妖精と聖剣使い   作:使い手なない

70 / 71
第三章 永劫編
第69話「妖精たちの噂話」


 

 X696年。

 

 フィオーレ王国。

 

 魔導士ギルドというものは、不思議な存在である。

 

 ある者にとっては、困ったときに助けてくれる頼もしい存在。

 

 ある者にとっては、街を騒がせる厄介者。

 

 そして、ある者にとっては、いつか自分も所属してみたい憧れの場所。

 

 そんな数ある魔導士ギルドの中に、近年、急速に名を広めているギルドがあった。

 

 その名は――妖精の尻尾。

 

 十年前、マグノリアで誕生した比較的新しいギルドである。

 

 だが、その評判はすでにフィオーレ各地へ広がっていた。

 

 これは、そんな妖精たちを巡る、少しばかり賑やかな噂話である。

 

 ◇

 

【第一幕 マグノリアの酒場】

 

 マグノリアの街。

 

 昼下がりの酒場では、旅商人たちが酒を片手に談笑していた。

 

商人A「なあ、この街って妖精の尻尾の本拠地なんだよな?」

 

地元住民A「そうだぞ。街の中心から少し歩けばギルドがある」

 

商人B「最近よく名前を聞くよな。そんなに有名なのか?」

 

地元住民B「有名も何も、あいつらがいなかったら、この街がどうなっていたことか」

 

商人A「……どういう意味だ?」

 

地元住民A「十年前、この街はブルースカルって闇ギルドに支配されてたんだ」

 

商人B「ブルースカル!? あの悪名高い!?」

 

地元住民B「そうだ。それを追い払ったのが、妖精の尻尾を創った連中さ」

 

商人A「……待て。あそこって十年前にできたギルドなんだろ?」

 

地元住民A「ああ」

 

商人A「じゃあ、できたばかりの連中が闇ギルドを倒したのか?」

 

地元住民B「正確には、ブルースカルを倒してからギルドを創ったんだ」

 

商人B「順番がおかしくないか!?」

 

 酒場に笑い声が広がる。

 

商人A「ちなみに、何人くらいいたんだ?」

 

地元住民A「五人だな」

 

商人B「五人!?」

 

地元住民B「しかも、そのうち二人は女の子だった」

 

商人A「……いやいやいや」

 

商人B「何だその冗談みたいな話は!」

 

地元住民A「本当なんだから仕方ねえだろ!」

 

 近くの席で聞いていた老人が、楽しそうに笑った。

 

老人「ほっほ。あの頃は、本当に驚いたもんじゃ」

 

商人A「お爺さんも見たのか?」

 

老人「ああ。あの日、街に自由が戻ってきたことは、今でも忘れられんよ」

 

 老人は窓の外を見つめた。

 

老人「今じゃ当たり前のように子供たちが笑っておるが……あの頃は、それすら難しかった」

 

 商人たちは静かになった。

 

老人「だから、わしらにとって妖精の尻尾は、ただの魔導士ギルドじゃないんじゃよ」

 

 老人は穏やかに微笑んだ。

 

老人「この街を取り戻してくれた、大切な恩人たちなんじゃ」

 

 ◇

 

【第二幕 王都クロッカスの魔導士たち】

 

 王都クロッカス。

 

 魔導士たちが集まる酒場の一角。

 

 数人の若い魔導士が、最近の有名ギルドについて話していた。

 

若手魔導士A「なあ、妖精の尻尾って知ってるか?」

 

若手魔導士B「知ってるぞ。最近かなり勢いがあるギルドだろ?」

 

若手魔導士C「俺は『妖精の聖剣』って名前を聞いたことがある」

 

若手魔導士A「ああ! 黒髪の女剣士だろ!」

 

若手魔導士B「青と金のオッドアイなんだってな」

 

若手魔導士C「しかも、すごい美少女らしい」

 

若手魔導士A「……お前、やけに詳しいな」

 

若手魔導士C「重要な情報だろ?」

 

若手魔導士B「そこじゃねえよ!」

 

 そこへ、隣の席にいたベテラン魔導士が口を挟んだ。

 

