X784年。
フィオーレ王国、マグノリア。
魔導士ギルド、妖精の尻尾。
「ただいま戻りました!」
「ただいまですー!」
ギルドの扉が開き、二人の少女が姿を現した。
黒髪のハーフツインテールを揺らす、青と金のオッドアイの美少女。
イリス・アストレア。
そして、その隣で楽しそうに笑う金髪の少女。
妖精の尻尾の初代マスター、メイビス・ヴァーミリオン。
二人は海沿いのリゾート旅行を終え、久しぶりにギルドへ帰ってきたところだった。
「ふふっ。やっぱり、ここは賑やかですね」
「はい! 帰ってきたって感じがします!」
メイビスが嬉しそうに笑う。
しかし。
「……あら?」
イリスが首を傾げた。
ギルドの中が、妙に静かだったのだ。
普段なら聞こえてくるナツとグレイの喧嘩声もない。
代わりに、何やら騒然とした空気が漂っている。
「……皆さん?」
「イリスさん!!」
突然、ルーシィが駆け寄ってきた。
「メイビスさんも! 大変なんです!!」
「まあ、ルーシィさん」
「どうしたんですか?」
「ラクサスが……!」
ルーシィは、息を切らしながら叫んだ。
「ラクサスが、ギルドの仲間同士で戦わせようとしてるんです!!」
「…………」
「…………」
二人は顔を見合わせた。
「……メイビス」
「……はい」
「どうやら、旅行中に何かあったようですね」
「そうみたいですね……」
メイビスが、少し困ったように笑った。
◇
事情を聞いた二人は、ギルドの奥へ進んだ。
そこには。
「……まあ」
イリスが目を丸くした。
エルザをはじめとする女性魔導士たちが、石像となって並んでいたのだ。
「……これは」
「エバーグリーンの魔法なんです!」
ルーシィが説明する。
「ラクサスの仲間の雷神衆が、みんなを石にしちゃって……!」
「なるほど」
メイビスが石像の一つに近づいた。
軽く指先を触れる。
「……ふむふむ」
淡い黄金色の魔法陣が浮かび上がった。
「石化魔法ですね」
「そ、そうなんです!」
「では、解除しましょう!」
「……え?」
ルーシィが瞬きをする。
次の瞬間。
――ぱぁぁぁっ!!
柔らかな光が、ギルドの中を満たした。
石像となっていた女性たちの身体が、次々と元の姿へ戻っていく。
「……っ!?」
エルザが目を見開いた。
「……私は……?」
「エルザさん!」
イリスが微笑む。
「おかえりなさい」
「……イリスさん!?」
「はい!」
メイビスも元気よく手を振る。
「石化を解除しました!」
「…………」
エルザは、しばらく二人を見つめた。
「……もう、解除したのですか?」
「はい!」
「…………」
その隣で、ルーシィが頭を抱えた。
「……やっぱり、この二人おかしいわ……」
「ふふっ。褒め言葉でしょうか?」
「違います!!」
◇
その頃。
マグノリアの街中では、妖精の尻尾の魔導士たちが混乱していた。
「くそっ! 何だよ、この術式!!」
「ここから出られねえぞ!!」
フリードが仕掛けた術式。
特定の条件を満たさなければ、通過することすらできない魔法の結界。
街の至るところに張り巡らされたそれが、ギルドメンバーの行動を制限していた。
しかし。
「……なるほど」
街の広場。
メイビスが、足元に浮かぶ術式を眺めていた。
「ずいぶん丁寧に組まれていますね」
「解除できそうですか?」
イリスが尋ねる。
「もちろんです!」
メイビスは、にっこり笑った。
「ただ、一つずつ解除するのは面倒ですね」
「……ということは?」
「まとめて解除しましょう!」
メイビスが両手を広げた。
その足元に、巨大な黄金色の魔法陣が展開される。
幾重にも重なる術式。
複雑に絡み合う魔力の線。
それらが、街全体へと広がっていく。
「……メイビス?」
「はい?」
「街中の術式を、全部ですか?」
「はい!」
メイビスが得意げに胸を張る。
「せっかくですから!」
「ふふっ。では、お任せしますね」
そして。
「――術式解放!」
――キィィィィン!!
