妖精と聖剣使い   作:使い手なない

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第94話「初代マスターの帰還」

 

 X784年。

 

 フィオーレ王国、マグノリア。

 

 魔導士ギルド、妖精の尻尾。

 

「……さて」

 

 メイビス・ヴァーミリオンが、静かに立ち上がった。

 

 先ほどまでマカロフが休んでいた部屋。

 

 その扉を閉めると、隣にいたイリス・アストレアへ視線を向ける。

 

「イリス。行きましょうか」

 

「はい」

 

 イリスは穏やかに頷いた。

 

 いつもと変わらない、柔らかな微笑み。

 

 けれど、その青と金の瞳には、確かな決意が宿っていた。

 

「……あの、二人とも」

 

 廊下で待っていたミラジェーンが、おずおずと声をかける。

 

「本当に、大丈夫ですか?」

 

「もちろんです!」

 

 メイビスはにっこり笑った。

 

「マカロフには、ゆっくり休んでもらわないといけませんから!」

 

「ふふっ。そうですね」

 

 イリスも微笑む。

 

「それに、ミラさん」

 

「はい?」

 

「私たちの大切な家を、これ以上壊させるわけにはいきませんから」

 

「……!」

 

 ミラジェーンは目を見開いた。

 

 その言葉は、決して大げさなものではなかった。

 

 二人にとって、妖精の尻尾は特別な場所なのだ。

 

 長い年月を経ても、決して変わらない。

 

 帰るべき場所。

 

「……お願いします」

 

 ミラジェーンが深く頭を下げた。

 

 メイビスは、そんな彼女の手を優しく握った。

 

「任せてください!」

 

 その笑顔は、いつもと同じだった。

 

 だからこそ。

 

 ミラジェーンは、不思議と安心できた。

 

◇

 

 それから、しばらくして。

 

 マグノリアの街に、異様な振動が響き渡った。

 

 ――ズズズズズ……!!

 

「な、なんだ!?」

 

「地震か!?」

 

 通りを歩いていた人々が、足を止める。

 

 そして。

 

 海の向こうから現れた巨大な影を見て、誰もが言葉を失った。

 

「……嘘だろ」

 

 それは、巨大な建造物だった。

 

 無数の脚を動かしながら、ゆっくりと街へ迫ってくる。

 

 ファントムロードの本拠地。

 

 巨大な歩行要塞。

 

 その姿は、まるで街そのものを踏み潰そうとする怪物のようだった。

 

「おいおいおい!!」

 

 妖精の尻尾の前で、ナツが叫ぶ。

 

「なんだよ、あのでっけえの!!」

 

「ファントムロード……!」

 

 エルザが険しい表情を浮かべた。

 

「まさか、本拠地ごと攻めてくるとは……!」

 

「冗談じゃねえぞ!」

 

 グレイが歯を食いしばる。

 

 その隣では、ルーシィが青ざめていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ! あんなの、どうやって止めるの!?」

 

「……あれは」

 

 メイビスが、興味深そうに巨大要塞を見上げた。

 

「なかなか大胆なことをしますね」

 

「そうですね」

 

 イリスも頷く。

 

「ですが、街の近くまで来られると困ります」

 

「……え?」

 

 ルーシィが振り返った。

 

 二人とも。

 

 まるで、少し面倒な来客でも見つけたような顔をしている。

 

「イリスさん……?」

 

「はい?」

 

「……怖くないんですか?」

 

「ふふっ」

 

 イリスは小さく笑った。

 

「大丈夫ですよ、ルーシィさん」

 

 そして、腰へ手を伸ばす。

 

 その瞬間。

 

 メイビスの隣に、小さな空間の裂け目が生まれた。

 

 そこから現れたのは、一振りの聖剣。

 

 濃紺と黄金の鞘。

 

 星の意匠が刻まれた、美しい剣だった。

 

 イリスはそれを受け取り、左腰へ佩く。

 

「……イリスさん」

 

 エルザが小さく呟いた。

 

 その剣を知っている。

 

 かつて、ギルダーツとの模擬戦で見た剣。

 

 あの日。

 

 自分が目撃した、剣技の極致。

 

「皆さん」

 

 イリスが微笑んだ。

 

「街は、私が守ります」

 

◇

 

 ファントムロード、歩行要塞内部。

 

「くくく……!」

 

 ジョゼ・ポーラは、不気味な笑みを浮かべていた。

 

 聖十大魔道の一人。

 

 ファントムロードのマスター。

 

 その視線の先には、マグノリアの街が広がっている。

 

「マカロフも倒れた今、妖精の尻尾など恐れるに足りませんねぇ」

 

 ジョゼは片手を上げた。

 

「魔導集束砲、ジュピター」

 

 巨大要塞の正面。

 

 そこに設置された砲口へ、膨大な魔力が集まり始める。

 

