あの後から、少しバエルさんとの間に気まずい空気が流れている。それは他の人には気づかれない程度の些細なものだが、当事者である僕とバエルさんは非常に気まずいのだ。
「なー、今日は訓練も無いし、遊びに行こうぜ!」
「炎さん、今日は貴女が調理係ですよ? 遊んでて良いんですか?」
「わたしも炎さんと一緒に調理係なんですが、遊んでる余裕は無いと思いますけど」
「ちぇー……そうだ! 元希、アタシの代わりに調理してくれないか?」
「炎、ズルはダメ」
「あはは……御影さんもこう言ってるし、炎さんが自分でやらなきゃダメだよ」
バエルさんとクラスが違うから、学校では気まずい気分になる事が少なくて助かっている。気を使ってるわけではないんだろうけども、普段より炎さんたちのテンションが高いような気がしてるのは、僕が気にし過ぎているからだろうか……
「あっ、元希ちゃん!」
「リーナさん?」
「恵理が呼んでるから今すぐ理事長室に行くわよ!」
「えっ、えっ?」
何の用件かも言わず、リーナさんは僕の腕を掴んで理事長室へと向かう。教師が廊下を走っていいのか、というツッコミは言っても無駄だと思い知らされているのか誰も指摘する事は無かった。
「連れてきたわよ」
「ありがとう。じゃあリーナは帰っていいわよ」
「酷くない、それ!? 私にだって聞く権利くらいありますよ」
「聞く? 何か用事があったんじゃ……」
「元希君、貴方最近何か悩んでるでしょ」
やっぱり気づかれてたんだ……炎さんたちはともかく、恵理さんや涼子さんは僕たちより人生経験が豊富だもんな……ちょっとした違いからすぐバレちゃうんだ……
「アレクサンドロフさんも最近測定値が不安定だし、元希君に至っては平常時の半分に満たないくらいまで威力が落ちてる時がありますから」
「そこまで魔法に反映してないつもりだったんですけど……」
まさか半分も威力が落ちてたなんて……全然気づかなかったな……
「元希君、もしかしなくてもアレクサンドロフさんと何かあったんでしょ」
「まぁ……ちょっと気まずい感じにはなってますけど」
「原因は? このままだと二人とも成績に響くわよ」
「な、何とか解決したいとは思ってるんですけど……」
何せこの気持ちが何なのか、他の人とは違うのか、その事を僕がハッキリと理解出来なければ先に進めないのだ。そして僕はまだこの気持ちが特別なのかどうかハッキリする事が出来ていないのだ……
「一度二人でしっかりと話し合いなさい。先を越されたのは悔しいけど、元希君の子供なら愛せると……」
「子供? 何の話です?」
恵理さんが割と頓珍漢な事を言いだしたので、僕は思わず恵理さんの言葉を遮って質問した。
「だって、子供が出来ちゃったから気まずくなってるんじゃないの?」
「どう考えたらそんな結論になるんですか……」
「だから言ったんですよ、姉さん。子供なんて出来て無いって」
「じゃあ何で気まずくなってるの? まさか初エッチの後で恥ずかしくなったとか?」
「違いますってば!」
そもそも僕とバエルさんの関係はそんなものではない。恵理さんは何故そこまでぶっ飛んだ考えが出来るのだろうか……
「良かった。元希君の貞操は守られてるみたいね」
「もうどうでも良いです……」
これ以上この空間にいたら疲れ果てて動けなくなりそうだったので、僕は一礼して理事長室から逃げ出した。恵理さんもだけど、涼子さんも何であんな考えに行きつくんだろうな……
「「はぁ……ん?」」
誰かとため息が被った。そして同時にその被った相手を見た為、バッチリと目があってしまった。
「ば、バエルさん……」
「も、元希さん……」
何でこんなタイミングでバエルさんとバッタリ鉢合わせするんだろう……僕は神様に嫌われているのだろうか……
ぶっ飛び過ぎだが許容範囲が広すぎる……