X782年。
フィオーレ王国、マグノリア。
妖精の尻尾。
「それでは、行ってきますね!」
「行ってきまーす!」
ギルドの入り口で、二人の少女が元気よく手を振っていた。
黒髪のハーフツインテールを揺らすイリス・アストレア。
そして、金色の長い髪をなびかせるメイビス・ヴァーミリオン。
二人は今日から、久しぶりの長期旅行へ出発するところだった。
「まったく。今度はどこへ行くつもりじゃ?」
マカロフが呆れたように尋ねる。
「ふふっ! 今回は海辺のリゾートです!」
メイビスが嬉しそうに答えた。
「それから温泉にも行きたいですね!」
「メイビス、予定を詰め込みすぎですよ」
「大丈夫です! 時間はたっぷりありますから!」
イリスは苦笑する。
かつて二人は、古代魔法の研究や異世界への手掛かりを求めて、世界各地を旅してきた。
けれど、今回は違う。
難しい研究も、危険な冒険もない。
ただ二人で、美しい景色を眺め、美味しいものを食べ、のんびり過ごす。
そんな休暇だった。
「いいなー! 俺も行きてえ!」
ナツが羨ましそうに叫ぶ。
「ナツは依頼があるだろう」
エルザが呆れたように答えた。
「ちぇっ!」
「イリスさん、メイビスさん。楽しんできてくださいね!」
リサーナが笑顔で手を振る。
「はい! リサーナさんも元気で!」
「お土産、楽しみにしていてくださいね!」
「うん!」
その隣では、ミラジェーンが腕を組んでいた。
「メイビスさん。あんまりイリスさんを振り回しちゃ駄目よ?」
「ええっ!? 私、そんなことしませんよ!」
「……本当かしら?」
「ミラちゃんまで!」
周囲から笑い声が上がった。
イリスも楽しそうに微笑む。
「ふふっ。それでは、行ってきます」
二人は並んで歩き出した。
やがて、街外れでメイビスが空間魔法を発動する。
光が揺らめき、二人の姿が消えた。
このとき。
二人はまだ知らなかった。
帰ってきたとき、大切な家族の一人がいなくなっていることを。
◇
数週間後。
フィオーレ王国のとある町。
郊外の森。
「エルフ兄ちゃん、無理しないでね!」
リサーナが声をかけた。
「おう! 任せとけ!」
エルフマンが力強く頷く。
今回の依頼は、森に現れた危険な魔物の討伐。
ミラジェーン、エルフマン、リサーナの三人で受けた仕事だった。
「さっさと終わらせるわよ!」
ミラジェーンが不敵に笑う。
「姉ちゃん、俺だってやれるところを見せてやる!」
「ふふっ。期待してるわよ!」
そのとき。
森の奥から、巨大な魔物が現れた。
獣のような四肢。
鋭い牙。
禍々しい魔力。
「……こいつか!」
エルフマンが拳を握る。
そして。
「接収!」
魔力が身体を包んだ。
魔物の力を取り込もうとする。
しかし。
「……っ!?」
異変が起きた。
エルフマンの身体から、凄まじい魔力が噴き出したのだ。
「エルフマン!?」
ミラジェーンが叫ぶ。
「ぐ……あああああっ!!」
身体が巨大化していく。
腕が異形へと変わり、全身が魔物の姿へと変貌した。
「エルフ兄ちゃん!?」
リサーナが悲鳴を上げる。
エルフマンの瞳から、理性の光が消えていた。
「グオオオオオッ!!」
咆哮。
巨大な腕が振り回される。
「エルフマン! しっかりしなさい!!」
ミラジェーンが叫ぶ。
だが、声は届かない。
暴走したエルフマンは、目の前のものを見境なく破壊し始めた。
「くっ……!」
ミラジェーンが接収魔法を発動しようとする。
しかし、その前に。
「エルフ兄ちゃん!!」
リサーナが駆け出していた。
「やめて! 私だよ!」
巨大な魔物が振り返る。
「リサーナ! 近づいちゃ駄目!!」
ミラジェーンの叫び。
次の瞬間。
巨大な腕が振り下ろされた。
「――っ!!」
激しい衝撃。
土煙が舞い上がった。
「リサーナァァァッ!!」
ミラジェーンの絶叫が森に響いた。
やがて、土煙が晴れる。
そこに。
リサーナの姿はなかった。
残されていたのは、荒れ果てた地面だけ。
「……え?」
ミラジェーンが呆然と呟く。
「……リサーナ?」
返事はない。
「……嘘、でしょ?」
震える声。
「リサーナ……?」
どれほど名前を呼んでも。
妹の声が返ってくることはなかった。
◇
数日後。
妖精の尻尾。
