妖精と聖剣使い   作:使い手なない

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第76話「また会う日まで」

 

X701年。

 

フィオーレ王国北東部、山岳地帯の森。

 

木々の隙間から差し込む朝日が、静かな森を柔らかく照らしていた。

 

小鳥たちのさえずりが響く中、焚き火のそばでは三人の魔導士が朝食を囲んでいる。

 

「……やっぱり、イリスの料理は美味しいですね!」

 

焼きたてのパンを頬張りながら、メイビスが幸せそうに微笑んだ。

 

「ふふっ。ありがとうございます。でも、そんなに慌てなくてもなくなりませんよ?」

 

「だって、美味しいんですもん!」

 

「……僕も、そう思うよ」

 

向かいに座っていたゼレフも、小さく笑った。

 

「誰かと一緒に食べる朝食が、こんなに楽しいものだったなんてね」

 

その言葉に、イリスは穏やかな笑みを浮かべる。

 

「でしたら、またご馳走しますね」

 

「……うん。楽しみにしているよ」

 

三人の間に、穏やかな時間が流れていた。

 

昨日まで続いていた研究の議論も、今朝はひとまずお休みだ。

 

アンクセラムの呪い。

 

封印魔法。

 

魔力の蓄積と継続供給。

 

そして、過去への干渉という未知の可能性。

 

どれも簡単に答えが出る問題ではない。

 

けれど、三人は確かに未来へ繋がる道筋を見つけていた。

 

「……さて」

 

朝食を終えたメイビスが、膝の上に置いていた研究手帳を閉じる。

 

「そろそろ、私たちも帰る準備をしないといけませんね」

 

「そうですね」

 

イリスは頷いた。

 

「もう五年ほど、妖精の尻尾に帰っていませんから」

 

「……五年、か」

 

ゼレフが静かに呟く。

 

「長い旅だったんだね」

 

「はい。でも、無駄な旅ではありませんでした」

 

メイビスは微笑んだ。

 

「ゼレフさんにも会えましたし、これから調べるべきことも見つかりました!」

 

「それに、ギルドにはプレヒトさんもいます」

 

イリスが続ける。

 

「封印魔法や魔力供給の研究なら、きっと力になってくれるはずです」

 

「ええ! プレヒトの研究熱心さは、昔から変わりませんからね!」

 

メイビスは楽しそうに笑った。

 

ゼレフも頷く。

 

「彼なら、僕たちとは違う視点から考えてくれるかもしれないね」

 

「はい!」

 

メイビスは勢いよく立ち上がった。

 

「というわけで、ゼレフさん! 私たちは一度、マグノリアへ戻ろうと思います!」

 

「……うん」

 

ゼレフは穏やかに微笑んだ。

 

「二人の帰る場所だものね」

 

その言葉に、メイビスは少しだけ目を伏せた。

 

帰る場所。

 

かつて、自分が飛び出してしまった場所。

 

そこには、大切な仲間たちがいる。

 

そして――。

 

自分の呪いによって命を落とした、大切な仲間の記憶も。

 

「……メイビス」

 

隣から、イリスが優しく呼びかけた。

 

「……はい」

 

「大丈夫ですよ。私も一緒ですから」

 

メイビスは顔を上げる。

 

イリスは、いつもと変わらない笑顔を向けていた。

 

「……ありがとうございます、イリス」

 

メイビスも、小さく微笑み返した。

 

---

 

昼前。

 

三人は、これまでにまとめた研究資料を整理していた。

 

古代呪術に関する記録。

 

魔力の変化についての観察結果。

 

封印魔法に関する仮説。

 

そして、今後の研究課題。

 

メイビスは手帳をめくりながら、満足そうに頷く。

 

「これで、ひとまず整理できましたね!」

 

「ええ。あとは、それぞれの場所で研究を進めるだけですね」

 

イリスが答える。

 

「……そうだね」

 

ゼレフも、自分の研究手帳を閉じた。

 

「僕も、引き続き古い記録を調べてみるよ」

 

「お願いします!」

 

メイビスは笑顔で頷いた。

 

そこで、イリスがふと思い出したように口を開く。

 

