初級、中級を雑魚だと言い切れるのは、六人にそれなりの実力が備わっている証拠だろう。元々潜在的な能力は高い六人だし、実戦も経験した事があるので、ある程度どのように動けばいいのかを理解しているから、今回も危なげなく動けているんだろうな。
「元希、次はどうする?」
「炎さんは水奈さんと秋穂さんのバックアップを。御影さんはそいつらが片付いたら策敵、新たな敵を探してみんなに伝えて」
「ん、分かった」
「バエルさんと美土さんは敵を一ヶ所に纏める為に壁を維持して。それが崩されると一気に攻められるから」
「分かったわ」
僕たちを中心に置いて、岩と氷の壁を作って敵を一ヶ所に集める。壁を攻撃してくる相手は、炎さんが一通り倒してくれたので、残るは一ヶ所だけ攻め入る事が出来る箇所に集まっている敵を片づければいいだけだ。
岩と氷で壁を作っている為に、今回は炎さんは岩魔法だけを使っている。氷の壁を焼き尽くす程の威力はさすがにないだろうけども、炎さんなら壁を脆くするくらいの威力は秘めているだろうという事で、火魔法は遠慮してもらっているのだ。
「元希君、十時の方向から大量の魔物の気配が近づいてる」
「分かった。バエルさん、美土さんはその敵に備えて。壁の維持は僕がするから」
「分かりました」
戦闘訓練なので、壁の維持だけを任せるわけにもいかないので、その仕事は僕が引き受ける事にした。あくまでも中級レベルのモンスターなので、今の六人なら僕がいなくても倒せた可能性が高い。それでも僕が参加しているのは、作戦指揮を執る人間を育てる為だろう。
「こっちは片付いたぜ」
「分かった。じゃあ別の場所を開けるから、とりあえずそこからは離れておいて」
「分かりましたわ」
今まで開けていた個所を新たな壁で塞ぎ、迫ってきている方向の壁を切り取ってスペースを作る。こっちから攻め込むのもありかと思うけども、下手に突撃して囲まれたら厄介なのだ。今回はこの場所で籠城しながら敵を狩っていくのが一番効率が良いだろう。まだ戦闘指揮を執れる人がいないから尚更だろう。
「それにしても、結構な数が来てるけど、魔力はもつかな……」
「大丈夫、大丈夫。しっかり元希が指揮してくれてるんだからさ。疲労感はそれ程じゃ無いだろ?」
「確かにそうですわね。さっきも壁を作って交代で敵を倒していましたし」
「二人で倒している間は他の人は休憩出来てましたものね」
それでも、完全に回復するまでには至って無いだろうけどね。継続的に魔法を発動していたわけじゃないから、体内の魔力が枯渇するような危険性は無いだろうけどね。
『その集団が最後よ。今日はみんな順調に倒せてるからね』
『やはり元希君の存在は大きいんでしょう』
「そうですね。元希君がいるのといないのとでは、結構な差があると思います」
恵理さんと涼子さんの言葉に、秋穂さんが答えた。その答えに他の五人も頷いて同意したのだけども、僕的にはそれ程働いた感覚は無いんだけどな……
『とにかく、最後の集団はちょっと厄介だからね。気をつけて戦ってね』
『最後の集団はヴァンパイアです。血を吸われると操られちゃいますから』
「それって上級なんじゃ……」
『本物ならそうだろうけども、今回は能力値が下がってるから中級扱いなの。でも気をつけるのよ』
どこか楽しそうに言っている恵理さんに、僕は嫌な予感がしていた。ヴァンパイア……吸血鬼……この世界……架空世界なので、太陽は無い。弱点の一つはこの世界には存在しないし、十字架もニンニクも聞くような下級モンスターでも無い。
「仕方ないか……秋穂さんと美土さんで大きな岩を作って。それを僕が空に上げるから、炎さんは最大出力でその岩を燃やして」
「どうするんだ?」
「無いのなら、作ればいいんだよ」
「何をです?」
「太陽」
即席で、それほど長い時間地上を照らす事は出来ないだろうが、弱らせる事は出来るだろう。それなら能力値が下がっていても強度は下がっていないという事実をどうにか出来るだろうし。
僕が感じていた嫌な予感は、ヴァンパイアの強度だったのだ。普通に叩いても硬く、そして再生速度も速いので、普通に倒すのは不可能に近いのだ。現実世界なら太陽である程度弱ってくれるのだけども、この世界にはその太陽が存在しないのだ。だから即席の太陽を作って、ヴァンパイアを弱らせる事にしたのだ。
案の定ヴァンパイアは脆くなって、すぐに倒す事が出来た。やっぱり状況判断は大切だね。
結構えげつないような……