「まずは、あの忌々しいギルドを吹き飛ばして差し上げましょう」

 

 そして。

 

「――発射」

 

 轟音。

 

 巨大な魔力の奔流が、マグノリアへ放たれた。

 

◇

 

「来るぞ!!」

 

 エルザが叫んだ。

 

 巨大な光が、街へ迫ってくる。

 

 その威力は、通常の魔導士が放つ攻撃魔法とは比較にならない。

 

「みんな、下がれ!!」

 

 グレイが叫ぶ。

 

 ナツも拳に炎を纏わせた。

 

 だが。

 

「大丈夫ですよ」

 

 穏やかな声が響いた。

 

 イリスだった。

 

 彼女は、ゆっくりと聖剣を抜く。

 

 澄んだ金属音。

 

 星の意匠を持つ刀身が、陽光を受けて輝いた。

 

「……少し、失礼しますね」

 

 次の瞬間。

 

 イリスの姿が消えた。

 

「えっ!?」

 

 ルーシィが目を見開く。

 

 風が吹いた。

 

 それだけだった。

 

 気づけば、イリスは空中にいた。

 

 風魔法による加速。

 

 その足元には、淡い黄金色の光剣が浮かんでいる。

 

 迫り来るジュピター。

 

 街を飲み込まんとする、巨大な魔力の奔流。

 

 イリスは、その正面で聖剣を構えた。

 

「――絶対切断」

 

 一閃。

 

 ただ、それだけ。

 

 巨大な魔力の奔流に、一本の線が走った。

 

 そして。

 

 ――スッ。

 

 ジュピターが、消えた。

 

 爆発もない。

 

 衝撃波もない。

 

 魔力が周囲へ飛び散ることすらなかった。

 

 まるで、最初から何も存在しなかったかのように。

 

 巨大な砲撃は、跡形もなく消失した。

 

「…………」

 

 沈黙。

 

 街を見守っていた魔導士たちが、揃って口を開けていた。

 

「……は?」

 

 ナツが呟く。

 

「……おい」

 

 グレイが目をこする。

 

「今、何が起きた?」

 

「……斬った」

 

 エルザが答えた。

 

「イリスさんが、ジュピターを斬ったんだ」

 

「いやいやいやいや!!」

 

 ルーシィが叫ぶ。

 

「魔法の大砲って、斬れるものなの!?」

 

「普通は無理だ」

 

 エルザは真顔で答えた。

 

「……普通は」

 

「普通じゃないにも程があるでしょ!?」

 

 その頃。

 

 空中のイリスは、聖剣を軽く振っていた。

 

「ふむ……」

 

 そして、要塞を見つめる。

 

「次は、あちらですね」

 

◇

 

「なっ……!?」

 

 歩行要塞内部。

 

 ジョゼが、思わず立ち上がった。

 

「ジュピターが……消えた!?」

 

 あり得ない。

 

 あれほどの魔力を集束させた砲撃が。

 

 何の爆発も起こさず、完全に消失した。

 

「いったい、何を……!」

 

 そのとき。

 

 窓の向こうに、一人の少女が見えた。

 

 黒髪のハーフツインテール。

 

 青と金のオッドアイ。

 

 そして、美しい聖剣。

 

「……小娘?」

 

 ジョゼが眉をひそめる。

 

 だが、次の瞬間。

 

 少女が剣を振った。

 

 ――キンッ。

 

 澄んだ音が響く。

 

 巨大要塞の脚部。

 

 その接続部分に、細い光の線が走った。

 

 一つ。

 

 二つ。

 

 三つ。

 

 次々と。

 

 そして。

 

 ――ガコンッ!!

 

「なっ!?」

 

 要塞が、大きく揺れた。

 

 巨大な脚部の駆動機構が、次々と切断されていく。

 

 ただし、要塞そのものが崩壊することはなかった。

 

 切断された部分は、黄金色の光剣によって支えられている。

 

 無数の光剣が、巨大な建造物を固定していた。

 

「……これで」

 

 イリスが微笑む。

 

「もう、歩けませんね」

 

 最後の一閃。

 

 動力系統の一部が切断され、歩行要塞は完全に停止した。

 

 内部の魔導士たちを巻き込むこともなく。

 

 周辺の街を破壊することもなく。

 

 巨大な要塞は、その場で動きを止めた。

 

「…………」

 

 ジョゼは、言葉を失っていた。

 

 自慢の魔導兵器が。

 

 たった一人の少女によって。

 

 ほとんど何もできないまま、無力化されたのだ。

 

「……何者ですか、あの女は……!」

 

◇

 

「よし!」

 

 メイビスが、ぱんっと手を叩いた。

 

「イリス、ありがとうございます!」

 

「どういたしまして」

 

 空間転移によって地上へ戻ったイリスが、にこやかに答える。

 

「ですが、まだ敵の魔導士たちが残っていますね」

 

