その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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最強の魔法師たちも大変ですね……


恵理の説明

 健吾君から預かった伝言を恵理さんたちに伝えようとしたら、僕が何かを言う前に恵理さんに持ち上げられてしまった。

 

「非常事態よ。元希君、急ぐわよ!」

 

「自分で歩けますよ! だから下ろしてください!」

 

 

 じたばたど暴れてみたけど、恵理さんの方が背が高いし僕より力持ちなので、抵抗むなしく運ばれていく事に……てか、他の六人が呆気に取られてますけど、説明は無いのだろうか……

 

「あの六人への説明は、涼子ちゃんがしてくれるわよ」

 

「そうですか……てか、僕は何も言って無いんですが」

 

「顔に書いてあったわ。それよりも、何が起こってるか元希君は知ってるわよね?」

 

「……ひょっとしてあの山の方角に関しての事ですか?」

 

「さすが元希君、話が早いわ」

 

 

 いや、健吾君から頼まれた伝言だったからであって、僕は詳しい事は何も知らないのだが……

 

「どうやら結界が破られたらしく、あの場所は再び混沌としているわ」

 

「結界が破られた? ですが、僕には何も感じませんが……」

 

 

 もし本当に破られたのなら、張った本人である僕にも何かしら感じるものがあるはずなんだけどな……だけど僕は何も感じて無いし、結界もちゃんと反応があるんだけども……

 

「破られたのは私たちが張った結界よ。元希君が張ってる状態維持の結界はまだ大丈夫なはず」

 

「それでですか……でも、恵理さんたちの結界を破るモンスターなんて、文献には載って無かったような……新種ですか?」

 

「おそらくはね。だからそれを確認しに行って、必要なら戦闘行為も辞さない覚悟よ」

 

 

 いや、僕は今その情報を聞いたので、戦闘行為と言われても……覚悟なんてこれっぽちも出来て無いんですけど……

 

「ところで元希君、リンの気配は分かる?」

 

「リンの気配、ですか……? えっと……水と一緒に現場付近にいますね……」

 

「そう、じゃあこの新種のモンスターはリンじゃ無いのね?」

 

「えっと……ノイズが酷くてそこまでは……でも、モンスターの気配とは別にリンの気配がありますので、多分そうだと思います」

 

 

 そもそもあの場所にリンが進んで行くとは思えないんだけどな……多分モンスターが現れた事でリンの本能が刺激されてあの場所に向かったんだと思う……でも、今のリンじゃモンスターに対抗出来るだけの力は無いし……水も僕が許可しないと力を発揮出来ないし、あの場所の水源を守る役割を担ってるから、その分力も制限されてるし……つまりあの二人はかなり危険な状況だという事だろうか……

 

「一応後から涼子ちゃんも駆けつけてくれるけど、私と二人で戦う事になるからね」

 

「そう言うのは先に言っといてくださいよ……会っていきなり運ばれるなんて思って無かったんですから……」

 

 

 戦う覚悟は出来てるけど、僕は昨日まで体調を崩してたし、恵理さんも色々と忙しくてろくに休んで無いとか言ってたし……コンディションは互いに最悪に近いんだろうな。

 

「まぁ元希君は、召喚獣でも使ってくれれば良いわよ」

 

「生憎、Sランク召喚魔法を使えるほど体力が回復してないんですよ……それと、あの場所に影響を出さない召喚獣は、僕の手持ちにはいません」

 

「炎と雷と氷だったっけ? 確かにダメそうね……」

 

 

 生態系に影響が出そうなものは極力避けたいし、モンスターのデータが無いのでどう戦えば良いのかも分からない。こんな状況で頼られても困るんだけどな……

 

「他の人は来ないんですか?」

 

「さすがに生徒を巻き込むわけにはいかないでしょ」

 

「僕も生徒なんですけど……」

 

「元希君は大丈夫よ。世間に出れば間違いなくSランク判定されるんだから」

 

「それの何が大丈夫なのか……僕には分からないんですけど」

 

 

 ここで愚痴を言ったからって事態が好転するわけではない。だけど愚痴を言いたくなるのは仕方ないんだよね……




次回ちょっと急展開を予定……

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