

 

 それでも。

 

 この島で過ごす時間は、思っていたよりもずっと温かいものだった。

 

「イリスさーん!」

 

 廊下の向こうから、元気な声が響いた。

 

「はい。今行きます!」

 

 イリスは窓から離れ、声のする方へ向かった。

 

 今日もまた、メイビスとの一日が始まる。

 

 そのはずだった。

 

 ――この島に、三人の来訪者が現れるまでは。

 

――――――――――

 

第二幕 昨日の約束

 

「おはようございます、イリスさん!」

 

「おはようございます、メイビスさん」

 

 部屋へ入ると、メイビス・ヴァーミリオンが満面の笑みで迎えてくれた。

 

 机の上には、昨日とは違う本が数冊置かれている。

 

「……メイビスさん」

 

「はい?」

 

「昨日は、ちゃんと眠りましたか?」

 

「もちろんです!」

 

「本当ですか?」

 

「本当です!」

 

 メイビスは得意げに胸を張った。

 

「昨日、イリスさんに注意されましたからね!」

 

「ふふっ。それなら安心しました」

 

「それに!」

 

 メイビスは机の上に広げられた紙を持ち上げた。

 

「今日は、昨日のお約束がありますから!」

 

「……お約束?」

 

「はい! 島の案内です!」

 

「ああ……!」

 

 イリスは思い出したように頷いた。

 

「そうでしたね。昨日、まだ見せたい場所があると仰っていました」

 

「そうです!」

 

 メイビスは嬉しそうに笑った。

 

「今日は、昨日とは違う道を通ってみようと思うんです!」

 

「それは楽しみですね」

 

「でしょう!?」

 

 メイビスは机の上の紙を広げた。

 

 そこには、島の地形が簡単に描かれていた。

 

 森。

 

 小川。

 

 海岸。

 

 そして、中央にそびえる巨大な天狼樹。

 

「……地図ですか?」

 

「はい! 昨日の夜、描いてみたんです!」

 

「まあ……!」

 

 イリスは感心したように地図を覗き込んだ。

 

「とてもわかりやすいですね」

 

「えへへ……!」

 

 メイビスは嬉しそうに頬を緩める。

 

「今日は、この辺りへ行ってみようと思います!」

 

 そう言って、地図の一角を指さした。

 

「この先には、古い遺跡があるんですよ!」

 

「遺跡……!」

 

 イリスの瞳が輝いた。

 

「それは興味深いですね」

 

「でしょう!?」

 

「私の故郷にも、古い遺跡はいくつかありましたけれど……」

 

 イリスは地図を眺めながら続ける。

 

「この世界の遺跡がどのようなものなのか、ぜひ見てみたいです」

 

「それなら決まりですね!」

 

 メイビスは地図を畳んだ。

 

「さっそく出発しましょう!」

 

「はい!」

 

 二人は顔を見合わせ、笑い合った。

 

 昨日と同じように。

 

 今日もまた、楽しい一日になる。

 

 そう思っていた。

 

――――――――――

 

第三幕 島に現れた三人

 

 そのころ。

 

 天狼島の海岸に、一隻の小舟が近づいていた。

 

「おっ! 見えてきたぞ!」

 

 船の先頭に立つ金髪の青年が、嬉しそうに声を上げた。

 

 ユーリ・ドレアー。

 

 若きトレジャーハンターである。

 

「……そんなに身を乗り出すな。落ちるぞ」

 

 後ろから声をかけたのは、長い黒髪の青年だった。

 

 プレヒト・ゲイボルグ。

 

 落ち着いた雰囲気を持つ、慎重な男である。

 

「大丈夫だって!」

 

 ユーリは笑った。

 

「ようやく着いたんだぜ? 少しくらい興奮したっていいだろ!」

 

「興奮するのは構わんが、海に落ちても助けんぞ」

 

「冷てぇな、おい!」

 

「自業自得だ」

 

「ははは……」

 

 二人のやり取りを見ながら、もう一人の青年が苦笑した。

 

 ウォーロッド・シーケン。

 