ベテラン魔導士「お前ら、見た目の話ばかりしているが、あの剣士の恐ろしさを知らんのか?」

 

若手魔導士A「恐ろしさ?」

 

ベテラン魔導士「ああ。星冠の塔との一件を聞いたことは?」

 

若手魔導士B「星冠の塔って、あの大手ギルドか?」

 

ベテラン魔導士「そこのマスター、ヴァルド・グランベルクを倒したのが妖精の聖剣だ」

 

若手魔導士C「……え?」

 

若手魔導士A「ちょっと待て。ギルドマスターを倒したのか?」

 

ベテラン魔導士「そうだ」

 

若手魔導士B「……そんなに強いのかよ」

 

ベテラン魔導士「噂では、魔法を剣で斬り払うらしい」

 

若手魔導士A「魔法を!?」

 

若手魔導士C「それって、普通にできることなのか?」

 

ベテラン魔導士「できるなら、俺も苦労していない」

 

 若手たちは顔を見合わせた。

 

若手魔導士B「……ちなみに、どんな剣なんだ?」

 

ベテラン魔導士「星の意匠がある、美しい聖剣だそうだ」

 

若手魔導士C「美少女で、強くて、聖剣持ち……」

 

若手魔導士A「何だよ、その物語の主人公みたいな設定!」

 

若手魔導士B「しかも実在するんだよな……」

 

 ベテラン魔導士は苦笑した。

 

ベテラン魔導士「もっとも、噂には尾ひれがつくものだ。山を一刀両断したなんて話まである」

 

若手魔導士A「それはさすがに嘘だろ!」

 

若手魔導士C「……でも、本人ならできそうじゃないか?」

 

若手魔導士B「お前、もう信者になってないか?」

 

 ◇

 

【第三幕 初代マスターは本当に天才なのか?】

 

 同じ頃。

 

 フィオーレ王国の別の街。

 

 魔導士ギルドの共同休憩所では、数人の魔導士が一枚の新聞を囲んでいた。

 

魔導士A「妖精の尻尾の初代マスターが交代したらしいぞ」

 

魔導士B「へえ。あの小さい女の子だろ?」

 

魔導士C「メイビス・ヴァーミリオンだったか」

 

魔導士A「そうそう。今はプレヒトって男が二代目らしい」

 

魔導士B「しかし、あの子って何歳なんだ?」

 

魔導士C「知らん。十年前から見た目が変わっていないって噂だが」

 

魔導士A「……それ、本当なのか?」

 

魔導士C「さあな」

 

 そこへ、一人の年配魔導士が近づいてきた。

 

年配魔導士「お前たち、メイビス・ヴァーミリオンの話をしているのか?」

 

魔導士A「そうですけど……」

 

年配魔導士「なら、黒獅子の牙との一件は知っているか?」

 

魔導士B「黒獅子の牙?」

 

魔導士C「……待て。あの大手ギルドか?」

 

年配魔導士「ああ」

 

魔導士A「確か、マスターはヴァレイン・グレイヴスでしたよね?」

 

年配魔導士「そうだ。死霊魔法を操る、恐ろしい男だった」

 

魔導士B「聞いたことがあるぞ。大量の死霊を従えるとか……」

 

年配魔導士「そのヴァレインを倒したのが、メイビス・ヴァーミリオンだ」

 

 沈黙。

 

魔導士A「…………は?」

 

魔導士B「……あの、小さい女の子が?」

 

年配魔導士「そうだ」

 

魔導士C「いやいやいや! いくらなんでも!」

 

年配魔導士「実際に起きたことだ」

 

 年配魔導士は椅子に腰を下ろした。

 

年配魔導士「ヴァレインは『冥王軍勢』という大規模な死霊魔法を使ったらしい」

 

魔導士A「冥王軍勢……」

 

年配魔導士「大量の死霊を呼び出し、数で敵を圧倒する魔法だ」

 

魔導士B「そんなもの、どうやって対処するんです?」

 

年配魔導士「メイビスは幻影魔法と空間魔法を使い、敵の攻撃をかわしながら戦場に術式を仕込んでいたそうだ」

 

