ハリーポッターとケモノの子 ~その瞳に映るもの~ 作:火力万能主義
書いてるとつい文字数が膨れ上がってしまうッ
「おはよう、アッシュ」
廊下の向こうから、聞き覚えのある声がした。
顔を向けると、黒い髪と丸い眼鏡のポッターが見える。その隣には赤髪。少し後ろからは、教科書を胸に抱えたグレンジャーが歩いてきた。
……またか。
昨日、言ったはずなのだが。
別に、にんげんと馴れ合うつもりはない。
そう言った時の顔も覚えている。三人とも黙ったし、笑って聞き流していたわけでもなかった。聞こえなかったということはないだろう。
それなのに、ポッターは今日もこちらへ手を上げている。
「……ああ」
返事をして、その脇を通り過ぎた。
今度は、後ろから足音がついてくることもなかった。三人はそのまま別の廊下を曲がっていく。途中でウィーズリーが何か言い、グレンジャーが言い返していたが、そこまでは聞かなかった。
用があるわけではないらしい。
なら、これで済んだ。
……と思っていたのだが。
昼に顔を合わせれば、また名前を呼ばれた。合同授業で同じ教室へ入れば、ハリーが空いた席を指で示してくる。図書館で本を開いている時にまで、あの赤毛が横から顔を出したこともあった。
「それって何の本?」
先に聞いてきたのは、隣にいたポッターだった。
アッシュは、開いていたところへ指を挟み、表紙を向けた。黒髪の少年の目が、そこに並んだ文字を追っていく。
「へぇ『アーサー王物語』……。アッシュもそういうの面白い?」
「まだ途中だ」
ハリーは、そうなんだと頷いた。もう一度口を開きかけたところで、横から赤髪の少年が覗き込んでくる。
「それ、授業で読むように言われたやつ?」
「違う」
「じゃあ、何で?」
「読みてぇから」
ほかに何がある。
読みたい本を読むのにまで、誰かに言われなければならないのか。
表紙を戻し、指を挟んでいたところを開く。
石に刺さった剣を抜いた少年が、王になる。
さっきまで読んでいたのは、その辺りだった。
剣が抜けた。
それは、分かる。
……だが、それで、どうして王になる。
ほかの連中が抜けなかったからか。
そいつ自身も、なりたかったのか。
続きへ目を移そうとして、二人の声が止まっていることに気づいた。
まだ何かあるのかと思って顔を上げれば、ハリーは少しだけ口を開き、それから図書館の奥へ目を向けた。
「じゃあ、僕たちも本を探してくるよ」
「……勝手にしろ」
ウィーズリーも何か言いたそうだったが、結局、二人はそのまま棚の間へ入っていった。
それを見届けて、本へ目を戻す。
……どこまで読んだんだったか。
呼んだ覚えはない。
隣へ来いとも、一緒に何かをしようとも言っていない。なのに、あの三人は、こちらを見つけると何か言いたくなるらしかった。
返事をすると笑うことがある。
返事をしたのに、困った顔をすることもある。
聞かれたことには答えているだろう。
あれ以上、何を話せばいいのか。
昨日の言い方が気に入らなかったのかもしれない。だが、俺も同じだと言ったところで、そうなるわけではない。あいつらが友達になりたいと言うのは勝手だが、こちらまでそうしなければならない理由にはならなかった。
少なくとも、ばあさんとは、そんな約束をした覚えはない。
同じ寮の連中は、もう少し早く話を終わらせた。
名前を聞かれれば、アッシュと答える。
その後ろは、と聞かれても、ないものはない。どこの家か、親は誰なのかと続けられたところで、知らないものを答えられるはずもなかった。
すると、大抵、妙な顔をされる。
……だから、知らねぇって。
こちらが続きを待っていると、向こうは隣の者と顔を見合わせる。そのまま別のところへ行くこともあれば、少し離れてから、わざわざ声を落として話し始めることもあった。
聞こえているのだが。
まあ、いい。
同じことを何度も聞かれるよりは、まだましだ。
何度かそんなことが続くと、向こうから話しかけてくることも減った。
大広間では、アッシュの隣が空いていても、その先にいる知り合いの方へ座る。談話室へ入れば、こちらを一度見て、それから元の話へ戻っていく。
挨拶をされれば返す。
用があれば答える。
それくらいで済むのなら、こちらも楽だった。
ただし、口を開かなくなった連中が、こちらを見なくなるわけではない。
「……姓もないくせに」
本へ目を戻したあとで、そんな声が聞こえたこともある。
名前の後ろに何かついていれば、返事の仕方まで変えなければならないらしい。
面倒なものだ。
女の方は、また少し違っていた。
廊下ですれ違ったあとに振り返る。大広間の向こうで隣の者の袖を引き、こちらを指で示す。同じ一年の顔もあれば、どの授業でも見たことのない、年上の顔もあった。
髪か。
灰色が珍しいとは、前にもばあさんに言われたな。