澄んだ音が、マグノリアの街に響き渡った。
次の瞬間。
街中に張り巡らされていた術式が、一斉に砕け散った。
「……お?」
「……あれ?」
結界に閉じ込められていた魔導士たちが、顔を見合わせる。
「……出られるぞ!?」
「術式が消えた!!」
街のあちこちから、歓声が上がった。
一方。
別の場所では。
「……なっ!?」
フリード・ジャスティーンが、目を見開いていた。
自分が時間をかけて構築した術式。
そのすべてが。
たった一瞬で、消滅したのだ。
「……馬鹿な……!」
フリードは、呆然と呟いた。
「……誰が、こんなことを……!?」
◇
「……さて」
メイビスが、満足そうに手を叩いた。
「これで皆さん、自由に動けますね!」
「そうですね」
イリスも微笑む。
「では、あとは皆さんに任せましょうか」
「はい!」
そのとき。
「イリスさん!」
エルザが駆け寄ってきた。
「雷神衆の相手は、私たちがします!」
「ふふっ。もちろんですよ」
イリスが頷く。
「皆さんなら大丈夫です」
「……ありがとうございます!」
エルザは力強く頷き、街へ駆け出していった。
その後ろ姿を見送りながら、メイビスが小さく笑う。
「みんな、頼もしくなりましたね」
「ええ」
イリスも嬉しそうに頷いた。
「本当に」
百年前。
まだ小さなギルドだった妖精の尻尾。
それが今では、これほど多くの仲間を抱える場所になった。
だからこそ。
すべてを自分たちで解決する必要はない。
仲間たちが自分の力で乗り越えられることなら、その成長を見守ればいい。
――そう思っていたのだが。
その直後だった。
――ゴロゴロゴロ……!!
「……ん?」
イリスが空を見上げた。
マグノリアの上空。
そこに、無数の魔水晶が浮かび上がっていた。
紫電を纏い、不気味な光を放つ巨大な結晶。
「……あら」
メイビスも顔を上げる。
「これは……」
街中に、ラクサスの声が響き渡った。
『聞こえるか!! 妖精の尻尾の連中!!』
魔水晶が、激しく明滅する。
『これが俺の切り札だ!!』
『神鳴殿!!』
街の人々が、空を見上げた。
「……何だ、あれ!?」
「雷が……!?」
『時間になれば、マグノリア全体に雷が降り注ぐ!!』
ラクサスの声が響く。
『止めたけりゃ、俺を倒してみろ!!』
「…………」
「…………」
イリスとメイビスは、しばらく空を見上げていた。
そして。
「……メイビス」
「……はい」
「さすがに、これは駄目ですね」
「そうですね」
メイビスが、少しだけ表情を引き締めた。
「街の人たちまで巻き込むのは、いけません」
「では」
イリスが、右手を差し出した。
「聖剣をお願いできますか?」
「はい!」
メイビスが指を鳴らす。
――ふわり。
小さな空間の裂け目が開いた。
そこから、一本の美しい聖剣が姿を現す。
白銀の刀身。
黄金の装飾。
星の意匠。
イリスは、その柄を静かに握った。
「……さて」
空を見上げる。
金色の瞳には、魔水晶を繋ぐ魔力の流れがはっきりと映っていた。
複雑に組まれた雷の魔法。
街全体を覆う、巨大な攻撃術式。
しかし。
イリスにとっては。
「……少し、危ないですね」
それだけだった。
聖剣を、軽く振るう。
――シュンッ。
次の瞬間。
マグノリアの上空に、黄金色の斬撃が走った。
――キィィィィン!!
澄んだ音が響く。
そして。
――パキンッ!!
無数の魔水晶に、同時に亀裂が入った。
「……っ!?」
街の人々が息を呑む。
次の瞬間。
――パァァァァッ!!