「そういえば、ゼレフさん」

 

「ん?」

 

「今後の研究成果は、どうやって共有しましょうか?」

 

「ああ……そうだったね」

 

ゼレフは少し考え込んだ。

 

「僕はこれからも各地を旅するつもりだから、いつも同じ場所にいるわけじゃないんだけど……」

 

「でしたら、定期的に戻る場所はありませんか?」

 

「あるよ」

 

「本当ですか?」

 

「うん。アラキタシア大陸にね」

 

メイビスが目を輝かせる。

 

「アラキタシア大陸! 西の大陸ですね!」

 

「そうだよ」

 

ゼレフは頷いた。

 

「そこにアルバレス帝国という国があるんだ」

 

「アルバレス帝国……」

 

イリスが聞き慣れない国名を繰り返す。

 

「その国に、ゼレフさんのお知り合いが?」

 

「うん。まあ……そんなところかな」

 

ゼレフは少しだけ言葉を選ぶようにしてから、続けた。

 

「手紙を送るなら、アルバレス帝国の皇宮宛てにしてくれるといいよ」

 

「……皇宮?」

 

メイビスが首を傾げる。

 

「ゼレフさん、皇宮にお住まいなんですか?」

 

「いつもいるわけじゃないけどね」

 

「ということは……」

 

イリスも不思議そうに尋ねた。

 

「皇帝陛下とお知り合いなのでしょうか?」

 

「……ああ」

 

ゼレフは、何でもないことのように答えた。

 

「僕が皇帝なんだ」

 

「…………」

 

「…………」

 

森に、静寂が訪れた。

 

小鳥が一羽、枝から飛び立つ。

 

風が木々の葉を揺らした。

 

そして。

 

「…………え?」

 

最初に声を漏らしたのは、イリスだった。

 

メイビスは、ぽかんと口を開けている。

 

「……ゼレフさん?」

 

「うん?」

 

「今、何と……?」

 

「僕がアルバレス帝国の皇帝だって」

 

「…………」

 

「…………」

 

再び沈黙。

 

そして。

 

「「えええええええっ!?」」

 

二人の声が、森いっぱいに響き渡った。

 

ゼレフは思わず肩を震わせる。

 

「……そんなに驚くことかな?」

 

「驚きますよ!?」

 

イリスが珍しく声を上げた。

 

「ゼレフさん、皇帝だったんですか!?」

 

「う、うん」

 

「初耳ですよ!?」

 

「……言ってなかったっけ?」

 

「聞いてません!!」

 

今度はメイビスが勢いよく身を乗り出した。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! アルバレス帝国って、あの西の大陸にある国ですよね!?」

 

「そうだよ」

 

「それで、ゼレフさんが皇帝!?」

 

「……うん」

 

「どうして今まで黙ってたんですか!?」

 

ゼレフは困ったように頬を掻いた。

 

「……話す機会がなかったから」

 

「五年も探して、ようやく再会して、三日も一緒に過ごしているのに!?」

 

「……ごめん」

 

メイビスは頭を抱えた。

 

「まさか、昔の魔法の先生が皇帝になっているなんて……!」

 

「僕も、まさかこんなに驚かれるとは思わなかったよ」

 

「普通は驚きます!」

 

イリスが即座に答える。

 

その様子を見て、ゼレフはとうとう小さく吹き出した。

 

「……ふふっ」

 

「ゼレフさん?」

 

「いや……ごめん」

 

ゼレフは口元を押さえながら笑った。

 

「二人の反応が、あまりにも面白くて」

 

「もうっ!」

 

メイビスは頬を膨らませた。

 

「ゼレフさん、意外とお茶目なんですね!」

 

「……そうかもしれないね」

 

イリスは額に手を当て、小さく息を吐いた。

 

「……まさか、友達になった方が皇帝だったなんて」

 

「……嫌だった?」

 

ゼレフが、少しだけ不安そうに尋ねた。

 

その問いに、イリスは目を瞬かせる。

 

そして、ふっと笑った。

 

「いいえ?」

 

「……え?」

 

「ゼレフさんが皇帝でも、私たちの友達であることに変わりはありませんから」

 