「そうですね!」

 

 メイビスは仲間たちを見渡した。

 

「皆さん!」

 

「お、おう!」

 

 ナツが返事をする。

 

「ここからは、皆さんの出番です!」

 

 その言葉に、ナツがにやりと笑った。

 

「へっ! 待ってました!!」

 

「まったく……」

 

 グレイが肩をすくめる。

 

「最初から、そのつもりだっつーの」

 

 エルザも剣を構えた。

 

「行くぞ! 妖精の尻尾の誇りを見せてやれ!」

 

「おおおおっ!!」

 

 仲間たちの声が響き渡った。

 

 イリスは、その様子を嬉しそうに見つめる。

 

「では、私は街を見てきますね」

 

「お願いします、イリス!」

 

「はい。メイビスも、気をつけてください」

 

「もちろんです!」

 

 二人は微笑み合った。

 

 そして。

 

 それぞれの戦場へと向かった。

 

◇

 

 歩行要塞内部。

 

「火竜の鉄拳!!」

 

「ぐおっ!?」

 

 ナツの拳が、敵の魔導士を吹き飛ばした。

 

「どけどけどけえええっ!!」

 

 炎を纏いながら、次々と敵を突破していく。

 

 その前に現れたのは、鉄のような肌を持つ男だった。

 

「……よう」

 

 ガジル・レッドフォックス。

 

 鉄の滅竜魔導士。

 

「随分と元気じゃねえか、火竜」

 

「……てめえか」

 

 ナツの表情が変わった。

 

 仲間たちを傷つけた男。

 

 その姿を前に、炎が激しく燃え上がる。

 

「覚悟しろよ、鉄クズ野郎!!」

 

「ギヒッ! やってみろよ!!」

 

 炎と鉄が激突した。

 

 激しい衝撃が、通路を震わせる。

 

 互いに一歩も退かない。

 

 拳と拳。

 

 魔法と魔法。

 

 その激闘の末。

 

「――火竜の咆哮!!」

 

 ナツの炎が、ガジルを飲み込んだ。

 

「ぐああああっ!!」

 

 鉄の滅竜魔導士が、床へ叩きつけられる。

 

「……へっ」

 

 ナツは荒い息を吐いた。

 

「妖精の尻尾を……なめんじゃねえぞ」

 

◇

 

 一方。

 

 別の通路では、グレイが一人の少女と対峙していた。

 

「……あなたが、グレイ様……」

 

 青い髪の少女。

 

 四元素の一人、ジュビア・ロクサー。

 

「……グレイ様?」

 

 グレイが眉をひそめる。

 

「なんだ、その呼び方」

 

「ジュビアは……あなたと戦わなければなりません」

 

 少女の身体が、水へと変わる。

 

 激しい水流が、グレイへ襲いかかった。

 

「ちっ!」

 

 グレイは素早く氷の盾を作り出す。

 

 水と氷。

 

 二つの魔法が、激しくぶつかり合った。

 

 だが、戦いの中で。

 

 ジュビアは気づいてしまった。

 

 自分を敵として見ながらも、必要以上に傷つけようとはしない青年の姿に。

 

「……どうして」

 

「……あ?」

 

「どうして、そんなに……」

 

 ジュビアの頬が、わずかに赤くなる。

 

「……優しいんですか?」

 

「はあ!?」

 

 グレイが目を丸くした。

 

 その隙を突いて、水流が襲いかかる。

 

「うおっ!? 危ねえ!!」

 

 慌てて飛び退くグレイ。

 

 だが、すぐに体勢を立て直した。

 

「悪いが、こっちも負けるわけにはいかねえんだ!」

 

 両手を構える。

 

「氷の造形魔法――!」

 

 鋭い氷の槍が、水流を貫いた。

 

 激しい攻防の末、ジュビアはついに膝をつく。

 

「……ジュビアの、負けです」

 

「……大丈夫か?」

 

 グレイが手を差し伸べる。

 

「……!」

 

 ジュビアは、その手を見つめた。

 

 そして。

 

 顔を真っ赤にした。

 

「……グレイ様……!」

 

「……なんでそうなる!?」

 

◇

 

 その頃。

 

 エルザは、次々と敵の魔導士たちを打ち倒していた。

 

「邪魔をするな!!」

 

 換装。

 

 剣が閃く。

 

 迫り来る魔法を防ぎ、敵の攻撃を斬り払う。

 

 その後方では、ルーシィが星霊の鍵を握り締めていた。

 

「開け! 金牛宮の扉!」

 

 光が輝く。

 

「タウロス!!」

 

「モォォォ!!」

 

 巨大な斧が、敵の魔導士たちを吹き飛ばした。

 

「よしっ!」

 

 ルーシィが拳を握る。

 

 だが、その表情には、まだ迷いがあった。

 

