多数決で決まってしまったものは覆す事は出来ない、訳では無いのだろうけども生半可な努力では不可能だろう。そして今回決まってしまったルールも、覆す事はほぼ無理だろうな……
決定したルールに従い、僕は恵理さんと涼子さんに引き連れられお風呂に向かっている……のは良いのだが、このままだと二人とも男の方の脱衣所に来ちゃうんじゃないのかな? 大丈夫なのだろうか……
「って! 恵理さん、涼子さん! こっちは女性の脱衣所の方向ですよね!? 僕はさすがにマズイと思うんですけど!」
「大丈夫よ。元希君になら、全てを見られた事があるんだから」
「そうですよ。一緒にお風呂に入るんですから、今更です」
そういう問題じゃないと思うんだけどな……てか、恥ずかしいのは僕であって、恵理さんたちが大丈夫だというのは、僕にとってなんの『大丈夫』だという根拠にはならないんだけど……おそらく分かってて言ってるんだろうな……
「主様、こっちは女の脱衣所じゃぞ? ついに主様が女になったと言うのか?」
「そんなわけ無いでしょ! 恵理さんと涼子さんにつれて来られたんだよ……」
「元希一緒! リン嬉しい!」
「そう……良かったね」
素直に喜んでくれているリンに、僕はぞんざいな返事をした。だけどリンはそれが気にならなかったのか、僕に抱きついてきた……もちろん僕も裸でリンも裸の状態だ……
「あーずるい! アタシも元希に抱きつきたいぞ!」
「私もですわ!」
「じゃあわたしも元希さんを感じたいわね」
「ずるいなー私も元希君を感じたい」
リンを見て何を思ったのだろう……炎さん、水奈さん、美土さん、秋穂さんの四人が僕に抱きついてきた……当然四人共裸なので、感触が直に伝わってきてしまう……僕だって何も感じないわけではないので、さすがに恥ずかしいのだけども……
「あらあら、顔が真っ赤よ、元希君。ひょっとして反応しちゃった?」
「姉さん、下品ですよ」
「そういう涼子ちゃんだって、視線が元希君の下半身に集中してるわよ?」
「そ、そんな事はありません!」
誰か助けてくれても良いんじゃないのかな……そんな事を考えていたら、下半身を誰かが触っているのに気づいた。
「ちょっと御影さん! 何処触ってるのさ!?」
「元希の分身……元希からは想像出来ないくらいの大きさ……」
「やめてー!?」
混浴に反対していたはずの御影さんなのに、何でこんなにノリノリなんだろう……唯一助けてくれそうなバエルさんは、申し訳なさそうに手を合わせて僕から視線を逸らしていた……見ないようにしてくれたのが彼女の精一杯だったんだろうな……
「ズルイぞお前ら! 主様の寵愛を受けるのはこのワシじゃと決まっておろう! ワシは主様の所有物じゃ! あんなことやこんなことをするのに適しているのは、このワシしかおらんじゃろうが!」
「もうやめてよ……」
抵抗する気力と体力が削られていく、僕はもう無抵抗に押しつぶされるしか無くなっている。そんな時にこの水の発言だ。更に押し合い圧し合いが熾烈窮まってしまっても仕方なかったのだろう……
「あ、あの……元希さんが死んじゃいます……」
「ん? あっ元希! 死ぬな! まだ死ぬには早いぞ!」
「……生きてるけど、死にそうだよ」
炎さんに肩を掴まれ前後にブンブン振られた所為もあるけども、僕は吐きそうになっていた。
「とりあえず、湯船に浸かってゆっくり休みましょう」
「姉さんが原因でこうなったんじゃない?」
「涼子ちゃんも一緒に元希君を連れてきたんだから、同罪でしょ?」
「でも、その後の展開は姉さんが煽ったからじゃ……」
「別に煽って無いわよ。リンちゃんが抱きついて、それに続くようにみんなも抱きつき始めたんだから」
とりあえず言えるのは、これからは少しくらいこの二人に抵抗したほうが身のためだ、という事じゃないのだろうか……危うく圧迫死するところだったよ……戦闘魔法師の卵として、こんな死に方は嫌だと思えるくらいの、残念な死に方をするところだったな……気をつけなきゃ。
多数決って、数の暴力だよ……