いつもなら賑やかなギルドが、静まり返っていた。
ミラジェーンは、窓際の椅子に座っていた。
俯いたまま、何も話さない。
エルフマンも、壁際で膝を抱えている。
仲間たちは何度も森を捜索した。
けれど。
リサーナは見つからなかった。
その日。
「ただいま戻りました!」
「みなさーん! お土産ですよー!」
明るい声とともに、イリスとメイビスが帰ってきた。
しかし。
「……あれ?」
メイビスが首を傾げる。
「皆さん、どうしたんですか?」
イリスも周囲を見回した。
普段なら真っ先に駆け寄ってくる子供たち。
騒がしいナツとグレイ。
笑顔で迎えてくれる仲間たち。
その誰もが、沈んだ表情をしていた。
「……マカロフさん?」
イリスが静かに尋ねる。
マカロフは、深く息を吐いた。
「……リサーナが、死んだと思われておる」
「…………え?」
メイビスの笑顔が消えた。
◇
事情を聞き終えた二人は、しばらく言葉を失っていた。
「……そう、だったんですね」
イリスが小さく呟く。
メイビスは俯いていた。
出発する日のことを思い出す。
笑顔で手を振っていたリサーナ。
お土産を楽しみにしていた、あの少女。
「……リサーナちゃん……」
その声は、微かに震えていた。
やがて、メイビスが顔を上げる。
「……マカロフ」
「なんじゃ?」
「リサーナちゃんの身体は、見つかったんですか?」
「……いや」
マカロフが首を横に振る。
「何度も探した。じゃが、見つからんかった」
「…………」
イリスが静かに尋ねた。
「魔力の痕跡は?」
「調べたが、手掛かりになるものはなかった」
二人は顔を見合わせる。
遺体が見つかっていない。
それだけで、生存を断定することはできない。
しかし。
死亡したと確信できる証拠も、存在していなかった。
「……そうですか」
メイビスは、それ以上何も言わなかった。
今、根拠のない希望を口にするべきではない。
そう理解していたからだ。
◇
夕暮れ。
ギルドの一室。
ミラジェーンは、一人で椅子に座っていた。
「……ミラちゃん」
静かな声が聞こえた。
顔を上げると、メイビスが立っていた。
「……メイビスさん」
「隣、いいですか?」
「……ええ」
メイビスは隣に腰を下ろした。
しばらく、二人とも何も話さなかった。
やがて。
「……あたしね」
ミラジェーンが口を開いた。
「守れなかったの」
「…………」
「お姉ちゃんなのに……S級魔導士なのに……」
声が震える。
「リサーナを……守れなかった……!」
メイビスは何も言わず、ミラジェーンの手を握った。
「……あたし、もっと強かったら……!」
涙が頬を伝う。
「もっと早く、止められていたら……!」
「……ミラちゃん」
メイビスが優しく名前を呼ぶ。
「今は、泣いてもいいんですよ」
「……っ!」
「無理に強くならなくてもいいんです」
その言葉に。
ミラジェーンの表情が崩れた。
「……う、ううっ……!」
メイビスの肩に顔を埋める。
「リサーナ……っ!」
メイビスは、ただ静かに抱きしめた。
かつて、自分も大切な人を失った。
あの痛みを、忘れたことはない。
だからこそ。
今は、何も言わずにそばにいた。
◇
一方。
ギルドの裏庭。
エルフマンは、一人で地面を見つめていた。
「……俺が」
低い声。
「俺が……リサーナを……」
「エルフマンさん」
柔らかな声が聞こえた。
イリスだった。
「……イリスさん」
エルフマンは顔を上げない。
「……俺が、殺しちまったんだ」
「…………」
「俺が、あんな魔法を使わなければ……!」
拳が震える。
「俺が……!」
イリスは、隣に腰を下ろした。
「……エルフマンさん」
「……はい」
「私は、あの場にいませんでした」
静かな声。
「だから、何が正しかったのか、簡単に答えることはできません」
「…………」
「でも、一つだけ言わせてください」
イリスは、エルフマンを見つめた。
「あなたは、私たちの大切な家族です」
「……っ!」
「それは、何があっても変わりません」
エルフマンの目から、涙がこぼれた。
「……俺……!」
「はい」
「……リサーナに……謝りたい……!」
「……そうですね」
イリスは静かに頷く。
そして、彼の背中を優しく撫でた。