 自分が狙われた理由。

 

 父親。

 

 ハートフィリア家。

 

 そして、妖精の尻尾。

 

「……私のせいで」

 

 小さく呟く。

 

 しかし。

 

「ルーシィ!」

 

 エルザの声が響いた。

 

「顔を上げろ!」

 

「……!」

 

「お前は、妖精の尻尾の仲間だ!」

 

 エルザは敵を斬り払いながら、力強く続けた。

 

「仲間を守るのに、理由などいらん!」

 

「……エルザ……!」

 

 ルーシィは唇を噛んだ。

 

 そして、鍵を強く握り締める。

 

「……うん!」

 

 もう、逃げない。

 

 自分も、このギルドの一員なのだから。

 

◇

 

 マグノリアの街。

 

「皆さん、こちらへ!」

 

 イリスの声が響く。

 

 崩れかけた建物。

 

 逃げ遅れた住民。

 

 そして、街へ向けて放たれる敵の攻撃魔法。

 

 そのすべてに、イリスは対応していた。

 

「――光剣」

 

 無数の黄金色の剣が、空中に現れる。

 

 飛来する魔法を次々と迎撃。

 

 崩れかけた建物を支え、住民の避難路を確保する。

 

「お、お姉ちゃん!」

 

 幼い少女が、涙目で駆け寄ってきた。

 

「お母さんが、あっちに……!」

 

「大丈夫ですよ」

 

 イリスは優しく微笑んだ。

 

「すぐに助けますから」

 

 風が吹いた。

 

 次の瞬間。

 

 イリスは崩れた建物の前にいた。

 

 光剣が瓦礫を持ち上げる。

 

 その下にいた女性を、そっと抱き起こした。

 

「……ありがとうございます……!」

 

「ふふっ。お気になさらず」

 

 イリスは少女のもとへ戻る。

 

「ほら、お母さんですよ」

 

「お母さん!!」

 

 少女が泣きながら抱きついた。

 

 その姿を見て、イリスは嬉しそうに微笑んだ。

 

 そして、遠くに見える歩行要塞へ視線を向ける。

 

「……メイビス」

 

 小さく呟いた。

 

「そちらは、お任せしましたよ」

 

◇

 

 歩行要塞、最上階。

 

「……まったく」

 

 ジョゼ・ポーラは、苛立たしげに舌打ちした。

 

 ジュピターは消され。

 

 歩行要塞は停止し。

 

 配下の魔導士たちも、次々と敗北している。

 

「……ふざけた連中ですねぇ」

 

 そのとき。

 

「こんにちは!」

 

 明るい声が響いた。

 

「……?」

 

 ジョゼが振り返る。

 

 そこに立っていたのは、一人の少女だった。

 

 長い金髪。

 

 幼い容姿。

 

 そして、無邪気な笑顔。

 

「……なんですか、あなたは」

 

「メイビスです!」

 

 少女はにっこり笑った。

 

「少し、お話をしに来ました!」

 

「……話?」

 

 ジョゼの額に、青筋が浮かぶ。

 

「私を、誰だと思っているのですか?」

 

「ジョゼ・ポーラさんですよね?」

 

「……ほう」

 

「ファントムロードのマスターで、聖十大魔道の一人」

 

 メイビスは指を折りながら答えた。

 

「間違っていませんよね?」

 

「……分かっているなら、さっさと失せなさい」

 

 ジョゼの周囲に、黒い魔力が渦巻く。

 

「小娘が……!」

 

 その言葉に。

 

 メイビスは、ぴたりと笑うのをやめた。

 

「……小娘、ですか」

 

「……?」

 

 少女は、静かにジョゼを見つめた。

 

「そうですね。見た目だけなら、そう思われても仕方ありません」

 

 そして。

 

 一歩、前へ出る。

 

「ですが、一つだけ訂正させてください」

 

「……何を?」

 

 メイビスは、胸に手を当てた。

 

「私は、メイビス・ヴァーミリオン」

 

 静かな声だった。

 

 しかし、その声には、不思議な重みがあった。

 

「魔導士ギルド『妖精の尻尾』を創設した――」

 

 微笑む。

 

「初代マスターです!」

 

「…………」

 

 沈黙。

 

 ジョゼは、数秒間。

 

 何も言えなかった。

 

「……は?」

 

 そして。

 

「……何を馬鹿なことを!!」

 

 怒号が響いた。

 

「妖精の尻尾の初代マスターだと!? そんなもの、とうの昔に――!」

 

「ええ。百年近く前のお話ですね」

 

 メイビスは、あっさり頷いた。

 

「ですが、私はここにいますよ?」

 

「……っ!」

 

 ジョゼの表情が歪んだ。

 

 そのとき。

 

「……メイビス、さん?」

 

 別の声が響いた。

 

 通路から現れたのは、エルザだった。

 