魔導士C「……戦いながら?」

 

年配魔導士「ああ。そして最後に、仕込んだ術式を完成させた」

 

魔導士A「……それで?」

 

年配魔導士「妖精の輝き」

 

魔導士B「……何です、それ?」

 

年配魔導士「メイビス自身が開発した魔法らしい」

 

魔導士C「自分で開発した!?」

 

年配魔導士「その魔法で、冥王軍勢ごとヴァレインを撃破したという話だ」

 

魔導士A「…………」

 

魔導士B「…………」

 

魔導士C「…………」

 

 しばらく、誰も口を開かなかった。

 

 やがて。

 

魔導士A「……あの子、頭がいいだけじゃないのか?」

 

年配魔導士「誰がそんなことを言った?」

 

魔導士B「いや、だって……初代マスターって、天才軍師みたいな人だと思ってました」

 

年配魔導士「間違ってはいない」

 

魔導士C「……でも、自分で魔法を開発して、大手ギルドのマスターを倒すって……」

 

年配魔導士「だから、天才なのだろう」

 

魔導士A「……妖精の尻尾って、初代からおかしくない?」

 

 その場にいた全員が、無言で頷いた。

 

 ◇

 

【第四幕 創設メンバーがおかしい件】

 

 別の街の宿屋。

 

 夕食を囲む冒険者たちが、妖精の尻尾の話で盛り上がっていた。

 

冒険者A「妖精の聖剣と初代マスターが強いのはわかった」

 

冒険者B「うん」

 

冒険者A「じゃあ、他の創設メンバーは普通なんだよな?」

 

冒険者C「……普通?」

 

冒険者A「ああ。さすがに全員が化け物ってことはないだろ?」

 

 隣の席にいた魔導士が、思わず飲み物を噴き出した。

 

魔導士「ぶっ……!」

 

冒険者B「おい、大丈夫か!?」

 

魔導士「いや……悪い。あまりにも面白いことを言うから」

 

冒険者A「……何がだよ」

 

魔導士「赤雷のユーリって知ってるか?」

 

冒険者A「赤雷?」

 

魔導士「妖精の尻尾の創設メンバーだ。赤い雷を操る魔導士でな」

 

冒険者B「赤い雷……?」

 

魔導士「ああ。普通の雷魔法とは一味違う、強力な雷を使うらしい」

 

冒険者C「……へえ」

 

魔導士「それから、二代目マスターのプレヒト。高度な魔法術式を扱う実力者だ」

 

冒険者A「……ほう」

 

魔導士「ウォーロッド・シーケンという自然魔法の使い手もいる」

 

冒険者B「……ちょっと待て」

 

魔導士「何だ?」

 

冒険者B「創設メンバーって、全員強いのか?」

 

魔導士「そういうことになるな」

 

冒険者A「…………」

 

冒険者C「…………」

 

冒険者A「……五人で闇ギルドを倒したって話、急に納得できてきた」

 

 魔導士は楽しそうに笑った。

 

魔導士「ちなみに、創設メンバーではないが、黒い水を使う魔導士もいるぞ」

 

冒険者B「黒い水?」

 

魔導士「セヴェル・アクエリス。水の滅神魔導士だ」

 

冒険者C「滅神魔法!?」

 

魔導士「しかも治癒魔法の腕も相当なものらしい」

 

冒険者A「……待ってくれ」

 

魔導士「何だ?」

 

冒険者A「滅神魔導士って、治癒魔法も使えるものなのか?」

 

魔導士「少なくとも、あいつは使えるらしい」

 

冒険者B「……妖精の尻尾、何なんだよ」

 

冒険者C「俺、あのギルドと喧嘩したくない……」

 

冒険者A「安心しろ。俺もだ」

 

 ◇

 

【第五幕 妖精の尻尾に助けられた人々】

 

 フィオーレ王国の、とある小さな村。

 

 村の広場では、数人の子供たちが木の枝を振り回していた。

 

少年A「くらえ! 妖精の聖剣!」

 

少年B「うわあああ!」

 

少女A「次は私がメイビス様をやる!」

 