夕暮れの裏庭に、押し殺していた泣き声が響いた。
◇
その夜。
ギルドの屋根の上。
イリスとメイビスは、並んで星空を眺めていた。
「……イリス」
「はい」
「どう思いますか?」
何について尋ねているのか、説明する必要はなかった。
「……わかりません」
イリスは静かに答える。
「ただ、遺体が見つかっていないというのは、気になります」
「……私もです」
メイビスが頷く。
「でも、今は何もわかりませんね」
「はい」
夜風が二人の髪を揺らした。
「……いつか、何かわかる日が来るのでしょうか」
「……そうだといいですね」
イリスは、そっとメイビスの手を握った。
二人は、それ以上何も言わなかった。
◇
X783年。
季節は巡った。
妖精の尻尾にも、少しずつ日常が戻ってきていた。
「ナツ!! またグレイと喧嘩してるの!?」
「こいつが先にやったんだよ!」
「てめえだろうが!」
「二人とも、いい加減にしなさい!」
エルザの怒声が響く。
「「すみませんでした!!」」
いつもの光景だった。
そして、カウンターの向こうでは。
「ふふっ。今日も元気ね、みんな」
ミラジェーンが穏やかに微笑んでいた。
かつての勝ち気で好戦的な少女とは、ずいぶん雰囲気が変わっていた。
もちろん、悲しみが消えたわけではない。
リサーナのことを忘れた日など、一日もなかった。
それでも。
仲間たちと過ごす時間の中で、少しずつ笑えるようになっていた。
「ミラちゃん!」
メイビスがカウンターへ駆け寄る。
「今日のケーキは何ですか!?」
「ふふっ。苺のショートケーキよ」
「やったー!」
ミラジェーンが笑う。
「メイビスさん、本当に甘いものが好きね」
「はい!」
その様子を、イリスが嬉しそうに眺めていた。
◇
それから、しばらく後。
フィオーレ王国南部。
青く澄んだ海が広がる、美しいリゾート地。
「イリス! 見てください!」
メイビスが砂浜を駆けていた。
「海がとっても綺麗です!」
「ふふっ。そうですね!」
イリスも笑顔で答える。
二人は再び、リゾート巡りの旅を楽しんでいた。
海辺を散歩し、名物料理を味わい、可愛らしい雑貨を眺める。
何気ない時間。
けれど、二人にとっては何より大切な時間だった。
そんなある日のこと。
「……あの!」
突然、見知らぬ男性に声をかけられた。
「はい?」
イリスが振り返る。
男性は、彼女の顔を見た瞬間、息を呑んだ。
「……やっぱり!」
「……?」
「失礼ですが、あなたは魔導士の方ですか!?」
「はい。そうですが……」
「私は週刊ソーサラーの編集部の者です!」
「……週刊ソーサラー?」
メイビスが目を輝かせた。
「魔導士の雑誌ですよね!」
「はい!」
男性は興奮した様子で続ける。
「実は今度、魔導士の方をモデルにした特集を企画していまして……!」
そして、イリスを見つめる。
「ぜひ! あなたにモデルをお願いしたいんです!」
「…………え?」
イリスが固まった。
◇
「グラビア撮影、ですか?」
「はい!」
編集者は力強く頷いた。
「その黒髪! 青と金の瞳! そして何より、その美しさ!」
「……あ、ありがとうございます」
「これほど魅力的な方は、なかなかいません!」
イリスは少し頬を赤らめた。
「ですが、私、そういう経験は……」
「イリス!!」
突然、メイビスが両手を握ってきた。
「やりましょう!!」
「メ、メイビス!?」
「絶対に似合います!」
「で、ですが……!」
「私も衣装選びを手伝いますから!」
目を輝かせるメイビス。
イリスは困ったように微笑んだ。
「……本当に、私でいいのでしょうか?」
「もちろんです!!」
編集者とメイビスの声が重なった。
「……ふふっ」
イリスは思わず笑ってしまった。
「それでは……よろしくお願いします」
「ありがとうございます!!」
こうして。
後に週刊ソーサラーの歴史を変えることになる撮影が、決まったのだった。
◇
撮影当日。
青い海を背景に、イリスが立っていた。
白と濃紺を基調とした、上品で可愛らしい水着。
金色の小さな星飾りが、陽光を受けて輝いている。
黒髪のハーフツインテールが、潮風に揺れた。
青と金のオッドアイが、澄んだ海の光を映している。
「……す、すごい……!」