 敵の魔導士たちを倒し、最上階へ辿り着いたのだ。

 

 そして。

 

 今の言葉を、聞いていた。

 

「……初代、マスター……?」

 

 エルザの瞳が、大きく見開かれる。

 

「……え?」

 

 いつもイリスと一緒にいる少女。

 

 お菓子が大好きで。

 

 ギルドでは、楽しそうに笑っている少女。

 

 その正体が。

 

「……妖精の尻尾を、創設した……?」

 

 メイビスは、エルザへ振り返った。

 

「あっ、エルザさん!」

 

 いつもの笑顔。

 

「お疲れ様です!」

 

「…………」

 

 エルザは、完全に固まっていた。

 

「……えええええっ!?」

 

 その叫びが、最上階に響き渡った。

 

◇

 

「……くだらない」

 

 ジョゼが、低く呟いた。

 

「初代マスターだろうが、何だろうが……!」

 

 黒い魔力が、爆発的に膨れ上がる。

 

「この私を愚弄したこと、後悔させて差し上げましょう!!」

 

 無数の黒い魔法弾が、メイビスへ襲いかかった。

 

「メイビスさん!!」

 

 エルザが叫ぶ。

 

 だが。

 

「大丈夫ですよ」

 

 メイビスは、微笑んだ。

 

 次の瞬間。

 

 黒い魔法弾が、消えた。

 

「……なっ!?」

 

 ジョゼが目を見開く。

 

 魔法弾が、空間そのものへ吸い込まれたのだ。

 

「空間魔法……!?」

 

「はい!」

 

 メイビスが頷く。

 

「長年、研究してきましたから!」

 

 そして、指先を軽く動かした。

 

 ――パチン。

 

 乾いた音。

 

 ジョゼの周囲に、無数の魔法陣が浮かび上がった。

 

「……何!?」

 

「少し、動かないでくださいね」

 

 空間が固定される。

 

 ジョゼの身体が、見えない何かに押さえつけられた。

 

「ぐっ……!?」

 

 魔力を放出する。

 

 しかし、術式がその流れを巧みに逸らしていく。

 

「ば、馬鹿な……!」

 

 ジョゼの顔が引きつった。

 

 聖十大魔道。

 

 その称号に恥じない魔力を持つ自分が。

 

 何もできない。

 

「……どういう、ことですか……!」

 

「ふふっ」

 

 メイビスが微笑んだ。

 

「魔力が大きいだけでは、勝てないんですよ?」

 

 そして。

 

 その笑顔から、少しだけ柔らかさが消えた。

 

「それに」

 

 少女の周囲に、膨大な魔力が満ち始める。

 

「あなたは、私の大切な仲間たちを傷つけました」

 

「……っ!」

 

「マカロフも」

 

 一歩。

 

「ナツさんも、エルザさんも」

 

 もう一歩。

 

「そして、妖精の尻尾のみんなも」

 

 メイビスの緑色の瞳が、真っ直ぐジョゼを見据えた。

 

「……私は、それを許しません」

 

 その瞬間。

 

 エルザは、息を呑んだ。

 

 圧倒的だった。

 

 魔力の大きさだけではない。

 

 その制御。

 

 術式の精密さ。

 

 そして、揺るぎない意志。

 

 自分が知っているどんな魔導士とも違う。

 

「……これが」

 

 エルザが、小さく呟く。

 

「……初代マスター……!」

 

◇

 

「……認めませんよ……!」

 

 ジョゼが、歯を食いしばった。

 

「この私が……! こんな小娘に……!!」

 

 黒い魔力が、激しく渦巻く。

 

 強引に空間の拘束を破ろうとする。

 

 しかし。

 

「……もう、終わりにしましょう」

 

 メイビスが、静かに告げた。

 

 そして。

 

 両手を合わせる。

 

「……その魔法は……!」

 

 エルザが目を見開いた。

 

 知っている。

 

 妖精の尻尾に伝わる、三大魔法の一つ。

 

 初代マスターが生み出した、伝説の超魔法。

 

 メイビスの足元に、巨大な魔法陣が広がった。

 

 黄金色の光が、最上階を満たしていく。

 

「……なっ……!?」

 

 ジョゼの顔から、血の気が引いた。

 

「ま、待ちなさい……!」

 

 メイビスは、静かに目を閉じた。

 

 敵と味方を識別する。

 

 守るべき仲間たち。

 

 そして、彼らを傷つけた敵。

 

 その判断に、迷いはなかった。

 

「――妖精の法律」

 

 黄金の光が、解き放たれた。

 

 ――フェアリーロウ。

 

 それは、妖精の尻尾に伝わる超魔法。

 

 術者が敵と認めた者だけを裁く、絶対的な光。

 

「う、うわあああああっ!!」

 

 ジョゼの叫びが響いた。

 

 黄金色の光が、その身体を包み込む。

 