だが、いくら眺めたところで、違う色に変わるわけでもないだろうに。
顔を上げれば目が合う。
けど向こうが先に逸らし、隣と何かを話しながら口元を隠す。
……何なんだ一体。
悪意があるのかと思えば、そういう目でもない。用があるのなら言えばいい。こちらを見ているだけでは、何をしたいのか分からなかった。
もっとも、尋ねれば、その分だけ話が長くなる。
アッシュは、また本へ目を戻した。
同じ寮の上級生には、目が合っただけで顔をしかめる者もいる。談話室へ入った途端、さっきまで聞こえていた笑い声が止まったこともあった。
だからといって、こちらへ来るわけではない。
アッシュが離れた席へ腰を下ろせば、やがて、また話が始まる。
……なら、そっちでやっていろ。
知らない顔は、少しずつ減っていった。
声を聞けば誰なのか分かる。廊下の向こうから近づく足音にも、覚えのあるものが増えた。
それで、わざわざ隣へ座りたくなるわけではなかった。
授業の方も、いつまでも同じではなかった。
教科書を開き、話を聞いて、羊皮紙へ書く。
初めのうちはそればかりだったが、杖を持つ時間が少しずつ増えた。温室では土に触り、魔法薬学では、自分の鍋に材料を入れるようになった。
こちらの方が、まだ何をしているのか分かりやすい。
……できるかどうかは、別だが。
「もう一度。今度は、手首の動きをよく見てください」
フリットウィックの手が、目の前で動く。
教科書にも同じ形が描かれている。どちらへ動かすのかは分かっていたし、その通りに振ったつもりだった。
だが、小さな教師の腕は、こちらほど大きく動いていない。
「肩から動かそうとしなくていいのです。ここから、こう」
……ああ。
アッシュは杖を持ち直した。
腕を動かせばいいのかと思っていたが、そうではないらしい。手首だけを返し、見せられたところで止める。杖の先も、今度は余計な方へ流れなかった。
「そうです。その動きを覚えておいてください」
もう一度、同じように動かす。
こういうことは、紙を見ているだけじゃは分からない。目の前でやってみせられれば、どこが違っていたのかくらいは分かった。
覚えたことはある。
前にはできなかったことも、少しはできるようになった。
ただ、授業が終われば、杖はマントの中へ戻す。
そこにあるものなら、手を伸ばせば取れる。
軽いものなら持てるし、少しくらい遠くても歩けばいい。それをわざわざ、取り出した棒を振って、言葉まで覚えてやり直す気にはならなかった。
必要になった時に使えばいいだろう。
薬草学では、鉢の中の葉を掴もうとして、スプラウトに止められた。
「そこを引っ張ると傷んでしまいますよ。こちらへ指を添えてごらんなさい」
言われたところへ手を動かす。
なるほど。
無理に引かなくても、土の下にあった部分まで持ち上がった。さっきのまま力を入れていれば、途中で切れていたかもしれない。
森で見かけたものと似ていても、同じものとは限らない。
食えるものに似ているからといって、何でも口に入れていいわけではないのと同じだろう。
なら、覚えておく。
土へ目を戻して、次はどこへ指を入れればいいのかを確かめた。
分からないのは、ばあさんの授業だ。
机の上にいた針が、マッチの棒にならせろという授業。
さっきまでも、机を叩いていた尻尾も、もうどこにもない。四角くて、小さくて、何もしていない箱があるだけだった。
……何でだ。
マクゴナガルがもう一度杖を振ると、鼠は元へ戻った。机の端へ向かって歩き始めたので、その足元まで目で追う。
動いている。
さっきと同じように、鼻もひくひくしていた。
できることは分かった。
だが、どうして、わざわざ鼠を箱にしなければならないのか。
箱が欲しいのなら、箱を持ってくればいい。
また鼠へ戻すくらいなら、初めからそのままにしておけばいいだろう。
列車でも、あの赤毛は鼠を黄色くしようとしていた。
確か、面白そうだからと言っていたはずだ。
……これも、それか。
杖持ち共の面白いというのは、未だによく分からない。
「では、教科書を開きなさい」
声がすると、周囲で紙をめくる音がした。
アッシュも机の上から目を離し、言われたところを開く。今、自分たちが習っているのは、先ほど見せられたものより、もっと手前の話らしかった。
分からないことに、いちいち引っかかっていても仕方がない。
聞いていなければ、あとでまた説明されることになる。
魔法史の授業では、知らない名前と、覚えにくい年の数ばかりが増えていった。
昨日聞いた名前と、今日聞いた名前。
どちらが先だったのかを教科書で確かめているうちに、話は次へ進んでいる。よくも、これだけ前のことを覚えていられるものだ。
それでも、杖持ち共が、初めから今のように暮らしていたわけではないことくらいは分かった。
今は当たり前のように使っているものを、初めて作った奴がいる。
