現実世界に戻ってきた六人は、まっさきに僕の許へ駆け寄ってきた。正確に言うのなら、バエルさんを除く五人が駆け寄ってきて、バエルさんはそれにつられた形だったけど。
「な、なに?」
僕があのキマイラを選んだ事は知らないはずだけど、もしかしたら直感で気が付いているのかもしれない。もしそうならば素直に謝ろう。
「元希、あのキマイラだけど……」
「うん、ごめ……」
「やっぱり元希に頼り過ぎてたんだって良く分かったぞ」
「ふぇ?」
炎さんは満面の笑顔で僕の頭をクシャクシャと撫でまわす。力がそれほどでは無かったから良いけど、もし全力でやられたら逃げたかもしれない行為だ。
「炎さんの言うとおりですわね。私たちは普段から元希様がいてくれるから、と何処かで安心していました」
「それが今日の授業、そしてこの補習で痛感しました。わたしたちもしっかりとしなければいけないのですね」
「みんなは十分しっかりしてると思うけど……」
僕の言葉に、六人が同時に首を左右に振った。
「ボクたちが納得してないんだよ、元希君」
「その通りなの。元希君から見れば十分なのかもしれないけど、私たちからしたら全然ダメ。元希君に頼ってばかりじゃダメなのよ」
「別に十五・六歳ならこれくらい出来れば周りの人は納得してくれると思うんだけど……それでもダメなの?」
僕の問い掛けにバエルさんが少し悲しそうな笑みを浮かべながら話し始めた。
「確かに世間から見れば、私たちも十分な実力を有しているのかもしれません。ですが、早蕨理事長や早蕨先生が私たちに求めているレベルは、世間の評価より遥かに高い位置なのでしょう。ですからこのように特別補習などを開いて私たちに経験を積ませようとしているのでしょう」
バエルさんはそこで一旦言葉を切って、恵理さんと涼子さんの顔を見た。おそらくは自分の推測が間違っていない事を確認したのだろう。
「そして、私たちと同学年には元希さんがいます」
「ぼ、僕?」
「はい。元希さんがいる事によって、私たちは最終的には貴方を頼ってしまうのです」
そんな事は無いとは思っている。でも、僕が思っている事と、みんなが思っている事は当然違うだろうから声にはしなかった。
「全属性魔法師である元希さんがいるから、私たちは大丈夫。などと言う安心が心のどこかにあったからこそ、私たちは授業でも何処か気が抜けていたのかもしれません」
「確かに……バエルの言うとおりかもしれないな。元希がいるから、って安心していたのは確かだぜ」
「今日の授業でも、やはり元希様が助けてくれると思ってたのかもしれませんわね」
「実際、あのオーガを倒せたのは元希さんがいてくれたからですし……」
「ボクなんか元希君に足止めしてもらってたのに倒せなかった……攻撃魔法が得意じゃないとはいえ、あれは酷いと自分で感じたよ」
口々に反省の言葉を述べていくみんなに、僕はなんて声を掛けたらいいのか分からなくなってしまった。そこまで酷いわけでは無いのに、周りの気体が高いだけなのに、六人は必要以上に反省してしまっているのだ。
「反省出来たのなら、明日の授業が楽しみね」
「姉さん、そんな事言っちゃダメですよ」
「どうして? 成長が見られるかもしれないんだから」
「今までも十分成長は見れてましたよ」
「もちろん、そうだけどね。これまで以上に成長出来るかもしれないんだから、それを見守ってあげるのも私たちの仕事よ」
何か良い感じみたいに言っているけど、恵理さんは単純に楽しんでいるだけのような気がする。僕や水、リンを使って六人を試す、見たいな事を計画しそうな気もするんだよね……言われたら手伝うしかない立場だから、この予感が当たらない事を祈っておこうかな。
みんな、頑張れ……