X784年。
フィオーレ王国、マグノリア。
魔導士ギルド、妖精の尻尾。
「ただいま戻りました!」
「ただいまですー!」
ギルドの扉が開き、二人の少女が姿を現した。
黒髪のハーフツインテールを揺らす、青と金のオッドアイの美少女。
イリス・アストレア。
そして、長い金髪をなびかせる、緑色の瞳の少女。
メイビス・ヴァーミリオン。
二人は長いリゾート旅行を終え、久しぶりにギルドへ帰ってきたところだった。
「おっ! イリスねえちゃん!」
「メイビスも帰ってきたのか!」
ナツとグレイが真っ先に声を上げる。
「おかえりなさい、二人とも!」
カウンターの向こうから、ミラジェーンが笑顔で迎えた。
「ふふっ。ただいま、ミラちゃん」
「お土産もたくさん買ってきましたよ!」
メイビスが嬉しそうに紙袋を掲げる。
「おおっ! 食い物か!?」
「ナツさん、食べ物だけではありませんよ?」
「えーっ!」
「でも、お菓子はあります!」
「よっしゃあ!」
相変わらずの騒がしさに、イリスは楽しそうに微笑んだ。
やっぱり、ここは落ち着く。
そんなことを考えていた、そのときだった。
「……あれ?」
見慣れない金髪の少女が、こちらを見つめていた。
腰には鍵束。
まだ新しいギルドマーク。
どうやら、二人の留守中に新しい仲間が増えたらしい。
「ミラちゃん、そちらの方は?」
「あら、そうだったわね!」
ミラジェーンが嬉しそうに手を合わせる。
「紹介するわ。昨日入ったばかりの新しい仲間、ルーシィよ!」
「ルーシィ・ハートフィリアです! よろしくお願いします!」
少女が元気よく頭を下げた。
「ふふっ。私はイリス・アストレアです。よろしくお願いしますね、ルーシィさん」
「私はメイビスです! よろしくお願いします!」
「はい! よろしく……」
そこで。
ルーシィの動きが止まった。
「…………え?」
彼女の視線が、イリスの顔に釘付けになる。
「……あれ?」
「どうかしましたか?」
「……その黒髪……」
「はい?」
「青と金の瞳……」
「……?」
ルーシィの目が、みるみる大きくなっていく。
「ま、まさか……!」
そして。
「えええええええっ!?」
ギルド中に絶叫が響き渡った。
「イリス・アストレアって、あの週刊ソーサラーのイリス・アストレア!?」
「……はい?」
「創刊以来初の大ヒットを記録した、伝説のグラビアの!?」
「あ、ああ……」
イリスは少し困ったように笑った。
「そちらのことでしたか……」
「そちらのことでしたか、じゃないですよ!!」
ルーシィが勢いよく詰め寄る。
「あの特集、すっごく話題になったんですよ!? どこの本屋に行っても売り切れで!」
「そ、そうだったんですね……」
「しかも、実物の方が綺麗ってどういうこと!?」
「ええっ!?」
イリスが思わず頬を赤らめる。
すると。
「ふふーん!」
隣でメイビスが得意げに胸を張った。
「当然です!」
「……?」
「私のイリスですから!!」
「メイビス!?」
ルーシィは二人を交互に見つめた。
「……あれ? もしかして、姉妹なんですか?」
「え?」
イリスが瞬きをする。
「こっちの子が妹さん?」
「妹じゃありません!!」
メイビスが即座に反論した。
「私の方がお姉さんです!」
「…………え?」
ルーシィが固まる。
イリスは口元に手を当てた。
「ふふっ。メイビス、それは少し無理がありませんか?」
「イリスまで!?」
周囲から笑い声が上がった。
「……な、なんなの、この二人……」
ルーシィは早くも困惑していた。
◇
「それでは、せっかくですから皆さんをご紹介しましょうか」
イリスが微笑んだ。
「えっ、いいんですか!?」
「もちろんです。これから同じギルドの仲間ですから」
「私も案内します!」
メイビスも元気よく手を挙げる。
こうして、二人によるギルド紹介が始まった。
「まず、こちらがナツさんです」
「おう! よろしくな、ルーシィ!」
「いや、ナツはもう知ってますよ!」
ルーシィが即座に突っ込む。
「私をここに連れてきてくれたの、ナツですから!」
「あら、そうだったんですね」
「俺が連れてきたんだぜ!」
ナツが得意げに笑う。
「そして、こちらがグレイさんです」
「よろしくな」
「よろしくお願いします!」
ルーシィが頭を下げた、その瞬間。
「……って、なんで服脱いでるの!?」
「……あ?」