メイビスも大きく頷いた。

 

「そうですよ!」

 

そして、いたずらっぽく微笑む。

 

「でも、次に会うときは『皇帝陛下』って呼んだ方がいいですか?」

 

「……それは、やめてほしいな」

 

ゼレフが苦笑する。

 

「僕は、二人には今までどおり接してほしい」

 

「ふふっ。もちろんです!」

 

「ええ。これからもゼレフさんと呼ばせていただきますね」

 

「……ありがとう」

 

ゼレフは、心から嬉しそうに微笑んだ。

 

---

 

それから三人は、今後の連絡方法について話し合った。

 

アルバレス帝国の皇宮へ手紙を送り、ゼレフが戻った際に確認する。

 

研究資料については、必要に応じて写しを作り、手紙に添える。

 

もちろん、大陸を越える以上、届くまでには時間がかかる。

 

ゼレフが旅に出ていれば、返事が来るまでさらに時間が必要になるだろう。

 

それでも、連絡を取る方法がある。

 

それだけで十分だった。

 

「皇宮には、僕宛ての私的な手紙として届けてもらえるようにしておくよ」

 

ゼレフが言う。

 

「ただ、僕の名前や研究内容は、あまり広めないでほしい」

 

「わかりました」

 

イリスは頷いた。

 

「こちらでも、必要以上に話すつもりはありません」

 

「私もです!」

 

メイビスも同意する。

 

「それに、研究成果はきちんと整理して送りますから!」

 

「……うん。楽しみにしているよ」

 

ゼレフは微笑んだ。

 

こうして、三人の間に新たな約束が生まれた。

 

離れていても、研究は続けられる。

 

すぐに答えが出なくても、諦める必要はない。

 

何年かかっても。

 

何十年かかっても。

 

三人は、それぞれの場所から同じ問題に向き合っていく。

 

---

 

やがて、別れの時間が訪れた。

 

森の中を通る細い道。

 

そこが、三人の分かれ道だった。

 

イリスとメイビスは、マグノリアへ。

 

ゼレフは、再び古い記録を求めて旅を続ける。

 

「……それじゃあ」

 

ゼレフが静かに口を開いた。

 

「二人とも、気をつけて」

 

「はい!」

 

メイビスが元気よく答える。

 

「ゼレフさんも、お元気で!」

 

「……うん」

 

ゼレフは微笑んだ。

 

けれど、その笑顔には、ほんの少しだけ寂しさが混じっていた。

 

長い年月。

 

ゼレフは、誰かと親しくなることを避けてきた。

 

大切に思えば思うほど、呪いは周囲の生命を奪う。

 

だからこそ、人との距離を置き続けてきた。

 

それなのに。

 

この数日間は、不思議なほど穏やかだった。

 

一緒に食事をして。

 

研究について語り合って。

 

くだらないことで笑い合って。

 

そして、友達になった。

 

そんな時間が、終わろうとしている。

 

「……ゼレフさん」

 

イリスが、静かに呼びかけた。

 

「……何かな?」

 

「そんな顔をしないでください」

 

「……え?」

 

イリスは微笑んだ。

 

「これでお別れというわけではありませんよ?」

 

メイビスも隣で頷く。

 

「そうですよ! 私たちは友達なんですから!」

 

「……友達」

 

「はい!」

 

メイビスは満面の笑みを浮かべた。

 

「また会いに来ます! 今度はもっとたくさん、お話ししましょう!」

 

「それに、ゼレフさん」

 

イリスが続ける。

 

「次に会うときも、美味しい料理をご馳走しますね」

 

「……ふふっ」

 

ゼレフは小さく笑った。

 

「それは楽しみだね」

 

「もちろん、おやつもありますよ!」

 

メイビスがすかさず付け加える。

 

「……メイビス。それは私が作る前提ですよね?」

 

「えへへっ」

 

「もう……」

 

イリスは呆れたように笑った。

 

ゼレフも、声を立てて笑う。

 

三人の笑い声が、静かな森に響いた。

 

やがて、ゼレフは二人を見つめた。

 

「……ありがとう」

 

その声は、とても穏やかだった。

 