うまくいかなかったことを、別の方法でもう一度試した奴もいる。
誰かがやって、覚えて、それを書き残した。
だから、その時にいなかった奴でも、今こうして同じことを知ることができる。
……そういうところは、すごいと思う。
本は好きだった。
自分の知らないものが、あれだけ小さな中へ詰まっている。読めば、見たことのない場所のことまで知ることができた。
教師の話を聞いて、ようやく本の説明が分かったこともある。
何も知れなかったわけではない。
ただ。
俺が知りたいことには、いつになったら出てくるんだ。
授業が終われば、次の授業がある。
ようやく図書館へ行けたと思えば、途中で本を閉じなければならない。さっきまで読めと言われていたのに、今度は読むのをやめて、別の教室へ行けと言われる。
時間が決まっているのは、分かっている。
その時間に、言われた場所へ行かなければならないことも覚えた。
だから、こうして本を戻しているだろう。
……あと少しなのに。
閉じかけた頁の先へ目を走らせ、結局、棚へ差し込む。鞄を持って廊下へ出ると、向こうでは別の連中が言い合っていた。
またか。
家の名前。
親の名前。
誰の血がどうしただの、どこの寮が何だの。
昨日も聞いたような話だ。
片方が黙れば笑い、言い返せば、今度はその言い方が気に入らないという。自分のことを言われたわけでもないのに、横から加わる奴までいた。
群れ同士が争うことなど、珍しくもない。
森では、餌も水場も寝床も、譲ってばかりはいられなかった。同じ群れの中でさえ、食い物の取り分や番を巡って牙を剥くことはある。
喰うか、喰われるか。
腹を空かせれば動けなくなる。
動けなければ、今度は自分が喰われる。傷を負ったまま動けずにいる奴を、ほかの獣が待ってくれるはずもない。
取られたくなければ守る。
勝てないのなら退く。
間違えれば、それで終わりだ。
だが、ここの連中は、そこへ座れば飯が出てくる。
眠る場所も、雨を避ける屋根もある。今日、誰かに言い負けたせいで、明日の食い物がなくなるわけでもない。
……暇なのか。
それなら、好きにしていればいい。
アッシュは、言い合う連中の横を通り過ぎた。どちらの色のネクタイが多かったのかも、わざわざ確かめもしなかった。
こちらの道を塞がないのなら、それでいい。
にんげんの群れには、森にはないものがある。
確かに、その通りだった。
けれど、わざわざ森を出てまで聞きたかったのが、こんな話かと言われれば。
くだらねぇ。
これに付き合うくらいなら、さっきの本をもう少し読んでいたかった。
寮へ戻れば、授業は終わる。
ただし、静かになるわけではなかった。
談話室では誰かが笑っている。部屋へ戻れば、今度は隣の寝台で鞄をひっくり返す音がする。何かが見つからないらしく、床へ置いたものを一つずつ持ち上げては、また落としていた。
……置いたところくらい、覚えておけよ。
その脇を通り、自分の寝台へ向かう。
柔らかい。
初めて腰を下ろした時には、思っていたよりも身体が沈んだ。上にあるものも、掛けるものも、雨に濡れていない。夜中に風が強くなっても、屋根の下で場所を移さなくて済む。
食い物を探す必要もない。
水を飲むために、暗い中を歩いていかなくてもいい。
そこは、確かに便利だった。
だが、横になって顔を向ければ、すぐ隣にも寝台がある。
そこにも、にんげんがいる。
……同じ群れ、なのか。
あの帽子が名前を叫んだ時、こちらを見ていた目は覚えている。
何もしていないうちから顔をしかめ、名前を聞いただけで笑っていた。隣へ耳打ちしたあとで、二人揃ってこちらを見た奴もいた。
その連中と同じところへ入れられた。
だから、もう目を閉じていいのか。
そんなわけがないだろう。
寝台のカーテンを引けば、顔は見えなくなる。
だが、そこにいることまで変わるわけではない。布一枚の向こうで、誰が何をしているのか分からなくなるだけだった。
話し声が途切れる。
寝具の擦れる音が、少しずつ減っていく。
まだ、起きている。
向こうで誰かが身体の向きを変えた。しばらくすると、その呼吸もゆっくりになった。
アッシュは、扉の方をもう一度確かめてから、目を閉じた。
どれくらい経ったのか。
床を踏む音に、瞼が開いた。
近い。
寝台を降りた足が、もう一度、床を踏む。
こちらへ来るのかと思って息を抑えると、その足音は横を抜け、扉の方へ向かった。
扉が開く。
閉まる。
……そっちか。
暗い布の向こうを見たまま、耳だけを向ける。しばらくして同じ足音が戻り、寝具が沈む音を聞いてから、ようやく首元の布を掴んでいた指を緩めた。
何もなかった。
だから、もう一度、目を閉じる。
眠ってはいる。
朝までずっと起きているわけではない。目を開けた時には、隣で身支度を始めていることだってあった。
ただ、起きるたびに、まず周りを確かめる。