少年C「じゃあ俺、赤雷のユーリ!」

 

少年A「ずるいぞ! 俺も赤雷使いたい!」

 

 子供たちの賑やかな声が響く。

 

 その様子を見ていた村人が、思わず笑った。

 

村人A「ははは。最近はあれが流行りらしいな」

 

村人B「妖精の尻尾ごっこ、だとさ」

 

村人A「昔は騎士ごっこばかりだったのにな」

 

村人B「まあ、仕方ないだろう」

 

 村人Bは、子供たちを見つめた。

 

村人B「あのギルドには、うちの村も助けられたからな」

 

 数年前。

 

 村の近くに危険な魔物が現れた。

 

 村人たちは逃げることしかできず、畑も家畜も危険にさらされていた。

 

 そんなとき、依頼を受けてやってきたのが妖精の尻尾の魔導士たちだった。

 

 魔物は討伐され、村に平穏が戻った。

 

 そして、魔導士たちは村人たちの礼を受け取ると、笑顔で帰っていった。

 

村人A「……あいつら、報酬のことより村の被害を心配してくれたんだよな」

 

村人B「ああ」

 

村人A「強い魔導士なら、他にもいるんだろうけどさ」

 

 村人Aは微笑んだ。

 

村人A「俺は、ああいう連中が好きだな」

 

村人B「……そうだな」

 

 広場では、子供たちがまだ遊んでいた。

 

少年A「俺は妖精の聖剣になる!」

 

少女A「じゃあ私は初代マスター!」

 

少年B「俺は二代目マスター!」

 

少年C「……じゃあ俺、ギルドの酒場の店員!」

 

少年A「なんでだよ!?」

 

少年C「だって、毎日みんなに会えるだろ!」

 

 その言葉に、大人たちは思わず笑った。

 

 ◇

 

【第六幕 初代マスターと妖精の聖剣】

 

 王都クロッカス。

 

 とある商人組合の休憩室。

 

 そこでは、妖精の尻尾に関する新しい噂が話題になっていた。

 

商人A「そういえば、初代マスターが旅に出たらしいぞ」

 

商人B「ああ、聞いた聞いた」

 

商人C「しかも、妖精の聖剣と一緒なんだろ?」

 

商人A「そうらしい」

 

商人B「……あの二人、昔から仲がいいよな」

 

商人C「十年前から一緒にいるんだって?」

 

商人A「そうそう。天狼島で出会ったのが始まりらしい」

 

商人B「へえ……」

 

商人C「しかし、二人とも相当な実力者なんだろ?」

 

商人A「まあな」

 

商人C「そんな二人が一緒に旅してるって……」

 

商人B「……盗賊にとっては災難だな」

 

商人A「間違いない」

 

 商人たちは笑った。

 

商人C「それにしても、どうして旅に出たんだろうな?」

 

商人A「さあな。魔法の研究だとか、古代の遺跡を調べるためだとか、いろいろ噂はあるが」

 

商人B「初代マスターって、魔法の研究が好きなんだろ?」

 

商人A「そう聞くな」

 

商人C「じゃあ、また新しい魔法でも開発するんじゃないか?」

 

商人B「……あり得そうで怖いな」

 

商人A「次に帰ってきたとき、何を覚えてるかわからんぞ」

 

 再び笑い声が広がった。

 

 彼らは知らない。

 

 二人が旅立った本当の理由を。

 

 その背後に、どれほど深い悲しみがあったのかを。

 

 ただ。

 

 彼らの知る二人は、いつだって仲がよく、誰かのために力を振るう魔導士だった。

 

 だからこそ。

 

商人B「……まあ、あの二人なら大丈夫だろ」

 

商人A「ああ」

 

商人C「また、面白い話を聞かせてほしいもんだな」

 

 そんな、何気ない言葉が交わされていた。

 

 ◇

 

【第七幕 妖精の尻尾というギルド】

 

 夜。

 

 マグノリアの街。

 

 妖精の尻尾のギルドから少し離れた場所に、小さな食堂があった。

 

 店主は、閉店の準備をしながら窓の外を眺めていた。

 

