その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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色々と言っていますが、要するに自分が楽をしたいだけなのかも……


訓練の理由

 放課後になり、僕たちは秋穂さんとバエルさんと合流して体育館に向かう。何が目的なのか良く分からない状態だけども、とりあえずは危ない目に遭う事は無いだろうと確信できているのでそれほど危機感は抱いていない。

 

「元希さん、私たちは何で呼ばれたのでしょうか?」

 

「炎たちならまだ分かるけど、クラスの違う私たちまで呼ぶなんて、理事長は何を考えているの?」

 

「詳しい事は僕も分からないけど、多分恵理さんはみんなに期待しているから呼び出したんだと思う」

 

 

 期待値の高い――入学試験で上位五名だけがS組に入るのだが、秋穂さんは元々僕がいなければS組に入れるだけの実力はあるし、編入とはいえバエルさんもかなり高い魔力を有している。

 だから恵理さんは秋穂さんとバエルさんも一緒に呼び寄せて直接指導をしようと考えたのではないだろうか。もちろん、直接ではないかもしれないけど……

 

「ところで元希様、先ほどから水様とリンちゃんのお姿が見受けられませんが……」

 

「ああ、あの二人なら一緒に食堂に行ったよ。僕にお小遣いを強請ってね……」

 

 

 昼休みから午後の授業にかけて、僕はあの二人の事を完全に失念していた。その所為で授業が終わったと同時に二人に怒られ、そしてその代償としてお小遣いを強請ってきたのだ。僕だってそれ程お金に余裕があるわけじゃないのに……

 

「あら? みんな揃ってどうしました?」

 

「涼子さん。恵理さんに体育館に来るようにと言われましたので」

 

「姉さんに? ……私も一緒に行きます」

 

「涼子さんは何も聞いて無いんですか?」

 

 

 もし戦闘訓練をするのなら、涼子さんも呼ばれていてもおかしくは無いんだけどな……呼ばれて無いと言う事は違う事をするのだろうか……それともただ単に呼び忘れたのかな?

 涼子さんも合流して、僕たちは体育館に到着した。普段は放課後の立ち入りを禁止されている場所だけあって、人の気配は全くしなかった……いや、一人の気配は確かに体育館の中にあったんだけどね。

 

「姉さん、何を企んでいるのですか!」

 

「あら、涼子ちゃんも一緒だったの。良かった、呼ぶ手間が省けて」

 

「何か用事だったんですか?」

 

「これから毎日、この七人……いや、元希君はやらなくても大丈夫だから六人ね。六人には一対一で化想モンスターと戦ってもらいます」

 

「僕はやらなくても良いなら、何で僕まで呼んだんですか?」

 

 

 どうせなら僕も戦いたいのにな……恵理さんの中では、僕はこの特別授業(?)に参加しなくても良いという事になっているらしい。

 

「元希君に見られてる方が、みんなも頑張れるでしょ?」

 

「……不純な動機で頑張られても意味は無いのでは?」

 

「あら? 見てもらうだけで良いんだから、元希君としては楽が出来て良いじゃない」

 

「………」

 

 

 別に楽をしたいわけではないんだけどな……そもそも僕に見られてるからといって、みんなの実力が跳ね上がるとは思えないんだけど……

 

「でも理事長先生。あたしたちはまだ一年だぜ? それなのにこんな戦闘訓練を積まなければいけないのか?」

 

「確かに岩崎さんの言うように、貴女たちはまだ一年生。普通ならこんなに戦闘訓練を積む必要は無いわね。現にB組以降のクラスでは、それほど架空世界での戦闘訓練はそれ程多く無いわ。でもね、最近の魔物の発生頻度はここ数年で見ても多すぎるの。日本支部の奴らでは対処出来ない魔物も現れたわ。私や涼子ちゃん、元希君がその場にいれば私たちが対処する事が可能だけど、もし貴女たちしかいなかった場合、私たちが後から駆け付けるにしても時間を稼がなければならないの。その時の為に今日あえて貴女たちが倒せるかどうか微妙な強さのオーガと対峙させたのよ。結果はまぁ、貴女たちの方が分かってるでしょうけどもね」

 

 

 恵理さんのセリフに、炎さんたちが気まずそうに視線を逸らす……あの戦闘訓練にはそんな事情が隠されていたんだ……僕はただ、みんなの実力が見たいからとしか聞かされてなかったからな……

 

「元希君が一緒にいたとしても、何時までも元希君に頼りっきりなのは貴女たちも不本意でしょうし、少しでも元希君の助けになれるように頑張ってほしいのよ。元希君はリンの代わりに土地の管理もしているし、あまり負担を掛け過ぎると結界もダメになっちゃうし」

 

「それで私たちを呼んだのですか……確かに最近大型モンスターと戦う機会がありましたが、私たちはあまり戦力になってませんでしたわね……」

 

「バエルちゃんは頑張ってたけど、わたしたちは逃げ遅れた人の誘導と、結界を張るので精一杯だったものね」

 

「今日の授業でも、元希君に力の差を見せつけられたし……」

 

「そうなの? 私は元希君とクラスが違うから分からないけど、元希君の実力は何となく知ってるつもり。確かにこのままじゃ足を引っ張るだけよね……」

 

「よし! じゃあ理事長先生、さっそくはじめてくれ!」

 

 

 何時も前向きなみんなだけども、恵理さんの言葉を聞いて少しへこんでいる。そんな中でも炎さんは何時も通りの明るさと前向きな姿勢でいち早く訓練を始めようとしている。こういったところは、僕も見習った方が良いんだろうな……




みんなそれなりに強いんですがね……
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