神鳴殿を構成していた魔法が、黄金色の光となって消えていった。
雷は落ちない。
爆発も起きない。
街への被害も、まったくない。
ただ。
先ほどまで空を覆っていた無数の魔水晶が、跡形もなく消滅していた。
「…………」
「…………」
街の人々が、呆然と空を見上げる。
「……消えた?」
「……雷が……?」
その下で。
「……はい」
イリスが、満足そうに頷いた。
「これで大丈夫ですね」
「お見事です、イリス!」
メイビスが嬉しそうに拍手する。
「ふふっ。ありがとうございます」
イリスは微笑んだ。
そして、聖剣をメイビスの異空間へ戻す。
「……さて」
「はい!」
「そろそろ、ラクサスさんのところへ行きましょうか」
「そうですね」
メイビスが頷いた。
その笑顔は、先ほどまでとは少し違っていた。
◇
マグノリア。
カルト大聖堂。
「……何だと……?」
ラクサス・ドレアーが、呆然と空を見上げていた。
神鳴殿。
自分が用意した、最大の切り札。
それが。
何の抵抗もできずに、消滅した。
「……ふざけんな……!」
ラクサスが歯を食いしばる。
「……誰だ……!」
「私ですよ」
「……っ!?」
突然、声が響いた。
振り返る。
そこには。
「こんばんは、ラクサスさん」
黒髪の少女が、穏やかに微笑んでいた。
その隣には、金髪の少女。
「ラクサス!」
メイビスが、まっすぐに彼を見つめる。
「少し、お話しましょうか」
「……てめえら……!」
ラクサスの表情が歪んだ。
「……初代マスターと、創設者様かよ……!」
「ふふっ。そうですね」
イリスが微笑む。
「一応、そういうことになります」
「……ちっ!」
ラクサスが舌打ちする。
「今さら出てきて、何のつもりだ!」
「……ラクサス」
メイビスが、静かに口を開いた。
「あなたは、どうしてこんなことをしたんですか?」
「……あ?」
「仲間同士を戦わせて、街の人たちまで危険に晒して」
「……うるせえ!」
ラクサスが叫ぶ。
「俺は、このギルドを変えるんだよ!!」
「…………」
「弱え奴らを追い出して、最強のギルドにする!!」
雷が、ラクサスの身体を走る。
「そうすりゃ、誰も妖精の尻尾を馬鹿にできねえ!!」
メイビスは、静かに彼を見つめていた。
そして。
「……ラクサス」
「……何だよ!」
「あなたにとって、妖精の尻尾は何ですか?」
「…………」
ラクサスが、言葉を詰まらせた。
「……何?」
「強い魔導士だけが集まる場所ですか?」
「……!」
「弱い人を追い出して、強い人だけが残れば、それでいいんですか?」
「……当たり前だろ!」
ラクサスが叫ぶ。
「弱え奴なんか、足手まといなんだよ!!」
「……そうですか」
メイビスは、少しだけ寂しそうに笑った。
「でも、私はそうは思いません」
「……あ?」
「妖精の尻尾は、強い人だけが集まる場所ではありません」
メイビスの声は、穏やかだった。
「嬉しいことがあったとき、一緒に喜んでくれる人がいる」
「…………」
「悲しいことがあったとき、隣にいてくれる人がいる」
その瞳に、遠い昔の光景が浮かぶ。
天狼島。
まだ何も持っていなかった自分たち。
ユーリ。
プレヒト。
ウォーロッド。
そして。
隣に立つ、黒髪の少女。
「……そういう場所を、私たちは作りたかったんです」
「…………」
ラクサスは、何も言わなかった。
メイビスは続ける。
「強いことは、素晴らしいことです」
「……!」
「でも、強さだけでは、守れないものもあります」
そして。
「……ラクサス」
メイビスは、まっすぐに彼を見つめた。
「あなたは、本当に仲間を失いたいんですか?」
「…………っ!」
ラクサスの拳が、震えた。
「……黙れ……!」
雷が、激しく迸る。
「百年前の亡霊が……!」
ラクサスが、怒鳴った。
「今さらギルドに口出しするんじゃねえ!!」
「…………」
メイビスは、少しだけ目を伏せた。
その隣で。
「……ラクサスさん」
イリスが、静かに口を開いた。
「あなたがギルドを大切に思っていることは、分かります」
「……何だと?」
「でも」
イリスの青と金の瞳が、まっすぐに彼を捉える。
「大切なものを守るために、その大切なものを傷つけてしまっては、意味がありませんよ」
「…………」
ラクサスは、歯を食いしばった。
「……てめえらに……!」
その身体から、凄まじい雷が噴き上がる。
「……何が分かる!!」
――バチバチバチッ!!
