あの事件から数日後、僕の体調が落ち着いたので事情説明の為に僕は理事長室に呼ばれた。本当ならリンやシンも連れてくるのが普通だろうが、あの二人はまだ僕の中で眠っている状態なので、今回は同行していない。
「失礼します。東海林元希、参りました」
『入りなさい』
日本支部の魔法師の人も来ているので、恵理さんは何時もの口調では無かった。しかし、シンが暴れていた時は来なかった日本支部の人が、事情説明だけ求めるというのはどうなんだろう……
「ご苦労様、元希君。さっそくで悪いんだけど、事の顛末を説明してもらえるかしら? 私たちは一通り聞いてるけど、こちらの『有能な』皆さんは事件をまったく把握していないそうなので」
「……分かりました。では簡潔に今回の騒動を説明したいと思います」
恵理さんの皮肉に、日本支部の人たちが顔を顰め、僕を睨むような感じになる。イザコザがあるのは聞いているし、僕自身も日本支部の人たちの大半に好意は持っていない。だけど、率先して対立しようとも思っていないのだ。
「結論から先に申しますが、今回の事件を引き起こしたのは魔物ではありません」
「ではなんだと言うんだ。まさか人災とでも言うつもりか」
「いえ、人災では無く天災かと。今回の騒動を引き起こしたのは神族ですので」
僕があっさりと告げた「神族」という単語に、日本支部の人たちは表情を硬直させた。それくらい、神の力というのは強大で、出来る事なら関わりたくないのだろう。
「皆さんにも報告はしてありますが、この霊峰学園の近くの雑木林そしてその周辺一帯の土地を治めていた神が力を失い、緊急措置として我々魔法師がその土地一帯の加護を行っていました。今回の騒動は、その土地の神である通称『リン』の弟に当たる神族が引き起こしたもの。姉である『リン』を我々人間が何処かにやったのではないかと疑っての行動だったと証言しています」
「それで、その神族は今どこにいるんだ」
「大半の力を使い果たしてしまい、今は魔力を回復させる為にとある場所で休眠しています。我々で然るべき対処を致しますので、皆さんはその報告をお待ちください」
僕の説明に納得いかないのか、一人の日本支部所属の魔法師が前に出た。
「私は、その神族を殺すべきだと考える。早急にその神族が休眠していると言う場所を言え」
「……神を殺し、その力を得ようと考えているのですか? 数ヶ月前、何も悪さをしていなかった水神を殺した時のように」
「あの水龍は人に害をもたらす存在だった。討伐したのは当然だ」
「その水龍の子供である水は、人に害をもたらす行為など一切していません。そして聞く限りでは、あなた方日本支部所属の魔法師が討伐した水龍も、数百年にわたり我々人間を加護していたそうですが、それでも正当性があったと仰るのですか?」
実際、水の母親である水龍が討伐されてから、ここら一帯に水害被害が増えたと報告があった。それは、日本支部が討伐した水龍が抑えていてくれたものが解き放たれたからだと恵理さんと涼子さんは言っていた。僕もそれが正しいと思っている。
「加護? 生贄を喰らい、人を見下していたあの水龍が? 笑わせるのもいい加減に……」
「生贄? 何を言っているのですか。あの水神を祭っていた氷上家は毎年ここら一帯で取れた農作物をお供えしていただけです。ろくに調べもせず、信憑性も無い情報を鵜呑みにした結果が、ここら一帯の水害に繋がっているんですよ? その責任は、あなた方にあるのではないんですか?」
さっき率先して対立するつもりは無いと思ったけど、この人は違ったようだ。どうも僕が苛立ちを募らせるように行動してるとしか思えない。
「報告は以上です。用が無いならさっさとお帰り下さい。報告は書類に纏めてそちらにお送りしますので、これ以上僕の視界に留まらないでください。てか、さっさと帰してあげますよ」
僕は転移魔法を発動し、日本支部の皆さんを日本支部に送り付けた。そんな僕の事を、恵理さんと涼子さんは感心したような目で眺めていたのだった。
元希君、覚醒?