妖精と聖剣使い   作:使い手なない

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第86話「妖精たちのお姉ちゃん」

 

 X779年。

 

 フィオーレ王国、マグノリア。

 

 妖精の尻尾。

 

「ナツ!! てめえ、また俺の飯食っただろ!!」

 

「ああ!? 名前でも書いとけよ!」

 

「書いてあっただろうが!!」

 

「知らねえよ!!」

 

 朝から、ギルドの酒場に怒鳴り声が響いていた。

 

 テーブルを挟んで睨み合う二人の少年。

 

 桜色の髪をしたナツ・ドラグニルと、黒髪のグレイ・フルバスターである。

 

「やんのか、グレイ!」

 

「上等だ、ナツ!」

 

 二人が同時に拳を振り上げた。

 

 その瞬間。

 

「二人とも、喧嘩はいけませんよ?」

 

 柔らかな声が割って入った。

 

 振り返ると、そこには黒髪の少女が立っていた。

 

 イリス・アストレア。

 

 手には、焼きたてのパンが入った籠を持っている。

 

「だってよ、イリス姉ちゃん! こいつが!」

 

「グレイの飯が美味そうだったんだよ!」

 

「食ったの認めてんじゃねえか!!」

 

「ふふっ。では、ナツにはこちらをあげますから、グレイに謝りましょうね」

 

 イリスが籠からパンを一つ取り出した。

 

「おっ! いいのか!?」

 

「はい。ただし、謝ってからですよ?」

 

「……わかったよ」

 

 ナツは渋々グレイへ向き直る。

 

「悪かったな!」

 

「……ったく。最初からそうしろよ」

 

「これで仲直りですね」

 

 イリスが微笑んだ。

 

 しかし。

 

「……ところで、グレイ」

 

「ん?」

 

「また服を脱いでいますよ?」

 

「……あ」

 

 グレイは自分の身体を見下ろした。

 

 いつの間にか上半身裸になっている。

 

「いつ脱いだんだ、俺!?」

 

「知るかよ!」

 

「ナツ! てめえ笑うな!」

 

「ハハハハッ!」

 

 結局、二人の騒ぎは収まらなかった。

 

 イリスは困ったように笑いながら、パンの籠を抱え直した。

 

「……今日も元気ですねえ」

 

◇

 

「イリスー!」

 

 今度は、元気いっぱいの声が響いた。

 

 振り返ると、金色の長い髪を揺らした少女が駆け寄ってくる。

 

 メイビス・ヴァーミリオンだった。

 

「見てください! 新しい幻影ができました!」

 

「おや。何を作ったんですか?」

 

「ふふん!」

 

 メイビスが得意げに胸を張る。

 

 そして、小さな手を掲げた。

 

 ぽんっ。

 

 軽い音と共に、空中に白いウサギが現れた。

 

「わあっ!」

 

 近くにいたリサーナが目を輝かせる。

 

「ウサギさんだ!」

 

「ふふっ。触ってみますか?」

 

「いいの!?」

 

「もちろんです!」

 

 リサーナが恐る恐る手を伸ばす。

 

 すると、ウサギはぴょんっと跳ねて、少女の腕の中へ飛び込んだ。

 

「きゃっ!」

 

 柔らかな感触。

 

 温かな体温。

 

 まるで本物のウサギだった。

 

「すごーい!」

 

「えへへ!」

 

 メイビスは嬉しそうに笑う。

 

「これでも幻影なんですよ!」

 

「本物みたい!」

 

「ありがとうございます!」

 

 その様子を見ていたエルフマンも、興味津々で近づいてきた。

 

「……俺も触っていいか?」

 

「はい!」

 

 メイビスが頷く。

 

 すると、今度は小さなクマが現れた。

 

「おおっ!」

 

 エルフマンの顔が輝く。

 

「クマだ!」

 

「ふふっ。可愛いでしょう?」

 

「うん!」

 

 そんな二人を、少し離れた場所から見つめる少女がいた。

 

 ミラジェーン・ストラウスである。

 

「……あんた、変な魔法使うのね」

 

 メイビスが振り返る。

 

「変、ですか?」

 