 黒い魔力が、次々と消し飛んでいく。

 

 そして。

 

 すべてが、静かになった。

 

「…………」

 

 ジョゼ・ポーラは、床に倒れていた。

 

 意識を失い。

 

 もはや、立ち上がることもできない。

 

 聖十大魔道の一人。

 

 ファントムロードのマスター。

 

 その男は、完全に敗北した。

 

 メイビスは、ゆっくりと手を下ろした。

 

「……ふぅ」

 

 そして。

 

 いつもの笑顔に戻る。

 

「終わりました!」

 

「…………」

 

 エルザは、何も言えなかった。

 

 ただ、目の前の少女を見つめていた。

 

 その姿は、いつもと何も変わらない。

 

 小さくて。

 

 可愛らしくて。

 

 お菓子が大好きな少女。

 

 けれど。

 

 今なら分かる。

 

 この少女は。

 

 妖精の尻尾の、始まりそのものなのだ。

 

◇

 

 夕暮れ。

 

 マグノリア。

 

 ファントムロードとの戦いは、終結した。

 

 巨大な歩行要塞は停止し、ジュピターは無力化された。

 

 敵の魔導士たちも、次々と敗北。

 

 そして、マスターであるジョゼ・ポーラも倒れた。

 

 街への被害は、驚くほど少なかった。

 

 それは。

 

 一人の聖剣使いが、最後まで街を守り続けたからだった。

 

「……お疲れ様でした、皆さん!」

 

 イリスが、にこやかに手を振る。

 

「イリスさん!!」

 

 ルーシィが駆け寄ってきた。

 

「もう! すごすぎますよ!!」

 

「……はい?」

 

「ジュピターを斬るし! 巨大な要塞を止めるし! 街まで守っちゃうし!!」

 

「ふふっ。皆さんが頑張ってくださったおかげですよ」

 

「絶対それだけじゃないですって!!」

 

 その隣では、ナツが楽しそうに笑っていた。

 

「やっぱすげえな、イリス!」

 

「ありがとうございます、ナツさん」

 

「今度、俺とも勝負してくれよ!」

 

「ふふっ。機会があれば」

 

「よっしゃ!!」

 

「……お前、懲りねえな」

 

 グレイが呆れたように呟く。

 

 そんな賑やかな仲間たちのもとへ。

 

「イリスー!」

 

 メイビスが駆け寄ってきた。

 

「終わりましたよー!」

 

「お疲れ様です、メイビス」

 

 イリスが微笑む。

 

「ジョゼさんは?」

 

「ちゃんと倒しました!」

 

「ふふっ。さすがですね」

 

 そのやり取りを聞いて。

 

「…………」

 

 エルザが、ゆっくりと口を開いた。

 

「……あの」

 

「はい?」

 

 メイビスが振り返る。

 

「……メイビスさん」

 

「なんでしょう?」

 

「……本当に」

 

 エルザは、少しだけ言葉を探した。

 

「……初代マスター、なのですか?」

 

 その瞬間。

 

 周囲が静まり返った。

 

「…………え?」

 

 ルーシィが、ゆっくりと振り返る。

 

「……初代?」

 

 グレイも目を丸くした。

 

「……マスター?」

 

 ナツが首を傾げる。

 

「……誰が?」

 

 メイビスは、きょとんとした。

 

 そして。

 

「あっ!」

 

 ぽんっと手を打つ。

 

「そういえば、皆さんにはまだ言っていませんでしたね!」

 

「…………」

 

 イリスが、くすくすと笑い始めた。

 

「ふふっ。メイビスったら……」

 

 メイビスは、胸を張った。

 

「改めまして!」

 

 満面の笑顔。

 

「妖精の尻尾、初代マスター!」

 

「メイビス・ヴァーミリオンです!」

 

「…………」

 

 一秒。

 

 二秒。

 

 三秒。

 

「「「えええええええええっ!?」」」

 

 マグノリアの街に、絶叫が響き渡った。

 

「ちょ、ちょっと待って!?」

 

 ルーシィが叫ぶ。

 

「初代って、何十年も前の人じゃないの!?」

 

「はい! もう百年近くになりますね!」

 

「百年!?」

 

「……おいおい」

 

 グレイが額を押さえた。

 

「どうなってんだよ、このギルド……」

 

「すっげえええ!!」

 

 ナツだけは、目を輝かせていた。

 

「メイビス! お前、そんなに強かったのか!!」

 

「ふふん! そうですよ!」

 

 メイビスが得意げに胸を張る。

 

 その隣で、イリスが楽しそうに笑っていた。

 

「……イリスさん」

 

 エルザが、静かに尋ねる。

 

「あなたは……最初から、ご存じだったのですか?」

 

「もちろんですよ」

 

 イリスは、穏やかに頷いた。

 

「メイビスとは、長い付き合いですから」

 