誰かが近づいていないか。
さっきまでと、違う匂いがしないか。
それを確かめてから、まだ暗ければ眠り直す。
身体を起こしても、頭の奥に重いものが残る朝はあった。目を擦ったところで、すぐには消えない。
それでも、扉を閉める時に音を立てるのが誰か、夜中に起きるのが誰かは、少しずつ分かるようになった。
あいつか。
……だから、何だ。
誰なのかが分かっても、どちらへ来るのかは聞かなければ分からない。
森でだって、どこでも好きに眠れたわけではなかった。
だが、寝床は選べた。風の向きと、近くに残った匂いを確かめてから、身体を伏せる場所を決められた。何かが近づいてくるのなら、その前に別の場所へ移ればよかった。
ここで同じことをすれば、勝手に出歩くなと言われるのだろう。
まったく。
寝る場所くらい、自分で選ばせろ。
ばあさんの家にも、決まりはあった。
出かける前に言え。戻ったら手を洗え。呼ばれたら返事をしろ。
何かをするたびに声をかけられたし、黙っていれば、聞こえているのでしょうと言われた。
あれも、十分に面倒だった。
だが、廊下を歩く音がすれば、誰なのかは分かった。扉が開く前から、向こうにいるものの匂いも知っていた。
この城は、違う。
教室を出ても、廊下にいる。
廊下を抜けても、大広間にいる。
本を開いていても、背中の方を知らない足音が通っていく。
どこへ行っても、にんげんだ。
少しくらい、放っておいてくれればいいのに。
群れの掟は守っている。
決められたところへ行く。呼ばれたら返事をする。何もしてこない奴に、こちらから手を出すこともない。
それで、何が足りない。
朝になれば、また部屋を出る。
飯を食い、教科書を抱え、次の教室へ向かう。本を読み、閉じろと言われれば閉じ、暗くなれば同じ寝台へ戻った。
中庭の木の色が変わっていた。
緑ばかりだった枝の間に、隙間が増えた。歩けば足元で乾いた葉が鳴る。朝の廊下の空気は、初めてここへ来た時より冷たくなっていた。
……もう、そんなに経ったのか。
ホグワーツへ来てから、二か月が経っていた。
昼の飯を終えると、アッシュは図書館へ向かった。
階段を上がり、廊下を曲がる。
道を覚えるために、何度ここを通ったのかは知らない。少なくとも今は、前を歩く奴の匂いだけを頼りにしなくても、行きたいところへ行けるようになっていた。
扉を抜ければ、紙と古い表紙の匂いがする。
今朝の本は、戻しておいたところにあった。
抜き取り、背中を壁へ向けられる席へ持っていく。鞄を足元へ下ろし、読んでいた頁を開いた。
……ここからか。
並んだ文字へ目を走らせる。
これで、何冊目だっただろう。
初めて見る言葉は、まだある。
読めば分かることもあれば、別の本を開かなければ分からないこともあった。前に読んだ本には、もっと詳しく書かれているという別の本の名前があって、棚のどこにあるのかを探すだけでも時間がかかった。
ようやく見つけて、読んだ。
確かに、説明はあった。
元の本へ戻れば、さっきまで分からなかったところも読めるようになった。
……それだけだった。
違う。
次の頁をめくる。
これも、違う。
知っていることは増えている。
同じ言葉を見かけた時、いちいち別の本を開かずに済むようになった。授業で聞かされたことと繋がって、ようやく分かったところもある。
何も分からなかったわけではない。
だが。
肝心なものは、見つからねぇ。
ここにある本を、全部読んだわけでもない。
まだ見たこともない表紙が、棚の端まで並んでいる。違うところを探せば、今まで知らなかった話が見つかるかもしれない。
それくらいは、分かっている。
だから、今日も来た。
昨日も、その前の日も、同じことを考えてここへ来た。
何かあるかもしれない。
今度こそ、見つかるかもしれない。
……いつまで、そう思っていればいい。
頁を押さえた指が、紙の端を擦る。
目の前の行には、見覚えがあった。
さっきも、ここを読んだ気がする。なのに、その先に何が書いてあったのかを思い出せない。
舌の先を、奥歯へ押しつけた。
もう一度、初めから読む。
ホグワーツには、知らないものがたくさんある。
あの時、ばあさんは、そう言った。
今まで知らなかったことを知れば、見えなかったものが見えるようになることもある、とも。
……確かに、知らねぇものだらけだったよ。
魔法も。
杖持ち共の昔話も。
この城の歩き方も。
知ったことなら、いくらでもある。
けど、こんなもんを知るためだけに、わざわざ森を抜けたわけじゃねぇんだぞ、ばあさん。
指先で、紙の端が折れかけた。
アッシュは手を止めた。
曲がったところを戻し、押さえる場所を少しずらす。
……違う。
あのばあさんも、必ずここにあるとは言わなかった。
それは、ちゃんと聞いていたさ。
その上で、行くと決めたのは
嫌なら、森へ戻ればよかった。