「だって、そんな魔法、戦いの役に立つの?」

 

「もちろん、使い方次第ですよ!」

 

「ふーん……」

 

 ミラジェーンは腕を組んだ。

 

「まあ、可愛いのは認めるけど」

 

「ふふっ。ありがとうございます!」

 

「べ、別に褒めたわけじゃないわよ!」

 

 イリスがくすくすと笑った。

 

「ミラジェーンも、触ってみますか?」

 

「……別に」

 

 そう答えながらも、ミラジェーンの視線は白いウサギに向いている。

 

 メイビスがにっこり笑った。

 

「では、もう一匹!」

 

 ぽんっ。

 

 今度は、小さな白猫が現れた。

 

「……!」

 

 ミラジェーンの目が一瞬だけ輝いた。

 

 しかし、すぐに顔を背ける。

 

「……まあ、ちょっとくらいなら」

 

 その言葉に、イリスとメイビスは顔を見合わせた。

 

 そして、二人揃って微笑んだ。

 

◇

 

 昼過ぎ。

 

 ギルドの一角では、エルザ・スカーレットが一冊の本を読んでいた。

 

 その隣に、イリスが腰を下ろす。

 

「何を読んでいるんですか?」

 

「剣術の本です」

 

「剣術、ですか?」

 

「はい」

 

 エルザは真剣な表情で頷いた。

 

「もっと強くなりたいので」

 

「……なるほど」

 

 イリスが本を覗き込む。

 

 そこには、剣の構えや足運びについての説明が書かれていた。

 

「難しそうですね」

 

「はい。でも、覚えればきっと役に立つと思います」

 

「ふふっ。そうですね」

 

 イリスは微笑んだ。

 

「ただ、本を読むだけではわからないこともありますよ」

 

「……そうなのですか?」

 

「はい。実際に身体を動かしてみると、もっと理解できると思います」

 

 エルザは少し考え込んだ。

 

 そして。

 

「……イリスさんは、剣を使ったことがありますか?」

 

「ええ。少しだけ」

 

「本当ですか?」

 

「はい」

 

 イリスが頷く。

 

「よろしければ、今度一緒に練習しましょうか?」

 

 エルザの表情が明るくなった。

 

「ぜひ、お願いします!」

 

「ふふっ。では、約束ですね」

 

 イリスが小指を差し出す。

 

 エルザは少し戸惑った後、そっと小指を絡めた。

 

「約束です」

 

「はい。約束です」

 

 その様子を、少し離れた場所からナツが見ていた。

 

「……なあ、グレイ」

 

「なんだよ」

 

「イリス姉ちゃんって、剣使えんのかな?」

 

「さあな」

 

 グレイが肩をすくめる。

 

「あんまり強そうには見えねえけど」

 

「だよな!」

 

 ナツが頷いた。

 

「エルザの方が強そうだぜ!」

 

「……お前、本人の前で言うなよ?」

 

「なんでだよ?」

 

「失礼だろ」

 

「別にいいじゃねえか!」

 

 二人は顔を見合わせた。

 

 そして。

 

「……でも、イリス姉ちゃんって怒んねえよな」

 

「まあな」

 

 グレイが頷く。

 

「いつも笑ってるし」

 

「メイビス姉ちゃんもな!」

 

「ああ」

 

 二人にとって、イリスとメイビスは優しいお姉ちゃんだった。

 

 強い魔導士という印象は、ほとんどない。

 

 それが、二人の本当の姿の一つであることも、まだ知らなかった。

 

◇

 

 夕方。

 

 ギルドの扉が勢いよく開いた。

 

「おう! 帰ったぜ!」

 

 豪快な声が響く。

 

「ギルダーツ!!」

 

 ナツが真っ先に駆け出した。

 

「おっ! ナツじゃねえか!」

 

 ギルダーツ・クライヴが笑う。

 

「元気にしてたか?」

 

「おう! なあ、今度勝負しようぜ!」

 

「ハハハッ! 相変わらずだな!」

 

 ギルダーツはナツの頭をわしゃわしゃと撫でた。

 

「もっと強くなってからな!」

 

「なんだよー!」

 

 その様子を見て、グレイも近づいてくる。

 