 穏やかな性格の彼は、二人の間に入ることも多かった。

 

「まあまあ。せっかく目的の島に着いたんですから」

 

「そうそう!」

 

 ユーリは大きく頷いた。

 

「やっと見つけたんだからな!」

 

 その視線の先には、緑に覆われた島が広がっていた。

 

 天狼島。

 

 巨大な樹がそびえ立つ、不思議な島。

 

 そして。

 

 彼らが探し求める宝物が眠るとされる場所。

 

「……天狼玉、か」

 

 プレヒトが静かに呟いた。

 

「ああ!」

 

 ユーリは不敵に笑った。

 

「伝説のお宝だぜ?」

 

「まだ本当にあると決まったわけではないだろう」

 

「だから確かめに来たんじゃねぇか!」

 

 ユーリは拳を握った。

 

「見つけて、一攫千金だ!」

 

「……お前は本当に、そればかりだな」

 

「夢があっていいだろ?」

 

 ウォーロッドが小さく笑う。

 

「でも、島の人たちに迷惑はかけないようにしましょうね」

 

「わかってるって!」

 

 ユーリは軽く手を振った。

 

 プレヒトは、その返事をあまり信用していないようだった。

 

「……先が思いやられるな」

 

 小舟が、ゆっくりと砂浜へ近づいていく。

 

 こうして。

 

 三人のトレジャーハンターが、天狼島へと足を踏み入れた。

 

――――――――――

 

第四幕 思いがけない遭遇

 

「……あら?」

 

 森の中を歩いていたイリスが、ふと足を止めた。

 

「どうしました、イリスさん?」

 

 前を歩いていたメイビスが振り返る。

 

「いえ……」

 

 イリスは少し首を傾げた。

 

「今、誰かの声が聞こえたような気がして」

 

「声、ですか?」

 

「はい」

 

 耳を澄ませる。

 

 風が葉を揺らす音。

 

 鳥たちの鳴き声。

 

 そして。

 

「だから、こっちだって言ってるだろ!」

 

「地図を確認しろと言っている!」

 

「二人とも、落ち着いてください!」

 

「…………」

 

 イリスは瞬きをした。

 

「……やっぱり、聞こえますね」

 

「……!」

 

 メイビスも耳を澄ませた。

 

 そして、ぱっと顔を上げる。

 

「本当です!」

 

 その表情には、驚きと好奇心が入り混じっていた。

 

「誰か来たんでしょうか?」

 

「そうかもしれませんね」

 

「行ってみましょう!」

 

「あ、メイビスさん!」

 

 メイビスは声のする方へ駆け出した。

 

 イリスも慌てて後を追う。

 

「もう……!」

 

 思わず苦笑する。

 

 昨日から思っていたことだが、メイビスは興味を持ったことに対して本当に行動が早い。

 

 もっとも。

 

 そんなところも、彼女らしいと思っていた。

 

 木々の間を抜ける。

 

 すると。

 

「……ん?」

 

 前方から、三人の青年が姿を現した。

 

 金髪の青年。

 

 長い黒髪の青年。

 

 そして、穏やかそうな青年。

 

 互いの姿を認めた瞬間。

 

 双方の足が止まった。

 

「……あれ?」

 

 最初に声を上げたのは、ユーリだった。

 

「子供?」

 

「…………」

 

 メイビスが、じっと三人を見つめる。

 

 イリスも少し驚いた。

 

 昨日、メイビスから聞いた話では、この島に暮らしている人はほとんどいないという。

 

 それなのに、目の前には見知らぬ三人組が立っている。

 

「……こんにちは」

 

 イリスは、ひとまず丁寧に頭を下げた。

 

「……お、おう」

 

 ユーリが反射的に返事をする。

 

「こんにちは!」

 

 メイビスも元気よく挨拶した。

 

 しかし、その瞳は三人を興味深そうに観察していた。

 

「皆さん、この島へは初めていらしたんですか?」

 

「ああ、そうだけど……」

 

 ユーリは首を傾げた。

 

「お前ら、ここの住人か?」

 

「はい!」

 