大聖堂の空気が震えた。
しかし。
イリスもメイビスも、動かなかった。
ただ、静かに彼を見つめていた。
そのとき。
「ラクサァァァス!!」
大聖堂の入り口から、怒鳴り声が響いた。
「……っ!?」
ラクサスが振り返る。
そこには。
「ようやく見つけたぜ!!」
ナツ・ドラグニル。
そして、ガジル・レッドフォックスの姿があった。
「……ナツ……!」
ラクサスが、低く呟く。
「……てめえ……!」
「ラクサス!!」
ナツが拳を握る。
「勝負だ!!」
「…………」
イリスとメイビスは、顔を見合わせた。
「……メイビス」
「……はい」
「ここからは、皆さんに任せましょうか」
「そうですね」
メイビスが、静かに頷いた。
そして、ラクサスへ視線を向ける。
「……ラクサス」
「……何だよ」
「あなたが本当に守りたいものを、もう一度考えてみてください」
「…………」
ラクサスは答えなかった。
イリスは、ナツたちへ微笑む。
「ナツさん、ガジルさん」
「おう!」
「……何だ?」
「後は、お願いしますね」
「任せろ!!」
ナツが、力強く笑った。
その様子を見て、イリスも笑う。
「ふふっ。頼もしいですね」
そして。
二人は、大聖堂の外へ歩き出した。
◇
それから、しばらくして。
大聖堂に響いていた激しい戦闘音が、ようやく止んだ。
ラクサスは、ナツとガジルとの戦いに敗れた。
ギルドの仲間たちも、次々と戻ってきた。
バトル・オブ・フェアリーテイル。
それは、こうして幕を閉じた。
そして。
妖精の尻尾。
「……ラクサス」
マカロフ・ドレアーが、静かに口を開いた。
その前には、傷だらけの孫が立っている。
「……お前は、やりすぎた」
「…………」
「仲間を傷つけ、街の人々を危険に晒した」
「…………」
「……それを、見過ごすわけにはいかん」
ラクサスは、何も言わなかった。
マカロフは、深く息を吐く。
「……ラクサス」
そして。
「お前を、妖精の尻尾から破門する」
「…………」
ギルドの中が、静まり返った。
誰もが、その言葉の重さを理解していた。
ラクサスは、しばらく俯いていた。
やがて。
「……ああ」
小さく答えた。
「……分かった」
そして、背を向ける。
その背中を、マカロフは静かに見つめていた。
――そのとき。
「……ラクサスさん」
柔らかな声が響いた。
イリスだった。
「……何だよ」
「また、いつか」
イリスは、優しく微笑んだ。
「一緒に笑える日が来るといいですね」
「…………」
ラクサスは、振り返らなかった。
しかし。
「……ふん」
小さく鼻を鳴らす。
「……余計なお世話だ」
そう言い残し、ギルドを出ていった。
その後ろ姿を、メイビスも静かに見送っていた。
「……イリス」
「はい?」
「いつか、分かってくれるでしょうか」
「……きっと」
イリスは、穏やかに頷いた。
「ラクサスさんも、妖精の尻尾の仲間ですから」
「……はい」
メイビスが、小さく微笑んだ。
◇
その夜。
マグノリアの街には、色とりどりの光が灯っていた。
ファンタジア。
妖精の尻尾が参加する、年に一度の大きなお祭り。
街の人々が、楽しそうに歓声を上げる。
華やかな魔法の光。
賑やかな音楽。
笑顔に包まれた街。
その中を、妖精の尻尾の魔導士たちが進んでいく。
「わあああっ!!」
「すごーい!!」
歓声が響く。
そして。
パレードの一角。
「イリス! 見てください!」
メイビスが、目を輝かせた。
「とっても綺麗です!」
「ふふっ。本当ですね」
イリスも微笑む。
夜空には、無数の魔法の光が舞っていた。
「……百年前には、こんなお祭りになるなんて思いませんでしたね」
「はい!」
メイビスが嬉しそうに頷いた。
「みんなのおかげです!」
イリスは、隣に立つ少女を見つめた。
百年前。
天狼島で出会った、小さな妖精。