カメラマンが呟いた。
「本当に……絵になる……!」
編集者も言葉を失っていた。
「イリスー!!」
少し離れた場所から、メイビスが手を振る。
「とっても可愛いですよー!!」
「メイビス! そんなに大きな声で言わないでください!」
「だって、本当のことですから!」
「もう……!」
イリスが照れたように笑う。
その瞬間。
「……今だ!」
カメラマンがシャッターを切った。
自然な笑顔。
海風に揺れる黒髪。
陽光に輝く二色の瞳。
それは、狙って作れるものではない、あまりにも魅力的な一枚だった。
「……決まった」
編集者が呟く。
「今回の表紙は……これだ!」
◇
数週間後。
週刊ソーサラー編集部。
「編集長ぉぉぉ!!」
「なんだ!? 騒がしいぞ!」
「売り切れです!!」
「……何?」
「今週号が! 各地で完売しています!!」
「…………は?」
編集長が目を瞬かせた。
「まだ発売したばかりだろう!?」
「そうなんです!!」
別の編集者が駆け込んでくる。
「増刷の問い合わせが殺到しています!」
「読者からの手紙も山のように!」
「書店から追加注文が止まりません!!」
編集長は、机の上に置かれた雑誌を見つめた。
表紙には、海辺で微笑む黒髪の美少女。
大きな見出し。
『妖精の尻尾の奇跡の美少女! イリス・アストレア特集!』
「……まさか」
編集長が呟く。
「こんなことになるとは……!」
週刊ソーサラー創刊以来、初めての爆発的な大ヒット。
増刷しても、増刷しても、注文が追いつかない。
読者たちは、その神秘的な美少女に夢中になっていた。
こうして。
イリス・アストレアは、魔導士としての実力ではなく、その圧倒的な美貌によって、フィオーレ中に名を知られることになった。
◇
数日後。
妖精の尻尾。
「おおおおおっ!!」
ナツの声が響き渡った。
「イリスねえちゃんが雑誌に載ってるぞ!!」
「今さらかよ!」
グレイが呆れる。
「街中で売り切れになってるらしいぜ!」
「そんなに!?」
エルフマンも驚いていた。
エルザは雑誌の表紙を見つめる。
「……さすがイリスさんだ」
真剣な顔で頷いた。
「とても美しい」
「ふふっ。本当ね」
ミラジェーンも笑う。
「でも、ここまで売れるなんて驚いたわ」
そのとき。
「ふふーん!!」
メイビスが得意げに胸を張った。
目の前には、何冊もの週刊ソーサラーが積み上げられている。
「当然です!!」
「……メイビス?」
イリスが嫌な予感を覚えた。
しかし、もう遅い。
「私のイリスですから!!」
「メイビス!!」
ギルド中に笑い声が響き渡った。
「いやー、すげえな!」
ナツが雑誌を眺める。
「イリスねえちゃん、こんなに有名になっちまったのか!」
「……私も驚いています」
イリスは困ったように笑う。
「まさか、こんなことになるなんて……」
「ふふっ!」
メイビスは嬉しそうだった。
「次は写真集ですね!」
「ま、待ってください!」
「きっと大人気ですよ!」
「メイビスー!!」
再び、笑い声が上がる。
カウンターの向こうで、ミラジェーンも楽しそうに微笑んでいた。
あの日から、すべてが元どおりになったわけではない。
けれど。
こうして笑い合える時間が、確かに戻ってきていた。
◇
X784年。
フィオーレ王国、マグノリア。
妖精の尻尾。
「ナツ! 今度は何の依頼に行くんだ?」
グレイが尋ねた。
「依頼じゃねえ!」
ナツが勢いよく答える。
「ハルジオンに火竜がいるって噂を聞いたんだ!」
「火竜?」
「ああ!」
ナツの瞳が輝く。
「もしかしたら、イグニールかもしれねえ!」
「そう簡単に見つかるとは思えんが……」
エルザが腕を組む。
「うるせえ! 行ってみなきゃわかんねえだろ!」
「そうだね、ナツ!」
ハッピーが元気よく答えた。
「よーし! 行くぞ、ハッピー!」
「あいさー!」
二人は勢いよくギルドを飛び出した。
「まったく、騒がしい奴らだ」
グレイが呆れる。
カウンターでは、ミラジェーンが微笑んでいた。
「ふふっ。いつものことじゃない」
「……そうだな」
エルザも小さく笑った。
一方、その頃。
遠く離れた美しい海辺のリゾート地。
「イリス! 次はあのお店に行きましょう!」