「僕は、長い間……誰かと次に会う約束をすることなんて、考えていなかった」

 

イリスとメイビスは、黙って耳を傾ける。

 

「でも、今は違う」

 

ゼレフは微笑んだ。

 

「また会える日が、楽しみなんだ」

 

「……ゼレフさん」

 

「だから……また会おう」

 

メイビスは、大きく頷いた。

 

「はい!」

 

イリスも、優しく微笑む。

 

「約束ですよ」

 

「……うん。約束だ」

 

三人は、最後にもう一度笑い合った。

 

そして。

 

イリスとメイビスは、マグノリアへ向かう道を歩き始めた。

 

ゼレフは、その背中を見送る。

 

二人の姿が木々の向こうへ消えるまで、ずっと。

 

「……また会う日まで」

 

小さく呟いた言葉は、柔らかな風に乗って消えていった。

 

けれど、ゼレフの表情に、かつてのような孤独の影はなかった。

 

今の彼には、次の再会を楽しみにできる友達がいる。

 

それだけで。

 

長い旅路が、ほんの少しだけ明るく感じられた。

 

---

 

森を抜けた先。

 

緩やかな丘陵地帯を、二人の少女が歩いていた。

 

「……イリス」

 

「はい?」

 

「ゼレフさん、皇帝だったんですね……」

 

「……まだ驚いているんですか?」

 

「だって、皇帝ですよ!?」

 

メイビスは両手を広げた。

 

「昔、一緒に魔法の勉強をしたゼレフさんが、今では一国の皇帝なんですよ!?」

 

「ふふっ。確かに、驚きましたね」

 

イリスも笑った。

 

「でも、ゼレフさんはゼレフさんですよ」

 

「……そうですね!」

 

メイビスは楽しそうに頷いた。

 

それから、しばらく二人は並んで歩いた。

 

遠くには山々が連なり、青空には白い雲がゆっくりと流れている。

 

やがて、メイビスがぽつりと呟いた。

 

「……五年、ですか」

 

「……ええ」

 

「ユーリたち、どうしているでしょうね」

 

「きっと元気にしていますよ」

 

イリスは微笑んだ。

 

「プレヒトさんは、相変わらず研究に夢中でしょうし」

 

「ふふっ。そうでしょうね」

 

「ウォーロッドさんも、きっと変わらず穏やかなのでしょうね」

 

「ええ!」

 

メイビスの表情が明るくなる。

 

「それに、マカロフも大きくなったでしょうね!」

 

「もう五歳ですからね」

 

「私たちのこと、覚えているでしょうか?」

 

「……生まれたばかりでしたから、難しいかもしれませんね」

 

「そうですよね……」

 

メイビスは少し残念そうに笑った。

 

けれど。

 

その笑顔が、ふと曇る。

 

マカロフ。

 

その名前を口にするたび、思い出してしまう。

 

あの日のことを。

 

小さな命の誕生を喜んだ、その直後。

 

自分の呪いによって、リタの命が奪われた。

 

「…………」

 

メイビスの足が、少しだけ遅くなる。

 

イリスは、その変化に気づいていた。

 

けれど、すぐには何も言わなかった。

 

ただ、歩調を合わせる。

 

「……イリス」

 

「はい」

 

「……私、ちゃんと帰れるでしょうか」

 

その声は、小さかった。

 

「……みんなに、会ってもいいんでしょうか」

 

イリスは足を止めた。

 

メイビスも立ち止まる。

 

風が、二人の髪を揺らした。

 

「……メイビス」

 

イリスは、ゆっくりと口を開いた。

 

「怖いですか?」

 

「……はい」

 

メイビスは俯いた。

 

「みんなに会いたいんです。ユーリにも、プレヒトにも、ウォーロッドにも……」

 

声が、少し震える。

 

「でも……」

 

その先の言葉は、続かなかった。

 

イリスは、静かにメイビスの手を取った。

 

「……無理に笑わなくてもいいんですよ」

 

「……イリス」

 

「怖いなら、怖いと言ってください」

 

イリスは優しく微笑んだ。

 

「私が、ちゃんと聞きますから」

 

メイビスの瞳が揺れる。

 

