その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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元希君無双……


授業の目的

 御影さんに闇属性のオーガを担当してもらっているのだが、やはり攻撃魔法は得意ではなさそうだ。基本的に御影さんは後衛からの援護射撃を得意としている人なので、前衛で攻撃するのは若干他の三人と比べると慣れていない感じが見受けられる。

 

「御影さん、大丈夫?」

 

「大丈夫、だけど全然倒せない……」

 

 

 既に結構な数の魔法を撃ち込んでいるのだけども、御影さんの攻撃魔法の威力ではなかなかオーガを倒しきれない。

 

「代わる?」

 

「でも、今回の授業の目的は、ボクたちの実力を見たいんでしょ? 元希君に任せたらダメなんじゃないの?」

 

「別にダメじゃないと思うけど……それに御影さん、そろそろ辛いんじゃないかな?」

 

 

 さっきから詠唱に躓いたり、魔法が明後日の方向に飛んで行ったりし始めているのだ。

 

「攻撃魔法が苦手なだけ。魔力的にはまだ余裕はあるよ」

 

「じゃあ今度はコイツを足止めして。そっちの実力も見たいだろうしさ」

 

 

 本当は攻撃魔法の実力と適性を見たがってたんだけど、これ以上やっても御影さんが前衛魔法師に向いていると判断される事は無いだろう。むしろこれ以上はイジメに見えてくるかもしれない……

 

「足止めね。分かった」

 

 

 御影さんはすぐに詠唱を済ませ、オーガの足止めに成功する。やはり彼女は後方支援やこういった足止めを得意とする魔法師なんだと、この一瞬で理解した。

 

「じゃあ悪いけど、他の三人も気になるから一撃で倒させてもらうよ」

 

 

 僕は御影さんが足止めしてくれているオーガの目の前に移動して、魔法の詠唱を始める。戦闘開始時に「それ程強くは無い」と言っていたけど、あれは恵理さんや涼子さんの基準で「強くない」のだ。魔法大家出身とはいえ、高校一年生が倒せるレベルでは、最初から無かったのだ。

 

「光よ、不浄なる者に裁きの鉄槌を『トールハンマー』」

 

「元希君……それAランク魔法師でも使える人が少ない超上級魔法……」

 

 

 この間リンに身体を乗っ取られた時に、何個か新しい魔法を覚えたのだ。これがその一つである、光属性魔法最高の広範囲魔法『トールハンマー』。光の槌が、術者が敵と判断した者を叩き潰す魔法だ。

 

「さて、残りは二体だね。御影さん、援護に行こうか」

 

「う、うん……でもさ、元希君があんな魔法を使うって事は、あのオーガって結構強かったんじゃないの?」

 

「さぁ? 僕は確実に倒せる魔法を使っただけだから、あのオーガがどのくらい強かったのかは分からないよ」

 

 

 移動しながら、御影さんはさっき使った魔法について、そしてあのオーガの強さについて聞いて来たけども、僕には正確な強さなんて分からないし、自分で言ったように確実に倒す為にあの魔法を選んだのだ。禁忌魔法の召喚でも良かったのだけども、生憎僕の召喚獣に光属性はいない。雷の鷲ならいるんだけど、今回は雷はあまり効果無いもんね。

 

「さてと、到着したけど……」

 

「かなり苦戦してるね……」

 

 

 残り二体のオーガの属性は火と土。これに相性の良い魔法は水と風、そして岩だ。つまり三人共相性の良い魔法を使えるのだけども、欠点は足止めに向いている魔法が少ない事だ。炎さんの岩石落としや美土さんの落とし穴などはあるのだけども、それくらいでは足止めにならないくらいの強さはあるのだろう。

 

「水奈! そっちに行った!」

 

「分かってますわ! 『ウォータースライサー』」

 

「『ウインドカーテン』」

 

 

 なるほど、足止めではなく自分たちの姿を隠して攻撃するのか。確かにそれでも有効な魔法ではあるのだけど、相手の高さを計算に入れてないので、上からは丸見えだったりする。

 

『元希君、もう十分測定出来たから終わらせちゃってもいいわよ』

 

「やっぱり遊んでたんですか……強過ぎですよ、この設定は」

 

『元希君がいるから安心してこの設定にしたのよ。四人もかなり頑張ってるけどね』

 

 

 まるで最初から僕が全部倒す事を決めていたかのような口ぶりの恵理さんにため息を吐きたくなる気持ちを禁じえなかったけど、とりあえずは耐え、僕は残り二体のオーガを倒す事にした。

 

「御影さんは三人にダメージが飛び火しないように結界を」

 

「分かった」

 

「水龍よ、我が求めに応じ顕現せよ! おいで、『水』」

 

「やれやれ、人使いの荒い主様じゃの」

 

「普段は休んでるんだから、偶には戦いたいでしょ?」

 

 

 僕の問い掛けに二ヤリと笑った水は、その後瞬殺で二体のオーガを倒したのだった。




四人もちゃんと強いんですけどね……

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