誰にも聞かず、今までと同じように暮らすことだってできた。それでも、ここへ来る方を選んだ。
何も見つかっていない。
だから帰る、で済むのなら、初めから出てきてなどいない。
……だが、このままでいいのか。
明日も、同じように教室へ行く。
その次の日も、本を開く。
そうしていれば、そのうち、何か分かるのか。
分からないから、読んでいるのだが。
斜め向こうで、椅子の脚が床を擦った。
目が上がる。
鞄を持った生徒が、席を立ったところだった。歩いてくるかと思ったが、その足は机の間を抜け、扉へ向かっていく。
こちらへ来るわけではない。
それを確かめてから、目を戻した。
……また、どこまで読んだのか分からなくなった。
紙の上を、指で辿る。
その途中で、今朝、教室に残された時の声が浮かんだ。
「アッシュ。十分に眠れていますか?」
変身術の授業が終わったあとのことだ。
片づけた鞄を持って出ようとしたところで、
何か、間違えたか。
言われたことは、やったはずだった。
途中で話をしていたわけでもないし、勝手に席を立ってもいない。
そう思っていたところへ、眠れているかと聞かれたのである。
「……眠ってる」
「朝、起きた時に疲れが残ってはいませんか」
「起きて、ここまでちゃんと来てるだろ」
立ってもいる。
眠ったまま教科書を開くことはできないし、ここまで歩いてくることもできない。
ところが、ばあさんは、それでは済まないらしかった。
「授業へ来られることと、十分に休めていることは、同じではありません」
「寝坊もしてねぇし、言われたことはやってる」
「ええ。それは分かっています」
……なら、何だ。
眉を寄せると、向こうも少しだけ眉間へ皺を寄せた。
怒っている時とは、違う。
あの、こちらが何か言うまで待っている目だった。
やっぱり、苦手だ。
「寮で、何か困っていることはありませんか」
「別に」
「誰かに、何かを言われたりは?」
「知らねぇよ。言いたいやつは、勝手に言ってる」
何も言われていないわけではない。
だが、いちいち聞いて、覚えて、全部このばあさんへ話せというのか。
そんなことをしている間にも、また時間が過ぎる。
扉の向こうからは、もう足音が聞こえなくなっていた。
「ばあさん。もう行っていいか」
マクゴナガルが口を閉じた。
……また、何か言われるか。
そう思ったが、こちらへ手を伸ばしてくることも、座り直せと言うこともなかった。
「……分かりました。ですが、何かあれば私のところへ来なさい。授業のことだけでなくても構いません」
「ああ」
「返事だけで済ませてはいけませんよ」
……じゃあ、今、何をすればいいんだ。
答えたところで、また話が続くだろう。
アッシュは鞄を持ち直し、教室を出た。
扉を抜けても、しばらく背中を見られていた。
知っている。
あのばあさんが、あの晩こちらを笑っていた連中と同じ目をしているわけではないことくらい。
教室へ来るなと言われたこともない。できなかったところは、フリットウィックもスプラウトも、もう一度やってみせた。
だから、ここにいる奴が、全部同じだとは思っていない。
それでも。
呼ばれて、聞かれて、そのたびに答えていると、もう何も聞くなと思う時がある。
困っているのなら言え。
何かあったのなら話せ。
……言えば、どうにかなるのか。
口へ出したところで、隣の寝台の奴が、目を離してもいい相手に変わるわけではない。
探しているものが、急に見つかるわけでもない。
自分で確かめなければ、分からないだろう。
図書館の扉が開いた。
廊下の話し声が、近くなる。
顔を上げると、教科書を抱えた生徒が何人も外へ向かっていた。
……もうか。
まだ、ここまでしか読めていない。
先の行へ目を走らせる。もう少し読んでから、と考えたところで、遅れれば何を言われるかは分かっていた。
アッシュは本を閉じた。
棚へ戻し、隣にある背表紙の色も覚えておく。
次は、ここからだ。
それだけ確かめて、鞄を持つ。
今日も、知らないことを教わるのだろう。
……そのうちの一つくらいは、俺の知りたいことであってくれよ。
午後の魔法薬学は、教室へ入る前から分かった。
臭い。
扉の向こうから、いつもと違うものが漏れてくる。
湿った草と、乾いた土。それに混じって、鼻の奥を細く刺すような匂いがした。
……今日は、何だ。
教室へ入ると、教師の机に、蓋の開いた壺が並んでいた。
近くを通っただけで、鼻の奥がむずむずする。アッシュは息を短く吐き、できるだけ顔を向けないようにして、自分の席へ進んだ。
棚の匂いには、覚えのあるものも増えた。
どの辺りに何があるのかも、前ほど分からなくはない。
だが、授業に使うものまで、毎回同じではなかった。
慣れたと思えば、また別のものを持ち込んでくる。
まったく。
教科書を置き、椅子へ腰を下ろした。