「また依頼帰りか?」

 

「ああ! ちょっと遠くまでな!」

 

 ギルダーツは豪快に笑った。

 

 そして、酒場の奥に視線を向ける。

 

「……お?」

 

 そこには、子供たちに囲まれたイリスとメイビスがいた。

 

「おおっ! イリスさん! メイビスさん!」

 

「お久しぶりです、ギルダーツさん」

 

 イリスが微笑む。

 

「お帰りなさい!」

 

 メイビスも手を振った。

 

「おう! 二人とも元気そうだな!」

 

「はい。おかげさまで」

 

 ギルダーツは楽しそうに笑った。

 

「しかし、すっかり子供たちに囲まれてるな!」

 

「ふふっ。毎日賑やかですよ」

 

「楽しいですよー!」

 

 メイビスが嬉しそうに答える。

 

 そんな三人の会話を聞いていたナツが、不思議そうに首を傾げた。

 

「……なあ、ギルダーツ」

 

「ん?」

 

「イリス姉ちゃんと知り合いなのか?」

 

「ああ。昔、一緒に依頼に行ったことがあるぜ」

 

「へえ!」

 

 ナツが目を輝かせる。

 

「じゃあ、イリス姉ちゃんも戦えるのか!?」

 

「……ん?」

 

 ギルダーツが目を瞬かせた。

 

「そりゃあ、もちろん――」

 

「でもよ!」

 

 ナツが言葉を遮った。

 

「イリス姉ちゃん、あんまり強そうじゃねえんだよな!」

 

 その瞬間。

 

 ギルダーツの動きが止まった。

 

「…………は?」

 

 グレイも頷く。

 

「まあ、優しいけどな」

 

「そうそう!」

 

 ナツが勢いよく頷いた。

 

「ギルダーツみたいに強そうじゃねえ!」

 

「……お前ら」

 

 ギルダーツは、ゆっくりとイリスへ視線を向けた。

 

 イリスは、いつもどおり穏やかに微笑んでいる。

 

「ふふっ。そう見えますか?」

 

「おう!」

 

 ナツが元気よく答えた。

 

 その隣で、メイビスが肩を震わせていた。

 

「……ぷっ」

 

「メイビス?」

 

「い、いえ……!」

 

 メイビスは口元を押さえる。

 

「ふふっ……あははっ!」

 

 とうとう笑い出してしまった。

 

「……メイビス姉ちゃん?」

 

 ナツが首を傾げる。

 

「何がおかしいんだ?」

 

「い、いえ! なんでもありません!」

 

 メイビスは笑いをこらえながら答えた。

 

 ギルダーツも、しばらく呆然としていたが。

 

「……ハッ」

 

 やがて、口元を吊り上げた。

 

「ハハハハハッ!!」

 

 豪快な笑い声が、ギルド中に響き渡った。

 

「おもしれえ! こいつはおもしれえぞ!」

 

「なんだよ!?」

 

 ナツが叫ぶ。

 

 ギルダーツは笑いながら、イリスへ向き直った。

 

「……なあ、イリスさん」

 

「はい?」

 

「そういや、昔の約束、覚えてるか?」

 

 イリスが目を瞬かせる。

 

 そして、すぐに微笑んだ。

 

「もちろんですよ」

 

「おっ!」

 

 ギルダーツの目が輝く。

 

「じゃあ、そろそろどうだ?」

 

「……ふふっ」

 

 イリスは少し考えた後、頷いた。

 

「いいですよ」

 

「よっしゃ!」

 

 ギルダーツが拳を握る。

 

 その様子を見ていたナツが、目を丸くした。

 

「……何の話だ?」

 

 ギルダーツは、にやりと笑った。

 

「俺とイリスさんで、ちょっと勝負しようって話だ!」

 

「…………え?」

 

 ナツが固まった。

 

 グレイも目を見開く。

 

「……勝負?」

 

「ああ!」

 

 ギルダーツが頷く。

 

「模擬戦だ!」

 

「ええええええっ!?」

 

 ナツの叫び声が、ギルド中に響いた。

 

◇

 

「ちょ、ちょっと待てよ!」

 