 メイビスは胸を張った。

 

「私はメイビス・ヴァーミリオンです!」

 

「私はイリス・アストレアと申します」

 

 イリスも軽く会釈する。

 

「現在、メイビスさんのお世話になっています」

 

「へぇ……」

 

 ユーリは二人を見比べた。

 

 金髪の小柄な少女。

 

 黒髪で、青と金の不思議な瞳を持つ少女。

 

 どちらも、こんな島で出会うとは思っていなかった相手だった。

 

「俺はユーリ・ドレアー!」

 

 ユーリは親指で自分を指さした。

 

「で、こっちがプレヒトとウォーロッドだ!」

 

「……プレヒト・ゲイボルグだ」

 

「ウォーロッド・シーケンです。よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします!」

 

 メイビスが笑顔で答える。

 

 イリスも微笑んだ。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 こうして、五人は初めて顔を合わせた。

 

 もっとも。

 

 この出会いが穏やかなまま終わるはずもなかった。

 

――――――――――

 

第五幕 天狼玉を探す者

 

「それで?」

 

 メイビスが首を傾げた。

 

「皆さんは、どうして天狼島へ?」

 

「ああ、それはな!」

 

 ユーリは得意げに笑った。

 

「俺たちは宝探しに来たんだ!」

 

「宝探し?」

 

 イリスが聞き返す。

 

「そう! この島に眠る伝説のお宝をな!」

 

「……伝説のお宝、ですか?」

 

「へぇ……!」

 

 メイビスの瞳が輝いた。

 

「それは面白そうですね!」

 

「だろ!?」

 

 ユーリは嬉しそうに頷いた。

 

「お前、話がわかるじゃねぇか!」

 

「ふふっ。宝探しのお話は、本でもよく読みますから!」

 

「本?」

 

「はい!」

 

 メイビスは楽しそうに続ける。

 

「古代の遺跡や、隠された財宝。それに、失われた文明の謎を解き明かす冒険譚も大好きなんです!」

 

「おお!」

 

 ユーリの目が輝いた。

 

「いい趣味してるな!」

 

「ありがとうございます!」

 

 その様子を見て、イリスは小さく笑った。

 

「……なんだか、気が合いそうですね」

 

「そうですね」

 

 ウォーロッドも微笑む。

 

 一方、プレヒトは静かに周囲を見渡していた。

 

「……ところで」

 

 彼が口を開く。

 

「君たちは、この島に詳しいのか?」

 

「はい!」

 

 メイビスは即答した。

 

「特に私は、島のことならよく知っていますよ!」

 

「ほう……」

 

 プレヒトの目がわずかに細くなる。

 

「それなら、聞きたいことがある」

 

「なんでしょう?」

 

「この島にあるという、天狼玉についてだ」

 

 その言葉を聞いた瞬間。

 

 メイビスの表情が、わずかに変わった。

 

「……天狼玉?」

 

「ああ」

 

 ユーリが頷いた。

 

「知ってるのか?」

 

「…………」

 

 メイビスは少し考え込むように口を閉じた。

 

 イリスは、その横顔を見つめる。

 

 先ほどまで楽しそうだったメイビスが、急に静かになった。

 

 何か、理由があるのだろうか。

 

「……メイビスさん?」

 

「あ……」

 

 メイビスは顔を上げた。

 

 そして、三人へ視線を戻す。

 

「……皆さんは、その天狼玉をどうするつもりなんですか?」

 

「どうするって……」

 

 ユーリは不思議そうに眉を上げた。

 

「そりゃあ、見つけて持って帰るに決まってるだろ?」

 

「……そうですか」

 

 メイビスは静かに呟いた。

 

 その様子に、イリスは小さな違和感を覚えた。

 

 けれど、口を挟まずに見守る。

 

 メイビスには、何か考えがあるようだった。

 

「……それなら」

 

 メイビスが、にっこりと笑った。

 

「少し、お話をしましょうか?」

 

「……ん?」

 

 ユーリが首を傾げた。

 

 その笑顔を見たイリスは、なんとなく思った。

 

