その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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実戦より安全ですからね……爆発しなきゃ


魔法師の現状

 キマイラとの戦闘は、思ってた以上に苦戦を強いられている。能力的にはオーガよりも弱い設定になっているのだけども、その分オーガには無かった速さがキマイラにはあるのだ。シッカリと足止め出来なければ、能力的に引く低いとはいえオーガよりも戦いにくいモンスターなのだ。

 

「いやー、元希君のチョイスもえげつないわよね。いくら人数がいるからと言って、スピード型のキマイラを選択するんだから」

 

「仮想世界とはいえ、攻撃を喰らえば痛みは残ります。攻撃力の高いモンスターを選択すれば、その分現実世界へのダメージを気にしなければいけませんからね。でもキマイラなら、それほど攻撃力は高くないですし、足止めさえしっかり出来れば簡単に倒せるはずですから」

 

「そうだけどね。でも、その足止めが難しいんじゃないかしら? 私たちや元希君と違って、あの子たちは複数の魔法を同時に展開する事だってまだ出来ないでしょうし」

 

「その為のチーム戦ですよね? 誰かが出来ない事を誰かがカバーして、そしてその誰かのカバーをまた別の人がするって感じで」

 

 

 一年生のこの時期に個人戦を想定した戦い方をさせるなんて事はしないだろうし、普通ならまだチーム戦だって考慮した動きを強いる事もなかっただろう。だけど最近は大型モンスターが現実世界に頻繁に現れたり、日本支部の魔法師のレベルが落ちてきている事から僕たち一年生も現場に派遣される事があるのだ。

 その時にチーム戦の動きを確認していなかったら、戦力どころか邪魔にしかならないだろう。だから恵理さんはS組の四人と、秋穂さん・バエルさんの二人を放課後に呼び寄せて戦闘訓練を積ませるつもりなのだろう。

 

「常に元希君が側にいるわけじゃないんだし、元希君だってあの子たちの面倒を見ながら戦うのは大変でしょ?」

 

「普通は恵理さんや涼子さんがみんなの面倒をみる立場ですよね? 僕だって一介の生徒なんですけど」

 

「元希君は既に大型モンスターの退治に参加していますし、リンさんに変わって土地神の魔法を放った実績もありますから」

 

「……退治は僕一人じゃないですし、あれだってもう一度使えって言われても無理ですよ」

 

 

 ヤマタノオロチは僕と恵理さんと涼子さんの三人で異次元に飛ばしただけだし、化け蟹だって気づいたらいなくなっていたのだ。そして土地神の魔法は、リンに身体を乗っ取られて放っただけで、僕一人で放った訳では無いのだ。

 

「でも、あの六人と比べれば、元希君は十分に最前線の戦力になるわよ」

 

「あの六人だって、前線で戦う分には十分だと思いますけど……」

 

「前線じゃダメなんですよ。今の三年と二年の殆どが研究職志望なので、最前線に駆り出せる魔法師が多くないのが現状なのです。魔法大家の出である四人と、それに準ずる実力を有している岩清水さんとアレクサンドロフさんには、出来るだけ早く経験を積んでもらって、何時でも最前線に出られるようになってほしいんです」

 

「……そう言えばこの前の戦闘でも、先輩たちはあんまり見なかったような」

 

「ヤマタノオロチの一件より前から、霊峰学園の生徒の殆どは研究職志望に変わってたのよね。それがあの一件で更に拍車が掛かって……」

 

 

 まぁ、戦闘魔法師と言っても、そう頻繁に大型モンスターが出現するわけでも無かったし、一回も出動しなくても給料は出るから希望者がいなくは無いのだろうけども、今年に入って既に二回、しかもかなり凶暴なモンスターが出現したのだ。戦闘魔法師になりたくないと思っても仕方ないのかもしれないな……

 

「僕も研究職にしようかな……」

 

「元希君は無理よ。卒業と同時にSランク判定されて国籍を奪われるから」

 

「研究職以前に一ヶ所に留まる事も難しくなりますからね」

 

「……逃げ道が無かったんだっけ」

 

 

 全属性魔法師は、その希少性から各国の応援要請に強制的に応えなければならなくなるので、国籍は無くフリー状態になるんだった……研究職に就くには国籍は必須だし、僕には無理だったんだ。

 

「あら? 気がついたら戦いが終わってるわね」

 

「映像は録画されてますから、後でゆっくり見ましょうか」

 

「ちゃんとリアルタイムで見ててくださいよ……」

 

 

 おしゃべりに熱中したのか、恵理さんと涼子さんは六人の戦い方をちゃんと見ていなかったのだ。僕は一応視界に止めてたから見てたけど、なかなか危ない場面が多かったな……明日もやるらしいけど、今度は僕も参加して手伝ってあげたいよ……




期待値が高いだけに今の成長速度では物足りない……
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