鼻を鳴らすと、隣から視線が向いた。
淡い金色の髪。
カリーナ・マルフォイ。
名前は、覚えている。
同じ寮で、同じ一年。教室でも談話室でも見かける顔だった。
その先のことは、知らない。
少女の机には、教科書と羽根ペンが揃えて置かれていた。皿と道具も、それぞれ重ならないように並んでいる。こちらが肘を置く辺りには、何もなかった。
随分と、きっちりしている。
カリーナはこちらの顔を一度見たが、何も言わず、前へ向き直った。
アッシュも教科書を開く。
それだけなら、別に構わない。
スネイプの低い声が、教室に響き始めた。
今日使うもの。
切るところと、残すところ。
鍋へ入れる順番。
聞き落とせば、あとで困る。
前の実習では、火をつけてから必要なものを探すことになった。手を止めている間にも鍋は熱くなっていくし、教師の説明も待ってくれない。
先に並べておけばいい。
そういうことなら、分かる。
教科書と手元を見比べ、使うものを近くへ寄せた。
材料を切ると、中から別の匂いが出てきた。
火にかければ、また変わる。隣の鍋からも、その向こうからも、違うものが混じって近づいてきた。
鼻が、その一つを拾おうとする。
……今は、いい。
どこから来るのかを、いちいち確かめなくていい。
目の前の鍋と、教師の声。今はそちらへ意識を向けた。
匂いが消えるわけではない。
だが、そればかりを追わないようにはできる。あとは、手順を間違えずに終わらせればいいだけだった。
「火を弱めろ」
近くから、声がした。
顔を上げると、鍋の向こうに黒いローブがある。スネイプの目は、こちらの手元を見ていた。
「そのまま煮立たせるつもりか」
……ああ、これか。
鍋の縁に、細かな泡が増えていた。
火を弱め、教科書を確かめる。確かに、そこまで熱くする前に調整しろと書かれていた。
見ているつもりでも、ほかへ気が向けば、その間に変わってしまう。
面倒だが、止まれと言って止まるものでもない。
もう一度、鍋へ目を戻した。
スネイプは中の様子を見てから、隣の机へ移っていく。何か言われるかと思ったが、それ以上の声は飛んでこなかった。
……なら、これでいいんだな。
次の材料へ手を伸ばす。
しばらくすると、鍋から立つ匂いが、また変わった。
鼻の奥が、つんとする。
アッシュは顔を背け、鼻の下を指で擦った。
「……気分でも悪いの?」
隣から、小さな声がした。
「何が」
カリーナがこちらを見ていた。
彼女の目は一度、自分の鍋へ戻り、それからまた、アッシュの顔へ向いた。
「さっきから、ずっと顔をしかめているじゃない」
好きでそうしているわけではない。
「臭ぇんだよ」
少女の眉が、少し上がった。
「……何が?」
「ここの空気。今日のやつは、特に鼻につく」
鍋の方へ顎を動かす。
カリーナもそちらを見て、それから教師の机へ目を向けた。
「材料の匂いでしょ。そんなに気になるの?」
「ああ」
お前は、そうでもないのか。
少女は、小さく息を吸った。
自分でも確かめているらしい。だが、こちらのように顔をしかめることも、鼻を擦ることもなかった。
……同じところにいるのにな。
気のせいだとでも言われるかと思ったが、マルフォイは少しだけ口を閉じ、それから手元へ目を落とした。
「具合が悪くなったら、先生に言いなさいよ」
「別に、倒れやしねぇよ」
「そう。ならいいけれど」
前の方で、次の手順を告げる声がした。
マルフォイは鍋へ向き直り、用意してあったものを取り上げた。こちらが何か言うのを待っている様子も、それ以上顔を覗き込んでくる様子もない。
……終わりか。
なら、いい。
アッシュも、言われたものへ手を伸ばした。
匂いは、最後まで残った。
それでも、何かを入れ忘れることも、鍋をひっくり返すこともなく、その日の実習は終わった。できたものを提出し、道具を洗う。
水をかけると、また匂った。
……まだ出てくるのかよ。
できるだけ顔を離して、残っているものを洗い流す。机の上を片づけ、終わっていいと言われたところで、すぐに鞄を持った。
教室を出る。
廊下で息を吐くと、ようやく鼻の奥へ入ってくるものが少なくなった。
こっちの方が、まだましだ。
「まだ気になるの?」
後ろから声がした。
振り向くと、マルフォイが扉を抜けてきたところだった。鞄を肩へ掛け直しながら、こちらを見ている。
「ここなら、まだましだ」
「そう」
少女は、開いたままの扉へ目を向けた。
「それなら、もう少し離れればいいでしょう。そこで待っていても、また匂ってくるわよ」
……それもそうか。
扉が開いていれば、中の空気が出てくる。
わざわざ、その通り道で立ち止まっていることもなかった。
アッシュが一歩、横へ退く。
カリーナはその脇を通り過ぎた。先に出ていた同じ寮の女たちへ向かって、歩いていく。
その肩で、淡い金色が揺れた。
鼻先を、何かがかすめた。
……ん?
