その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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新キャラ登場です


クラス対抗戦 第二試合

 次の試合が始まるまで、僕たちはのんびりとしていた。他の二試合が終わらなければ次が始められないのは分かるけども、何でそんなに時間がかかってるんだろう……

 

「やっぱ元希は別格だね」

 

「ほぇ?」

 

「そうですわね。元希様が居れば圧勝ですわよ」

 

「可愛いのに強いって反則ですよね」

 

「だからってそう抱きついて良いものじゃないよ」

 

 

 美土さんに抱きしめられたけども、御影さんがツッコミを入れてくれたのですぐに放してもらえた。

 

「ところで、どうして僕が別格なの? みんなもあれくらい出来るよね?」

 

「元希様、さすがに私たちは禁忌魔法を発動させられませんわ」

 

「そうなの?」

 

 

 結構簡単に発動出来るんだけどなぁ……反動は凄いんだけどね。

 

「それは元希さんが全属性魔法師だからですわよ。私たちはそこまでいけませんので」

 

「そうなんだ……」

 

 

 何となく疎外感を覚えた。恵理さんや涼子さんが時々見せる顔と、今の僕の顔はきっと似てるんだろうな。

 

「でも、元希のおかげで楽が出来てるんだよ。もっと喜びなって」

 

「炎さん、楽をする事だけを考えるのはよくありませんよ」

 

「は~い」

 

 

 ちょっと不貞腐れたように炎さんが返事すると、背後から誰かに抱きしめられた。

 

「うわぁ!? だ、誰?」

 

 

 慌てて振り返ると、見たことの無い女の子が僕を抱き上げていた……また僕より大きい人なんだ……

 

「貴方が東海林元希君? 思ってたより小さいわね」

 

「だ、誰ですか?」

 

「あっ、私はA-1のクラス委員をしてる岩清水秋穂(いわしみずあきほ)よ。ウチのクラスが一番だと思ってたけど、やっぱりS-1は別格なのね」

 

「そりゃそうだよ! なんて言ったって元希が居てくれるからな! 秋穂には負けないよ」

 

「え、炎さん知り合いなの?」

 

「というか、私たち全員が彼女と知り合いですわ」

 

「久しぶりね、秋穂」

 

「中学の卒業式以来?」

 

 

 岩清水さんたちと四人は中学の同級生のようで、結構仲良さそうな雰囲気だった。

 

「恐らく元希が居なかったら秋穂がSクラスだったんだろうな」

 

「ゴメンなさい……」

 

 

 僕なんかよりお友達五人のほうがやりやすかっただろうし、何だか邪魔しちゃったみたいだな……

 

「別に気にしなくて良いわよ。それにしても、噂通り可愛い子だね」

 

「ですわよね! 元希様は可愛らしいお方ですもの!」

 

「また始まってしまいましたわね」

 

「水奈、そろそろ試合だよ」

 

 

 御影さんのおかげで水奈さんは妄想世界から復帰してきた。

 

「それじゃあ、直接対決を楽しみにしてるからね、東海林君」

 

「あ、はい! 岩清水さんも頑張ってください」

 

 

 何となくだけど、彼女とは仲良くなれそうな雰囲気を感じた。もちろん、四人が居てくれなければ無理だろうけども……

 

「それじゃあ、秋穂と当たるまで全勝で行くわよ!」

 

「秋穂さんと当たるのは明日ですよ? 今からその気合でもつのですか?」

 

「大丈夫よ。炎は昔っからこうだったでしょ?」

 

「良い意味で変わらない人だからね」

 

 

 付き合いの長い三人は、炎さんを見てほのぼのとしてるけども、そろそろ試合が始まるんだけどなぁ……

 

「今度は何処だ?」

 

「D-1ですわね」

 

「索敵はボクがするよ」

 

 

 御影さんが張り切ってるような気がする……炎さんほどではないにしても、御影さんも燃えてるのだろうか……

 

「さっきの元希さんの魔法を見て、御影ちゃんも張り切ってるのよ」

 

「美土さん!? 今は試合中ですよ!?」

 

 

 抱きしめられて慌てる僕を、皆は優しい笑顔で見つめている……そんなに僕って子供っぽいのだろうか……

 

「居たよ。今度は一箇所に固まってる」

 

「それなら地竜戦と同じフォーメイションで行けるね」

 

「ですが、元希様に頼るのも何だか悪い気がしますわ」

 

「元希さん、今回は休んでる?」

 

「ううん、僕も戦うよ。皆を守る……ってカッコつけたいけど、バーチャル世界で言ってもカッコよくないよね」

 

 

 この世界での傷は、現実世界に復帰するのと同時に消えてなくなる。つまり怪我をしても日常生活に支障は出ないのだから……

 

「いいえ! 今の元希様はカッコよかったですわよ」

 

「お姉さんを守るなんて、元希さんも男の子ですわね」

 

「あうぅ……グリグリしないで~……」

 

 

 水奈さんと美土さんにグリグリされて、僕はちょっとフラフラする……でもD組の人が近付いて来てるのを気配で感じて瞬時に足取りが元に戻った。

 

「随分と警戒してる……これじゃあ地竜戦のように水奈さんの魔法や炎さんの魔法は防がれちゃうよ」

 

「じゃあ真正面から!」

 

「大丈夫。僕がやるよ」

 

 

 この距離なら届くよね……実戦で使った事無いから分からないけど、理論上は大丈夫なはずだ。

 

「風よ、かの者たちを包め、炎よ、大気を熱し爆発させよ、『ビックバン』岩よ、敵の逃げ道を塞げ『ロックウォール』水よ、かの者たちを斬り冷やせ『アイススラッシュ』」

 

 

 僕は三つの魔法を同時に発動させる。これなら仮想世界でも恐怖心が残る事は無いだろうな。『ビックバン』は禁忌魔法だし……しかも逃げ場を塞いじゃってるし……

 

『試合終了。勝者S-1』

 

 

 涼子先生のアナウンスが入り、僕たちは現実世界に復帰する。すると同時に四方向から抱きつかれた。つ、潰れるよぅ……

 

「やっぱ凄いな、元希!」

 

「同時発動、しかも三つもだなんて」

 

「お姉さんビックリしたわよ~」

 

「しかも一つは禁忌魔法……普通の魔法師じゃ発動できない」

 

 

 褒めらてるんだろうけども、僕は圧力に屈して意識を手放してしまったのだった……




  キャラ紹介
岩清水秋穂 A-1所属クラス委員 身長163cm B86 W58 H83
炎たちとは中学時代からの付き合い。他クラスながら元希の実力を認めている。得意魔法は岩。美土同様元希に対して弟相手のように接する。

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