 その視線の先には、明かりの灯ったギルドの建物がある。

 

店主「……今日も遅くまで賑やかだな」

 

 近くの席に座っていた常連客が笑った。

 

常連客「妖精の尻尾だからな」

 

店主「ははっ。そうだな」

 

 しばらくして、常連客が口を開いた。

 

常連客「……そういや、初代マスターが代わったんだって?」

 

店主「ああ。今はプレヒトって若い男がマスターをやってるらしい」

 

常連客「……時代が変わるもんだな」

 

店主「まだ十年しか経ってないんだけどな」

 

 店主は苦笑した。

 

店主「でも、あの十年で、この街も随分変わった」

 

常連客「……ああ」

 

 かつてのマグノリア。

 

 ブルースカルに支配され、人々が自由に笑うことさえ難しかった街。

 

 それが今では、商人が行き交い、子供たちが遊び、夜になれば酒場から笑い声が聞こえてくる。

 

常連客「……妖精の尻尾のおかげ、か」

 

店主「それだけじゃないさ」

 

 店主は、ゆっくりと首を振った。

 

店主「あいつらがきっかけを作ってくれたんだ」

 

常連客「……きっかけ?」

 

店主「ああ。街を取り戻してくれた。けど、その後に街をここまで賑やかにしたのは、ここに住んでる俺たちだろ?」

 

常連客「……そうだな」

 

店主「だから、俺たちも頑張らないとな」

 

 店主は笑った。

 

店主「せっかく、あいつらが守ってくれた街なんだから」

 

 常連客も、静かに微笑んだ。

 

常連客「……そうだな」

 

 ◇

 

 同じ夜。

 

 妖精の尻尾のギルドでは、二代目マスターとなったプレヒトが書類に目を通していた。

 

 その近くでは、ウォーロッドが若い魔導士たちと話している。

 

 研究室では、セヴェルが古い魔法書を読み続けていた。

 

 そして。

 

 ギルドの奥の部屋では、ユーリが眠るマカロフをそっと抱いていた。

 

 初代マスターはいない。

 

 妖精の聖剣もいない。

 

 けれど。

 

 妖精の尻尾は、今日もそこにあった。

 

 新しい依頼が舞い込む。

 

 仲間たちが笑い合う。

 

 時には喧嘩もする。

 

 誰かが困っていれば、別の誰かが手を差し伸べる。

 

 そんな日々が、これからも続いていく。

 

 ◇

 

 フィオーレ王国には、数多くの魔導士ギルドが存在する。

 

 歴史ある名門ギルド。

 

 強大な魔導士を抱える大手ギルド。

 

 王国中に名を轟かせる実力者たち。

 

 その中で、妖精の尻尾はまだ若いギルドだった。

 

 創設から、わずか十年。

 

 けれど、その名を知る者は確実に増えていた。

 

 ある者は、その強さを語る。

 

 ある者は、その天才的な初代マスターを語る。

 

 ある者は、青と金の瞳を持つ聖剣使いを語る。

 

 ある者は、赤雷を操る魔導士を語る。

 

 そして、ある者は。

 

 かつて自分たちを助けてくれた、優しい魔導士たちのことを語る。

 

 噂には、真実もあれば誇張もある。

 

 時には、まったくの勘違いだってあるだろう。

 

 けれど。

 

 そのどれもが、妖精の尻尾というギルドが、この十年間で積み重ねてきたものだった。

 

 人々の記憶に残る冒険。

 

 語り継がれる戦い。

 

 誰かの心に残った、小さな親切。

 

 それらが少しずつ重なり合い、一つの名前を広めていく。

 

 妖精の尻尾。

 

 妖精に尻尾はあるのか。

 

 そもそも、妖精は存在するのか。

 

 誰にもわからない。

 

 だからこそ、そこには永遠の冒険がある。

 

 十年前、五人の若者たちが創った小さなギルド。

 

 その物語は、彼ら自身も知らない場所で、今日も誰かの口から語られていた。

 

 そして。

 

 これから先も、きっと。

 

 妖精たちの物語は、語り継がれていくのだろう。

 

 ――第69話 終――

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。