思わず、顔が向く。
鍋の匂いではない。
湿った石の匂いでも、行き交う連中の服に残った匂いでもなかった。
今、通った。
その中に、何か。
……似ている。
探していたものに、近い。
もう一度、息を吸う。
合っているような。
どこか、違うような。
どっちだ。
確かめるよりも先に、別の生徒が間を横切った。教室から出てきたローブが、鼻のすぐ近くを通る。
薬の匂いがした。
その向こうにも、人がいる。
何人もの足が行き交い、さっきまで拾えたものが、もう分からなくなっていた。
「……今の」
淡い金色は、少し先に見えた。
カリーナは振り返らない。
隣へ並んだ少女が何かを話し、その顔がこちらから見えなくなる。
アッシュは、遠ざかっていく後ろ姿を、もう一度目で追った。
「きゅ、吸血鬼というのは、その、よ、夜に 」
……クソ。
次の教室へ入ってから、何度そう思ったのかは分からない。
闇の魔術に対する防衛術。
目の前には教科書。
横には羊皮紙。
前には、紫色のターバンを巻いた杖持ち。
そして、ニンニク。
今日も、ニンニクずくしだ。
アッシュは白いマフラーへ鼻と口を押しつけ、できるだけゆっくりと息をした。
廊下で拾ったものが、まだ鼻の奥に残っている気がしていた。
あの女の近くを通った時だ。
間違いなく、その時に、何かを感じた。
……何だったんだ。
思い返そうとして、息を吸う。
鼻の奥が、つんとした。
違う。
こっちじゃねぇ。
顔を背けても、窓へ向けても、匂いはついてくる。どこか一か所にあるのなら、そこから離れればいい。さっきの教室のように、扉から退けば済むのなら、そうすればいい。
だが、ここはどこにいても臭かった。
そのうえ、あのターバンが動く。
クィレルがこちらの列へ近づくと、それだけで匂いが濃くなった。生徒の教科書へ身を屈めれば、今度はすぐ近くから鼻を刺してくる。
……来るな。
こっちは分かっているから、そこから説明しろ。
もっとも、そんなことを口にしても、聞きたいのは説明の方だと思われるのだろう。
白い布を、もう少し鼻へ押しつけた。
匂いを追わないようにすることはできる。
さっきの魔法薬学でも、鍋と教師の声へ意識を向けていれば、授業にはついていけた。
なのに、ここでは、ようやく文字へ目が向いたと思ったところで、また鼻の奥が痛くなる。
息を止め続けるわけにもいかない。
……どうしろってんだ。
向こうの席では、袖へ鼻を押しつけている奴がいた。その隣も、顔をしかめて窓の方を見ている。
俺だけじゃないだろう。
どうして誰も、あれをどうにかしようと言わない。
「(クッッッソ)」
今すぐに、あのまん丸頭のターバンをひん剥いて、石鹸で洗い流してやりたい。
いや、石鹸でなくてもいい。
水でも湯でも、あの匂いが落ちるのなら何だっていい。
魔法だってあるだろう。
鼠を箱にしたり、階段を勝手に動かしたりするくせに、どうして、こういうものはそのままなのか。
……やっぱ杖持ちのことは分からねぇ。
ただ、実際に剥ぎ取れば、どうなるのかは分かる。
ばあさんに呼ばれる。
何を考えているのですかと小言の嵐に呑まれるだろう。
臭ぇからだと答えても、絶対に、それでは終わらないし放してくれやしない絶対に。
そこまで考えて、アッシュは教科書へ目を戻した。
面倒なことを増やすのは、もういい。
だから、早く終われ。
「で、では、吸血鬼への、た、対処についてですが……あ、いえ、その前に、先ほどのところへ、も、戻りましょう」
後ろから、小さく呻く声がした。
……また戻るのか。
さっきから、進んだと思えば、前の説明へ戻っている。
言葉がつかえるのを待っていると、その途中に別の話が入ってくる。どこまで書けばいいのかを確かめているうちに、今度は次の話へ行ってしまった。
途中から、アッシュは教科書を見ることにしていた。
聞き取れた言葉を探せば、少なくとも、今どの辺りの話をしているのかは分かる。
後ろでは、そのたびに紙を動かす音がしていた。
「今ので四枚目だぞ……」
ロンの声だった。
顔を向けると、机の端に羊皮紙が重なっている。赤髪の少年は、そのうちの一枚を持ち上げ、もう一度眺めてから、脇へ押しやった。
何だ、あれ。