 ナツが慌ててイリスの前に立った。

 

「イリス姉ちゃん! ギルダーツはすっげえ強いんだぞ!?」

 

「はい。知っていますよ」

 

 イリスが微笑む。

 

「以前、一緒に依頼へ行きましたから」

 

「だったら!」

 

 ナツが両手を広げる。

 

「怪我するぞ!?」

 

「ふふっ。心配してくれるんですね」

 

「当たり前だろ!」

 

 その言葉に、イリスは嬉しそうに笑った。

 

「ありがとうございます、ナツ」

 

「……いや、だから!」

 

 そこへ、グレイも近づいてくる。

 

「俺もやめといた方がいいと思うぜ」

 

「そうでしょうか?」

 

「ギルダーツの魔法、すげえ危ねえんだぞ?」

 

「ふふっ。そうですね」

 

 イリスは穏やかに頷いた。

 

 そんな様子を見ていたエルザが、真剣な表情で口を開く。

 

「……イリスさん」

 

「はい?」

 

「本当に大丈夫なのですか?」

 

「ええ。大丈夫ですよ」

 

 イリスは微笑んだ。

 

「それに、模擬戦ですから。お互いに怪我をしないよう気をつけます」

 

 エルザは少し考え込んだ。

 

 そして、静かに頷く。

 

「……わかりました」

 

 その隣では、ミラジェーンが腕を組んでいた。

 

「……ふーん」

 

「ミラジェーン?」

 

「別に。あんたがそこまで言うなら、見ててあげるわよ」

 

「ふふっ。ありがとうございます」

 

「だから、別に心配してるわけじゃないってば!」

 

 そんなやり取りを、ギルダーツは楽しそうに眺めていた。

 

「ハハハッ! こりゃあ、当日が楽しみだ!」

 

 そのとき。

 

「……騒がしいと思ったら、何をしておる」

 

 奥から、マカロフが姿を現した。

 

「おっ! マスター!」

 

 ギルダーツが手を上げる。

 

「イリスさんと模擬戦することになったぜ!」

 

「…………ほう?」

 

 マカロフの眉が上がった。

 

 そして、イリスへ視線を向ける。

 

「……イリスねえちゃん、本当か?」

 

「はい。以前からのお約束でしたので」

 

「……そうか」

 

 マカロフは、しばらく二人を見つめていた。

 

 やがて。

 

「……ふっ」

 

 小さく笑った。

 

「面白いことになりそうじゃな」

 

「だろ!?」

 

 ギルダーツが笑う。

 

 しかし、ナツは納得していなかった。

 

「じっちゃん! 止めなくていいのかよ!?」

 

「ん?」

 

「イリス姉ちゃんが怪我しちまうぞ!」

 

「……ほう」

 

 マカロフは、ナツを見下ろした。

 

「お前は、そう思うのか?」

 

「当たり前だろ!」

 

「……ふむ」

 

 マカロフは顎髭を撫でた。

 

 そして、意味ありげに笑う。

 

「ならば、自分の目で確かめてみるといい」

 

「……え?」

 

「世の中には、見た目だけではわからんこともあるからのう」

 

 ナツは首を傾げた。

 

「……なんだよ、それ」

 

 マカロフは答えなかった。

 

 ただ、楽しそうに笑っていた。

 

◇

 

 その夜。

 

 子供たちが帰り、ギルドが静かになった頃。

 

 イリスとメイビスは、窓際の席で温かい紅茶を飲んでいた。

 

「……ふふっ」

 

 メイビスが笑う。

 

「今日は面白かったですね!」

 

「そうですね」

 

 イリスも微笑んだ。

 

「ナツたちが、あんなに心配してくれるとは思いませんでした」

 

「ふふふっ!」

 

 メイビスは楽しそうに笑った。

 

「イリスが弱いと思われているなんて!」

 

「……そんなにおかしいですか?」

 

「はい!」

 

 即答だった。

 

 イリスは少しだけ頬を膨らませる。

 

「……もう、メイビスったら」

 

「えへへ!」

 

 メイビスは嬉しそうに笑った。

 

 そして、イリスの隣へ身体を寄せる。

 