「……私、本当に……帰りたいんです」

 

「はい」

 

「みんなに……会いたいです」

 

「……ええ」

 

イリスは、その手をそっと握り直した。

 

「でしたら、一緒に帰りましょう」

 

「……一緒に?」

 

「もちろんです」

 

イリスは笑った。

 

「私は、メイビスと共に生きていくと決めましたから」

 

その言葉に、メイビスは目を見開く。

 

五年前。

 

絶望の中で、自分を抱き締めてくれた少女。

 

呪いを恐れず、そばにいてくれた少女。

 

あの日、イリスが告げた言葉を、メイビスは今も覚えている。

 

『私は、この世界でメイビスと共に生きていきます』

 

「……イリス」

 

「はい」

 

「……ありがとうございます」

 

メイビスは、少しだけ涙を浮かべながら微笑んだ。

 

イリスも微笑み返す。

 

「どういたしまして」

 

そして、二人は再び歩き始めた。

 

手を繋いだまま。

 

まだ、呪いは解けていない。

 

メイビスの心の傷も、完全には癒えていない。

 

帰った先で、何が待っているのかもわからない。

 

それでも。

 

帰りたい場所がある。

 

会いたい人たちがいる。

 

そして、隣には大切な友達がいる。

 

それだけで、前へ進む理由には十分だった。

 

「……イリス!」

 

「はい?」

 

「帰ったら、まず何をしましょうか!」

 

メイビスが、少しだけ明るい声で尋ねた。

 

イリスは考える。

 

そして、くすりと笑った。

 

「そうですね……まずは、みなさんにただいまと伝えましょうか」

 

「……はい!」

 

メイビスは、大きく頷いた。

 

「それがいいですね!」

 

青空の下。

 

二人の少女は、故郷へ続く道を歩いていく。

 

約五年間に及ぶ旅が、終わろうとしていた。

 

けれど、それは新しい物語の始まりでもある。

 

遠く離れた森には、再会を約束した友達がいる。

 

そして、これから帰る場所には、大切な仲間たちが待っている。

 

――また会う日まで。

 

その約束を胸に。

 

二人は、妖精の尻尾を目指して歩き続けた。

 

第76話 また会う日まで 完

 




【こそこそ妖精話】

~皇帝陛下のお仕事~

メイビス「……ゼレフさん」

ゼレフ「何かな?」

メイビス「皇帝って、普段はどんなお仕事をしているんですか?」

ゼレフ「……そうだね。国のことは、信頼できる人たちに任せていることが多いかな」

イリス「……それは大丈夫なんですか?」

ゼレフ「優秀な人たちだからね」

メイビス「じゃあ、ゼレフさんは普段何をしているんですか?」

ゼレフ「魔法の研究をしたり、各地を旅したり……」

イリス「…………」

メイビス「…………」

イリス「……ゼレフさん」

ゼレフ「うん?」

イリス「それ、皇帝というより自由な冒険者では?」

ゼレフ「……そうかもしれないね」

メイビス「いいですね! 私も皇帝になったら、毎日魔法の研究をします!」

イリス「メイビス。皇帝になる目的が研究なんですか?」

メイビス「もちろんです! 大きな図書館も作れますし!」

ゼレフ「……それは、いい考えだね」

イリス「ゼレフさんまで!?」

メイビス「それから、お城には大きなお菓子工房も作ります!」

ゼレフ「……お菓子工房?」

メイビス「はい! 毎日違うお菓子を研究するんです!」

ゼレフ「……なるほど。興味深いね」

イリス「……嫌な予感がします」

メイビス「ゼレフさん! 今度、アルバレス帝国のお城を見学させてください!」

ゼレフ「うん。機会があれば、案内するよ」

メイビス「やったー!」

イリス「……ゼレフさん」

ゼレフ「何かな?」

イリス「くれぐれも、皇宮をお菓子研究所にしないでくださいね?」

ゼレフ「……努力するよ」

イリス「そこは約束してください!!」

――後に、アルバレス帝国の皇宮へ届く手紙には、魔法研究の資料に混じって、お菓子のレシピが添えられるようになったとか、ならなかったとか。



ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。

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