文字の間を、線が何本も走っていた。
端には小さな数字が並び、そこから伸びた矢印が、別の矢印と交差している。
右へ行って、下へ行って、また上へ戻る。
……この城の道か。
少なくとも、今のアッシュには、どこから辿ればいいのか分からなかった。
「全部書き直さなくてもいいでしょう。番号をつけておけば 」
「つけてたんだよ。途中までは」
ロンが紙を持ち上げる。
ハーマイオニーの口が止まった。
細かい数字を目で追い、線の重なったところで少し眉を寄せてから、自分の羊皮紙へ顔を戻す。
そちらにも、さっきまでなかった書き足しが増えていた。
なるほど。
この女でも、どうにかならないことはあるらしい。
「きゅ、吸血鬼には、に、ににんにくが、きき、効きます。で、ですが、それだけで 」
「先生」
隣で、手が上がった。
いつもなら、ここから答えが出てくる。
だが、今日は少し違った。
「は、はい。グ、グレンジャーさん」
「先に要点を黒板へ書いていただけませんか。どの説明をどこへ書けばいいのか、分からなくなってしまって」
ハーマイオニーは羽根ペンを置き、黒板とクィレルを交互に見ていた。
珍しいこともある。
いつもはこちらの羊皮紙まで覗き込んでくるのに、今は、書いていないところがあっても何も言わない。
「そ、そそ、それは失礼。で、では、い、今から、書きますね」
クィレルが黒板へ向き直った。
……それでいい。
文字なら、途中で前の話へ戻っても、消えずに残っている。こちらが見ている間に、勝手に別の頁へ行くこともない。
アッシュも少しだけ顔を上げた。
その時。
「…………グー」
後ろから、別の音がした。
振り向く。
ハリーだった。
眼鏡が、少しずれている。
顔は開いた教科書のすぐ上。握った羽根ペンは、そのまま止まっていた。
……寝てやがる。
隣では、あの赤髪が四枚もの羊皮紙を駄目にしているというのに。
この匂いの中で、よく眠れるものだ。
斜め後ろで、椅子が鳴った。
アッシュはそちらへ目を向けた。
だが、ハリーの顔は上がらない。
ロンが紙を動かしても、目の前をクィレルが歩いても、肩がゆっくり上下しているだけだった。
……起きねぇのか。すげぇ。
すぐ近くに、ほかのにんげんがいる。
手を伸ばせば、届くところに。
しばらく見ていたが、やはり動かなかった。
アッシュは、ずり落ちかけたマフラーを引き上げた。
「おい、起きろよ、ハリー。起きろってば」
ロンが肘で小突く。
それでも、すぐには起きない。
もう一度名前を呼ばれて、ようやく肩が動いた。
「うっ……ごめん」
何に謝っているんだ。
ハリーは眼鏡を押し上げ、黒板を見た。それから自分の手元へ目を落とし、何も書かれていない羊皮紙を見つめる。
「……いつから書いてたの?」
「今からだよ。君、運がいいな」
ロンが、机の端へ積んだ羊皮紙を見た。
ハーマイオニーも二人へ顔を向けたが、何か言う前に、黒板へ新しい文字が増えていく。それを見つけると、今度はそちらを優先した。
アッシュも、前へ向き直る。
後ろでは、今からでも間に合うとロンが言っていた。
急に動き出した羽根ペンの音と、机を擦る袖の音が聞こえる。
……騒がしい。
自分の羊皮紙へ目を落とし、黒板の続きを書こうとしたところで、また鼻の奥がむずむずした。
手が止まる。
顔を上げれば、吸血鬼への対処法が並んでいる。
ニンニク。
ああ、効くだろうな。
それが嫌いだというのなら、その吸血鬼も、この教室へは入りたくないに違いない。
実物を見たことはないが、それくらいは分かった。
だが、今ここにいるのは、俺だ。
追い払う方法を教わったところで、授業が終わるまで出ていけないのなら、こちらには何の役にも立たない。
吸血鬼のことは、ひとまず分かった。
で、このニンニクへの対処法は、いつになったら教えてくれるんだ。
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まだ序盤の序盤すぎてビルドアップのためにもカリーナを前面に出せていないのが悲しい...
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