授業も終わり昼休み。僕は昼食を摂る為に学食に来ていた。本当ならお弁当があったんだけど、リンと水があまりにも暇だったらしく、暴れ回ってお腹が空いて僕のお弁当を食べてしまうという行動を取ったため、僕は学食で昼食を摂る事になったのだ。
「おっ、元希じゃないか。久しぶりだな」
「健吾君。そうだね、久しぶり」
最近は色々とあって健吾君と会う機会が減っていたので、久しぶりに会えてうれしいな。
「聞いたぞ。お前、何か大変なんだってな」
「えっ、うん……」
大変の内容がどれかによって色々と違ってくるので、とりあえずは相槌でしのぐ。健吾君がどこまで知ってるのかが分からないからね。
「クラスの連中がひがんでるぞ。『何でアイツばっかりモテるんだ』って」
「モテる? えっと……リンの事なら普通科の人たちにも伝わってると思うんだけど」
「ああ、聞いてるぜ。ここら一帯の神様なんだろ? でも、見た目は完全に女の子だからな。『そう言った趣味』の連中にはストライクなんだよ」
「そう言った趣味……?」
「身も蓋も無い言い方をすれば、所謂ロリコンだな」
「あぁ……」
リンの見た目は確かに幼い女の子だもんね……でも、ロリコンって種類の人たちは愛しむだけで手を出したりはしちゃいけないんじゃなかったけ……
「何かスローガンがあったよね?」
「スローガン? ……ああ、『イエスロリータ・ノータッチ』だっけか?」
「そうそれ……だから実害はないと思うよ」
「それだけじゃないんだけどな。アレクサンドロフ? だっけ、あの子も人気高いぜ」
「そうなの? まぁ、バエルさんは面倒見が良いし、美人だもんね」
「それと同年代なんだけど母性に満ち溢れてるところが良いんだと。正直俺には分からないが」
「僕にも分からないよ……」
バエルさんは確かに人気がありそうだけども、実際に声を掛けたりしてる人を見かけた事は無い。それどころか、バエルさんが僕以外の男子と話してるところすら見た事が無いような気もするんだけどな……本当に人気が高いのなら、それなりに話しかけられそうなんだけどな……
「でも、リンやバエルさんの人気が高いのと、僕がひがまれる理由にどんな関係が?」
「元希も大概鈍いよな。その二人だけじゃないけど、魔法科の上位の女子は普通科でも人気が高いんだよ。理事長や学年主任の早蕨先生もだけど。その全員が元希に好意を寄せてるんだ。お前がひがまれてもしょうがないって事だよ」
「好意って……僕だってみんなの事好きだよ?」
「違う違う。元希の『好き』と、他の人の『好き』は似ているようで違うんだよ。まぁ、お前も何となくは分かってるんだろうけどな」
うん、それくらいは分かってるんだけど、それを認めてしまったら、なんだか僕が自惚れやろうみたいになるのではっきりとは認めていない。それに、健吾君の考えが間違ってる可能性だってあるんだし……
「そういえば、魔法科の中でも健吾君の話を聞いたよ」
「俺の?」
「うん。『普通科のトップで入学した男子がカッコイイ』って。これって健吾君の事だよね?」
「まぁ今年のトップ入学は俺だけど、噂になるほどでもないと思うだがな」
「でも、健吾君は僕から見てもカッコイイよ。背が高いし……」
「気にし過ぎだろ。元希だってまだまだ成長期なんだからよ。これから伸びるって」
「だと良いけどな……」
健吾君は既に170以上あるからいいけど、僕なんて炎さんより小さいのだ……気にし過ぎって事は無いんじゃないかな……
「とにかく、元希が普通科の男子からひがまれてるのは確かだ。もし元希が成績優秀者じゃ無かったら襲われてたかもな」
「怖い事言わないでよ……」
「ま、普通の男子じゃ元希には敵わないだろうがな。何せ世界に三人しかいない魔法師なんだから」
「魔法を使えるなら勝てるかもだけど、純粋な腕力じゃ敵わないけどね……」
「違いない。おっと、俺はそろそろ行くな」
「うん、じゃあまた」
「おう」
健吾君と別れて僕は空いている席に座ってご飯を食べ始める。何だか周りがざわついたような気もするけど、多分健吾君に見惚れた女子たちの声なんだろうな。
元希君も健吾君もトップ入学だけあって人気があるのですが、お互いその事には気づいていない様子……