 ……これは、何か始まりそうですね。

 

――――――――――

 

第六幕 妖精の知恵

 

「まず、一つ質問です!」

 

 メイビスは人差し指を立てた。

 

「皆さんは、天狼玉がどこにあるのかご存じなんですか?」

 

「……いや」

 

 ユーリは少し言葉に詰まった。

 

「それを探しに来たんだよ」

 

「なるほど!」

 

 メイビスは頷いた。

 

「では、この島について、どれくらい調べてきましたか?」

 

「それは……」

 

 ユーリはプレヒトを振り返った。

 

「おい、プレヒト!」

 

「……俺を見るな」

 

「調べてただろ!?」

 

「調べた。だが、詳細な記録はほとんど残っていなかった」

 

「……なるほど」

 

 メイビスは考え込むように頷いた。

 

 そして、ゆっくりと笑った。

 

「つまり、皆さんは天狼玉があると聞いて、この島へ来たんですね?」

 

「……まあ、そうなるな」

 

「でも、どこにあるのかは知らない」

 

「……ああ」

 

「島の地形にも詳しくない」

 

「…………」

 

「それなのに、持って帰るつもりなんですね?」

 

「……おい」

 

 ユーリの眉がぴくりと動いた。

 

「なんだよ、その言い方」

 

「いえいえ!」

 

 メイビスは笑顔のままだった。

 

「ただ、少し不思議だなと思いまして!」

 

「……!」

 

 ユーリは口を開きかけた。

 

 しかし、すぐに閉じた。

 

 言い返そうにも、間違ったことは言われていない。

 

「……ぷっ」

 

 隣で、ウォーロッドが小さく吹き出した。

 

「おい、ウォーロッド!」

 

「す、すみません……!」

 

 イリスも思わず口元を押さえた。

 

「……ふふっ」

 

「お前も笑ってるだろ!?」

 

「す、すみません、ユーリさん」

 

 イリスは笑いを堪えながら答える。

 

「ですが、メイビスさんの仰ることも、もっともだと思いまして」

 

「ぐっ……!」

 

 ユーリは悔しそうに顔をしかめた。

 

 メイビスは、そんな彼を楽しそうに見つめていた。

 

「それで、ユーリさん」

 

「……なんだよ」

 

「本当に、天狼玉を見つけられると思いますか?」

 

「……当たり前だ!」

 

 ユーリは勢いよく答えた。

 

「俺たちはトレジャーハンターだぞ!」

 

「ふふっ。そうですか」

 

 メイビスは笑った。

 

「では、頑張ってくださいね!」

 

「……は?」

 

「島は広いですから、気をつけてください!」

 

 そう言って、くるりと踵を返す。

 

「行きましょう、イリスさん!」

 

「……え?」

 

 突然名前を呼ばれ、イリスは目を瞬かせた。

 

「もうよろしいんですか?」

 

「はい!」

 

 メイビスは楽しそうに頷いた。

 

「私たちには、今日の予定がありますから!」

 

「……ああ」

 

 イリスは、ようやく思い出した。

 

 今日は、島を案内してもらう約束だったのだ。

 

「そうでしたね」

 

 そして、三人へ向き直る。

 

「それでは、皆さん。お気をつけて」

 

「えっ?」

 

 ウォーロッドが驚いたように声を上げた。

 

「もう行ってしまうんですか?」

 

「はい」

 

 イリスは穏やかに答えた。

 

「今日は、メイビスさんに島を案内していただく予定なんです」

 

「なるほど……」

 

 ウォーロッドは納得したように頷いた。

 

 プレヒトも、特に引き止めようとはしなかった。

 

 しかし。

 

「……待てよ!」

 

 ユーリが声を上げた。

 

 二人の足が止まる。

 

「……はい?」

 

 メイビスが振り返った。

 

 ユーリは、少し悔しそうな顔をしていた。

 

「お前、この島に詳しいんだろ?」

 

「はい!」

 

「だったら、天狼玉の場所も知ってるんじゃねぇのか?」

 

「…………」

 

