授業を終えて僕たちは今日も補習の為に体育館へと向かう。今日は僕も一緒に戦うという事なので、昨日みたいに退屈しないで済むかな。
「なぁ元希、今日はアタシたちも頑張って動くから、元希は指示を出すだけにしてくれないか?」
「その気持ちは大事だろうけど、足止めは僕がするよ。みんなはまず、敵の特性とどうやって足止め、退治するかの流れを身体に叩き込んだ方が良いと思うし」
一人一人の魔法の威力は同年代と比べてもかなり高いだろう。だけど、実戦魔法師としてはそれだけでいいわけではないのだ。戦況判断や周りを見渡すだけの余裕を持てなければ、威力が高い魔法を使えても戦闘魔法師としての評価は上がらないのだから。
「元希様に足止めをお願いするのは得策ではないと思いますが、まずは元希様の魔法を見て、どのように足止めをすればいいのかを知る事が大切なのですわね」
「わたしたちじゃ、長い時間相手を足止めする事は出来ないものね」
「いきなり要求されるレベルが上がったんだから仕方ないよ。恵理さんも涼子さんも日本支部との確執をどうにかするつもりはないみたいだしね」
そもそも向こうが恵理さんと涼子さんを化け物呼ばわりしたことが事の始まりらしいから、確執をどうにかするのなら日本支部の人たちが頭を下げなければ始まらないんだろうけども、恵理さんも涼子さんも日本支部の人たちをボロクソに言ってるみたいだから、この確執がどうにかなる未来はまだまだ先の事なんだろうな……
「今日も来たわね。早速だけど荷物を置いて架空世界に向かう準備をしてもらうわよ」
「恵理さん、今日の魔物は?」
「今日は下級と中級をほぼ無制限に出現させるから、片っ端から倒してって。一応終了の時間は決めてるけど、元希君たちには教えないからね」
「ペース配分を間違えると、途中でやられるから気をつけろと?」
「そんなところね。昨日はああ言ったけど、やっぱり下級、中級を倒して経験値を積んでからじゃないとね。いきなり過ぎて昨日はダメだったし」
別にダメでは無かったように思うけど、確かにあんなことを続けてもあまり経験値は積めないだろう。だからといって、ほぼ無制限に出現させるってどういう事なんだろう。魔力が枯渇したらそれこそ大変なのに……
「一応言っておくけど、枯渇するまで魔法を放ち続けない事。辛いと思ったら他の人にフォローしてもらうのよ?」
「状況が分かれば、こちらとしても加減出来ますから」
つまり、僕たちが定められた時間一杯元気だったら、加減なくモンスターが出現するという事なのだろうか……面倒だからって僕が全部倒すのはダメだろうし、かといって僕が手を抜けば集中砲火されそうだし……
「それじゃ、頑張ってね」
「何で楽しそうなんですか……」
架空世界に向かう前に見た恵理さんの表情に、僕は嫌な予感がしていたのだった。
架空世界での戦闘訓練では、怪我の心配はしなくても良いのだが、体験した恐怖は実世界に反映する。だから架空世界で大型モンスターにやられた場合、肉体的損傷は心配しなくてもよいが、精神的なダメージはそのまま反映されるのだ。
「初級と中級かー、大型と戦った後にそれって何だかおかしいよな?」
「理事長先生や早蕨先生にはお考えがあるのですよ。炎さんだってそれくらいはお分かりになりますよね?」
「分かるけどさ……なぁ元希、無制限って本当だと思うか?」
「そうだね……僕たちがバテれば加減してくれるだろうけど、多分間違いなく無制限で出現すると思う」
「そうなると、連携は大事ですね。誰かが疲れた時、回復している間はわたしたちが連携を取って敵を退けなければいけないのですから」
「元希君に頼るのはダメ。だけど、最悪はそうなるかもしれない」
「私たちは元希君の足を引っ張らないように気をつけなきゃね」
「元希さん、指示はお願いします」
バエルさんの言葉に、他の五人も頷いて僕に指示を求めた。とりあえずまずは落ち着くようにと伝え、僕も臨戦態勢に入ったのだった。
雑魚相手なら無双出来る布陣ですからね……