「長い付き合いどころじゃありませんよ!」

 

 メイビスが、嬉しそうに割って入った。

 

「……メイビス?」

 

 イリスが首を傾げる。

 

 すると、メイビスは満面の笑顔で彼女の腕に抱きついた。

 

「だって、イリスも妖精の尻尾を創設した一人なんですから!」

 

「…………」

 

 再び、沈黙が訪れた。

 

「…………え?」

 

 ルーシィが固まる。

 

「……は?」

 

 グレイも固まる。

 

 そして。

 

「……イリスさんも、ですか?」

 

 エルザが、信じられないものを見るような目で尋ねた。

 

「ふふっ。はい」

 

 イリスは、あっさり頷いた。

 

「メイビスやユーリさん、プレヒトさん、ウォーロッドさんたちと一緒に、このギルドを作ったんですよ」

 

「…………」

 

 エルザは、ゆっくりと口を開いた。

 

 しかし、言葉が出てこない。

 

 かつて、ギルダーツとの模擬戦で見せてもらった剣技。

 

 あのとき、自分は確かに感じた。

 

 長い年月をかけて磨き上げられた、圧倒的な技量を。

 

 だが。

 

 まさか、本当に百年近い年月を生きていたとは。

 

「……だから、あれほどの剣技を……」

 

 エルザが呆然と呟く。

 

「ふふっ。エルザさんも、きっともっと強くなれますよ」

 

「……!」

 

 イリスの言葉に、エルザは思わず背筋を伸ばした。

 

「はい!!」

 

 そして、勢いよく頭を下げる。

 

「これからも、ご指導よろしくお願いいたします!!」

 

「えっ!? エルザさん!?」

 

 イリスが目を丸くした。

 

「そ、そんなに畏まらなくても……!」

 

「いえ! 創設者の方と知らず、今まで失礼な態度を取っていたかもしれません!」

 

「全然そんなことありませんよ!?」

 

 その隣で。

 

「ちょっと待って!!」

 

 ルーシィが、両手を上げた。

 

「じゃあ、イリスさんも百年近く生きてるってこと!?」

 

「そうなりますね」

 

「そうなりますね、じゃないですよおおおっ!!」

 

 ルーシィの叫びが響き渡った。

 

「だって! どう見ても私と同じくらいの年齢じゃないですか!!」

 

「ふふっ。見た目は十七歳のままですから」

 

「十七歳!?」

 

 ルーシィは頭を抱えた。

 

「もう何がなんだか分かんない!!」

 

「……いや、待てよ」

 

 グレイが腕を組んだ。

 

「つまり、イリスとメイビスは……百年近く一緒にいるってことか?」

 

「はい!」

 

 メイビスが元気よく答える。

 

「ずーっと一緒です!」

 

「……すげえな」

 

 グレイが素直に感心した。

 

 その横で、ナツが目を輝かせる。

 

「すっげえええ!!」

 

「……お前、そればっかだな」

 

「だってよ!!」

 

 ナツは興奮した様子で二人を指さした。

 

「イリスもメイビスも、妖精の尻尾ができたときからいたんだろ!?」

 

「そうですよ」

 

「じゃあ、マカロフのじっちゃんが子供だった頃も知ってんのか!?」

 

「もちろんです!」

 

 メイビスが楽しそうに笑った。

 

「小さい頃のマカロフ、とっても可愛かったんですよ!」

 

「ぶはっ!!」

 

 グレイが吹き出した。

 

「マスターが可愛い!?」

 

「ふふっ。本当ですよ」

 

 イリスも笑う。

 

「よく私たちと一緒に遊んでいましたから」

 

「マジかよ!!」

 

 ナツが腹を抱えて笑い始めた。

 

「じっちゃんにもそんな頃があったのか!!」

 

「そりゃあるだろ!」

 

 グレイが突っ込む。

 

 その様子を見て、メイビスは満足そうに頷いた。

 

「ふふん! つまり、私たちは皆さんの大先輩なんですよ!」

 

「メイビス」

 

 イリスが、くすりと笑った。

 

「あまり偉そうにしないでくださいね?」

 

「ええっ!?」

 

 メイビスが頬を膨らませる。

 

「今くらいいいじゃないですか!」

 

「ふふっ。もう……」

 

 そんな二人を見て。

 

 エルザは、ふっと表情を緩めた。

 

 初代マスター。

 

 創設メンバー。

 

 百年近い年月を生きる、伝説の魔導士たち。

 

 だが。

 

 目の前にいるのは、いつもの二人だった。

 

 優しくて。

 

 少しお茶目で。

 

 いつも仲間たちを温かく見守ってくれる二人。

 

「……イリスさん。メイビスさん」

 

 エルザが微笑んだ。

 

「お二人が妖精の尻尾を作ってくださったこと、心から感謝します」

 

「……!」

 

