即席の太陽でヴァンパイアを弱体化させて、後は全員で攻撃魔法をぶつけていくのだけども、どうせなら今回あまり攻撃していない御影さんに倒してもらおう。相性的にも御影さんの魔法が一番効くだろうし。
「御影さん、アイツらに光魔法を」
「分かった」
少し気合いの入った返事をして、御影さんはヴァンパイアに攻撃していく。太陽で弱体化しているから、それほど苦労する事無く全て倒す事が出来るだろう。
『あらら、結構苦戦すると思ってたのに』
『元希君はさすがですね』
「結構な力技ですけどね。こんなの、実際にやろうとしたら大変ですよ」
偶々美土さんと炎さんがいたから使えた技で、他の魔法師だったら出来なかっただろう。てか、そもそも現実世界ならヴァンパイアを倒すのはさほど難しくない。明るい場所に誘導して、そこに攻撃を撃ち込めば良いだけなのだから。
『それじゃあ、今日の戦闘訓練は終了かな』
『光坂さんが全て倒し終えましたからね』
『それじゃあ、全員一ヶ所に集まって。現実世界に再転送するから』
砦に使っていた壁の中に全員で集まって転送を待つ……のは良いんだけど、待ってる間水奈さんと美土さんが妙に僕に近かったのは気になった。
現実世界に戻ってきた僕たちを迎えてくれたのは、満足そうな笑みを浮かべている恵理さんだった。
「お疲れ様。やっぱりあの程度じゃ相手にならないか」
「いえ、元希様がいてくださったからですわ、理事長先生」
「そうですね。元希さんがいてくださらなかったら、まだ倒し終えていなかったと思いますわ」
「まぁね。壁を作ったり、即席で太陽を作るなんてやり方、アタシたちにはすぐ思いつかなかっただろうし」
口々に僕のおかげだというみんな、だけど僕は今日それほど動いたという感覚は無いんだけどな……
「とにかくお疲れ様。今日は元希君の指示が的確だったとみんなも分かってるようね。あの指示を誰か別の人が出来るようになってほしいっていうのが本音だけど、当面は元希君の指示を受けて学習してね」
「それじゃあ、今日は解散してください。まだ明るいので、個人の用事を済ませるのも、このままテントに戻るのも個人の裁量に任せます」
そういって涼子さんは今日の訓練のデータを数値化する作業を始めた。他の人には何をしているのか分からないのか、ポカンと口を開けて涼子さんの作業を眺めている。
「それじゃあ僕は、一旦寮に戻って掃除とかしてこようかな。この前したけど、やっぱり毎日出来ないから汚れてるだろうし」
「では私も付き合いますよ。私もあの寮で生活していますし、一人より二人の方が早く終わりますからね」
「じゃあお願いします」
バエルさんと二人で早蕨荘へ向かう途中、見知った男子生徒が声を掛けてきた。
「ん? 元希じゃんか。まだ残ってたのか?」
「健吾君。うん、ちょっと特別訓練で」
「大変だな、魔法科の生徒は……」
「健吾君は? 何で残ってたの」
「俺? 俺は単純に駄弁ってたらこんな時間になってたってだけだ。特に予定もなかったから無駄話をだらだらとな。ところで、そちらさんはお前の彼女か?」
健吾君の視線はバエルさんに向いている。そう言えば接点無かったんだっけ……
「この人はバエル・アレクサンドロフさん。A-1の生徒で、昨日から僕たちと一緒に特別訓練に参加してる人で、僕と同じく早蕨荘で生活してる人だよ」
「バエル・アレクサンドロフです、よろしくお願いします」
「俺は我妻健吾だ。普通科だがちょくちょく顔は合わせるかもしれないからな、こっちこそよろしく」
「それから、僕とバエルさんは付き合ってるわけじゃないからね」
健吾君の勘違いを解いておかないと、後々面倒になりそうなので早めに本当の事を伝えておく事にした。
「そうなのか? まぁ、元希は奥手だからな」
「そんな事無いと思うけど……」
「普通科でも、魔法科の女子生徒の話題は結構あるんだ。その殆どと元希は付き合いがあるんだろ? あっ、そう言えば話題の転校生ってアンタだったのか」
「もう結構経ちますけどね」
健吾君はあまり女の子に興味が無いらしい。かといって男の子に興味があるわけでも無いんだけど……
「とにかく元希、普通科の連中に刺されないように気をつけるんだな」
「その忠告、凄く怖いんだけど……」
「半分は冗談だから気にするな」
つまり半分は本当なのか……何で恨まれてるのか分からないけど、とにかく気をつけておこう。
決してBL展開ではありませんよ