あの日から、ずっと一緒に歩いてきた。
そして今。
自分たちが作ったギルドは、これほど多くの人々に愛される場所になった。
「……メイビス」
「はい?」
「これからも、ずっと見守っていきましょうね」
「……はい!」
メイビスが、満面の笑顔で頷いた。
「もちろんです!」
そのとき。
少し離れた場所。
人混みの向こうに、一人の青年の姿があった。
ラクサス。
彼は、静かにパレードを見つめていた。
その視線の先。
マカロフが、ゆっくりと片手を掲げる。
親指と人差し指を伸ばし、空へ向ける。
妖精の尻尾に伝わる、仲間への合図。
ラクサスは、しばらくその姿を見つめていた。
そして。
「…………」
ゆっくりと、同じように手を掲げた。
言葉はない。
けれど。
その想いは、確かに届いていた。
遠くからその光景を見ていたメイビスが、小さく微笑む。
「……イリス」
「はい?」
「やっぱり、妖精の尻尾は素敵なギルドですね」
「ふふっ」
イリスも微笑んだ。
「ええ。本当に」
百年を越えて受け継がれてきた、妖精たちの絆。
それは、ときにぶつかり合い、傷つくことがあっても。
決して、簡単には消えない。
夜空に、無数の光が舞い上がる。
その下で。
二人の妖精は、肩を並べて笑っていた。
【こそこそ妖精話】
~フリードの自信作~
バトル・オブ・フェアリーテイル終了後。
妖精の尻尾、ギルドホール。
フリード「…………」
ビックスロー「おーい、フリード。いつまで落ち込んでんだよ?」
エバーグリーン「そうよ。もう終わったことでしょ?」
フリード「……三日だ」
ビックスロー「あ?」
フリード「……あの術式を完成させるのに、三日かかったんだ」
エバーグリーン「……そう」
フリード「街の構造を調べ、魔力の流れを計算し、条件を一つずつ設定して……」
ビックスロー「お、おう」
フリード「それを……!」
フリードが、拳を握りしめる。
フリード「……たった数秒で、全部解除された……!」
ビックスロー「ブハハハハ!!」
エバーグリーン「ちょっと! 笑っちゃ悪いでしょ!」
ビックスロー「だってよ! 三日かけて数秒だぜ!?」
フリード「…………」
そのとき。
メイビス「あら? 皆さん、どうしたんですか?」
噂の本人が、イリスと一緒にやってきた。
フリード「……初代マスター」
メイビス「はい!」
フリード「……一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
メイビス「もちろんです!」
フリード「……あの術式、どう思われましたか?」
メイビス「とっても丁寧に作られていましたよ!」
フリード「……!」
メイビス「条件の設定も面白かったですし、魔力の配分も綺麗でした!」
フリード「……そ、そうですか!」
フリードの表情が、少し明るくなる。
メイビス「はい! ただ……」
フリード「……ただ?」
メイビス「解除するための術式を組むのに、少し時間がかかっちゃいました!」
フリード「……どれくらいでしょうか?」
メイビス「えっと……」
メイビスが、指を折って考える。
メイビス「……十秒くらいです!」
フリード「…………」
ビックスロー「ブッ……!」
エバーグリーン「……っ!」
フリード「……十秒……」
イリス「ふふっ。でも、メイビスが十秒も考えたんですから、相当よくできた術式だったと思いますよ?」
メイビス「はい! また見せてくださいね!」
フリード「…………」
フリードは、静かに天井を見上げた。
フリード「……もっと勉強しよう……」
ビックスロー「ブハハハハハ!!」
エバーグリーン「だから笑うなってば!!」
――初代マスターの壁は、あまりにも高かった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。