「ふふっ。メイビス、少し休憩しませんか?」
「ええーっ! まだまだ元気ですよ!」
「私は少しお茶が飲みたいです」
「……それなら、ケーキも食べましょう!」
「結局、お菓子が目的ではありませんか?」
「ふふっ! ばれちゃいました!」
二人の楽しそうな笑い声が、潮風に乗って響いていた。
長い年月を共に歩んできた二人。
数え切れないほどの出会いと別れ。
喜びも、悲しみも。
すべてを抱えながら、それでも二人は笑っていた。
そして。
彼女たちがまだ知らないところで。
一人の金髪の少女が、妖精の尻尾に憧れ、ハルジオンの街を訪れようとしていた。
その名は――ルーシィ・ハートフィリア。
新しい妖精の物語が、今、始まろうとしていた。
【こそこそ妖精話】
~次の伝説は誰?~
X783年。
妖精の尻尾。
メイビス「イリス! 大変です!!」
イリス「どうしたんですか、メイビス?」
メイビス「週刊ソーサラーから第二弾の撮影依頼が来ました!」
イリス「……またですか?」
メイビス「しかも、今度は特別写真集も作りたいそうですよ!」
イリス「しゃ、写真集!?」
メイビス「ふふっ! もちろん私は大賛成です!」
イリス「……そうだ!」
メイビス「?」
イリス「私より、もっと撮影に向いている方がいますよ!」
メイビス「ええっ!? 誰ですか!?」
イリス「ミラジェーンさんです!」
ミラジェーン「……え?」
カウンターにいたミラジェーンが、きょとんとした顔をする。
イリス「ミラジェーンさんはとても綺麗ですし、笑顔も素敵ですから!」
ミラジェーン「あら……ふふっ。ありがとう、イリスさん」
イリス「それに、たまには普段と違うことをしてみるのも楽しいと思うんです」
イリスが優しく微笑む。
その言葉に、ミラジェーンは少しだけ目を丸くした。
ミラジェーン「……そうね。たまには、そういうのもいいかもしれないわね」
メイビス「なるほど! ミラちゃんのグラビアですか!」
イリス「はい!」
メイビス「……絶対に可愛いです!!」
ミラジェーン「ふふっ。二人とも褒めすぎよ♪」
◇
数日後。
週刊ソーサラー編集部。
編集者「編集長! イリスさんからお返事が届きました!」
編集長「おおっ! 第二弾を引き受けてくれるのか!?」
編集者「いえ、今回は辞退されるそうです!」
編集長「な、なんだとぉぉぉ!?」
編集者「ですが、代わりに同じギルドのミラジェーン・ストラウスさんを推薦されています!」
編集長「……ミラジェーン?」
編集者「こちらが写真です!」
編集長「…………」
編集者「編集長?」
編集長「……採用だ」
編集者「早っ!?」
編集長「すぐに撮影依頼を出せ!!」
◇
後日。
ミラジェーン「イリスさーん♪」
イリス「はい?」
ミラジェーン「週刊ソーサラーから正式に撮影依頼が来たわ!」
イリス「ふふっ! よかったですね!」
ミラジェーン「ええ! せっかくだから挑戦してみることにしたの!」
メイビス「わあっ! 楽しみです!」
ミラジェーン「……それにね」
ミラジェーンが、柔らかく微笑む。
ミラジェーン「新しいことに挑戦するのも、悪くないと思ったの。ありがとう、イリスさん」
イリス「……ふふっ。どういたしまして」
メイビス「私、絶対に買いますね!」
ミラジェーン「あら、嬉しい♪」
メイビス「もちろん、保存用も買います!」
イリス「……また何十冊も買うつもりですか?」
メイビス「当然です!」
ミラジェーン「ふふっ。でもね、イリスさん?」
イリス「はい?」
ミラジェーン「編集部の人が、いつか私たち二人で撮影してほしいって♪」
イリス「…………え?」
メイビス「それです!!」
イリス「メイビス!?」
メイビス「イリスとミラちゃんの夢の共演です!!」
ミラジェーン「ふふっ。面白そうね♪」
イリス「ちょ、ちょっと待ってください!」
メイビス「次は二人で水着ですね!」
イリス「話が進むのが早すぎます!!」
こうして。
イリスの推薦をきっかけに、ミラジェーンは新たな一歩を踏み出した。
そして、後に週刊ソーサラーの人気モデルとなる少女の物語が、静かに始まったのだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。