グレイが自分の身体を見下ろす。
「うおっ!? いつの間に!?」
「自分で脱いだんでしょ!?」
イリスは慣れた様子で微笑んでいた。
「グレイさんは、少し服を脱ぐ癖がありまして」
「少しどころじゃないですよ!?」
「ふふっ。元気ですねー!」
メイビスは楽しそうだった。
「それから、こちらがエルフマンさんです」
「おう!」
筋骨隆々の青年が立ち上がる。
「俺はエルフマン! 漢だ!」
「……はい?」
「漢なら、何事にも全力だ!!」
「……えっと」
「漢とはな!!」
「ちょ、ちょっと待ってください!?」
突然始まった熱弁に、ルーシィが後ずさる。
「ふふっ。エルフマンさんは、とても家族思いの優しい方なんですよ」
イリスが穏やかに付け加える。
「……イリスさん」
エルフマンが少し照れたように頭を掻いた。
「そ、そういうことを言われると、なんか……」
「ふふっ。本当のことですから」
その様子を見て、ルーシィも小さく笑った。
見た目は少し怖いけれど、悪い人ではなさそうだ。
「それから、今は依頼で出かけていますけれど、エルザさんという方もいるんですよ」
「エルザさん?」
「はい。とても頼りになる剣士さんです」
イリスが嬉しそうに微笑む。
「剣の腕も素晴らしいんですよ」
「へえー! イリスさんと同じ剣士なんですね!」
「ふふっ。そうですね」
メイビスも頷く。
「エルザさんは、とってもしっかり者なんです!」
「そうなんですか!」
ルーシィはまだ知らなかった。
その名前の持ち主が、ギルドの仲間たちからどれほど恐れられているのかを。
◇
「それから、こちらがギルドマスターのマカロフさんです」
「おお、ルーシィか」
小柄な老人が椅子に座っていた。
「改めてよろしくのう」
「はい! よろしくお願いします!」
「ふむ。元気があってよろしい!」
マカロフが満足そうに頷く。
すると、メイビスがひょいと顔を覗かせた。
「マカロフ! お土産ですよ!」
「おお、そうかそうか」
「今回は温泉饅頭です!」
「……また菓子か」
「美味しいんですよ!」
「お主が食べたいだけじゃろうが!」
「えへへ!」
ルーシィは目を瞬かせた。
「……あの」
「なんじゃ?」
「メイビスさんって、マスターとすごく仲がいいんですね」
「うむ。まあ、昔からの付き合いじゃからな」
「昔から……?」
ルーシィがメイビスを見る。
どう見ても、自分より幼い少女にしか見えない。
「……メイビスさんって、何歳なんですか?」
「ふふっ!」
メイビスが笑顔になった。
「女の子に年齢を聞くのは失礼ですよ!」
「えええっ!?」
イリスは楽しそうに笑っていた。
◇
紹介を終えた三人がカウンターへ戻ると、ミラジェーンがお茶を用意してくれていた。
「お疲れさま。どうだった、ルーシィ?」
「……すごいギルドですね」
ルーシィがしみじみと呟く。
「ふふっ。そうでしょう?」
イリスが微笑む。
「でも、まだ紹介していない方もたくさんいるんですよ」
「えっ、まだいるんですか!?」
「はい。今は依頼で出かけている方もいますから」
「ギルダーツさんなんて、なかなか帰ってきませんしね!」
メイビスが笑う。
「ギルダーツ?」
「とっても強い魔導士さんですよ!」
「へえ……!」
ルーシィは感心した。
そのとき。
「……あっ!」
彼女がミラジェーンを見つめる。
「そういえば、ミラジェーンさんも週刊ソーサラーのモデルですよね!」
「ふふっ。そうよ」
「私、見たことあります!」
「ありがとう」
ミラジェーンが嬉しそうに笑う。
「実はね、私がモデルを始めたのはイリスさんのおかげなの」
「えっ!?」
「イリスさんが編集部の方に推薦してくれたのよ」
「そうだったんですか!?」
ルーシィがイリスを見る。
「ふふっ。ミラちゃんはとても綺麗ですから」
「もう、イリスさんったら」
ミラジェーンが少し照れたように笑った。
「それに、ミラちゃんの笑顔は素敵ですからね」
「……ありがとう、イリスさん」
二人は顔を見合わせて微笑んだ。
その光景に、ルーシィは何となく胸が温かくなった。
◇
ところが。
「おい、グレイ!!」
「ああ!? なんだよ、ナツ!」
突然、ギルドの反対側から怒鳴り声が響いた。
「さっきから何見てんだよ!」
「別にてめえなんか見てねえよ!」
「やんのか!?」
「上等だ!」
次の瞬間。
ドゴォン!!