「でも、私は知っていますよ」

 

「……何をですか?」

 

「イリスが、とっても強いことも」

 

 メイビスは微笑んだ。

 

「とっても優しいことも!」

 

 イリスは目を瞬かせた。

 

 そして、柔らかく笑う。

 

「……ありがとうございます、メイビス」

 

「えへへ!」

 

 窓の外には、満天の星が広がっていた。

 

 かつて、二人が仲間たちと共に作り上げた場所。

 

 妖精の尻尾。

 

 長い年月を経て、そこには新しい家族が増えていた。

 

 喧嘩ばかりする少年たち。

 

 真面目で努力家な少女。

 

 素直になれない少女と、その優しい弟妹たち。

 

 みんな、まだ小さな妖精だった。

 

 これから、どんな魔導士へと成長していくのだろう。

 

「……メイビス」

 

「はい?」

 

「明日も、賑やかになりそうですね」

 

 メイビスは満面の笑みを浮かべた。

 

「はい!」

 

 そして、楽しそうに答える。

 

「とっても楽しみです!」

 

 その頃。

 

 ギルドの別の場所では、ギルダーツが一人、楽しそうに笑っていた。

 

「……ハハッ」

 

 思い出すのは、かつてのS級クエスト。

 

 山を覆い尽くすほどの魔法を、たった一振りで消し去った少女の姿。

 

 あのとき、自分は思い知った。

 

 世の中には、まだまだとんでもない強者がいる。

 

「……今度こそ、どこまでやれるか試してえな」

 

 ギルダーツは拳を握った。

 

 そして、にやりと笑う。

 

「楽しみにしてるぜ、イリスさん!」

 

 こうして。

 

 妖精の尻尾の新しい世代にとって、忘れられない一日が近づいていた。

 

 いつも優しく微笑んでいる、黒髪のお姉ちゃん。

 

 その本当の強さを、彼らはまだ知らない。

 




【こそこそ妖精話】
~お姉ちゃんを守れ!~

 X779年。

 妖精の尻尾、ギルド酒場。

ナツ「なあ、グレイ。やっぱりイリス姉ちゃん、危なくねえか?」

グレイ「……まあ、相手がギルダーツだからな」

エルザ「私も少し心配だ。イリスさんは優しい方だが、戦っている姿を見たことがない」

ミラジェーン「まったく。あの人、いつもニコニコしてるし、危なっかしいのよね」

リサーナ「でも、イリスお姉ちゃん、きっと何か考えてるんじゃないかな?」

ナツ「よし! 決めた!」

グレイ「……何をだよ」

ナツ「俺たちでイリス姉ちゃんを守るぞ!」

エルフマン「お、おう! 俺も手伝う!」

エルザ「……模擬戦なのだから、途中で割り込んではいけないぞ?」

ナツ「じゃあ、危なくなったら止める!」

グレイ「それならいいんじゃねえか?」

 少し離れた席。

メイビス「……ぷっ」

マカロフ「……くくっ」

メイビス「マカロフ、聞きました?」

マカロフ「……ああ。聞いとる」

メイビス「イリスを守るそうですよ!」

マカロフ「……ギルダーツの方を心配した方がよさそうじゃがな」

メイビス「ふふふっ! そうですね!」

 そこへ、イリスが焼き菓子を持ってやってきた。

イリス「皆さん、おやつができましたよ」

ナツ「イリス姉ちゃん!!」

イリス「はい?」

ナツ「安心しろ! 俺たちがついてるからな!」

イリス「……?」

グレイ「何かあったら俺たちが助けるからよ」

エルザ「どうか無理だけはしないでください」

イリス「……ふふっ」

イリス「ありがとうございます。皆さん、とっても頼もしいですね」

 その後ろで。

メイビス「……あははははっ!」

マカロフ「……ぶはっ!」

イリス「……二人とも?」

メイビス「い、いえ! なんでもありません!」

マカロフ「……くくっ。いやあ、平和じゃのう!」

 なお、この話を後から聞いたギルダーツは。

ギルダーツ「……おいおい! 俺の心配は誰もしてくれねえのか!?」

 と、盛大に笑ったという。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。
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