 メイビスは、にっこりと笑った。

 

「さあ、どうでしょう?」

 

「……!」

 

 ユーリの眉が跳ね上がった。

 

「お前……!」

 

 イリスは、そのやり取りを見つめていた。

 

 そして、心の中で小さく呟く。

 

 ……メイビスさん、楽しそうですね。

 

 どうやら。

 

 今日の島巡りは、予定どおりには進まなさそうだった。

 

――――――――――

 

終幕 始まりの予感

 

 森を吹き抜ける風が、五人の間を通り過ぎた。

 

 ユーリは腕を組み、メイビスを見下ろしていた。

 

 メイビスは、そんな彼をまっすぐに見上げている。

 

「……なあ」

 

「はい?」

 

「お前、俺たちをからかってるだろ?」

 

「そんなことありませんよ?」

 

「嘘つけ!」

 

「ふふっ」

 

 メイビスは楽しそうに笑った。

 

 その様子を見て、ウォーロッドも苦笑する。

 

「なんだか、面白いことになりましたね」

 

「……面倒なことになった、の間違いだろう」

 

 プレヒトが静かに呟いた。

 

「そうでしょうか?」

 

 イリスは、二人を見つめながら首を傾げた。

 

「私は、少し楽しそうだと思いますけれど」

 

「……君もか」

 

 プレヒトが呆れたように息を吐く。

 

 イリスは小さく笑った。

 

「ふふっ。すみません」

 

 そして、視線をメイビスへ戻す。

 

 昨日。

 

 あの丘の上で、二人は友達になった。

 

 これからも、一緒にいろいろな景色を見ようと約束した。

 

 けれど。

 

 今日、目の前に現れた三人の青年たちは、そんな穏やかな日常に新しい風を運んできた。

 

 天狼玉。

 

 伝説の宝物。

 

 そして、それを探しに来た三人のトレジャーハンター。

 

 イリスは、まだ知らなかった。

 

 この出会いが、やがて自分たちを島の外へと導くことを。

 

 メイビスとユーリの出会いが、後に一つの魔導士ギルドの誕生へとつながっていくことを。

 

 そして。

 

 この日出会った五人が、これから多くの冒険と困難を共にすることになるのを。

 

「イリスさん!」

 

 メイビスが振り返った。

 

「はい?」

 

「ちょっと、面白いことになりそうですよ!」

 

 その笑顔は、いつもと変わらなかった。

 

 好奇心に満ちた、明るい笑顔。

 

 イリスは一瞬だけ目を瞬かせた。

 

 そして、柔らかく笑った。

 

「……ふふっ」

 

「?」

 

「そうですね」

 

 彼女は、メイビスの隣へ歩み寄った。

 

「私も、そんな気がします」

 

 金色の髪を揺らす少女。

 

 黒い髪をなびかせる少女。

 

 そして、突然島へやってきた三人の青年。

 

 五人の運命が、今、初めて交わった。

 

 それは、まだ小さな出会いにすぎなかった。

 

 けれど。

 

 後に妖精の尻尾と呼ばれるギルドの物語は、確かにここから動き始めたのだった。

 

 ――第3話 完――

 




【こそこそ妖精話】

メイビス「ゼーラ! 今日は島に三人もお客さんが来たんですよ!」

ゼーラ「見てたわよ。それにしても、あんた、あの金髪の男をずいぶんからかってたわね」

メイビス「からかってなんかいませんよ? ちょっと質問しただけです!」

ゼーラ「その『ちょっと』で、あそこまで悔しがらせるんだから大したものね……」

メイビス「ふふっ。でも、面白い人たちでしたね!」

ゼーラ「まあね。それに、イリスも楽しそうだったじゃない」

メイビス「はい! イリスさんが笑ってくれて、私も嬉しかったです!」

ゼーラ「……あんた、本当にイリスのことが好きね」

メイビス「もちろんです! 大切なお友達ですから!」

ゼーラ「はいはい。……それで、明日の島案内はどうするの?」

メイビス「…………あっ」

ゼーラ「……完全に忘れてたわね」



ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。
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