テーブルが吹き飛んだ。
「きゃあああっ!?」
ルーシィが悲鳴を上げる。
「ちょっと!? 何してるのよ!?」
「おおっ! 始まった!」
「今日も元気だな!」
周囲の魔導士たちまで騒ぎ始める。
「……え?」
ルーシィが固まる。
「なんで誰も止めないの!?」
「ふふっ。いつものことですよ」
イリスは優雅にお茶を飲んでいた。
「今日も賑やかですねー!」
メイビスはケーキを頬張っている。
「賑やかってレベルじゃないですよ!?」
そのとき。
「やかましいわい!!」
マカロフの怒声が響き渡った。
次の瞬間、巨大化した拳がナツとグレイの頭上に振り下ろされる。
ゴンッ!!
「「いってえええっ!!」」
「少しは静かにできんのか、お主らは!!」
「「すみませんでした!!」」
ルーシィは呆然とした。
「……すごい」
「ふふっ。マカロフさんも大変ですね」
イリスが満足そうに頷く。
「いや、イリスさんも止めてくださいよ!?」
「え?」
「え、じゃなくて!!」
メイビスが楽しそうに笑った。
「あははっ! ルーシィちゃん、面白いですね!」
「私が変なの!?」
ギルド中に笑い声が響き渡った。
◇
そんな賑やかな時間が流れていた、そのときだった。
バタン!!
ギルドの扉が勢いよく開いた。
「マスター!!」
幼い男の子が駆け込んでくる。
「……ロメオ?」
マカロフが振り返った。
「父ちゃんは!? 父ちゃん、まだ帰ってこないの!?」
少年の声は震えていた。
先ほどまでの騒がしさが、少しずつ静まっていく。
「マカオは、まだ依頼から戻っておらん」
「……もう一週間だよ!」
ロメオが叫ぶ。
「父ちゃん、ハコベ山に行ったまま帰ってこないんだ!」
「…………」
「何かあったんじゃないの!?」
マカロフは難しい顔をした。
そのとき。
「ロメオ君」
柔らかな声が聞こえた。
イリスだった。
「……イリスねえちゃん」
「マカオさんが心配なんですね」
「……うん」
ロメオが俯く。
「父ちゃん、いつもはちゃんと帰ってくるのに……」
小さな拳が震えていた。
「……俺、心配で……!」
イリスは膝を折り、少年と目線を合わせた。
「そうですよね」
優しく頷く。
「大切な家族ですものね」
「……うん」
イリスは、そっとロメオの頭を撫でた。
その様子を、ナツが黙って見つめていた。
「……ったく」
やがて、ナツが立ち上がる。
「ナツ?」
ルーシィが振り返った。
「ハッピー!」
「あい!」
「行くぞ!」
「えっ!? どこに!?」
「決まってんだろ!」
ナツがにっと笑う。
「マカオのおっさん、迎えに行ってくる!」
「……ナツ!」
ロメオが顔を上げた。
「ほんと!?」
「おう! 任せとけ!」
ナツは拳を突き出した。
「絶対連れて帰ってくるからよ!」
「……っ!」
ロメオの瞳に、涙が浮かぶ。
「ありがとう……!」
その光景を、イリスは嬉しそうに見つめていた。
「ふふっ。ナツさんらしいですね」
「ですね!」
メイビスも微笑む。
すると、ルーシィが慌てて立ち上がった。
「ちょ、ちょっと! 私も行くわよ!」
「あ? なんでだ?」
「なんでって……!」
ルーシィはロメオを見た。
父親の帰りを待つ、小さな男の子。
「……放っておけないでしょ!」
ナツが笑った。
「へへっ! じゃあ行くぞ!」
「あいさー!」
三人は勢いよくギルドを飛び出していった。
◇
「……イリスねえちゃん」
ロメオが小さく呟いた。
「……父ちゃん、帰ってくるかな」
イリスは少年の隣に腰を下ろした。
「……心配ですよね」
「……うん」
「でも、ナツさんたちが迎えに行ってくれました」
イリスは優しく微笑む。
「きっと、力になってくれますよ」
「……うん!」
ロメオが小さく頷いた。
メイビスも隣に座る。
「それじゃあ、帰ってくるまで一緒に待ちましょう!」
「……いいの?」
「もちろんです!」
メイビスが元気よく答える。