 メイビスが目を丸くした。

 

 イリスも、少しだけ驚いたように瞬きをする。

 

 そして。

 

「……ありがとうございます、エルザさん」

 

 イリスが、柔らかく微笑んだ。

 

「でも、このギルドをここまで大きくしてくれたのは、皆さんですよ」

 

「そうです!」

 

 メイビスも頷く。

 

「私たちが作ったのは、最初の小さな居場所だけですから!」

 

 少女は、仲間たちを見渡した。

 

「今の妖精の尻尾を作っているのは、皆さんなんですよ!」

 

「……!」

 

 エルザは、静かに頷いた。

 

「……はい!」

 

 その返事には、確かな誇りが宿っていた。

 

◇

 

 その夜。

 

 妖精の尻尾。

 

 ベッドの上で、マカロフが静かに目を開けた。

 

「……終わったかのう」

 

「はい!」

 

 メイビスが、にっこり笑った。

 

「無事に終わりました!」

 

「……そうか」

 

 マカロフは、安堵の息を吐いた。

 

「……ジョゼは?」

 

「私が倒しました!」

 

「……ほっほっほ」

 

 マカロフが、小さく笑う。

 

「そりゃあ、災難じゃったのう。ジョゼも」

 

「もう! マカロフったら!」

 

 メイビスが頬を膨らませる。

 

 その隣で、イリスも微笑んでいた。

 

「街の被害も、ほとんどありませんでしたよ」

 

「……そうか」

 

 マカロフは、ゆっくりと目を閉じた。

 

 そして。

 

「……ありがとう」

 

 小さく呟いた。

 

「……二人とも」

 

 メイビスは、優しく微笑んだ。

 

「当然ですよ」

 

 イリスも頷く。

 

「ここは、私たちの大切な家ですから」

 

「……ああ」

 

 マカロフの口元に、穏やかな笑みが浮かんだ。

 

 妖精の尻尾。

 

 百年近い年月を経ても、変わらないものがある。

 

 仲間を想う心。

 

 家族を守ろうとする意志。

 

 そして。

 

 その始まりを知る二人の少女は、今もここにいる。

 

 初代マスター、メイビス・ヴァーミリオン。

 

 妖精の聖剣、イリス・アストレア。

 

 長い年月をともに歩んできた二人は、これからも。

 

 大切な仲間たちを、見守り続けていくのだろう。

 

 ――妖精の尻尾。

 

 その物語は、まだまだ続いていく。

 




【こそこそ妖精話】
~三代目マスターの秘密~

 ファントムロードとの戦いから数日後。

 妖精の尻尾。

 すっかり元気になったマカロフが、いつものようにカウンターで酒を飲んでいた。

ナツ「なあ、じっちゃん!」

マカロフ「なんじゃ、ナツ」

ナツ「じっちゃんって、昔は可愛かったんだってな!」

マカロフ「ぶふぉっ!?」

 マカロフが盛大に酒を噴き出した。

マカロフ「だ、誰から聞いたんじゃ!?」

ナツ「メイビス!」

メイビス「はい! とっても可愛かったですよ!」

マカロフ「初代ぇぇぇっ!?」

 メイビスは楽しそうに笑った。

メイビス「昔はよく、私とイリスの後ろをついてきていましたよね!」

イリス「ふふっ。懐かしいですね」

マカロフ「イ、イリスまで……!」

イリス「それに、眠くなると私の膝の上で寝てしまうこともありましたよね」

マカロフ「待て待て待て!!」

ルーシィ「えええっ!? マスターが膝枕!?」

グレイ「ぶはははっ!! 想像できねえ!!」

エルザ「……幼い頃のマスターか。少し見てみたいな」

マカロフ「お前まで何を言っとるんじゃ!?」

 そのとき。

メイビス「あっ! そういえば!」

マカロフ「……嫌な予感がするのう」

メイビス「小さい頃のマカロフ、イリスのお嫁さんになるって言ってましたよね!」

「…………」

 ギルドが静まり返った。

マカロフ「…………」

イリス「……あら?」

 イリスが、くすりと笑う。

イリス「ふふっ。そういえば、そんなこともありましたね」

ナツ「ぶははははは!!」

グレイ「じっちゃん!! マジかよ!!」

ルーシィ「ちょっと待って! それ、初恋ってこと!?」

マカロフ「ち、違うわい!! 子供の頃の話じゃ!!」

メイビス「ふふん! でも、イリスは私のですから!」

イリス「メイビス!?」

 メイビスは、ぎゅっとイリスの腕に抱きついた。

メイビス「百年近く一緒にいるんですから!」

マカロフ「……もう好きにしてくれい」

 マカロフは、がっくりと肩を落とした。

 その日。

 三代目マスターの威厳は、また一つ失われた。

 もっとも。

 本人以外は、全員楽しそうだった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。

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