「お菓子もありますよ!」
「……ふふっ」
ロメオが少しだけ笑った。
イリスも微笑む。
誰かの帰りを待つ時間。
その不安を、二人はよく知っていた。
だからこそ。
今は、この少年のそばにいようと思った。
◇
それから、しばらく後。
「ただいまー!!」
ギルドの扉が開いた。
「……っ!」
ロメオが勢いよく立ち上がる。
そこには。
ナツとハッピー。
ルーシィ。
そして、傷だらけになりながらも、自分の足で立っている一人の男がいた。
「……父ちゃん?」
ロメオが呟く。
「……ロメオ」
マカオが申し訳なさそうに笑った。
「心配かけちまったな」
「……っ!!」
次の瞬間。
「父ちゃあああん!!」
ロメオが駆け出した。
マカオの胸に飛び込む。
「ばか!! ばか父ちゃん!!」
「お、おいおい……!」
「ずっと……ずっと心配してたんだぞ!!」
マカオは息子を強く抱きしめた。
「……悪かった」
「……っ!」
「もう大丈夫だ」
ロメオは父親の胸に顔を埋め、声を上げて泣いた。
ギルドの仲間たちは、静かにその光景を見守っていた。
「……よかったですね」
イリスが小さく呟く。
「……はい」
メイビスも微笑んだ。
カウンターの向こうでは、ミラジェーンが目元をそっと拭っていた。
失われた家族がいる。
もう二度と会えないと思っている、大切な人がいる。
だからこそ。
こうして誰かが無事に帰ってくることが、何より嬉しかった。
「……おかえりなさい、マカオさん」
イリスが微笑む。
「ああ。ただいま、イリス」
マカオが笑った。
「ナツたちにも助けられちまったよ」
「ふふっ。頼もしいですね」
「まったくだ!」
ナツが得意げに胸を張る。
「へへっ! 俺に任せりゃ楽勝だぜ!」
「途中で乗り物酔いしてたくせに!」
ルーシィが突っ込む。
「うるせえ!」
「あい! ナツは乗り物に弱いからね!」
「ハッピーまで言うな!!」
再び、ギルドに笑い声が響いた。
◇
夕方。
「よーし!!」
マカロフが大きな声を上げた。
「今日は新しい仲間の歓迎じゃ!!」
「おおおおおっ!!」
ギルド中から歓声が上がる。
「ルーシィの歓迎会だー!!」
ナツが叫んだ。
「ええっ!? 私の!?」
「当然じゃろう!」
マカロフが笑う。
「新しい家族が増えたんじゃからな!」
テーブルには料理が並び、飲み物が配られる。
ロメオもマカオの隣で、嬉しそうに笑っていた。
「ルーシィさん!」
イリスが声をかける。
「はい!」
「こちらへどうぞ」
イリスとメイビスの隣に、席が用意されていた。
「……ありがとうございます!」
ルーシィが笑顔で腰を下ろす。
「どうですか? 妖精の尻尾は」
イリスが尋ねた。
「……正直、びっくりすることばっかりです」
「ふふっ」
「喧嘩はするし、物は壊すし、変な人ばっかりだし……」
「そうですね!」
メイビスが楽しそうに頷く。
「でも……」
ルーシィは、ギルドの中を見渡した。
笑い合う仲間たち。
親子で食事をするマカオとロメオ。
騒がしいナツとグレイ。
優しく微笑むミラジェーン。
「……すっごく、温かいところですね」
イリスが目を細めた。
「……はい」
そして、優しく微笑む。
「私も、そう思います」
そのとき。
「それじゃあ、乾杯ですよー!」
メイビスが元気よく立ち上がった。
「新しい仲間、ルーシィちゃんに!」
「「「かんぱーい!!!」」」
歓声が響き渡る。
ルーシィは満面の笑顔でグラスを掲げた。
「よろしくお願いしまーす!!」
◇
賑やかな宴の中。
イリスは、ふとギルドの仲間たちを見つめていた。
百年近く前。
まだ、このギルドにはほんの数人しかいなかった。
メイビス。
ユーリ。
プレヒト。
ウォーロッド。
そして、自分。
小さな建物から始まった、妖精の尻尾。
あれから、どれほどの年月が流れただろう。
たくさんの仲間と出会った。
たくさんの笑顔を見た。
そして、たくさんの別れも経験した。
それでも。
こうして、新しい家族が増えていく。
「……イリス?」
隣から声が聞こえた。
メイビスだった。
「どうしたんですか?」
「……ふふっ」
イリスは小さく笑った。
「少し、昔のことを思い出していました」
「……ああ」
メイビスも、優しく微笑んだ。
「……本当に、大きくなりましたね」
「はい」
二人は並んで、ギルドを見渡した。
騒がしくて。
賑やかで。
少し乱暴で。
けれど、誰よりも仲間を大切にする魔導士たち。
それは、あの日に夢見たギルドの姿だった。
「……メイビス」
「はい?」
「これからも、たくさんの仲間が増えるといいですね」
メイビスは満面の笑顔になった。
「もちろんです!」
そして、イリスの手を握る。
「だって、妖精の尻尾ですから!」
「……ふふっ。そうですね」
二人は顔を見合わせて笑った。
その向こうでは、ルーシィがナツたちと楽しそうに笑っている。
新しい時代。
新しい仲間。
そして、新しい物語。
百年近い時を経ても、妖精たちの物語は終わらない。
これからも、きっと。
何度でも、新しい笑顔が咲いていくのだろう。
イリス・アストレアは、そんな未来を思い描きながら、愛する家族たちを優しく見つめていた。
【こそこそ妖精話】
~乙女の秘密~
妖精の尻尾。
ルーシィの歓迎会が終わった後。
カウンターでは、イリスとメイビスが仲良くケーキを食べていた。
ルーシィ「……ねえ、ミラさん」
ミラジェーン「なあに?」
ルーシィ「イリスさんとメイビスさんって、いったい何歳なの?」
ミラジェーン「あら、どうして?」
ルーシィ「だって、マスターと昔からの知り合いなんでしょ? でも、どう見ても私と同じくらいか、それより若く見えるし……」
ミラジェーン「ふふっ。確かに不思議よね」
ルーシィ「ミラさんも知らないの!?」
ミラジェーン「そうね。聞いたことはないわ」
ルーシィ「……ますます気になる!」
そこへ、ナツが顔を出した。
ナツ「何の話だ?」
ルーシィ「イリスさんとメイビスさんの年齢!」
ナツ「ああ? そんなの知らねえぞ」
ルーシィ「ナツも!?」
ナツ「俺がガキの頃から、ずっとあのまんまだしな!」
ルーシィ「……え?」
ナツ「イリスねえちゃんはずっとイリスねえちゃんだし、メイビスもずっとメイビスだぞ!」
ルーシィ「それ、全然説明になってないから!!」
ルーシィは頭を抱えた。
そのとき。
メイビス「ふふっ。何だか楽しそうですね!」
イリス「何のお話ですか?」
ルーシィ「……あっ!」
本人たちがやってきた。
ルーシィ「あ、あの! お二人って、何歳なんですか!?」
メイビス「…………」
イリス「…………」
二人は顔を見合わせた。
メイビス「……イリス」
イリス「……はい」
メイビス「どうしましょう?」
イリス「……どうしましょうね?」
ルーシィ「なんで相談してるんですか!?」
そこへ、マカロフが通りかかった。
ルーシィ「あっ! マスターなら知ってますよね!?」
マカロフ「……何をじゃ?」
ルーシィ「二人の年齢です!」
マカロフ「…………」
マカロフは、イリスとメイビスを見た。
二人はにっこり微笑んでいる。
マカロフ「……知らん!」
ルーシィ「絶対知ってますよね!?」
メイビス「ふふっ! 女の子には秘密があるんですよ!」
イリス「そういうことにしておいてくださいね」
ルーシィ「えええええっ!?」
結局。
ルーシィは、二人の年齢を知ることができなかった。
なお、その日の夜。
マカロフ「……まったく。わしよりずっと年上のくせに……」
メイビス「マカロフ?」
マカロフ「……なんでもありません!!」
イリス「ふふっ。マカロフさんも大変ですね」
マカロフ「誰のせいじゃと思っとるんじゃ!!」
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。